FIFAワールドカップ2026 ドイツ対コートジボワール
梅本健司
[ sports ]
後方からのビルドアップ時、コートジボワールの両SBは低い位置で幅をとるため、なかなか逃げ場がない状況でドイツのプレスを引き受けることになるのだが、瞬間的なスピードで個人で剥がしてから、今大会で再注目のディオマンデ、マンチェスター・ユナイテッドの右WGディアロ、そしてケシエとウライのIHコンビが長い距離をグングンとドリブルで上がり、チャンスを作り出す。さらにロングボールで前線に蹴り込んで回収する手段も持っているため、ドイツとしては前で捕まえにいけば裏返されるリスクと常に向き合うことになる。意図してそうしているわけではないと思うが、コートジボワールは整備しきれていないビルドアップの配置をむしろ「釣り」として機能させており、細かいファウルを流す傾向のあるレフェリングも重なり、自分たちの強みが活きるオープンな展開を引き寄せていた。
対照的に、ドイツのビルドアップは今大会でもっとも整備されている。右SBのキミッヒ、右CBのター、左CBのシュロッターベックが底で3バックを形成し、左SBのナサニエル・ブラウンがいわゆる偽サイドバックとしてIHの位置まで絞りながら上がる。コートジボワール側からすると、このブラウンと、逆サイドでIH気味の位置に立つパブロビッチ(あるいは途中出場のアミリ)をどう捕まえるかが最後まで整理できず、彼らにボールが入るたびにドイツの攻撃が加速した。1点目はまさにその狙いがはまった場面だったと言えるだろう。
ただ、この試合でドイツが光ったのは、そうした初期配置からのスムーズな可変というよりも、足元に特徴のある選手をフィジカルの強い選手へと少しずつ交代させ、オープンな展開に対応していった点。ウンダフ、ルウェリと何でもできるわけではないが、限定的な状況で輝くタレントを有効活用した。もちろんその前提として、ディオマンデやディアロを下げた後もアディングラやペペといった、一線級とまでは言えないながらも疲弊したSBには十分脅威となるカードを切り、コートジボワールが火力を落とさずにオープンな展開で戦い続けたことも見逃せない。得点のタイミングが劇的だったというだけではなく、互いが互いを見ながら試合に変化を加えようとし続けたことで、90分見られる試合になった。