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August 17, 2006

アジアカップ予選 日本対イエメン 2-0
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 引いた相手をどう崩し、どうやって点を取るのか? 力が上のチームの永遠の課題だ。ワントップを残し、常に9人で自陣に立て篭もるイエメン。ほぼポゼッションは8割。だが、なかなかゴールを割れない。もちろんチャンスは多い。バーやポストに嫌われたシュートが2本。キーパーの好セーヴに阻まれたシュートが2本。ペナルティエリア近くで得たFKも3本がゴールをかすめた。どれも入っていれば単に圧勝のゲームだった。だが、これが入らない。阿部のヘッドがゴールに突き刺さった70分まではスコアレスの展開。よくあることだ。W杯でのイングランド対トリニダード・トバゴ戦、あるいはスウェーデン対トリニダード・トバゴ戦のように。
 次第に焦りの色が濃くなり、左右からアーリークロスがポンポン入れられる展開。今日の巻は入らない。よくあることだ。オシムの打った手は、左サイドバックの駒野を羽生に代え、阿部を最終ラインに入れて3バックにし、次に遠藤──今日のメンバーの中では「格上」──に代えて佐藤勇人を入れ、両サイドの動きの量を増やし、最後には疲れの見えた田中達也に代えて佐藤寿人。その寿人が2タッチ目でゴールし、結局、2-0でゲームを終える。羽生、勇人といったジェフの子飼いを入れて運動量を増やし、人とボールの運動に活気をもたらした。
 ゲーム後のインタヴューでは、もっと頭を使わないと勝てないと言っている。つまり、引いた相手には、こっちも引いて相手をつり出し、空いたスペースを活用するといった頭脳が必要だというのだ。普通なら──解説の山本昌邦も原博美も言っていたが──、ねばり強くサイド攻撃を続け、時にパワープレーを混ぜて力ずくで攻めるということになるだろうが、前半ならボールの持てる阿部や鈴木啓太のパス交換で相手を引き出す余裕があれば、達也にもドゥリブルするスペースが生まれたろうし、巻のポストも活きたろう。つまり、この若いチームには、かつての名波のように「いなす」ことができる選手がいない。皆、まじめすぎる。