journal

« November 2018 | メイン | January 2019 »

 1  |  2  | 全部読む

December 22, 2018

『犯罪王ディリンジャー』マックス・ノセック

[ cinema ]

......そもそもわれわれは信仰の対象とするほど多くの「B級映画」を見てはいないのだ。いったい誰が、マックス・ノセックを懐古しうるだろう。 蓮實重彥『ハリウッド映画史講義』  マックス・ノセック監督『犯罪王ディリンジャー』(45年)についていくつかのことごとを記す。  本作は1933年、34年にアメリカ中西部で銀行強盗や脱獄を繰り返したギャング、ジョン・ハーバート・ディリンジャ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 PM

December 15, 2018

『モスクワへの密使』マイケル・カーティス

[ cinema ]

 最近観ることのできた映画、マイケル・カーティス監督の『モスクワへの密使』(1943年)についていくつかのことごとを記したい。  が、そのまえに聴くたびにムカッとくるDA PUMPの曲"USA"についてちょっと書く。もうこの曲の、最初に意味を成した歌詞になる"オールドムービー観たシネマ(シネマシネマ)"というところでアホかっ!とキレているのである。どんだけお前らがアメリカ映画を観たっちゅうねん。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:34 AM

『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録』ロバート・アルトマン

[ cinema ]

 悪いことは言いません。わりと有名なMGMのライオンを見るだけでも損はなし。映画開始5秒で一気に腰砕け。なにやってんだ、ライオン......。  一度砕けた腰はなかなか戻らない。誰がどう聞いても「ピ◯クパンサー」だよなっていうBGMに合わせてシュワブ家の庭に侵入してくるO.C.とスティッグス。焼いてるロブスターを骨にすり替えたり、シュワブ家の電話でガボンに長距離電話をかけたり、とさまざまな「破壊工...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:32 AM

December 14, 2018

『パンチドランク・ラブ』ポール・トーマス・アンダーソン

[ cinema ]

 郊外に住むなんてことない男の物語がこれほど幸福なのは、他でもなく作家によるこの街とそこで営まれる日常への愛があるからだ。ロサンジェルスの郊外にあたるサンフェルナンド・ヴァレーはハリウッドの北側、サンタモニカ山脈を越えた向こう側の街。ここは西海岸でありながら周囲を山々に囲まれているために、海すらも見えない。平坦なグリッド状の街区に敷かれただだっ広い道沿いには低層の倉庫や商業施設、建売住宅が殺風景に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:14 PM

『僕の高校、海に沈む』ダッシュ・ショウ

[ cinema ]

 ある集団の権力関係について一番敏感なのは、集団に入って来たてのルーキーでも、その中である程度の地位を築いたベテランでもなくて、いつだって2年生=ソフォモアなのかもしれない。この作品の主人公ダッシュ(ジェイソン・シュワルツマン)は2年生として通学初日のバスの中で、親友アサーフ(レジー・ワッツ)に向かって、今日からおれたちは2年生なのだからもっと後ろの方に座ろう、と呼びかける。通学バスの座席は、車内...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:36 PM

December 13, 2018

『BOY』タイカ・ワイティティ

[ cinema ]

 マーベル・コミックから映画化された「マイティ・ソー」シリーズの中でも、タイカ・ワイティティが監督した3作目の『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、過去の2作(『マイティ・ソー』『マイティ・ソー ダーク・ワールド』)とはやや異なる様相を呈している。それは荻野洋一さんが「Real Sound映画部」(「"ユニバース"過剰時代における、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の役割」) で指摘しているように...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:38 PM

December 10, 2018

『花札渡世』成澤昌茂

[ cinema ]

 たとえば、東南西北で構築される麻雀のように、空間的に世界を模したゲーム及びそれを使ったギャンブルは数あれど、花札のように時間的に世界を構築したゲームは古今東西においても珍しいものなのではないかと思う(正確には花札自体はゲームではなく、『花札渡世』においても花札を用いた各種のゲームが登場するわけだが)。各札に割り振られた植物が12の月を示す花札は、『花札渡世』において時間経過を視覚的に示す効果的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:56 AM

December 9, 2018

『花札渡世』成澤昌茂

[ cinema ]

 あるとき環状七号を富田克也氏の運転する車で運ばれていくなか、駄弁りで聞いた話。当時こちらは映画館のスタッフで、富田氏相澤虎之助氏ら空族の作品を上映していて日常つきあいがあった頃。私がフィルムの映写をずっとやっている身であることを富田氏が、そういうあまり他の人間がやってない技術で世を渡っていけるのはいいね、と買いかぶったところから、そういえば、と続けて、隠れカジノのルーレットディーラーの話をしてく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 PM

『ア・ゴースト・ストーリー』デヴィッド・ロウリー

[ cinema ]

 本作が愛の可能性について肯定し、それ故に感動を呼び起こすのだと捉える事は、死が愛する人との無慈悲な別れを意味し、それによる喪失の絶対性から逃れたいと希望する私達にとって、得たいと望む感想だと思う。しかし、死者が纏ったシーツと、引き延ばされたり縮められたりする時間感覚や離人的世界体験は、逆に、死後の執着と喪失に晒される続ける鬱々とした絶望を私達に見せ、愛が失われない事の感動よりもむしろその事の空...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:44 AM

December 8, 2018

『バルバラ セーヌの黒いバラ』マチュー・アマルリック

[ cinema ]

 彼女は鼻歌交じりで爪弾いていたピアノをやめて、オープンリールテープの録音を開始する。ピアノは再び奏で始められ、彼女の歌がそこに重なる。電話機を取り上げながら誰かに電話をかけた彼女は、窓辺に近づきながら月蝕について話をし......、そして彼女がテレビの前に移動したあたりではたと気づく。これって劇中劇の撮影シーンだったよな、と。  彼女が気軽な調子の歌をやめるのは「カメラが回ります」という合図のせ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:06 PM

December 6, 2018

『ヘレディタリー/継承』アリ・アスター

[ cinema ]

 アニー(トニ・コレット)のつくったものだと後にわかるドールハウスの一室にズームアップしていき、それが息子ピーター(アレックス・ウォルフ)の実際の部屋へと切り替わる。壁紙やタンスや椅子がなぜか不自然なはめ込み合成なのが微妙に気持ち悪いのだが、その気持ち悪さの中には、ズームで寄る前には家全体の配置がドールハウスの断面で示されていたはずなのに、ズームアップからつながれた息子の部屋が、さっきまでのドール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:58 PM

December 4, 2018

『アウトゼア』伊藤丈紘

[ cinema ]

 ここに「いくつかの声、ひとつの夢、島/映画『Out there』のためのシナリオ」と題された映像がある。ふたつのプロジェクタによって映し出されたどこかの風景は、壁の上で少しズレた状態で重なり合い、それぞれに一定の時間が経てば新たな場面へと切り替わっていく。やがてふたつの映像はひとつだけ投写され、いっぽうはシナリオらしきト書きとセリフの文章を読み上げる誰かの姿へと変わり、そこで発せられる声に重なる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:51 PM

December 1, 2018

『現像液』フィリップ・ガレル

[ cinema ]

 高い位置に据えられたベッドの上にうずくまる子供の影が、懐中電灯の光でグロテスクなほど巨大に、壁に投げかけられる。右側下方にパンをしていけば、呆然としている女がいる。男が部屋に入ってきて、彼女に酒のようななにかを飲まそうとするがうまくいかない。長いタバコをくわえさせるが、彼女が吸わないのでマッチを近づけても火はつかない。そこでより長いタバコを彼女にくわえさせ、反対側を男がくわえて、ちょうど真ん中に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:55 PM

全部読む |  1  |  2