journal

« April 2022 | メイン | June 2022 »

 1  |  2  | 全部読む

May 30, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(6)カンヌ国際映画祭受賞結果を巡ってーー「映画」は抹殺された

[ cinema ]

 第75回カンヌ国際映画祭が28日に閉幕した。審査員とプレスの評価が一致しないのは当然のことだが、今年の受賞結果はイエジー・スコリモフスキ『EO』を除くと醜悪極まりないものとなった。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続き、リューベン・オストルンド『Triangle of Sadness』に二回目のパルムドールが授与されたのだ。一度となく二度までも、凡庸な過激さとわかりやすい悪趣味で冷笑主義的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:09 PM

第75回カンヌ国際映画祭報告(5)リトアニアの新しい才能、ヴィタウタス・カトゥクス監督インタビュー

[ cinema , interview ]

ヴィタウタス・カトゥクス(Vytautas Katkus)は撮影監督としてキャリアを重ねた後、2019年カンヌ国際映画祭批評家週間短編部門に初監督作品『Community Gardens』がノミネートされた。ソビエト時代に形成された農村共同体に生きる人々は、ノスタルジーの漂う現代とは異なった時間、空間を生きている。そこに帰京してきた主人公が覚える、彼と家族、共同体との強い違和感。とりわけ、父親や地...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:11 PM

May 28, 2022

『夜を走る』佐向大

[ cinema ]

 我慢しきれずにオンライン試写で見てしまった映画を、公開を待って劇場で再見する。洗車機の門を通って映画の中へと入っていく冒頭、自宅のパソコンでは感じられなかったささくれだった音響に揺さぶられながら、そういえば『ランニング・オン・エンプティ』(2010)もこうした武骨な音の響きの映画だったんじゃなかったかなと、細部はまったく思い出せぬまま、感覚だけが生々しくよみがえってくる。  見ているあいだは2時...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:38 PM

May 27, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(4)

[ cinema ]

アルノー・デプレシャン『Frére et Soeur (Brother and Sister) 』  公式コンペティション部門にノミネートされた、フランス人監督による今年のフランス映画はかなり低調だ。『クリスマス・ストーリー』の系譜である「憎悪」の主題の延長線ともされたアルノー・デプレシャン『Frére et Soeur (Brother and Sister) 』は、分かり易い言葉と振る舞いに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

May 25, 2022

『夜を走る』佐向大×足立智充インタビュー「レボリューションする身体」

[ cinema , interview ]

絶賛公開中の佐向大監督最新作『夜を走る』。職場の同僚ふたりがひとりの女性と出会うことで、平穏な日常生活から転落していく。そんな発端から、やがて映画は予測もつかない展開を見せていくのだが、その中で文字通りの変貌を繰り返す主人公の秋本。見たことがないほど異様なようでもあり、しかし我々自身にどこかよく似たところもあるような、秋本という人物はどのように造型されたのか。彼を演じた足立智充と佐向大監督に話...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:22 PM

May 22, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(3)それぞれの開幕上映作品を巡ってーー作家性は遠い彼方へ

[ cinema ]

ミシェル・アザナヴィシウス『Coupez!』  開幕上映作品に華やかさが求められるのは周知の通りだが、今年はその裏に作家性を微塵も感じない作品ばかりが並んだ。公式部門の開幕作品『Coupez!』の監督であるミシェル・アザナヴィシウスは、『OSS 私を愛したカフェオーレ』、『アーティスト』や『グッバイ・ゴダール』と、オマージュとは言い難い歪な模倣を繰り返してきた。その彼が、公式部門の開幕上映作品『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:53 PM

May 20, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(2)スペインの新星、エレナ・ロペス・リエラ監督インタビュー

[ cinema , interview ]

2015年、カンヌ国際映画祭監督週間にノミネートされた短編『Pueblo』から七年を経て、エレナ・ロペス・リエラ監督、初長編『El Agua (The Water) 』が同部門でとうとうお披露目される。思春期の少女は、自然との強い関係性のもと謎と欲望を抱えながら、社会の重圧に立ち向かい、自由と独立を求め、若い「女性」へと変貌していく。これまでに監督した短編『Los que desean (The ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:15 PM

May 19, 2022

『too old to camp』只石博紀+杉本拓

[ art , cinema ]

 冒頭、カメラは地面に対して90度になったまま。ごつごつした大小の岩が点在する川原で、何人かの男女がスズランテープをひっぱって地面に図形を描いたり、棒で岩を叩いたりするパフォーマンスをおこなっている。昆布状の太い紐だか布だかが束ねられた、神社で使う御幣のようなものも出てくる。カメラは無造作に運ばれ、演者たちがフレームに入っていようがいまいが、かまわずに回り続け、不意に地面に置かれてはピンボケの地表...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:30 PM

May 18, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(1)第75回カンヌ国際映画祭開幕

[ cinema ]

第75回カンヌ国際映画祭が5月17日に開幕した。パンデミックを経た2019年以来、3年ぶりの通常開催となる。レオス・カラックス『アネット』と比較すると、強烈なまでに商業色が強い『カメラを止めるな!』の仏版リメイク、ミシェル・アザナヴィシウス監督『Coupez!』で幕を開けた。映画祭前にウクライナ映画協会からのクレームで当初の『Z (comme Z)』から題名は変更されたものの(「Z」はロシアの支...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:48 PM

May 15, 2022

『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』チャン・イーモウ

[ cinema ]

チャン・イーモウ映画の主人公たちはいつも必死だ。『初恋の来た道』のチャン・ツィイーは酷寒の村道で恋焦がれる相手の帰りを待ち続けるし、『妻への家路』のチェン・ダオミンは認知症で記憶を喪いつつある妻に自身の存在を気づかれないまま寄り添い続ける。常軌を逸するくらい頑固で、観る者を戸惑わせるほど必死で、しかしそこがいい。だから『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』で、ニュース映画に1秒だけ映る娘の姿を見る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:29 AM

May 14, 2022

『距ててて』加藤紗希

[ cinema ]

 些細なことがきっかけとなり、ひとり、またひとり、アコ(加藤紗希)とサン(豊島晴香)の住む家に人々が訪れる。例えばそれは鹿児島から上京した不動産屋の新卒社員である田所(釜口恵太)だったり、宛先を間違えて送った友人からの手紙を待ち続けるフー(本荘澪)だったり、他所の台所を使って華麗に手料理を振る舞う彼女の母(湯川紋子)だったり......。またサンの職場の先輩であるともえ(神田朱未)の家では、別れた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:29 PM

May 10, 2022

『明日は日本晴れ』清水宏

[ cinema ]

 1948年の公開以来、74年ぶりの上映とされる『明日は日本晴れ』は、『蜂の巣の子供たち』に続く、清水宏の戦後第二作である。国立映画アーカイブ研究員の大澤浄さんが、集まった人たちにおそるおそる聞く。 「皆さんのなかに、当時この映画を見たという方はいらっしゃいますか」  一瞬、会場が緊張する。手を挙げる人はいなかった。気持ちがほぐれて端々に笑顔がもれ、そして一気に、上映にむけて気持ちが引き締まる。 ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 PM

May 6, 2022

『バンビ:ある女の誕生』セバスチャン・リフシッツ

[ cinema ]

 揺らぐ波形が画面いっぱいに広がる。波を切って進む客船が青い海に白い泡を立てているのだ。客船の甲板にはベージュのコートに身を包み、薄いブルーのスカーフを巻いた人物がいる。海の向こうを見るその人物は、サングラスをかけ、うっすらと微笑みをたたえているようにも見える。彼女の名はマリー=ピエール。フランスでは「バンビ」という愛称で知られている。このひとりの女性の孤高とも言える肖像を『リトル・ガール』(20...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:20 PM

May 5, 2022

《第17回大阪アジアン映画祭》『徘徊年代』チャン・タンユエン(張騰元)

[ cinema ]

 戦後の状況下を説明する冒頭のフッテージに引き続き、どこからともなく「彼らにとっての幸せな時代が いつか訪れると思っていた」という女性の声が聴こえてくる。この「幸せな時代」とは、レンガを無骨に積み上げていく男性の姿とシンクロすることからも、当初はそうした時代を希求する彼についての物語だと思っていた。だがその推測は、ほどなくして間違いであったことに気付く。なぜなら『徘徊年代』は、異国の地で自らのフィ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 AM

May 4, 2022

《第17回大阪アジアン映画祭》『遠くへ,もっと遠くへ』いまおかしんじ

[ cinema ]

 いまおかの作品は、その気の抜けたような世界観や緩い文体とは裏腹に、毎回生命と愛の叡智を感じさせられ、思わず涙が溢れるのだが、今回も例に洩れずであった。  小夜子(新藤まなみ)は将来を描けない夫婦生活に倦怠を感じており、離婚を考えている。友人からのアドバイスで離婚後の住居を探している最中に、彼女は不動産屋に勤務する男、洋平(吉村界人)と知り合う。二人は距離を縮めていくが、やがて小夜子は洋平が突然失...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:09 PM

全部読む |  1  |  2