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May 9, 2009

チャンピオンズリーグ08-09準決勝 2nd Leg
アーセナル対マンチェスター・ユナイティド 1-3 (1-4)
チェルシー対バルセロナ 1-1 (1-1)
梅本洋一

[ DVD , sports ]

 イニエスタのシュートがツェフの左手をかすめてゴールネットを揺らした瞬間、スタディオ・オリンピコでの決勝はマンU対バルサに決定した。大方の予想通り。
 だが、このゲームで健闘したのは、誰の目から見てチェルシーだった。ぼくだってバルサの圧勝を期待したが、ヒディンクは、ファーストレグと同じ戦術を採り、守ってカウンター。前半9分のエシアンのミドルが決まり先制。絶好の展開だ。バルサはプジョルの出場停止とマルケスの怪我。そして、このゲームではアンリも欠場。センターバックには急遽ヤヤ・トゥレを入れた。ファーストレグより最終ラインを高く保ってはいるが、積極的に仕掛けるわけではない。ピケ、ヤヤ・トゥレの最終ラインをドログバ、マルーダ、アネルカの3人で崩しにかかり、エシアン、バラックとランパードがサポート。クレヴァーなのは、中盤で積極的に当たりに行くのではなく、ポジショニングを重視することで、バルサの中盤はボールが動くものの、懐の深いチェルシーのラインを破ることができない。アンリの不在は、まるで飛行機の片肺飛行にも似ている。メッシが右に左にポジションを変えても、ディフェンス陣はつられずにポジションを守りながら、少しずつプレッシャーをかけていき、メッシからエトオへのボールは、ほぼ完全に遮断されてしまった。アビダルがアネルカを倒した(本当はアネルカがファールをもらいに行って転けた)ことで一発レッドが後半21分。エシアンの一発は、バルサにとって天文学に遠い。アンリ、アビダルがいないということで、バルサのアタックは、左のダニエウ・アウベスに偏るが、彼は絶不調。クロスはラインを割り、FKはゴールマウスのはるか上方。もうシャビかイニエスタしかいない。イニエスタの気迫のこもったシュートが飛んだのはロスタイムも3分を回ってから。
 そして前日のアーセナル対マンU。これはマンUの圧勝!チームの成熟度の差が明らかに出たゲームだ。右のギブスが転んだところをパク・チソンが決め、ロナウドがFKを決めた。ここまでで11分。アーセナルはキヴアップ状態。「ナンバー」誌にもあったことだが、アーセナルには劣勢を跳ね返せる選手がいない。好調時の若手は力以上に活躍することがあるが、いったん先行されると、ギヴアップ状態。解説の粕谷秀樹は、ヴィーラやアダムズら頼れる選手がいなくなったことを嘆いていた。チームが若いということは、いったんギアが入るとどんどんスピードアップするが、停滞すると方向性を見失うことでもある。単にナイーヴだということだ。このゲームでアーセナルの今シーズンはほぼ終了。もちろんまだマンU戦とチェルシー戦は残っているが、プレミア4位で終えることはまちがないだろう。
 チーム・マネジャーとしてのヴェンゲルは尊敬に値するし、好調時のアーセナルの流動的なフットボール大好きだ。だが、この2ゲームを連続してみていると、ときおり抜かれるグアディオラとヴェンゲルの表情が対照的だ。常に共に戦う姿勢を貫くグアルディオラとややゲームを遠くから眺めるヴェンゲル。選手だったら、やっぱりグアルディオラを好むだろうな。