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April 29, 2019

「次元のあいだ/Between Dimensions」石場文子

[ art ]

 何枚もの写真が壁にかけられている。ある1枚の写真には、物干し竿にかけられたピンチハンガーが挟む、靴下やハンカチーフが記録されている。このような日常的光景を写した《Laundry #6》には、靴下が黒く縁取られていること以外、何ら変わったところは見受けられない。翻って、一般的な写真に存在する客観性が、ここでは薄められている、ともいえるだろう。本作は石場文子によって制作された。彼女は、物を黒く縁取る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:02 PM

April 20, 2019

『僕らプロヴァンシアル』ジャン=ポール・シヴェラック

[ cinema ]

潜在的なる上昇 決然とした叙情性によって、ジャン=ポール・シヴェラックはパリに上京してきた学生の周囲に集まる情熱的な映画の学生たちの集団を描く。若者たちの理想についての非常に繊細な肖像画。 『僕らプロヴァンシアル』は、何世紀も前から、フランスの若者たちが、毎日、ほぼ同じような興奮と同じような幻想を抱いて行ってきた、きわめて小説的、ロマネスク的である次のような場面で始まる。故郷(この場合はリヨン)...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:31 AM

April 19, 2019

『ユニコーン・ストア』ブリー・ラーソン

[ cinema ]

 『キャプテン・マーベル』や初監督短編の『Weighting』といった作品のブリー・ラーソンを見ていると、過去を背負いながらも、素早く大胆に動き回る様が印象的だと思った。ただ、それ故に彼女は周囲の人間を置いてけぼりにし、孤独に向かっている気もする。彼女の長篇処女作である『ユニコーン・ストア』においてもまた、やはり素早く大胆に動き回る彼女が主演をつとめている。
   冒頭、幼い少女の映像がいくつか流...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 PM

『殺し屋』マリカ・ベイク、アレクサンドル・ゴルドン、アンドレイ・タルコフスキー 

[ cinema ]

 すべてをあきらめ坐して死を待つことへの暗い欲望と、それに対する反発としてようやくあらわれる生への希求。  ソヴィエト国立映画大学での課題として、1956年に当時24歳のアンドレイ・タルコフスキーがマリカ・ベイク、アレクサンドル・ゴルドンという学生と共同で監督した、約二十分の短編映画『殺し屋』には既に後年タルコフスキーが反復し深化させる主題が含まれているようにも見える。  日本ではこの短編は02年...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:24 AM

April 17, 2019

『愛がなんだ』今泉力哉監督インタヴュー

[ cinema , interview ]

関係の現状維持を目的にしてしまう人の物語に魅かれる 「体裁とか、不謹慎とか。友情とか、家族とか。生活とか、夢とか。社会とか、身分とか。そういう類いのものは"好き"という気持ちの前では無力だ」──今泉力哉の長編第三作『こっぴどい猫』の主人公が書いた小説『その無垢な猫』にあるこの一節は、角田光代の原作を映画化した彼の最新作『愛がなんだ』の主人公テルコのためにあるのかもしれない。職務を怠慢でクビになろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

April 14, 2019

『反復された不在』ギィ・ジル

[ cinema ]

 «Le temps, le temps, le temps...»この物語の主人公であるフランソワの口から漏れ出す「時」という言葉。彼は過ぎ去っていく「時」に囚われ翻弄されていて、すべてが自分の手からすり抜けていってしまい、自分がどこに向かっているのかわからないと言う。人々の顔のクロースアップが多用されているように、街で見かける顔や体をすべて自分のものにしたくなると彼が言うのは、自分の中で失われ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:18 AM

April 12, 2019

『バンブルビー』トラヴィス・ナイト

[ cinema ]

 はるか彼方の惑星を巡るロボットたちの宇宙戦争が、結局は地球上での肉弾戦に落ち着くのであれば、これまで「トランス・フォーマー」シリーズを牽引してきたマイケル・ベイの息吹を少なからず感じるだろうし、未知なる生命体とティーンエイジャーたちとの密かな交流が描かれるならば、ベイとともにクレジットを連ねてきたスピルバーグの影をそこに見出すこともできるだろう。しかし、『バンブルビー』が過去のシリーズと一線を画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:48 AM

『ワイルドツアー』三宅唱

[ cinema ]

 山口情報芸術センター[YCAM]のバイオラボを舞台に、山口市の周辺の草木を集めるワークショップが行われる。スタッフの「もしかしたら新種が見つかるかもしれないよ」という言葉に、突然ワークショップの行われている一室の世界が広がりはじめる。採取した草木がDNA鑑定にかけられて解析が進められると、そこで一気に身の回りにあるものが最先端の技術とつながる。身の周りにあるものがもっと大きな世界に、そして最先端...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:47 AM

April 6, 2019

『沈没家族 劇場版』加納土

[ cinema ]

 粗さも目につくし、私的ドキュメンタリーの過去有名作に比べればマイルドだと思ったが、多くのひとに観られてほしいドキュメンタリーだ。  簡単に説明すれば、シングルマザーが子育てするのに保育人を募り、その呼びかけで集ったひとたちが共同生活をし、ちゃんと子どもも育った。その育った子本人が母親と当時のその生活を捉えてみた、というドキュメンタリーだ。   出来事の起こりは、本作の監督加納土氏が生まれたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:43 AM

April 5, 2019

『運び屋』クリント・イーストウッド

[ cinema ]

 あまりにも一瞬で12年という時が過ぎて、孫の少女が大人の女性に変わったほかは、俳優たちの身体すら時の流れに追いつけなかったかのようだ。いくら子供の成長より遅いとはいえ、さすがに78歳と90歳はもうちょい違うんじゃねえか、とも思うが、時は勝手に過ぎ去っていくけど人間はそうそう変わらないということだけを念押しするかのように、あの意味不明な「ジェームズ・ステュアートに似てる」発言は繰り返される。  時...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:13 PM

April 3, 2019

『ジェシカ』キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル

[ cinema ]

 「オーファン」と呼ばれるはぐれ者たちは、その呼び名の通り孤児であるがゆえに自らの内にある暴力性に抗うことができずに、犯罪を繰り返すのだという。どこからともなく現れたジェシカと呼ばれる女性が彼らをまとめあげ、「オーファン」たちを処刑するためにつくられた「特殊部隊」に抵抗する組織をつくりあげたのだという。こうした設定のようなものはボイスオーバーによってさらりと語られるのだが、いったい「オーファン」た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:09 PM

April 2, 2019

『グッドバイ』今野裕一郎

[ cinema , theater ]

 分断された川の向こう側に男がいる。その男がこちら側に戻ってきたときには記憶を失っている。あるいは電話の向こうにいる相手には見えないはずの風景を伝えようとする女たち。分断された川に限らない、「ここ」と「よそ」を思考することが『グッドバイ』のテーマではあるだろう。  それは今野裕一郎がバストリオというパフォーマンスユニットで試みてきたものでもあった。『わたしたちのことを知っているものはいない』(20...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:34 PM

April 1, 2019

『ジェシカ』キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル

[ cinema ]

 閑静な住宅街に建つ一軒の家と、血を流した青年、そして彼の救護に駆けつける戦闘服姿の一団。そんな異様な光景とともに物語は幕を開け、穏やかな女性の声によってその背景が語られていく。そこでは、親の愛情を知らずに育ち心に「怪物」を抱えた孤児たちが大人たちから命を狙われていて、彼らのなかには映画の冒頭で登場する青年のように絶望して自ら命を断とうとする者もいる。社会に対して危険分子となりかねない孤児たちの命...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:27 PM

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