« previous | メイン | next »

February 27, 2006

トリノ・オリンピック観戦記──最終回
梅本洋一

[ photo, theater, etc... , sports ]

男子回転
 個人的にもっとも注目していたのはこの種目だ。世の中では荒川静香のゴールドで盛り上がっているが、フィギュアはどうも好きになれない。体操もフィギュアと同じように好きになれない。技を取り入れた採点種目は、いくらコンピュータによる採点と部分点を加点する方式にしたところで、ぼくの考えるスポーツではない。ゴールに何点入ったかとか、タイムが速かったとは異なるジャッジによる採点──ボクシングもそうだが、KOで勝つこともできる──は、単に好きになれない。
 スラローム。もちろん注目は明だが、1回目8位、2回目片足反則と本当に欲求不満の残る内容に終わった。明は「前が見えないのでやる気をなくした」と言っているが、一か八かの滑りをすると宣言したのに、1本目は何となく滑り何となく8位になった感じだし、2本目が片足反則になったのは3旗門めぐらいで、彼の滑りの片鱗も見せないでオリンピックが終わったからだ。何気なく滑って1本目8位なのだから、彼の底知れぬタレントは理解できるが、このレースは本当に不完全燃焼だった。もちろんロッカが転倒し、パランデルも2本目に片反で失格、1本目ではリゲティもボディ・ミラーも失格。これがレースだ。ワールドカップのレースではこんなことはしょっちゅうある。だから仕方がない。でも、ワールドカップを見ているのは、一部のファンだけで、それもスカパー! の深夜枠だ。ぼくが、ショートトラックを見るのはオリンピックだけなのと同じように、スラロームを見るのも多くの人たちはオリンピックだけだ。明にもレース翌日のNHKの番組の永ちゃんと同じように「成り上がって」ほしい。
 皆川賢太郎も湯浅直樹もベストレース。賢太郎が表彰台に乗らなかったのは、今まで乗ったことがなかったからだろう。ベンヤミン・ライヒの2本目と比べるとそのことが分かる。重要なのは経験なのだ。賢太郎の2本目は、1本目が余りに良かったのでやや安全に行きすぎていた。これでは勝てない。それこそ一か八かの勝負に出なければメダルはない。オーストリアの表彰台独占に終わったが、彼らは国内の代表争いで熾烈きわまりない競争をしている。層が厚くなったとはいえ、ジャパン・チームで明と賢太郎は無競争で代表入り。この差だ。その点、湯浅は良かった。彼が7位のレースは見ていないが、この日の滑りを見ると、常に第2シードでは滑れる。彼にもコンスタントにシングルの結果を残し続けることで頑張ってほしい。湯浅の面構えはなかなかいい。
 スラロームのワールドカップは残すところ3レース。そのうち2レースは志賀高原だ。明に雪辱を期待している。本気見せてくれ!