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June 22, 2012

ユーロ2012──(2) グループリーグ総括
梅本洋一

[ cinema ]

 もう明日の明け方から準々決勝だ。結局アップセットはなかった。チェコ対ポルトガル、ドイツ対ギリシャとだいたい見るまえから勝負がついている──もちろん、ゲームだから何が起こるか分からないのだが、こういうゲームは、チェコやギリシャには健闘して欲しいが、PK戦でも何でもいいからポルトガルとドイツが勝利を収めて欲しい──2ゲームの後に、フランス対スペイン、イングランド対イタリアという、これまた最初の2ゲームほどではないが、多くの人たちがスペイン対イタリアの再戦を望んでいる限りにおいて、フランスとイングランドは、やはりここまでとした方が大会として健康だ。そして決勝は、ドイツ対スペインになることをこれまた多くの人々が望んでいるだろう。
 マルチェロ・リッピのアズーリよりも、チェーザレ・プランデッリのアズーリは、それほど魅力的だということだ。おそらくアリゴ・サッキとフランコ・バレージ時代のフラットな4バックから徹底したプレッシングで一時代を画した94年W杯のアズーリ以来の素晴らしいチームだ。
 組み合わせに恵まれてイングランドとフランスもベスト8に残ったが、どちらも特色あるチームにはまだまだ仕上がっていない。就任間もないロイ・ホジソンは、イングランドの伝統的なフォーメーションにそれぞれベストの選手を配し、カウンターを仕掛けることだけが戦術だが、スピードこそないが屈強そのものセンターバック、そしてプレミア最高の選手である、キャプテン・ジェラードの獅子奮迅の活躍でここまで残っている。ほとんどチェルシーのような戦いぶりで、しっかり「ゲームを殺し」ながら、後半勝負に持ち込んでいる。フィジカルと誠実さは昔からイングランドの取り柄だ。だが、対イタリア戦は、もしディ・ナターレが先発すれば、屈強だがスピード不足のセンターバックは裏を取られるだろうし、ピルロにしてもそれが狙い所だろう。
 そしてフランスは?まだまだだ。デシャンがいて、ジダンがいて、ドゥサイイがいて、ブランがいて……という時代のフランスに達するには道はまだ遠い。ナスリやベンアルファの才能は十分に認めるし、クリシ、ドゥビシの両サイドは、かなり良い。だが、センターバックには、出場停止のメクサスの代わりにブランを入れたらどうか(笑)。往年のフランスは、それこそ中盤がポケットビリヤードのようにボールが回ったが、今では、ドゥリブルとルックアップ。それでは速度が生まれない。ドメネク時代のフランスに比べればブランはカリスマ性も申し分ないし、記者会見ではかつての5番だったブランの誠実さが伝わってくる。グループリーグ敗退の南アW杯に比べれば、ここまで来れば十分なのではないか。ブランはスペイン戦では守ってカウンターと言っているけれども、それほど守れないだろう。