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August 17, 2010

10-11プレミアリーグ開幕 リヴァプール対アーセナル 1-1
梅本洋一

[ sports ]

 W杯が終わったばかりなのに、もうプレミアリーグの開幕。見る方もまだ疲労が残っているのだから、選手たちがコンディションを整えて、モティヴェーションを高めるのも大変だと思う。
 この開幕戦、セスクはコンディション不良でベンチ入りもできず、負傷者リストにはデニウソン、ベントナー、ジュルー、ソング、そしてラムジー。アルシャヴィンは、ロシア代表戦から戻ったばかり。スタメンには、ボルドーから新加入のモロッコ人マルアン・シャマク、リーグ・アンのロリアンからやってきたセンターバックのロラン・コシルニが入った。ミッドフィールドには、ディアビとウィルショア、右にエブエ、左にアルシャヴィン、そしてクリシ、サニャの両サイドにコシルニとヴェルメーレン。ベンチにはウォルコット、ロシツキ、ファン・ペルシ……。もちろん見るべきはアーセナルばかりではない。ホームのリヴァプールにしても、ベニテスが去り、ホジソンが監督に就任し、チェルシーからはジョー・コールがやってきた。
 キックオフ。両チームとも慎重な入り方をするが、W杯のゲームばかり見た眼からすれば、どちらも明らかに「チーム」になっている。W杯ではまだ「チーム」になっていない国が多かった。できるだけ早く「チーム」になるために、まずディフェンスだ!という訳で、オランダやブラジルのように、特色を消した「チーム」もあった。イングランドのように「チーム」になる以前に敗退してしまった国も多かった。つまり、すでに「チーム」になっているチーム同士の戦いを見ていると、フットボールは本当に面白い。ボールが動き、選手が走る。スタンディング・パスがほとんどなく、多くのパスに「意図」がある。W杯で不調だったジェラードも、溌剌と走り、長いパスをビシッと決める。アーセナルもセスクを欠いているものの、ディアビとウィルショアからはショートパスが両サイドに配球される。だが、もちろん開幕戦だ。ディフェンスが堅い。ホジソンのリヴァプールは、ベニテスのリヴァプールのように両サイドがガンガン上がらない。グレン・ジョンソンもトイ面がアルシャヴィンのためか自嘲気味だし、左サイドバックにはアッガーだ。これではセンター・バックが3人いるのと同じ。アーセナルもパスは回るが、アタッキングサードでリヴァプール・ディフェンスに押し返され続ける。前半も終了間際、ジョー・コールのタックルがコシルニを襲い、一発レッド。
 数的優位を作った後半開始直後、アーセナルは、この日、1トップに入ったンゴグにバックラインを破られて先制される。これでこのゲームがグンと難しくなった。10人で守るリヴァプールはスペースを埋め、アーセナルのパスは消され続ける。シャマクもひとりで状況を打開できるFWではないらしい。動きが小さい。アルシャヴィンも疲れからかキレがない。エブエ→ウォルコット、ウィルショア→ロシツキ、そして78分にはディアビ→ファン・ペルシ!ロシツキが入ってからボールの廻りは格段に良くなるが、いかんせんスペースがない。ロスタイム寸前にスクランブルからシャマクが体で押し込みドロー。いかにも開幕戦らしいゲーム。だが、浮き彫りになるのはセスク不在のアーセナルの根本的な欠陥。リズムを変えられる選手がいないこと。それに対して、ギャラスが去っても、ディフェンスラインは落ち着いている。ヴェルメーレンとコシルニは同タイプだが、体を張った守備よりもクレバーにパスを読み、決定的な場面を作らせないディフェンスラインは好感が持てる。