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February 29, 2024

『瞳をとじて』ビクトル・エリセ

[ cinema ]

 何しろビクトル・エリセの31年ぶりの新作長編なのだからと心して劇場に足を運び、上映が始まって10分も経たないあたりだと思うが、スクリーンを見ていて何やら奇妙だぞと感じていた。それは、映画内映画『別れのまなざし』において、撮影途中で失踪した俳優フリオの演じる男が老齢の男と会話するシーンでのことだ。背の低いテーブルを挟んで2人の人物が向かい合うショットが繋げられているのだが、老齢の男が正面よりやや右...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:59 PM

February 28, 2024

『作家主義以後 映画批評を再定義する』須藤健太郎

[ book , cinema ]

   本書ほど、書き手の揺らぎを隠そうとしない映画批評の書籍も珍しい。 『作家主義以後――映画批評を再定義する』には、2017年から2023年の半ばにかけて著者・須藤健太郎により多様な媒体へ寄稿された映画評のほか、講演録や対談が収録されている。本書での須藤は映画を語るにあたって自身の戸惑いや不安を隠すことがない。しかしそれらの戸惑いや不安は須藤の判断によってそこに残され、読者の前に示されてもいる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:13 PM

February 26, 2024

『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』ジャック・リヴェット

[ cinema ]

 この作品の舞台であり、原題の一部ともなっているピク・サン・ルーという山には伝説があるのだという。三兄弟がひとりの女を愛し、しかし彼女が愛しているのが三人のうち誰なのかを聞くことがないまま、兄弟たちは十字軍に従軍することになる。やがて戦場から戻った彼らを待っていたのは、最愛の女性の死の知らせだった。三兄弟は隠者となり、それぞれモン・サン・ギラル、モン・サン・クレール、ピク・サン・ルーと後に呼ばれる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:45 PM

February 23, 2024

『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』セルジュ・ゲンズブール

[ cinema ]

 相当な映画である。エグくて下卑ていて、それと同時にかっこよく、天上の真善美と純粋なエモーションがある。  よくもまあこのキツい一発を文化ファッションアイテムふうに流通させていたものだ。1976年の映画だが日本初公開は83年、リバイバルされたのが1995年だった。筆者がリアルタイムに記憶し・鑑賞したのは95年のほう。その頃そしてそれ以降もふとカジュアルに、『ジュ・テーム〜』いいよね〜、みたいなおし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:33 PM

February 22, 2024

『熱のあとに』山本英

[ cinema ]

 階段を駆け下りる女の足元から映画は始まる。その足元は半ズボンにサンダルで、部屋着で飛び出してきたままの勢いであることが分かる。次のショットでは、下着姿の金髪の男がエントランスの床に血塗れで横たわっている。奥の扉が開くと、そこから階段を駆け下りてきた女が現れる。フルサイズであらわになる女の白いTシャツは血に赤く染まっており、この二人の男女の間に一体何が起きたのか、明確なことはすぐには分からない。女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:00 PM

February 14, 2024

『ゴースト・トロピック』 『Here』バス・ドゥヴォス監督インタビュー「Refinding normal, refinding everyday」

[ interview ]

 現在絶賛公開中の、『ゴースト・トロピック』 『Here』。公開にあわせて来日したバス・ドゥヴォス監督に話をうかがった。  前日に日本に着いたばかりだというドゥヴォス監督。ブリュッセルという都市のダイバーシティ、16mmフィルムで切り取られる夜の闇、目の前にあるのに小さすぎて気づかない苔、名前をつけること、といった話を矢継ぎ早に聞いているうちに、いつのまにか窓の外はすっかり陽が暮れていた。そして、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:56 PM

February 9, 2024

梅田哲也展「待ってここ好きなとこなんだ / wait this is my favorite part」

[ art ]

 最近私は日記を書き始めた。日記に書くことで、私の記憶は蓄積される。そして、数日前または数か月前の日記を読むと、私は当時の記憶を取り戻したかのような気分になる。日記は、私の存在の連続性を保証してくれるかのような安心感を与えてくれる。そんなとき、福尾匠さんの日記を題材にした授業を受け始めた。一番初めの授業から、私の日記観は崩れ落ちた。日々を連続的に生きる私が、分散的で不連続な私を生産することが日記な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 PM

February 5, 2024

『熱のあとに』山本英監督インタビュー

「生きること、愛することが地続きにあるように」

[ cinema , interview ]

『小さな声で囁いて』の山本英による新作『熱のあとに』が公開されている。本作は実際の事件を元にしたオリジナル作品であり、橋本愛演じる主人公の沙苗を中心とした「愛」を巡るフィルムだ。彼女の抱く愛とは、けっして一概に理解できるものではないかもしれない。しかし、私たちが生きる現在を振り返った今、自然に芽生え、また素直に訴えかけられてくるものとして見る者を鋭く惹きつけることになるだろう。脚本のプロセスを始め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:14 AM

February 3, 2024

『女性として生きること』『都会の名もなき者たち』他 チェチリア・マンジーニ

[ cinema ]

 『都会の名もなき者たち』『ステンダリ 鐘はまだ鳴っている』『マラーネの歌』という3本のピエル・パオロ・パゾリーニがテキストを担当した短編を見ていて、あれ、テキストが語ってることと映像が語ってること、なんかすげえ違うぞ、と思った。  たとえば、『都会の名もなき者たち』。テキストは、社会構造から必然的に生み出された「恐るべき子供」たる不良少年たちだが、しかしながら彼らの中には優しさと残酷さ、無謀さと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:35 PM