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December 15, 2018

『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録』ロバート・アルトマン
結城秀勇

[ cinema ]

 悪いことは言いません。わりと有名なMGMのライオンを見るだけでも損はなし。映画開始5秒で一気に腰砕け。なにやってんだ、ライオン......。
 一度砕けた腰はなかなか戻らない。誰がどう聞いても「ピ◯クパンサー」だよなっていうBGMに合わせてシュワブ家の庭に侵入してくるO.C.とスティッグス。焼いてるロブスターを骨にすり替えたり、シュワブ家の電話でガボンに長距離電話をかけたり、とさまざまな「破壊工作」を行う。なぜこんなことをしているのか理由を説明するにはあの夏にさかのぼらないといけない、といきなり回想形式に。シュワブ氏が経営する保険会社がO.C.のだいぶボケた祖父に年金を払うのを拒んでいるために、O.C.はアーカンソーに引っ越さなきゃいけない(この映画の舞台はフェニックス)、という最低限の情報はわかるものの、あれなんで回想形式になったんだっけ、と思うころにはベトコンベトコン言ってるデニス・ホッパーが出てきて、だからそれドアーズのアレじゃん......ていう音楽が流れ出す。
 と、そのまま無秩序な笑いに身を委ねていてもいいのだけれど、冒頭のガボンへの電話の際に、「こないだの中国との長電話は大変だったから」とボヤくO.C.に「シュワブへの攻撃は徹底的にやれ」とスティッグスがクギを刺していたのを思い出す。その後、シュワブの息子に仕掛ける水飲み場のイタズラで、息子が水を飲もうとした蛇口はかなり見事に爆発するにもかかわらず、スティッグスが「失敗だ。本当は青い水が出るはずだったのに!」と尋常じゃなく悔しがっていたのを思い出す。
 そう、すべては徹底的にやる必要がある。O.C.が引っ越さなくて済む程度では十分ではないし、中途半端に笑いがとれる程度では十分ではない。これはレーガン政権下の映画だからだ(カストロ退陣以後、世界最年長の「独裁者」となることになるガボンのボンゴ大統領に電話をかけるのはちょっと意味がわからないのだが)。30年も昔の話。でも30年経ってどうなった?辺野古に土砂投入?まじふざけんなよ。ほんとに、水道爆破するだけじゃなくて、青い水も出す必要がある。
 だからいま『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録』を見て大いに笑うべきだし、大いに怒るべきだ。ついでに言えば、ダンスシーンもライブシーンもすばらしい。

 そして次の日『パンチドランク・ラブ』を見て、アダム・サンドラーの手の中の引きちぎられた受話器を見て、『O・Cとスティッグス』のロブスター付き受話器を思い出すというのもオツなもんでしょう。


『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録』は12月15日(土)16:00より「傑作?珍作?大珍作!! コメディ映画文化祭」にて上映

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