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March 16, 2026

WBC 2026準決勝 ドミニカ共和国対アメリカ1-2
隈元博樹

[ sports ]

 予選の4試合、それから準々決勝の試合内容を考えれば、かなりの確率でドミニカ共和国に軍配が上がると思っていた。打順はトップからフェルナンド・タティス・ジュニア、ケテル・マルテ、フアン・ソト、ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア、マニー・マチャド、ジュニオール・カミネロとメジャー屈指の強打者がずらりと線をつくり、1試合平均の得点は10点を越えている。投手陣も先発から救援に至るまで、それほど大崩れしていない模様。言わば「打ち勝つ野球」がこのチームの核を成しており、それは現役時代にMLB通算708本塁打を放ったアルバート・プホルスが監督であることからも何となく察しが付く。さて、一方のアメリカ。順当に勝ち上がってはきたものの、各所属チームとの契約という、WBCのルールとは別の起用方法や球数の制限などが影響し、投打においてつねにベストな状態を組めていないように見える。また予選ではイタリアからの見事なアップセットも食らっており、キャプテンのアーロン・ジャッジを中心としながらも、どこか攻めと守りの核を繋ぐための最後のピースが欠けている印象だった。
 ところが結果はロースコアでアメリカ。もちろん僅差ではある。だけどこのゲームの勝敗を分けたのは、いかに線をつくり、それをどこに置くのかに尽きると思う。野球において線とは、打線のような攻撃だけに当てはまるものではない。もちろん守りにも線は存在し、そのひとつに継投があるのだ。例えば0-1でドミニカリードの4回。これまで無失点だった先発のルイス・セベリーノがアメリカのガナー・ヘンダーソンからホームランを打たれて1-1の同点。すぐさま次のウィル・スミスにレフトライナーを打たれる。ここでセベリーノのボールを捉えられてきていると判断したベンチは、2番手のグレゴリー・ソトにすぐさま交代するのだが、その代わりっぱなにロマン・アンソニーへホームランを献上。これが決勝点になるわけである。
 反対にアメリカは、4回まで要所を締めた先発のポール・スキーンズが一死一、二塁のピンチをつくってマウンドを降りる。ここでサブマリン投法のタイラー・ロジャースにマウンドを託すわけだが、本大会初出場ながら相手のソトを打ち取りダブルプレー。その後もアメリカは8回まで小刻みに3人の投手を繋ぎ、最終回は抑えのメイソン・ミラーで勝ちきることができた。こうして投手の守りをきっかけに生まれた継投の線によって、ドミニカの打線を丁寧に切っていくことができたわけである。もちろんドミニカも、失点した4回以降は失点することなく、最終回に至るまで継投の線を紡いでいた。ただし野球の線という問題において、継投という線のはじまりを先発のセベリーノと受けたソトとのあいだでどこに置くべきだったのか、ということなのである。
 とはいえ、アメリカもまだ本調子だとは思えない。アーロン・ジャッジの後ろを打つカイル・シュワーバーの状態が良いだけに、ボビー・ウィット・ジュニア、ブライス・ハーパーの1、2番に連なる攻撃がクリーンナップの3、4、5番と結節し、下位の打者に至るまでの長い線となるか否か。攻めと守りにおけるふたつの線を並べることができれば、今大会のアメリカにとっての欠けたピースとなり得る気がしている。