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March 14, 2022

『ドン・カルロスのために』ミュジドラ&ジャック・ラセーヌ

[ cinema ]

 この作品はスペインの王位継承権を巡って勃発したカウリスタ戦争を題材とした作品ではあるが、中心に描かれているのは歴史的出来事ではなく、ミュジドラ演じるアレグリアというキャラクターと周囲の人間模様である。アレグリアは副知事を務めており、幼いときから兵士たちに囲まれて育ってきたという環境もあってか、男性社会でも物怖じせずに堂々とした態度で振舞う人物である。しかしそんな勝気で勇ましい彼女にも、繊細で愛情...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 PM

『パリ1900年』ニコル・ヴェドレス

[ cinema ]

C)DR  夜が明ける。陽がオベリスクを、次いでエッフェル塔を照らしパリの街に降り注いでいく。ニコル・ヴェドレスが1909年から1914年のあいだにパリを中心として、フランス各地や諸外国で撮影された700本以上のフィルムを再編集し、ナレーション(クロード・ドゥファン)と音楽(ギイ・ベルナール)を加えて作品化したのが『パリ1900年』(1946)である。冒頭、夜明けのパリにドゥファンの落ち着いた声...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:12 PM

『オリヴィア』 ジャクリーヌ・オードリー

[ cinema ]

C)DR  森は、社会の外延をかたちづくる境界としての役割をはたしながら、それじたいが社会の外部としてあり、どこからが森であるのか、はっきりとした輪郭をもつものではない。映画の冒頭、オープニングクレジットが流れているあいだ、カメラは左から右へと流れていく森の木々を映し出すのだが、社会と隔絶された森の奥の寄宿学校を舞台とするジャクリーヌ・オードリー『オリヴィア』の主題は、こうした境界へと向けられて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:02 PM

『冬の旅』アニエス・ヴァルダ

[ cinema ]

©Ciné-Tamaris  ヌーヴェルヴァーグ の祖母と呼ばれ2019年にこの世を去ったアニエス・ヴァルダは1985年に本作『Sans toit ni loi(屋根も法律もない)』を製作した。日本では『冬の旅』と題して公開され、VHS化に伴って『さすらう女』に題が変更された。  この映画は主人公モナが死体で発見される場面から始まる。彼女は畑に倒れ凍死している状態で見つかるが、警察は彼女の死...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 PM

『奥様は妊娠中』ソフィー・ルトゥルヌール

[ cinema ]

C)DR  『奥様は妊娠中』には、2回の出産シーンがある。1度めは、世界的なピアニストである、妻・クレアが海外ツアーのために乗った飛行機の中で、夫で彼女のマネージャーであるフレデリックが、出産を迎えようとする妊婦の手助けをする。お客様の中にお医者さんはいませんかというアナウンスに応じて、その場になぜか居合わせた彼は、出産間近の女性に励ましの声をかけ、そして無事生まれた赤ちゃんを母親に見せるために...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 PM