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August 14, 2026

『A Window of Memories』監督 清原惟、配給 amieeeインタビュー 「誰が見てもなにかを思いだす」

[ interview ]

 清原惟自身のふたりの祖母、砂子旭子さんと清原磋智子さんの言葉を文字起こしし、共同制作したテキストを、清原と同年代の女性が朗読する形式で制作された『A Window of Memories』。本インタビューでも語られている通り、同じ時代を別の場所で生きていたはずのふたりの言葉が響き合い、それはどこかで自分も経験したこと、感じたことがあるような、不思議な感触を持って私たちのもとに届く。
 そして『A Window of Memories』を配給するのは、同時代を生きてきた、清原を含めた3人の女性たちだ。みんな映画が好きで、映画を観たり、つくったり、修復したり、届けたりしてきた人々。3人は旅行に行ったり一緒にデモに行ったりする友達どうしで、グループLINEの名前は「フェミニスト連絡網」。今回は、3人で「amieee」として配給を行うことになった経緯や、彼女たちにとっての『A Window of Memories』を語っていただいた。

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ーー今日のインタビューには、監督の他にこの映画の配給であるamieeeの他のお二方も同席してもらっているので、せっかくなのでまず『A Window of Memories』という作品を自分たちで配給することになった経緯をうかがえますか?

清原惟 この作品は2023年の愛知芸術文化センター・愛知県美術館のオリジナル映像作品として、助成金をもらって製作したもので、すごく少人数のスタッフでつくり、自分でプロデューサーも兼ねています。私が作品の権利を持っているのですが、それはつまり、作品をどのように公開していくかということも、私に責任があるということです。完成してからも、なかなか公開に向けて動き出すことができなかったのですが、昨年、山形国際ドキュメンタリー映画祭に出品して、そこで上映を見てくれたBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下さんからお声がけいただき、本格的に動き出した感じです。
 これまで公開した2本の劇場長編は、配給・宣伝の方々がいて、私も意見を言いつつ、基本方針は委ねる感じでやっていました。ですが、昨年Bunkamura ル・シネマさんで特集上映を組んでいただいた際に、劇場さんと共同で自分も配給・宣伝のような立場で関わらせていただいたので、そこで学んだことも踏まえて、『A Window of Memories』という作品に相応しい公開の仕方があるんじゃないかと、ここにいるふたりの友人に声をかけて一緒にやることになりました。

ーーおふたりはどのような経緯で共同配給を行うことになったのでしょう?

riko  惟ちゃんと出会ったのは21歳のときだよね。大学でクリフストフ・シュリンゲンジーフの上映会をやったときに、そこに来てくれた。その 1週間後に武蔵美の卒制の上映があって、『ひとつのバガテル』(2015)を見たんだよね。 で、ビビって。 なんかすげえ、こいつは同い年なのにこんなおもろい映画撮るんだみたいな感じで思って。
 でまあそれから就職したり、惟ちゃんは藝大大学院行ったりしつつ友達だったんだけど、『すべての夜を思いだす』(2022、以下『すべ夜』)のときに、私の子供の頃の映像を使ってもらったんだよね。多摩ではないけど、私もニュータウンで育った子供だったから。それでパンフレットにも原稿を書かせてもらったり、ZINE「 NASTY FILM vol.3 惟ちゃんとわたしのすべての夜(の100分のいちのよる) 惟ちゃんとリコ/数えきれない冒険」をつくったり。
 そのときは配給宣伝には関わってなかったから、いろんな紆余曲折を近くで見ていただけだったけど、そのとき思ったこともふまえて、今回声をかけてもらったから、いろいろできることがあるなと思って。

やないももこ 私はふたりほどすごく昔からの付き合いというわけじゃなくて。『すべ夜』の公開直前くらいかな、すごく仲良くなったのは。私はニューフレンズっていうか、大人になってからのフレンズって感じ。
 これまで、石原海監督の『ガーデンアパート』(2018)『重力の光』(2022)の公開に関わったり、彼女と「水平都市」っていうイベントをやって主に映像作品のプログラミングを組んだり、とにかくどこにも属さずインディペンデントでみたいな感じでやってきたので、その経験も活かせるかなと思いました。とはいえもちろん、今回は最初から自分たちで配給してみて初めての試みが多いんですが、私がいままでインディペンデントに関わってきたことの一個の集大成な気はしています。

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ーー今回の作品の製作規模が小さいから、という話がありましたが、監督ご自身のふたりのおばあさんが被写体であるということも、この配給の形態に関係がありますか?

清原 ありますね。 やっぱりおばあちゃんが出てることで、そもそも公開していいのかという迷いがあって、完成してもなかなかすぐ公開に向けて動く気にはなれなくて。 でも、山形で上映したときに、東京のおばあちゃんが来てくれたんです。山形国際ドキュメンタリー映画祭は、いろんな観客の方から直接感想をもらったり、オープンなやりとりがあるんですね。おばあちゃんもなんか恥ずかしさもあるとは言いつつも、やっぱり表情を見るとすごく嬉しそうで。

riko  「女優よ」って言ってたよね(笑)。

清原 想像したより楽しんでるなと、それを見て思って。静岡の方のおばあちゃんはどう思ってるかわからないんですが、出してほしくないとかはなくて。この作品を世に出すことは、おばあちゃんたちにとってもポジティブな側面があるんじゃないかなと。 それで、せっかくお話もいただいたし、公開に向けて重い腰を上げられた、というのはありました。
 本当に個人的な話から出発した映画だということもあって、誰か配給や宣伝の方にお願いして大々的に広めていくというよりは、やっぱり手作りで地道にやっていく方が合うんじゃないかとは思いました。周りの人に相談する中で、配給会社プンクテのおふたりが「チームでやった方がいいんじゃないか」と言ってくださってこのふたりに声をかけて。もともとこの3人で「フェミニスト連絡網」っていうLINEグループの活動を......。

riko  別に活動はしてないけど(笑)。でも友達で。

やない  遊びに行くし、デモも行くし。でも別になんかさ、それは普通のことじゃん。

清原 重要なのは、フェミニストだからというより、大切にしてるものがすごくふたりと共通してる。

やない  そう。親友でもあり、社会に抵抗する中で連帯してる仲間のような。

清原 同志。仲間。チームみたいな側面もあって、ただ友情とかいうことだけじゃないことが、私にとってものすごく大きい。

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ーーおふたりが最初に『A Window of Memories』を見たときの感想をうかがえますか?

やない  私が一番最初に観たのは三鷹のSCOOLでやってた上映会かな。惟ちゃんの映画ってなんて言うんだろうな。人同士の関係がクロスするんじゃなくて、平行の位置で隣り合うみたいな感じがする。ことわざで、「袖すり合うも多生の縁」っていう言葉があるじゃないですか。どの作品も一貫してそういう姿勢を感じる。『すべ夜』では3人の女性が袖すり合うような関係性だったし、『わたしたちの家』(2017)に関しては生きている時代が違う人たちが時空を超えて隣り合うみたいな感覚があると思う。

ーー『A Window of Memories』のおばあさんたちも、当たり前ですけど、子供時代はまったく見ず知らずの他人だったわけですしね。

やない  なんかそれってすごく大事なことだなと思っていて。もちろんおばあちゃんだからこういう映画を撮ったわけだけど、でも血のつながりが、とかそういうことじゃなくて、個人としてのおばあちゃんに出会うというか。おばあちゃんと孫という役割を通してじゃなく、個人が個人のまま、関係し合いながら生きていくみたいなことって、いまの社会を生きる上でもすごく大切なことだと思う。

riko  『A Window of Memories』はドキュメンタリー的な要素があるけど、それまでの惟ちゃんの映画にもずっと、キャラクターじゃなくて演じてる人そのものに対する興味があると思ってたんだよね。基本的に映画に出てくるキャラクターって、その映画のために存在する人物じゃん。でも『ひとつのバガテル』で最初に惟ちゃんの映画を観た時に、そこから解放されてる人たちがいるって思ったの。『ひとつのバガテル』主演の青木悠里ちゃんとも後々友達になったんだけど、『ひとつのバガテル』に出てくるあき(青木悠里さんが演じた役名)って悠里ちゃんでしかないじゃん。

清原 悠里ちゃんでしかない(笑)。

riko  惟ちゃんは、役割ではなく現実にいる誰かに対する興味みたいなものがずっとあるのかなと思っていて。 それは『わたしたちの家』でも同じで、家もひとつの登場人物として、家というものに対する興味があるんだろうなと思った。それに、出てくる女の人も映画のための装置として動くキャラクターではなく、それぞれが勝手にリニアに生きている人々、みたいな印象を受けてそれがすごく新鮮だったんだよね。
 だから『A Window of Memories』でおばあちゃんたちを撮ることも、フィクションとドキュメンタリーみたいなアプローチの違いっていうより、惟ちゃんの映画にずっとあったものから続いてると思う。
 自分はシネフィルだから、いままで見てきた映画の男性中心的な視点に影響されてる部分はあったと思うんだけど、惟ちゃんともシネフィル的な映画を一緒にいっぱい観てきて、話してきた上で、そういうメイルゲイズな映画が描いてこなかったところにこの人の映画の面白さはあるのかなと思って。

やない  私は『わたしたちの家』は存在は知っていたけど当時見てなくて。『すべ夜』の公開前後に『網目をとおる すんでいる』(2018)みたいな短編とか、惟ちゃんの過去作を立て続けに観た気がする。自分がなんか日頃考えてることとかが、映画の中でものすごく具現化されてる気がして、とても親近感を持ったのを覚えてる。

riko  惟ちゃんは、『すべ夜』以降は実際の歴史とか実際にいた人たちの証言に基づいて映画をつくってるよね。だからより立体的になってきた感じがしてる。『すべ夜』ってさ、 2時間くらいの映画だけど、 2万年くらいの時間の話じゃん。 それに加えて、『A Window of Memories 』では横の広がりが出てきたと思った。同じ時代を生きた旭子さんと磋智子さんの話を聞いているんだけど、全然違う世代の私たちも「そういうことがあった」と共感するような話がたくさんあるし、「そういうことがあった」っていうことをいままで誰も聞いてこなかったから、「そういうことがあった」ことを誰かが語り直すことで、広がりが生まれる。『すべ夜』で過去・現在・未来と縦に広がった時間が、さらに一本の線的な歴史だけじゃなくて、横にも広がっていったなって思ったのが『A Window of Memories 』だった。

ーー『すべ夜』には2万年前の話が出てきますけど、『A Window of Memories 』は約90年くらいの話ですよね。でも、後者の方がさらに広がりを感じる?

riko  いまの話になったよね。 いま私たちが生きてる時代をみんなが生きてきたんだっていう感覚があるというか、横のつながりみたいなものを感じた。

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清原 おばあちゃんふたりに最初にこの映画を撮りたいと話したとき、ふたりとも、自分の話なんか聞いてなにがおもしろいのか、そんなの映画になるわけないってすごく言ってたんです。自分の話に価値がない、みたいなことを言うので、そんなことないよって繰り返し伝えたんですけど。 ふたりとも普段から話し好きだし、聞けば一気にバーッと話をしてくれるタイプなんですけど。

ーー映画が完成して公開に至る中で、おふたりの作品に対する気持ちは変わっていたりするんでしょうか?

清原 どうなんでしょうね......。恥ずかしさとかはやっぱりあるんだと思うんですけど。でも周りの人が見て、いろんな感想やフィードバックを受けて意識が変わってきてる気はしますね。

やない  『A Window of Memories』を、近所の居酒屋のぜんぜん映画好きとかじゃないシニア層の常連さんたちにおすすめしたら劇場に見にきてくれるって言ってたんだけど。見る人の年代によってそれぞれ、おばあちゃんだったり、お母さんだったり、あるいは自分の過去だったりするんだけど、自分の歴史に関係のある誰かのことを思いだす映画だよね。誰でも記憶にアクセスできる、窓みたいな映画なんだよなあって。

riko  そうだね、窓だね。誰にでも開かれてる。誰が見てもなにかを思いだすんだろうな。

やない  たぶんみんなの中に『A Window of Memories』みたいなものは元々あって、それが映画になったって言う方が自然だと思う。これまでこういう語りをできなかった人にとっては、この作品がなにかを語り始めるきっかけになるというか。

riko  解放運動だ。

2026年7月18日、北砂
聞き手・構成:浅井美咲、結城秀勇


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『A Window of Memories』
2023年/日本/67分
監督・編集 清原惟
出演 砂⼦旭⼦、清原磋智⼦、⼩⼭薫⼦、坂藤加菜
テキスト 砂子旭子、清原磋智子、清原惟
構成 岩﨑敢志、太田達成、清原惟
撮影 寺西涼、清原惟
音響 岩﨑敢志
助監督 太田達成
音楽 よだまりえ
エグゼクティブ・プロデューサー 越後谷卓司
プロデューサー 清原惟
企画 愛知芸術⽂化センター/製作 愛知県美術館
配給・宣伝 amieee
絶賛公開中


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清原惟〈きよはらゆい〉
17歳のときはじめて友人と映画をつくってから今まで、土地やひとびとの記憶についてのリサーチを元にした映画や映像をつくりつづけている。監督作『わたしたちの家』と『すべての夜を思いだす』がそれぞれベルリン国際映画祭フォーラム部門をはじめとした様々な国際映画祭で上映される。2025年には東京・Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて映画館では初となるレトロスペクティブ上映を開催。

riko〈りこ〉
清原さんの友人。zine『NASTY FILM』発行人。
16歳のとき、ファスビンダーにあこがれてドイツ語を学ぶことを決め、ベルリンでクリストフ・シュリンゲンズィーフについて勉強をしていた。いまは、映画の修復をする会社で働きながら、公開の機会の少ない作品、女性が安心してみれる映画・映像作品を紹介する『NASTY FILM』というzineを作っている、34歳。

やないももこ
1990年生まれ、おひつじ座、清原さんの友だち