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November 18, 2015

『約束の土地』アンジェイ・ワイダ
隈元博樹

 引き攣った顔の連続が、スクリーン越しに押し寄せてくる。カメラのクロースアップがそれを助長するかのように、時代の潮流に揉まれた人々の表情が、およそ40年の時を経てもなお刻まれている。舞台となる19世紀末のウッチは、世界でも有数な繊維工業地帯として栄華をきわめ、さらにはドイツ、ユダヤ、ポーランドによる民族と文化の入り混じる只中にあった時代だ。だからこのフィルムが描くウッチには、民族の多様性があり、貧...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 PM

November 10, 2015

『岸辺の旅』黒沢清
梅本健司

僕らと映画とその間  瑞希が言うように、瑞希と優介には違いなんてないのではないか。死んだように生きていている瑞希が、突如思いつき白玉を作っていると、生きているかのように死んでいる優介が帰ってくる。「たぶん、身体はカニにでも食べられてるだろーねぇ」と言いながら白玉を食らう優介と、「そう」と平然と答える瑞希は、3年ぶりに再会した夫婦であるのだが、それが生死を超えた再会には見えない。もしかしたら二人とも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

November 6, 2015

『タンジェリン』ショーン・ベイカー
常川拓也

デュプラス兄弟が製作総指揮で携わる『タンジェリン』の舞台となるLAのクリスマス・イヴは、暖色の太陽が燦々と照っている。セックスワーカーをしているふたりのトランスウーマンと、アルメニア移民のタクシー運転手を中心に、掃き溜めのようなストリートが全編iPhone5Sでゲリラ的に撮影されているが、それによってショーン・ベイカーは街に溶け込むことに成功しているように思える。まるでラップをスピットするかのよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

November 2, 2015

『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー
高木佑介

よせばいいのにロベール・クライン(=アラン・ドロン)は自分と同じ名を持つもうひとりの「クライン氏」を追いはじめる。ナチス占領下のパリでユダヤ人から美術品を安く買い叩くクラインと、ユダヤ人と思しきもうひとりのクライン氏。単純に話の筋だけ追っていくと、出来の悪いミステリーを見ているかのような気がしてくる。自己の分身を追いかけることの不毛さ、あるいはその裏返しとしてのアイデンティティーの再獲得。もしくは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:09 AM

October 31, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
高木佑介

TIFFにてベロッキオの新作を見る。とても奇妙な映画だ。魔女の嫌疑をかけられた修道女に課せられる数々の試練――そしてそれを乗り越えて神への無償の愛を体現する聖女の物語という話で終わるのかと思いきや、全然違った。中世のキリスト教魔女裁判を巡る話が前半部分を占め、後半では突如として現代を舞台にした話が展開される。魔女裁判のくだりでは、敬虔そうな神父たちが修道女に試練を課して、サタンと契約したことを示す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:46 AM

October 30, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
田中竜輔

デヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』ではレディオヘッドの「Creep」のカヴァーが用いられていたベルギーの聖歌隊グループ、Scala and Kolacny Brothersによる本作の主題歌は、なんとメタリカの「Nothing else matters」。選曲がベロッキオ本人によるものなのかどうかはわからないが、ともあれ、「So close, no matter how far...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:55 PM

October 22, 2015

『マッドマックス2』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ジョージ・ミラー
結城秀勇

早稲田松竹で二本立て。やっと見た。 『マッドマックス』も『マッドマックス/サンダードーム』もテレビでは見てるはずだがまったく記憶にないので、あくまで『2』と『怒りのデス・ロード』を比較しての印象だが、メル・ギブソンとトム・ハーディのマックスの違いは、とりあえず仲間になりそうな感じの人たちへの応対の違いにあるんじゃないだろうか。ギブソンは無関心を装った苛立ちみたいに見えるのに対して、ハーディは無関心...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 AM

October 16, 2015

『パウリーナ』サンティアゴ・ミトレ
常川拓也

2015年カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いた『パウリーナ(原題:La Patota)』は、判事の父を持つ弁護士のパウリーナ(ドロレス・フォンシ)が、そのキャリアを捨て、社会奉仕を志してアルゼンチンの都会から生まれ故郷の田舎町へ帰るところからはじまる。誰かの人生のためになるべく、そこで暮らす貧しい若者たちへ現代の民主的な権利などを教える教師となった彼女だったが、しかし、同僚女性の家でワイ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:14 PM

October 9, 2015

『黒衣の刺客』ホウ・シャオシェン
結城秀勇

フィルムによる撮影・上映ではなく、デジタルによる撮影・上映でのみ可能になる映像のあり方があるんじゃないのか、と数日前に書いたばかりだが、『黒衣の刺客』がまざまざと見せるのは、とりあえずフィルムで撮っておけば、あとはデジタルのポスプロで作れない画面なんてない、という圧倒的な事実だ。フィルムで撮影しさえすれば、この世に存在するあらゆる映像はつくりだせる、そんな断言にも似た力強さーーそう呼ぶにはあまりに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:14 PM

October 5, 2015

『アカルイミライ』黒沢清
結城秀勇

『岸辺の旅』を見ていてすごく気になったのは、浅野忠信と一緒にいないときの深津絵里の生活が、極端に彩度の低い画面で映し出されていることだった。とくに中盤の、旅を中断して東京に帰る場面。ほとんど灰色と言ってもいいような色調で、旅の間に枯れ果てた鉢植えの植物が画面に映る。そのとき、なんだかとてつもなく取り返しのつかないことが起こったような、取り返しもつかないような途方もない時間が経過したような、そんな気...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:55 PM

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