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February 23, 2006
『激情の嵐』ロバート・ジオドマーク須藤健太郎
[ cinema]
刑期を終えて出所したグスタフを待ち受けているのは、非情で残酷な世界なのだ。2年ぶりに会う恋人はすでにほかに男をつくり、嫉妬に駆られた彼はそれから破滅へと一直線に向かっていく。主演はエミール・ヤニングス。スタンバーグの『嘆きの天使』でも、ディートリッヒに惑わされ、破滅していく男を彼は演じていたが、『激情の嵐』で彼が虜になるのは、アンナ・ステンである。アンナ・ステン演じるアニーアは、男たちの注目を浴びながらもそれらの視線を巧みにかわす「ファム・ファタール」の典型であろう。1931年、ウーファ製作のジオドマーク作品だ。
グスタフが生きるこの映画の非情な世界では、秘密や隠し事のいっさいは許されず、何もかもが隠されることなく光の下に晒されてしまう。グスタフもまた、感化院に入っていた友人の少年を引き取って社会復帰させるのだから、そのような世界を助長する一員となって、そこに巻き込まれていくのだ。感化院から出てきたヴィリーによって、アニーアは新しい情夫をみつけられ、また最終的には彼の密告によって、彼女はグスタフにその浮気を発見されてしまうだろう。嫉妬に狂った彼はその情夫を殺してしまう。再び犯罪に手を染めるグスタフがいくら身を隠そうとも、あっさりと警察にみつかってしまうのもこの世界の掟に従っているだけだ。彼はその約束事から逃れられないだけだ。密告に次ぐ密告。変装して身を偽ることはできても、身を隠すことは不可能なのだ。
黒白の画面は光源を画面内に収めることによって、その明暗のグラデーションを美しいものにしている。街灯やネオンサイン、室内照明、そして廊下の灯り……。このフィルムでは、どの場面でもそのような光源が映されており、白く輝くそれらの光が収められている。野外で開催される祭りのシーンでも、灯りが消えた途端に、花火が打ち上がり、人々の顔を明るく照らし出すのだ。そして、アンナ・ステンの顔も光を浴びて常に明るく輝いている。彼女が身に纏うのは白い毛皮のコート。暗い画面の中で、光を反射して輝いていた。
チラシの解説によれば、「ジオドマークはナチス台頭後、フランスへ、さらに1938年にハリウッドへ渡り、『幻の女』や『殺人者』といったフィルム・ノワールの秀作を生み出した」。しかし、それら2本とも見ていない。シネフィルへの道のりはまだまだなのだ。ちなみに、この特集内で組まれている「ヴィリ・フォルスト小特集」は必見とのこと。是非見に行きたい。
日本におけるドイツ 2005/2006
NFC所蔵外国映画選集
ドイツ・オーストリア映画名作選
東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催中
投稿者 nobodymag : February 23, 2006 10:41 PM
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