October 19, 2025
はじめに床に座った観測者(田中陸)が、床のコンクリートの窪みをいじっていた。その日は雨が降って湿った生っぽい匂いが漂い、来場者の多くは植物を連れていたから、会場のムリウイには雑多な触感が立ち込めていた。こちらの感覚も普段より少し鋭敏になって、観測者の裸足がコンクリートに触れるヒヤリとした感覚が伝わるようだった。それでも観測者がしばらくいじっていた窪みは彼がそうしていなければ私は気づかなかっただろ...
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October 17, 2025
『OVER THE AURORA』収録曲 1.「OVER THE AURORA」 2.「UCHIAKE HANABI」 3.「去年の夏は一日」 4.「Oh My Basket!」 5.「余計な勇気」 ーー今回のEPの成り立ちについてうかがえますか? ゆっきゅん 去年は『生まれ変わらないあなたを』(以下『生またを』)の制作のために、6月ぐらいにたくさん歌詞を書きました。 アルバムを撮り終えて、9月...
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October 15, 2025
松田春樹 結城秀勇 午前はヤマガタ・ラフカットに参加した。ヤマガタ・ラフカットは公募で選出された15分の映像(未完成で制作途中の作品でもよい)を見て、参加者同士で感じたことなどを話し合うための場。山形ドキュメンタリー道場などでも実践されていることがこの映画祭でも体験できる。ただ映画を見るばかりでは疲れてしまうと思い、参加してみた。ヤマガタではこのような参加型のワークショップやイベント、シンポジ...
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安東来 松田春樹 結城秀勇 『烤火房で見るいくつかの夢』はSF叙事詩みたいだ。その集落、一族には歴史がある。神話的な起源と移動の歴史。日本統治下、国民党時代の同化の変遷。そして、伝説の男がいる。タイヤル族出身の監督の実家には村でただひとつ残った烤火房(プラーハン)があって、火をくべる窯があるその小屋で、孫と祖母、親族、村の人らが集っておしゃべりする。一周忌を迎えた亡き祖父は容易に話せないほど厳...
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October 13, 2025
浅井美咲 安東来 金在源 松田春樹 結城秀勇 朝一で観たのは『彷徨う者たち』。カリブ海に浮かぶフランス海外県グアドループの都市・ポワンタピートルに住む人たちを映した作品だ。この土地は、かつては植民地として略奪され、近年は再開発が進む場所なのだそう。ポワンタピートルに建つ建物は、ある程度の高さがあって骨組みがしっかりしているものも多いように見えるが、塗装が剥がれていたり、所々腐って錆びていたり、周...
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浅井美咲 安東来 金在源 山形到着。2日前に新幹線のチケットを取ろうとしたらつばさの席が全然空いていなくて、東北新幹線で仙台まで出て、仙山線で山形まで来るという謎の経路で来る羽目になった。今日は雨が降っていて肌寒く、駅からホテルまではそこまで遠くないといえど、キャリーケースを引いてGoogleマップを確認しながら、傘をさしつつ十数分くらい歩くのは鬱陶しかった。 山形に着いて最初に観たのは、イ...
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October 12, 2025
安東来 梅本健司 金在源 山形初日、新幹線で11時頃に着いて、腹ごしらえと一服のためオリオンカフェへ。安くておいしいキーマカレーセットに満足して、会場へ向かった。 『愛しき人々』は、チリの刑務所内で女性たちが携帯で撮影した映像をもとにしているという。冒頭では、その映像を何らかの意図(読み落としたのか、はっきりとはわからなかった)で保護するため、紙に印刷したと示される。終始、携帯の縦長の画角に...
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October 11, 2025
梅本健司 金在源 オープニング上映はダイレクト・シネマ短編集。上映前のマーク・ノーネスさん、生井英考さんによる解説が素晴らしかった。 丁寧な内容はもちろんのこと、ノーネスさんがフレンドリーな調子で話す英語を、生井さんがただ訳すのではなく、自分の言葉として再構成し、フリースタイルな感じで言い直していたのが印象的だった。その掛け合いから、「アメリカン・ダイレクト・シネマ」というプログラムが、しっか...
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October 3, 2025
複雑な人生を送る人として向き合う
パトリシア・マズィ監督の映画は、あらすじとしては簡潔にまとめられる物語であっても、どこか掴みどころのない複雑さを帯びているように思える。そうした印象を抱くのは、語りの形式が複雑だからではなく、具体的な描写を迷いなく淡々と積み重ねていくことによって、言葉にし難いさまざまな側面が立ち現れてくるからだろう。今回は『サターン・ボウリング』を中心に、そうした細部がどのように生み出されているのかを伺った。 ...
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