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June 18, 2026

FIFAワールドカップ2026 イングランド対クロアチア
梅本健司

[ sports ]

 「電話番号のようなもの」で、それ自体に意味はないが、便宜上、イングランドは後ろから4-2-3-1、クロアチアは3-4-3(あるいは5-2-3)の並び。イングランドはビルドアップ時、DFが4枚のまま横に広がり、時折ボランチ2枚が最終ラインを助けに降りる。両SBはクロアチアの第一プレス隊3枚を超えた位置に構えているため、そこにボールが入るとクロアチアはWBが食いつかざるを得なくなり、そのことで空いた3バックの両脇のスペースをイングランドの快速WGが駆け上がる。さらにワントップのケインがボランチ脇まで落ちてくることで、クロアチアのCBヴシュコヴィッチに自分をマークする/しないの二択を迫り、相手最終ラインの仕事を増やしていく。理屈のうえではこうなる。
 ただし、クロアチアの強度の高いプレスを相手にすると、イングランドは複数箇所で瞬時の判断を成功させなければ、かなり苦しい状況でのパス回しを強いられる。実際、前半を通じてイングランドがショートパスで後方から前進できたシーンは、記憶する限り一度もなかったはず(サイドバックの立ち位置が外に張るだけではなく、ボランチのように振る舞うなどバリエーションを持たせた後半は、きれいに前進する場面も何度かあったが)。
 一方、クロアチアの保持時。3バックはそのまま最終ラインに残り、イングランドはゴードン、ケイン、マドゥエケの3枚で数的同数のプレスをかける。クロアチアの両WBにはSBが対応するためイングランドの背後は必然的に薄くなるが、ライスやヘンダーソンら中盤の選手たちが驚異的なスライドを見せ、クロアチアを片サイドに追い込もうとする。
 14分ごろにクロアチアが決定機に近づいた場面は、後方からのつなぎが起点ではあったものの、右WBスタニシッチが左SBオライリーを抜き、次いでボールを受けた右シャドーのバトゥリナがヘンダーソンを背中で押さえながら半ば反転するという、シビアな1対1を2度クリアしてはじめて生まれたチャンスで、イングランドのプレスを正攻法で崩すのは、やはり容易ではなさそうに見えた。
 唯一34分、クロアチア左CBシュタロのマーク担当であるゴードンが隣のスタニシッチに引っ張られて中のスチッチを空け、カバーに入ったオライリーもスタニシッチを半ば気にしながらのアプローチになったことで、クロアチアが前進しかけた場面があった。ゴードンとオライリーがそれぞれ2人分を抑えようとした結果、マークが一瞬かぶってしまったかたち。ただ、こうした人為的な迷いが生まれる場面はそう多くなく、基本的には両チームとも息の詰まる状況でボールを持ち続ける、落ち着く間もない試合となった。
 立ち位置の話を書いてきたが、こういう試合で重要になるのはむしろ、マンマークで手薄になった相手の背後へのロングボールと、ボールを失った瞬間にいかに素早くカウンタープレスへ移行できるか。イングランドがPK獲得につながるコーナーキックを得た場面も、2点目を叩き込んだコーナーキックの前の場面も、まずロングボールを背後に蹴り、そこからカウンタープレスを仕掛けることでチャンスになっている。後半早々の3点目は2点目とほとんど同じかたちで、ヘンダーソンからクロアチア左サイド背後への一発スルーパスから生まれた。結果的にイングランドの強度は90分間落ちることなく、じりじりとクロアチアが後手に回っていった。
 今大会ここまでのベストゲーム。スピード感、強度ともに、一段次元が違った。ただ忘れてはならないのは、この選手たちがシーズン50試合以上の、ときには中2日で試合が回ってくる過密日程をこなしたうえでこのサッカーをやらされているということだ。今大会というだけではなく、今後のサッカー人生を一層リスクにさらしながら、彼らは全力で走っている。