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May 31, 2023

カンヌ国際映画祭報告(5)すべては「単純さ」へ

[ cinema ]

 第76回カンヌ国際映画祭が5月28日に閉幕した。審査員長を務めたのは、昨年『逆転のトライアングル』(2022)で2回目のパルムドールを受賞したスウェーデンのルーベン・オストルンドであった。ジョナサン・グレイザーはグランプリ受賞作品の『The Zone of Interest』によって、アウシュビッツをコンセプチュアルで奇怪に再解釈し、ビジュアルと音楽が与える分かりやすい衝撃を通して審査委員長の心...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:00 PM

第76回カンヌ国際映画祭報告(4)カトリーヌ・ブレイヤ『L'Été dernière』ーー欲望の純粋さ

[ cinema ]

道徳的な芸術は、人間を醜くし、萎縮させます。しかしながら、芸術が道徳的であるとすれば、人間を飾り立て、華やがせ、そして、変容させるようなやり方で見つめるからなのです。 カトリーヌ・ブレイヤ  カトリーヌ・ブレイヤ『L'Été dernière』は、長年、映画制作から離れていた彼女のカムバックとなる作品だ。イザベル・ユペールを主演に迎えた『Abus de faiblesse』(2013) では、脳出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:52 PM

May 23, 2023

第76回カンヌ国際映画祭報告(3)ワン・ビン監督とともにーー『鉄西区』に魅せられて

カメラマン、前田佳孝インタビュー《後編》

[ cinema ]

ーーその後、北京電影学院の監督科に入学されます。ワン・ビン監督との出会い、彼と共犯関係を結ぶようになった経緯を教えてください。助監督として参加した『収容病棟』(2012)がワン・ビンの現場に関わった最初の作品ですね。 前田佳孝(以下、前田) 映画美学校に行ったことで映画への道は前進しましたが、大学へ進学するための勉強はまったくしなかったので、当然のように受かるはずもありませんでした。親からは「どう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 PM

May 21, 2023

第76回カンヌ国際映画祭報告(2)ワン・ビン監督とともにーー『鉄西区』に魅せられて

カメラマン、前田佳孝インタビュー《前半》

[ cinema ]

今年のカンヌ国際映画祭の公式コンペティション部門に、長尺のドキュメンタリーであるワン・ビン監督『Jeunesse』が異例のノミネートを果たした。これまでの彼の作品とは違ったある種の軽さを持ち、官能性を感じる作品だが、このフィルムに日本人のカメラマンである前田佳孝が関わっていることはあまり知られていない。ワン・ビン監督の第二の「眼」として本作で共犯関係を結んだ前田氏に話を聞いた。 ーーワン・ビン監督...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:23 PM

May 18, 2023

第76回カンヌ国際映画祭報告(1)第76回カンヌ国際映画祭開幕

[ cinema ]

 第76回カンヌ国際映画祭(5月16日ー27日)が開幕した。今年の公式コンペティションの顔ぶれも、ほとんど変化がない旧世界の様相を見せている。すでに、パルムドールを受賞し、ほぼ自動的にカンヌ入りする常連監督たち(是枝裕和『怪物』、ナンニ・モレッティ『IL SOL DELL'AVVENIRE』、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『KURU OTLAR USTUME』、ケン・ローチ『THE OLD OAK』)や...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:07 PM

May 14, 2023

『それでも私は生きていく』 ミア・ハンセン=ラブ

[ cinema ]

 ある場所からある場所への移動が省略せずに描かれる。ミア・ハンセン=ラブの映画といえばまずそれである。日差しが反射したパリの街路。画面奥から歩いてくるサンドラ(レア・セドゥ)は路地を曲がり、ある外門の扉を開く。鮮やかな緑が生い茂る中庭を通って、アパートメントの階段を登る。その先にある緑色の扉。そこから展開される、扉の向こうにいる父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)とのダイアローグによって、サンドラに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:09 AM

May 10, 2023

『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』金子由里奈

[ cinema ]

 言葉にすること、そしてそれを声に出して他者に向けることがいかに疲れることなのか、また「誰か」に対する危険がいかに伴うことなのか。いつもは忘れがちな、自分の思いを言葉にして他者に発するのはあまりにも難しいということを、この映画は脚本=文字に起こし、俳優に発話させて、思い出させてくれる。それだけでもなんと尊いことなのだろうか。  主人公の七森(細田佳央太)は恋愛感情がない。  「いい感じ」になった同...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:53 PM

May 9, 2023

『レッド・ロケット』ショーン・ベイカー

[ cinema ]

 西海岸に面したエンターテイメントの都・ロサンゼルスからメキシコ湾に浮かぶ石油化学工業で賑わうテキサス州の港町へ。主人公・マイキー(サイモン・レックス)を乗せたバスは、故郷・ガルベストンの地に彼を運ぶ。着の身着のままのマイキーはバスを降りると、脇目もふらず、10年近く疎遠にしていた妻のレクシー(ブリー・エルロッド)とその母・ソフィーが暮らす平屋を訪れることになるのだが、バスを降りてから家に着くまで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:30 PM