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November 27, 2021

『リトル・ガール』セバスチャン・リフシッツ

[ cinema ]

 フランス北部のセーヌ県。いかにもフランスの郊外といった風情の街並みには、古びた石造の塀と、家々を区切る無愛想な金網が目立つ。しかし、少し行けば、野原があり、草木が目に付く。そんな、ありふれたヨーロッパの田舎街に7歳になる少女が住んでいる。名前はサシャ。彼女はバレエ教室に通っている。教室の少女たちはみな一様に、青地に白い花柄などが施された華麗な衣装を着ているが、サシャだけはその身体を覆い隠すような...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:27 PM

November 23, 2021

『夢のアンデス』パトリシオ・グスマン

[ cinema ]

 雷鳴なのか、地鳴りなのか、遠くから響いてくる音と共に画面は白んでいき、やがて雲を抜け山脈が姿を現す。チリ出身で彼地の歴史と記憶にまつわる作品を手がけてきたパトリシオ・グスマン監督の新作『夢のアンデス』はこうして始まる。太平洋を前にして、チリはその背をアンデスの峰々に預けている。そびえ立つ山脈は、それぞれに地層を持ち、人々がまだいない頃の記憶すら留めている。グスマンは、自らの作品の随所に人間の歴史...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:12 PM

November 12, 2021

『記憶の戦争』イギル・ボラ

[ cinema ]

  ベトナム終戦から40年以上が経過しようとしている。ベトナム戦争時における韓国軍による民間人虐殺の真相究明を求める市民平和法廷が始まろうとするカットで、映画は幕を開ける。原告として法廷に立つ赤いスカーフをした女性の緊張と不安の表情が目に焼き付く。    ベトナム戦争時、韓国はアメリカの同盟国だったため、多くの韓国兵がベトナムに派兵された。そこでは当時9000人あまりの民間人の虐殺があったという説...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:05 PM

November 10, 2021

『TOVE/トーベ』ザイダ・バリルート

[ cinema ]

 地方に住んでいると都心で公開された映画がこちらの劇場でかかるまで長くて3カ月ほどのタイムラグがあったりするので、ツイッターなどで見る世間の盛り上がりに追い付けずもどかしい気持ちを抱えたまま鑑賞することがしばしばある。『TOVE/トーベ』は10月に東京で上映が始まっているが、私が住む石川県では1ヶ月遅れて11月の上映となった。  本作はムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンが画家として苦悩し、出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 PM

November 9, 2021

第34回東京国際映画祭日記③

[ cinema ]

2021/11/6 カルトリナ・クラスニチ『ヴェラは海の夢を見る』©Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA CREATIVE FACTORY ◆土曜日夕方の銀座。もう日は暮れているが、街はおしゃれをして闊歩する人でいっぱいである。そんなキラキラした大通りを曲がり、シネスイッチ銀座のある銀座ガス灯通りに入る。少し通りの様子が落ち着いただけでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 PM

November 7, 2021

第34回東京国際映画祭日記②

[ cinema ]

2021/11/2 ソイ・チェン『リンボ』©2021 Sun Entertainment Culture Limited. All Rights Reserved ◆プロデューサーがウィルソン・イップ、音楽・川井憲次に主演ラム・カートンときっちり揃えてくれたソイ・チェン監督の『リンボ』を、香港映画ファンが拒めようか。ドニー・イェンの『Raging Fire』が観られない恨みも手伝って前のめりによみ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:00 PM

November 6, 2021

『三度目の、正直』野原位

[ cinema ]

 かねてから子供を持つことを望んでいたがその機会に恵まれなかった春は、再婚した夫の連れ子が留学に旅立ったのをきかっけに里親になることを考え始めていた。そんな時彼女は、偶然道で倒れていた青年を見つけて保護し、心的なショックが要因で記憶を失ったと考えられる身元不明の彼を半ば強制的に引き留め、母と息子のような関係を築こうとする。春は、この青年の意識が戻って何よりもまず、彼に、生人(なると)という名前で呼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:59 PM

November 5, 2021

第25回アートフィルム・フェスティバル 小特集「出光真子の実験映画とビデオ・アート」

[ art , cinema ]

TIFFとフィルメックスの同時開催を横目に見つつ名古屋に向かい、愛知芸術文化センターの第25回アートフィルム・フェスティバルへ。この上映会はすべて無料なので、何本か見ると往復のバス代(早めに予約したので片道2350円)の元は取れる計算。 今回は「特集 映画の声を聴く」と題して、これまで製作された同フェスティバルのオリジナル作品(草野なつか『王国(あるいはその家について)』や小森はるか『空に聞く』な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:29 AM

November 3, 2021

第34回東京国際映画祭日記①

[ cinema ]

2021/10/30 クリント・イーストウッド『クライ・マッチョ』© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved ◆夜勤バイト明けの朝、慣れないメトロの乗り継ぎと日比谷の駅ビルの贅沢な空間使いに狼狽混じりの興奮でクラクラしたので、少し歩いて有楽町駅近くの喫茶店に入った。わりかし高級な類の店で朝一番だったこともあり、優雅なクラシック音楽と赤地のソファを独り占...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:13 PM

November 2, 2021

『劇場版 きのう何食べた?』中江和仁

[ cinema ]

 一応説明すれば、「きのう何食べた?」は、2007年に講談社のモーニングに連載され同年に単行本の1巻が出てから現在まで18巻が出ているよしながふみ氏による人気漫画で、40歳代のゲイカップル、筧史朗(弁護士。親と親しい人物以外にカムアウトしていない)と矢吹賢二(理容師。カムアウトしている)の生活を、料理上手でまめな筧史朗がつくる日々の献立、食生活から描く物語で、2019年に全12回のドラマとして放映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM