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July 15, 2026

FIFAワールドカップ2026 フランス対スペイン
梅本健司

[ sports ]

 スペインの見事なビルドアップについては、言葉であれこれ説明するより、2点目ペドロ・ポロの得点につながった56分30秒あたりの場面を見るのが一番わかりやすい。あえて言葉にするなら、スペインの8番ファビアンが最初はピッチ左側にいて、そこからゆっくり右へ流れていき、フランスの8番チョアメニを引き寄せる。すると、チョアメニ本来の持ち場にスペースが空き、そこに入れ替わるようにスペインの10番オルモが顔を出して前進に成功している。とはいえ、この試合でもっと大事なのはそもそもそのポゼッションがどう始まったかという点。この場面もまず、スペインがハイプレスでフランスのGKまでボールを追い込み、ロングボールを蹴らせたところから競り勝ってポゼッションを始めている。華麗なパスワークの土台には、地味な仕事をどれだけ丁寧にこなせるかがある。
 目算だが、スペインがこの試合で獲得したゴールキックは11回。そのうちショートパスから始めたのはわずか4回(リプレイと被って映っていない場面もあるが、映像の裏で鈍い音が聞こえていたので、おそらく蹴り出している)。しかも、その4回のうち2回はすぐにロングボールを前線へ蹴り出している。試合を締めにかかる時間帯だった8〜11回目を除いても、7回中3回は直接ロングボール。結局蹴り出した分も含めると、ショートパスから前進を試みたのはたったの2回だけ。加えてゴールキックの場面だけでなく、スペインのGKウナイ・シモンはバックパスを受けても、そこから繋がずに大きく蹴り出す場面が少なくなかった。
 スペインがポゼッションサッカーで圧倒できたのは、足元の高い技術や、相手の斜め後ろを取り続ける絶妙なポジショニングもあるだろうが、何よりどの位置からならショートパスを繋げるかというチーム内の共通認識がはっきりしていたからだと思う。
 前の試合でフランスが見せた限定的なハイプレスは、まさにモロッコのゴールキックの場面で仕掛けられたものだった。あそこでモロッコは息が詰まり、半ばボールを捨てる形になってしまった。一方スペインは、そもそもゴールキックから繋ごうとしないことで、フランスにハイプレスの機会自体を与えなかった。前に蹴り出し、素早いトランジションでボールを回収、そこから少し前寄りの位置でポゼッションを始める。ここまでいくと、フランスもハイプレスではなく、エンバペとオリーセを縦に並べたミドルブロックで対応することになる。途中、前に潰しに行けるCBサリバが離脱してしまったのも大きいが、フランスはその位置でスペインをうまく捕まえきれなかった。
 試合後、スカイスポーツのインタビューで元アーセナル監督のヴェンゲルは、フランスはもっとコンパクトにブロックを組むべきだったと振り返っている。個人的にも、ボランチを2枚ではなく3枚に増やすことは有効だったと思う。たとえば結局は挫折したものの、ノルウェーが対イングランド戦でやっていた4-5-1のブロックは参考になったのではないか。とはいえ、そうした意見はフランスがここまで同じ形で相手を圧倒して勝ち上がってきたという事実を軽視してしまうものでもあるだろう。もしグループステージでノルウェーと3節目ではなく2節目に当たっていたら、本気のボール保持とぶつかることになり、今日直面した課題をもう少し早く見つけられていたかもしれないが、フランスにとって今大会で自分たちを見直すきっかけは、結局セネガル戦の前半くらいしかなかった。