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October 18, 2004

プレミア・リーグ
アーセナル対アストンヴィラ

[ cinema , sports ]

いや、本当に強いときのアーセナルはすごい。鉄人アナ八塚浩も言っていたが、見事すぎる。点差こそ3-1だったが、もしショッツオンのシュートが全部入っていたら、10 点差では収まらないのではないか。アストンヴィラのキーパーが「当たって」いたので、点差はそれほどつかなかったが、開始早々のアストンヴィラ、ヘンドリーのシュートがアーセナルのゴールマウスに吸い込まれたせいで、アーセナルの投資に火が点いてしまった。
アンリのワントップの下にしている、ベルカンプ、ピレス、レジェス、ヴィーラ、セスクの5人のミッドフィールダーの間を面白いようにボールが回り、ローレン、コールの両サイドに展開され、シュートが決まられなくてもセカンドボールのほとんどをアーセナルが拾いまくり、再びボールが回り始める。創造的にポジショニングされた選手たちの50センチほど先にボールが常に回ってくるから、アタックの速度はまったく落ちずにペナルティエリアに近づいていく。この間、バックパスはほとんどないし、センターバックのキャンベルとトゥーレからのロングフィードもない。パスは常にピッチをディアゴナルに運動し、パスと逆方向の斜線を描く選手の軌跡と衝突し、ジグザグにボールが方向を変えながら前方へと運ばれていく。
異次元のフットボールを言えばよいのか? 解説の東本貢司は、アーセナルのアタックのあまりの早さに苦言を呈していたが、かつて見たことのないものを否定するのは批評家やジャーナリストのすることではない。この速度に驚嘆し、この速度に身を任せることを選ぶべきだ。ピレスのPK、アンリのシュート、ピレスのシュートの3本がヴィラのゴールマウスに吸い込まれたが、このゲームで面白いのは、ゴールシーンではない。だからダイジェスト版では、決してこのゲームの素晴らしさは伝わってこないだろう。ミッドフィールドの中を多様な方向に運動する選手とボールの見せる「あみだくじ」のような軌跡こそ、今アーセナルのフットボールが見せる成果なのだろう。

梅本洋一