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January 21, 2012

『永遠の僕たち』ガス・ヴァン・サント
梅本洋一

[ cinema , cinema ]

 このフィルムの原題はrestless。文字通りrestがない。「落ち着きがない」とか「動き続ける」とか、「そわそわしている」とか、だから「不安」や「不穏」だという意味になる。見知らぬ他人の葬儀に出席し続ける登校拒否生徒のイーノックは、ある葬儀で短髪で色白の少女アナベラに会う。
 難病もの? 青春映画? どちらも当たっている。青春映画というのは、タイムリミットのある若さを疾走する映画であり、その極みに「難病もの」があってもおかしくはない。このフィルムの中で、アナベラがイーノックに言う台詞で、You are haunted by the gohstという件がある。イーノックは、日本兵で特攻隊のヒロシの亡霊にhauntedされているからだ。友人のいないイーノックは、いつもヒロシと話し、彼とゲームに興じているからだ。
 この世とあの世の通路の中で生きているイーノックと難病に苦しみ文字通り死と隣り合わせに生きているアナベラ、そして死の世界で、死を迎えたその日のままでそこにいるヒロシ。このシナリオは実にうまく図式的で完成している。だが、常に曇天の中で展開するこのフィルムにあって、シナリオと同等に重要なのは、明らかに演出だ。
 たとえば「お前、男みたいな格好しているな」とイーノックに思われていたアナベラと、イーノックがどのように近付いていくのか? 彼らのファーストキスはどうやって行われるのか? 長く連結された貨物列車が鉄橋の上を走る映像が何度も見えるが、それらは彼らの人生とどんな関係があるのか? そして、ヒロシはどうやってイーノックの前から姿を消していくのか? あるいは、そして要するに、イーノックは、彼が取り込まれていた死の世界からどうやって生の方へ舵を切るのか? ガス・ヴァン・サントは、常に彼が見せる映像の運動から距離を置いて、見事なスクリプトを辿りながら、そのスクリプトに明瞭な演出を与えている。
 冒頭のビートルズの『トゥー・オブ・アス』から、ぼくらは小さな田舎町に住むふたりの高校生の男女と、かつて特攻隊で死んだヒロシの姿を静かに見つめるようになり、彼らを取り囲む大人たちの人生に触れていく。restlessなのは、イーノックとアナベラばかりではない。周囲の大人たちもみんな同じだ。