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September 24, 2017

『望郷』菊地健雄
結城秀勇

この作品を最初に見たとき、なにかもっと大きなものの一部が描かれている、という印象を受けた。それは全体で6つの連作短編からなる原作のうちの、2短編の映画化という事情によるものかと思い、湊かなえの原作を読んでみた。だが、本来それぞれがまったく別々に独立した物語として書かれている原作を読んでみても、その大きな全体像が見えたわけでもなかったし、そもそもひとつひとつの短編がなにかもっと大きなものの一部をなし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:57 PM

September 3, 2017

『甘き人生』マルコ・ベロッキオ
中村修七

 ベッドに眠る少年の耳元で「たのしい夢を」と囁いた母親は、羽織っていたローブを脱いで部屋を後にする。未明になって、眠りについていた少年は、父親の叫び声と大きな炸裂音によって目を覚ます。家に入り込んできた親戚たちによって少年は囲まれるが、大人たちは適当な嘘をついて母親が彼の前から姿を消したことを誤魔化す。 この間に、母親の死という出来事が発生している。のちに母親の死が落下と関係するものであると明らか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:08 PM

August 25, 2017

『パターソン』ジム・ジャームッシュ
隈元博樹

 冒頭から真っ先に思ったのは、STANLEYのランチボックスになりたいということだった。それは工具箱にも似た重厚なフォルムに魅力を感じたわけでなく、たんなる変身願望の欲に駆られたわけでもない。この映画に登場する薄緑色のランチボックスになりさえすれば、この映画の主人公に訪れる些細な時間やできごとに、他のどの人物よりも身近な存在として立ち会えるのではないかと思ったからだった。  朝は決まった時間に目を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:49 AM

August 3, 2017

『夏の娘たち〜ひめごと〜』堀禎一
結城秀勇

二度見たら、一度目よりも(あくまで量的な)理解が増えるだろうかと思ったが、いやあ、清々しいまでに一切そんなことがなかった。冒頭の病室からすでに無際限に増殖していく血縁地縁のネットワークについては、一度目に見た時点で理解し得ることはほぼ理解していたことがわかっただけだったし、初見で心をつかまれたあのカットとカットのつなぎやアクションとアクションの間あるいはアクションそれ自体に存在する「速さ」について...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:39 PM

August 2, 2017

『20センチュリー・ウーマン』マイク・ミルズ
結城秀勇

ようやくこの映画を見て、ようやくタイトルの示す「20世紀の女性」が複数形であったことを知る。 スーパーマーケットの駐車場で派手に炎上するフォード・ギャラクシーに被さるようにしてはじまるドロシア(アネット・ベニング)のモノローグが、1924年に生まれた彼女は40歳で息子を出産したことを告げる。世紀の3/4を生きたこの女性(後に彼女は1999年に亡くなるということがわかる)が、ああ日本語タイトルでいう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:21 PM

June 25, 2017

『牯嶺街少年殺人事件』エドワード・ヤン
中村修七

『牯嶺街少年殺人事件』は、ひとつの時代状況を丸ごと掴もうとするスケールとともに、緻密な構図のショットと的確な演出によって作られた傑作だ。そして、言うまでもなく、我々の時代が共有しうる最も偉大な映画のひとつだ。この映画には、世界がある。ひとつの時代があり、多くの人々が暮らす都市があり、異なる集団の間における争いがあり、ある家族の生活があり、友人たちの交わりがあり、恋人同士の関係がある。約4時間にわた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:07 PM

June 12, 2017

ここには何もない −−第70回カンヌ国際映画祭報告
槻館南菜子

受賞結果 パルムドール: ルーベン・オストルンド『The Square』 監督賞: ロバン・カンピヨ『120 Beats per minutes』 主演女優賞: ダイアン・クルーガー(ファティ・アキン『In the Fade』) 主演男優賞: ホアキン・フェニックス(リン・ラムジー『You were never really here』) 脚本賞: ヨルゴス・ランティモス『The Killin...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:24 PM

May 21, 2017

『パーソナル・ショッパー』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

このフィルムのクリステン・ステュワートはとにかく片付けをしない。というよりも、自分のために用意したものを使う素振りさえない。コーヒーを入れてもビールを開けてもほとんど口をつけぬまま、片付けもせずテーブルに放置していってしまう。彼女は何かしらを自らのものにするという様子は微塵も見せない。すでにこの世を去った兄について聞かれ「私たちは霊媒(メディウム)なの」と語る彼女は、自らの実体をもって何かを成し遂...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:13 AM

May 4, 2017

『幸せな時はもうすぐやって来る』アレッサンドロ・コモディン
渡辺進也

イタリア映画祭2017で上映されている、アレッサンドロ・コモディンの長編2本目となる『幸せな時はもうすぐやって来る』は、森を舞台にいくつかの物語が展開される。何かから逃れるように森の奥深くに分け入るふたりの男が、川で遊んだり、飢えをしのぐために罠を仕掛けたりして食べ物を探し求める物語。白い雌鹿に求愛する狼が人間の女性と恋に落ちたという伝説が人々の口から語られ、狼による家畜の被害が起きている最中に、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:15 PM

April 19, 2017

『未来よ こんにちは』ミア・ハンセン=ラブ
中村修七

『未来よ こんにちは』におけるイザベル・ユペールは、せかせかと歩き、パタパタと走る。小柄で華奢な体つきのユペールが細い腕と脚を動かして忙しなく動き回る姿が素晴らしい。彼女は、動き続けることで時間の流れに対処しているかのようだ。 ユペールは、思いがけない出来事に何度も不意撃ちされる。早朝に老いた母親からの電話で起こされ、勤め先の高校で生徒たちによるストライキに遭遇し、疲れて帰宅した後にソファで休んで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:42 PM

March 15, 2017

『ラ・ラ・ランド』デイミアン・チャゼル
田中竜輔

デイミアン・チャゼルはとりあえず「遅れる」ことに囚われた映画作家なのだろう。『セッション』の序盤で、鬼教官フレッチャー(J・K・シモンズ)とのプライヴェート・レッスンに、ドラマーのニーマン(マイルズ・テラー)が遅刻してしまうエピソードを見て、しかしこの遅刻がその後の展開にまったく何も作用しないことを不思議に思っていた。が、要するにあの場面は「こいつは何の理由もなく遅刻する男だ」と印象づけるだけのシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:30 AM

March 9, 2017

『わたしたちの家』清原惟
三浦 翔

ここでありながらも何処か違う世界から届くプレゼントを受け取ること。同じ場所に前後関係もない、ふたつの時間が流れている、という設定だけを聞くとSF/ファンタジー的な想像力に支えられたアナザーワールドもののように思えてくるが、清原惟監督はそうした設定をなにも物語的に回収することはしない。そこで試みられているのは、ひたすらショットの連鎖だけでふたつの世界の関係を問うことであり、その視線は徹底的に映画的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:17 PM

March 2, 2017

『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス
結城秀勇

モロッコっぽさを出そうなんて気は毛頭ないように思える、あの書き割りめいた砂漠にパラシュートで降り立ったマックス(ブラッド・ピット)は、砂漠の道を歩く途中で、自動車が砂埃をあげて近づいてくるのを目にする。それは物語上、マックスをカサブランカに連れていくために遣わされた味方の車なわけだが、自他ともに認める腕利きスパイであるマックスは警戒を怠らず、腰のホルスターのボタンを外し、銃に手をかけたまま近づいて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 PM

February 19, 2017

『息の跡』小森はるか
結城秀勇

なんだか色味が独特だな、と思った。監督本人にインタヴューでそれを聞いてみた(2月末発売予定のNOBODY issue46に掲載)ところ「ちょっと古いHDVで撮ったからですかね......」と戸惑い気味に答えていて、特に意識したことではないと言う。鮮やかではあるがどこかにじんだようでもある画の質感から、2000年代初頭の、デジタル撮影→35mmブローアップされたいくつかの作品のこと(そしてそういう作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 PM

February 13, 2017

『本当の檸檬の木』グスタボ・フォンタン
結城秀勇

冒頭、夫婦が何気なくかわす「おはよう」という挨拶の声の凶暴さに耳を疑う。はじめは会話の音が環境音よりかなり大きくミックスされているということなのかと思ったがどうもそうではない。続く、親戚の少年とともに主人公である夫が川を下る場面でなんとなくわかるこの凶暴さの正体は、登場人物の画面内の位置関係とはまったく無関係に、彼らの言葉と見なされる音が発せられる画面中央の空間がある、ということである。男と少年は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:22 PM

January 6, 2017

『ミューズ・アカデミー』ホセ・ルイス・ゲリン
三浦翔

『ミューズ・アカデミー』という題名から、どんなミューズ論が聞けるのかと真面目に期待をしていれば面喰ってしまう。これはムチャクチャな男の映画である。簡単に説明すれば、大学で文学の授業を開いているピント教授は、現代におけるミューズの探究と言いながら、高尚な理論を並べ立てて女生徒を誘惑(?)していく。舞台は大学でもあるし、とにかく出てくる人がみんな自分の理論を大きな声で相手に向かって喋る。言っていること...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:35 PM

December 31, 2016

『ピートと秘密の友達』デヴィッド・ロウリー
結城秀勇

『セインツ-約束の果て-』のデヴィッド・ロウリーの新作が公開されている、しかもとんでもなく傑作である、と荻野洋一さんから聞き、見に行った。するとその言葉に違わぬ作品で、もうただただ泣けた。 どこかドゥニ・ラヴァンを思い出させる面構えの少年が、裸足で川の水を跳ね上げながら走り出すだけで泣けた。彼が住み慣れた森の中から文明社会へと連れ出され、そこからどうにか森に帰ろうと、駆け出し、跳躍するのを見るだけ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

December 16, 2016

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』リチャード・リンクレイター
結城秀勇

やっと見た。たぶん誰かがいろんなところですでに書いてることだろうとは思うけれど、この作品のアメリカ青春映画史における価値をもっともらしく一言でいうならば、スクールカーストのようなものがほとんど存在しない学園映画だ、ということだろう。ジョン・ヒューズ以来の学園青春もの映画では、学園内の序列やヒエラルキー、大人や社会から押し付けられるレッテルや分類といった類型化に苦しめられる若者たちが、なんとかその垣...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:33 PM

December 2, 2016

東京フィルメックス2016 『ザーヤンデルードの夜』モフセン・マフマルバフ
三浦 翔

『ザーヤンデルードの夜』で印象に残っているのは、主人公が同じ窓から見てしまうことで対比されるふたつの光景だ。イラン革命で街が煙に包まれるなか、倒れた仲間を助けようと引きずって運ぶ若者たちが銃で撃たれていく光景を、窓から主人公である大学教授が眺めるシーン。それと同じ窓から、今度はイラン革命以後の世界で、交通事故で人が倒れているにもかかわらずそこにいた人が逃げて助けなかったところを教授が目撃するシーン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:06 AM

東京フィルメックス2016 『マンダレーへの道』ミディ・ジー
三浦 翔

ミディ・ジー監督『マンダレーへの道』は繊細に移民労働者の問題を描いている。主人公のリャンチンはミャンマーからタイに来たものの、労働許可証がないゆえに街で労働をすることが出来ない。不法入国のときトラックで知り合ったグオの紹介のもと、管理された工場で奴隷のように働くことを余儀なくされる。リャンチンとグオは恋に落るわけだが、二人の目指す方向は別々で、すれ違い、それゆえに悲劇的な結末を招いてしまう。グオは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 AM

November 27, 2016

2016年 ボルドー国際インディペンデント映画祭(Fifib)報告 Part2
槻舘南菜子

前回に引き続き、ボルドー国際インディペンデント映画祭プログラム・ディレクター、レオ・ソエサント(Léo Soesanto、以下LS)氏へのインタヴューを掲載する。映画批評家の仕事の延長線上に自らのプログラマーとしての仕事があると語るソエサント。注目すべき若手作家を幾人も発見した彼が、いま必要だと考えていることとはどのようなものか。 ----フランスには、中堅の国際映画祭が多く存在します。たとえば、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:03 PM

『山〈モンテ〉』アミール・ナデリ
則定彩香

 アミール・ナデリ監督の最新作は全編イタリアで撮影された。前作『CUT』では主演の西島秀俊が物理的に殴られまくっていたが、今度の『山〈モンテ〉』ではアンドレア・サルトレッティが本作の主役である"山"を殴りまくっている。  物語は山の麓の村に住むアゴスティーノ一家がひとりの娘を亡くしたところから始まる。水は湧かず、土地はやせ、作物の育たないその山は"呪われた山"と呼ばれていた。その呪いから逃れるため...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:04 PM

November 24, 2016

2016年 ボルドー国際インディペンデント映画祭(Fifib)報告 Part 1
槻舘南菜子

フランスには数多くの中規模映画祭が存在する。とりわけ10月と11月は、リヨンのリュミエール映画祭、ラロシュヨン国際映画祭、べルフォール国際映画祭、ナント三大陸映画祭と、映画祭ラッシュの時期に当たる。映画祭激戦期間といえるこの時期を狙って、ボルドー国際インディペンデント映画祭は5年前に誕生した。長編・短編コンペティション部門とともに、先行上映プログラムや特別上映プログラムがあるほか、野外上映とコンサ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 AM

November 8, 2016

『ダゲレオタイプの女』黒沢清
結城秀勇

露光時間の長いダゲレオタイプという撮影技法では、映像が定着するまで被写体は長時間同じ姿勢をとり続けなければならない。そのこと自体は頭ではよく理解できるのだが、これだけ静止画だろうが動画だろうが思いつきのままインスタントに得られる時代に生きていると、ちょっとした錯覚というか思い違いに陥る。つまり、もし撮影の途中で被写体が動いてしまったとしたら、例えば暗い場所で花火やペンライトを振ったりするのを写真に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:25 PM

November 3, 2016

『二十代の夏』高野徹
増田景子

『二十代の夏』から溢れ出す、この圧倒的な若さに対して、一体どのように反応したらよいのだろう。 「青臭い」といって切り捨てることも出来れば、「青春」といって羨むこともできる。ただ取り違えてはいけないのは、この「若さ」が若手監督のたどたどしさや初々しさを指しているのではないということだ。確かに成熟したとは形容しがたい試行錯誤の跡のみえる粗削りだが、歩み始めた者の揚げ足をここで取る意味はないし、いくつか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:11 AM

October 22, 2016

『ハドソン川の奇跡』クリント・イーストウッド
樺島瞭

2009年1月15日、150人の乗客と5人の乗員をのせたエアウェイ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港を飛び立った2分後に、バードストライクに見舞われる。エンジンが停止したエアバスを、機長のチェズリー・"サリー"・サレンバージャーは、咄嗟の判断と巧みな操縦によって、ハドソン川――その左岸はマンハッタンの高層ビル群である――に、ひとりの犠牲者も出すことなく不時着水させる。邦題にもなっているこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

October 11, 2016

『チリの闘い』パトリシオ・グスマン
稲垣晴夏

1970年、チリでは世界で初めて民主的な選挙によって社会主義政権が誕生し、サルバドール・アジェンデが大統領に就任した。本作は政権を支持し共に社会主義を目指した労働者たちと、軍部やアメリカと画策してこれを妨害しようとする富裕層との階級間の対立を、全三部の巧みな構成をもって描く。 本作において、路は富裕層と労働者の間の緩衝帯として町に横たわっており、そのためおのずと闘いの舞台として幾度も映し出される。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:48 PM

October 5, 2016

『タナーホール』フランチェスカ・グレゴリーニ、タチアナ・フォン・ファステンバーグ
常川拓也

映画『タナーホール(Tanner Hall)』は、ローマ出身のフランチェスカ・グレゴリーニとNY出身のタチアナ・フォン・ファステンバーグが、アメリカ・ニューイングランドの全寮制学校の女子寮(寄宿学校)を舞台に4人の十代の女の子を描いた2009年の作品である。なんといってもまず見所は、2015年アカデミー賞において『キャロル』(2015)で助演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラと、『ルーム R...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:47 PM

September 27, 2016

『バンコクナイツ』富田克也
渡辺進也

日本人の客とタイの女性の間で交わされる日本語での会話に、まるでこれがバンコクではなく東京かどこかで行われているかのような錯覚に襲われる。高層マンションとキラキラネオン輝くバンコクの夜は、街中に流れる川を隅田川に見立てた東京の河岸地域のようだ。日本人を相手にした店が並ぶタニヤ通りは、日本人が客引きをし、店の中では現地の女性が日本語で話す。ただ女性たちだけがタイの女性であり、そこにやってくる客も、はた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:21 PM

September 14, 2016

『スラッカー』リチャード・リンクレイター
結城秀勇

リンクレイターの長編2作目にあたる1991年の作品。「インディーズ映画の雄リチャード・リンクレイター(『6才のボクが、大人になるまで。』)が描くジェネレーションX青春映画です。後世に絶大な影響を与え(とくにケヴィン・スミス)、のちに監督する事となる傑作『バッド・チューニング』の関連も随所に見て取れる90年代インディペンデント映画の歴史的な一本!」(Gucchi's Free School 作品解説...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:25 PM

『チリの闘い』パトリシオ・グスマン
三浦 翔

一九七〇年、チリに世界初の選挙による社会主義政権が誕生した。『チリの闘い』には、このアジェンデ政権が、一九七三年九・一一の軍事クーデターによって倒れるまでの過程が記録されている。第一部「ブルジョワジーの反乱」と第二部「クーデター」を通して見えてくるのは、固有名詞の強さである。この映画の主役は政治家では無い。街頭インタビュー、工場での議論、デモなど、無数の発言によって政治が描かれる。彼らは「アジェン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:51 AM

September 10, 2016

『人間のために』三浦翔
結城秀勇

「闘争の最小回路とは、力のクリスタルのことだ。力のクリスタルは、ふたつのレヴェルにおいて形成される。第一のレヴェルは、行為と知覚の結晶化プロセスだ。映画や演劇の俳優は、行為と知覚とのこのクリスタルを生きている。優れた俳優は、演技をすると同時に、演技する自分をつねに知覚してもいるからだ。俳優とは、自己をアクター/オーディエンスへと二重化し、自己においてそれらを結晶化させる術を知っている者のこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:45 PM

September 1, 2016

『ケンとカズ』小路紘史
若林良

本作は主人公であるケンとカズ、そして彼らの弟分のテルが、対立する組織の下っ端に喧嘩を吹っ掛ける場面から始まる。そこでの決着がついたあとに、ケンとカズを下から見上げるようなショットが印象的だ。前方にしゃがむカズと、後方からカズを見下ろすケン。本作において両者の「顔」が正面からはっきりと見える場面は、この対照的な姿勢のふたりを捉えたショットを除けばほとんど存在しない。物語は、妊娠した彼女や認知症の母の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:04 PM

August 29, 2016

『エミアビのはじまりとはじまり』渡辺謙作
隈元博樹

 幸福の先に訪れる死の予感は、絶えず映画の中で描かれてきたことだと思う。その例は枚挙に暇がないものの、たとえば北野武の『ソナチネ』は、沖縄の海辺で悠々自適な相撲遊びに興じていたヤクザたちを、またたく間に銃弾の飛び交う抗争の場面へと誘なっていく。またヤン・イクチュンの『息もできない』は、わだかまりを抱える男女が和解を遂げた矢先、女の弟による男への復讐によってその幕を閉じることとなる。こうして幸福が死...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:18 PM

August 15, 2016

マルセイユ国際映画祭(FID)報告
槻舘南菜子

ユーロ2016のため、今年のマルセイユ国際映画祭(FID)は通常の開催期間(6月下旬~7月上旬)ではなく、7月12~19日の開催となった。フランスには、ドキュメンタリーに特化した映画祭として2つの代表的な国際映画祭がある。ひとつは毎年3月にパリのポンピドゥーセンターで開催される「シネマ・デュ・レエル Cinéma du réel」。こちらがよりクラシックな趣きの作品が多く選出されることに対し、FI...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:43 PM

July 25, 2016

短編映画祭「Côte Court(コテ・クール)」 25周年!
槻舘南菜子

1992年に設立された短編映画祭Côté court(コテ・クール)は今年25周年を迎えた。この映画祭はパリ郊外の北に位置するパンタンの映画館「Ciné 104」で毎年6月に開催される。フランスの短編映画祭といえばカンヌ国際映画祭に次ぐ規模となるクレルモン=フェラン短編国際映画祭があるが、こちらは商業的でエンターテインメント色の強い作品が中心にセレクションされる傾向にある。それに対しコテ・クールは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:22 PM

July 16, 2016

『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』黒川幸則
田中竜輔

「村の中の村(Village in the village)」でなく「村の上の村(Village on the village)」。ひとりのバンドマンがごろりと迷い込んだこの村は、たとえばシャマランの『ヴィレッジ』のように隔離され幽閉された空間ではなく、スマホもネットもビールも充実しているし、なんなら普通に自動車も電車も走っているような場所だ。「on」という前置詞を率直に読み解こうとするのなら、古...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:06 PM

July 11, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(番外編)
槻舘南菜子

Hors Cannes 映画祭期間中に、トロント国際映画祭のプログラマーである友人のアダム・クックの紹介で、フィリップ・ガレルの弟、ティエリー・ガレルにインタヴューすることになった。ティエリー・ガレルは現在67歳、今回のカンヌには昨年から創設されたドキュメンタリー作品に与えられる「黄金の眼 L'Oeil d'or /The Golden Eye」賞 の審査員のひとりとして滞在していた。彼との出会...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:36 PM

July 2, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(3)
槻舘南菜子

「監督週間」部門 開幕・閉幕作品にマルコ・ベロッキオとポール・シュレイダーの新作が選ばれ、4本の処女長編がセレクションされた本年の監督週間。2012年にエドワード・ワイントロープがディレクターに就任して以来、その商業的なセレクションはたびたび批判されてきた。本年の「公式コンペティション」部門や「ある視点」部門から抜け落ちてしまったと思しきベルトラン・ボネロやアクセル・ロペールらの作品が救い上げられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:48 AM

July 1, 2016

『ディストラクション・ベイビーズ』真利子哲也
結城秀勇

真利子哲也の作品では必ず、位相の違うふたつの世界が重なり合っている。『イエローキッド』のボクサーの日々とアメコミ、『NINIFUNI』の強盗犯の逃亡とアイドルの撮影、『あすなろ参上!』のアイドルの人間としての葛藤とゆるキャラが共存する街。それらふたつは平面的な距離において遠ざけられているのではなく、互いに重なりあって二重写しになっている。だからふたつの道筋が並行モンタージュ風につながれるとしても、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:14 PM

June 28, 2016

『団地』阪本順治
田中竜輔

タイトルからして団地で繰り広げられる悲喜交々の人間模様が描かれるのかと想像していたら、まったく違った。舞台となる団地で中心的な被写体となるのは10名前後。いわゆる「ご近所付き合い」はその範囲にしかなく、そして実質的に生活が描かれるのは主人公である藤山直美と岸部一徳の夫婦だけだ。建築物としての外観こそ頻繁にフレームに収められるも、他の住民の部屋はごくわずかな場面を除けば存在さえ示唆されることはない。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:14 PM

June 26, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(2)
槻舘南菜子

「ある視点」部門 本年の「ある視点」部門にセレクションされた18本中、7本が処女作、4本は監督第2作と、例年になく新人監督がフィーチャーされたプログラムだったが、作品の出来はといえば散々たるもの。なぜセレクションされたのが理解に苦しむような作品が大半を占めたというのが正直なところだ。ただその一方で特別上映枠にアルベルト・セラ(『ルイ14世の死 La Mort de Louis XIV』)とポール・...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 PM

June 25, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(1)
槻舘南菜子

2016年カンヌ国際映画祭 コンペティション部門受賞結果 パルムドール:『I, Daniel Blake』(ケン・ローチ) グランプリ:『Juste la fin du monde』(グザヴィエ・ドラン) 審査員賞:『American Honey』(アンドレア・アーノルド) 監督賞:クリスチャン・ムンジウ(『The Graduation』)、オリヴィエ・アサイヤス(『Personal Shoppe...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 AM

June 22, 2016

『天竜区奥領家大沢 夏』ほか「天竜区」シリーズ 堀禎一
田中竜輔

静岡県浜松市、その最北部の山間地に位置する天竜区大沢集落は、村の開拓当初からその限られた土地を活用するために――歩くのも大変なほど急な勾配の斜面は多くの畑で占められている――最大で8軒までしか戸数は増やされなかった。今日では過疎化が進み3軒で4人が生活しているこの場所の、およそ1年にわたる人々の生活を映し出すのがこの全4本で4時間を超える「天竜区」シリーズである。だが、そうした背景や事前知識につい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:58 AM

June 19, 2016

『あなたの目になりたい』サッシャ・ギトリ
結城秀勇

ジュヌヴィエーヴ・ギトリ演じるモデルが、サッシャ・ギトリ扮する彫刻家への恋心を祖母に打ち明けるとき、祖母はこう忠告する。一目ぼれは、それがふたり同時に起こるのなら、信じられる。もしどちらか一方だけなら危険だ。そして仮にふたり同時に起こったとしても、それでも危険なものだ。なぜならふたりは見つめあうけれど、実はなにも見ていないからだ。その熱いまなざし以外にはなにも。 画面に映し出される映像や文字や数量...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:22 PM

May 28, 2016

『或る終焉』ミシェル・フランコ
常川拓也

閑静な住宅街の中、ティム・ロス演じるデヴィッドは、ひとりの十代の少女が家から出て車に乗り込むまでをじっと観察し、彼女が通りを車で走り出すと無言のまま追跡しはじめる。カメラはその様子を車内の助手席から長回しで捉える。次のカットでは、彼は夜な夜なフェイスブックでナディアという女の子の写真を何枚もチェックしている。第68回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『或る終焉』のこのアヴァンタイトルを見て、このふ...全文を読む ≫

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May 27, 2016

『わたしの自由について』西原孝至
三浦 翔

何故SEALDsをやっているのかという問いに対してSEALDsの牛田は、「授業でキング牧師の講演を見ていたら『私たちが目指してきたものは必ず達成される、しかしそれは私の生きている間では無い』と泣きながら語るシーンを見てしまったからだ」と語る。そこには、「どういった思想で」といった明確な答えがあるわけでは無い。過去から受け取ったバトン=コトバがあるだけだ。しかし、だからこそ彼らは強く、軽やかに運動を...全文を読む ≫

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May 26, 2016

第69回カンヌ国際映画祭 ジャン=ピエール・レオ パルムドール名誉賞 受賞シーン
坂本安美、茂木恵介

「ジャン=ピエール・レオ、あなたは私の人生を変えました」(アルノー・デプレシャン) その地に赴くことはできなかったにせよ、本年のカンヌ国際映画祭のハイライトのひとつは間違いなくクロージングにおけるジャン=ピエール・レオのパルムドール名誉賞受賞シーンだっただろう。コンペティション部門審査員のひとりであるアルノー・デプレシャンは、クロージング後の記者会見で「映画の学生に戻った気持ちで審査員として臨み、...全文を読む ≫

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May 17, 2016

『山河ノスタルジア』ジャ・ジャンクー
中村修七

『山河ノスタルジア』は、同時代を捉えてきたジャ・ジャンクーが初めて近未来を捉えた映画だ。とはいえ、近未来の人物も現代に生きている人物と異なるわけではない。近未来に生きる人物たちにとっても、母が子を思う愛情や子が母に対して抱く思慕の念は無縁なものではない。あるいは、このような近未来は現在を照らし返すものだと述べるべきかもしれない。近未来が舞台となっているジャン=リュック・ゴダールの『アルファヴィル』...全文を読む ≫

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May 3, 2016

『追憶の森』ガス・ヴァン・サント
渡辺進也

『ミルク』以降、他人の書いたシナリオで作品を作るようになったガス・ヴァン・サントは、それまでの作家性とは異なる方法で、むしろ職人的なと言ってもいい熟練した方法で映画を作っているようで興味深い。前作『プロミスドランド』では、舞台となったあの町にないものは撮るつもりはないとばかりに、あの町にあるものだけをただひたすら撮り続けていた。「あるものはある」「ないものはない」である。今作の『追憶の森』において...全文を読む ≫

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April 30, 2016

『台湾新電影時代』シエ・チンリン
隈元博樹

 巷のシネコンへ足を運ぶたびに、ふと気になってしまうことがある。それは予告編に続いて本編が始まろうとしてもなお、スクリーンのフレームサイズが一向に変わらなくなったということだ。たとえばこれがフィルム上映であれば、必ず上映前に映写技師の手によってスタンダード、ヴィスタ、スコープと、作品ごとのフレームサイズに応じたマスキングが行われていたと思う。それと同時にマスキングは画の左端に連なるサウンドトラック...全文を読む ≫

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April 29, 2016

『SHARING アナザーバージョン』篠崎誠
結城秀勇

「このバージョンは、上映時間の長いバージョンのたんなる短縮版ではなく、文字通り"別の"バージョンなんです」とは、上映前の監督挨拶において強調されていたことであるが、このバージョンが、長いのと短いの、表と裏、右と左といったような対を補完するものとしてあるのではなく、ただ別なものとしてある、というのはなんだか重要な気がする。 というのも『SHARING』という作品自体が(そしてとりわけ「アナザーバージ...全文を読む ≫

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April 24, 2016

ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭報告(2016年4月5日~ 4月10日) 
槻舘南菜子

ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭(Festival du cinéma de Brive http://www.festivalcinemabrive.fr/home.php )は、五月革命後にカンヌ国際映画祭の監督週間部門を創設したフランス映画監督協会(Le SRF) の主導で、2004年に始まった。5日間の短い会期に関わらず、毎年数百人の映画人――批評家、プログラマー、映画監督、プロデューサー等...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

April 10, 2016

『リリーのすべて』トム・フーパー
若林良

 本作『リリーのすべて』は、第二次世界大戦前のドイツで世界初の性別適合手術を受け、男性から女性になった実在の人物の物語である。その製作背景としては様々であろうが、おそらくは、主人公のアイナー・ヴェイナー=性別移行後はリリー・エルベが、歴史上はじめて性別転換にふみきったことの、歴史的な意義が再評価されたことが大きいだろう。いわば現在におけるトランスジェンダーの人々の希望を提示した、偉大な先達であると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:42 PM

April 7, 2016

『ルーム ROOM』レニー・アブラハムソン
常川拓也

 ブリー・ラーソンの主演作としては前作にあたる『ショート・ターム』では、彼女の演じる役名はGraceだった。それに対し本作『ルーム』では、彼女はJoyという名を持って現れる。恩寵とよろこび──ときに皮肉な、そしてときに文字どおりの意味を物語の中にもたらす名前の響きが、短期保護施設を舞台に、ケアテイカーと心に深い傷を負ったティーンエイジャーとの間で築かれる疑似家族/親子を描いた『ショート・ターム』と...全文を読む ≫

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March 11, 2016

『母よ、』ナンニ・モレッティ
隈元博樹

 ナンニ・モレッティのフィルモグラフィを紐解けば、ミケーレ・アピチェッラやドン・ジュリオという人物を演じる彼の姿が浮かんでくる。当然ながら彼らを演じる以上、彼らはモレッティ自身であり、いっぽうでは分身のような存在でもある。モレッティとは異なるアイデンティティを持ったミケーレやジュリオは、左翼崩れの青年、数学者、映画監督、神父、さらには水球選手(ときどき共産党員)として、それぞれのフィルムの一翼を担...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:58 AM

February 17, 2016

『大河の抱擁』チロ・ゲーラ
久保宏樹

近年、映画産業の発展の著しいコロンビアの若手映画映画監督チロ・ゲーラ(Ciro Guerra)による長編3作目、『大河の抱擁』(原題は「El Abrazo de la Serpiente / 蛇の抱擁」、ちなみに本作は日本でも第7回京都ヒストリカ国際映画祭にて上映されている)が、第68回カンヌ国際映画祭監督週間グランプリ受賞から7ヶ月の遅れを経て、パリでは昨年の12月23日よりMK2系列の映画館で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:55 AM

February 16, 2016

『ザ・ウォーク』ロバート・ゼメキス
田中竜輔

ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じるフィリップ・プティを語り部として、プティによって行われた地上400mを超えるツインタワー間の綱渡りという常軌を逸した実話を題材につくられた本作。遅ればせながらIMAX3Dでこの作品を見て、本当に様々な場面で魂のすくむ思いをさせられた。しかし一方で私がこのフィルムを見ながら終始不思議で仕方なかったのは、どうしてレヴィット=プティが「英語を話す」ということにここまで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 AM

February 7, 2016

『東から』シャンタル・アケルマン
結城秀勇

35mmフィルムで投射された映像がなんだかやけにぼんやりとして見える。粗い粒子のひとつひとつにはピントが合っているのに、それらが構成する映像全体のどこに焦点があるべきなのかがわからない。画面中央に置かれた樹木がその背景よりも鮮明であったりすることもなければ、画面の奥から近づいてくる農婦たちの誰かひとりが他の誰かよりも鮮明であることもなく、駅の待合室の、横移動するカメラの前に現れては消える人々もまた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

February 4, 2016

『母よ、』ナンニ・モレッティ
増田景子

ナンニ・モレッティの新作『母よ、』を見て、アンナ・マニャーニのお尻を思い出した。『ベリッシマ』(1951、ルキノ・ヴィスコンティ)で子どものために階段を上り下り、あちこちを駆けずり回る姿のなかに光る、あのお尻である。ペドロ・アルモドバルが『ボルベール』の撮影の際に、つけ尻なるものをペネロペ・クルスにつけさせたのも、このお尻のせいだ。彼はこのアンナ・マニャーニのお尻に「母親」たるものを見出したからだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:01 PM

January 31, 2016

『蜃気楼の舟』竹馬靖具
隈元博樹

 オープニングショットに捉えられた一艘の小舟が、ゆったりと画面の奥へ向かっていく。それは別に何かを運搬しているわけではなく、ただゆらゆらとスクリーンの前の私たちから離れていくだけだ。しかし佐々木靖之のカメラは、そんな無機質な舟の行方を丹念に追いつづける。どこへ向かうのかさえも問うことなく、誠実なまでにその舟の行き着く先を収めようとする。  このように『蜃気楼の舟』の被写体たちは、絶えずどこかへ向か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

January 15, 2016

『ブリッジ・オブ・スパイ』スティーヴン・スピルバーグ
結城秀勇

この映画の最初のカットは、後にソ連のスパイとして逮捕されることになるルドルフ・アベルの顔を映し出す。カメラはそのままズームアウトして、その顔が鏡の前に座った男の鏡像であったことを明らかにし、そして彼が鏡を見ながら描きつつある自画像が画面右手に置かれていることをも示す。この、こちらに背を向けたひとりの男と、男についての二枚のイメージーー左側は鏡像、右側は自画像ーーを見ていてなんだか変な感じになる。そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:47 PM

December 23, 2015

『独裁者と小さな孫』モフセン・マフマルバフ
常川拓也

「狂気が世界を支配し、人類の自由が失われていた頃の物語」──チャールズ・チャップリン『独裁者』は冒頭にこのように説明される。およそ75年前に警鐘が鳴らされた世界から現代はある意味では進歩していないのだろうか。そう思えてしまうほど、この文言は『独裁者と小さな孫』の冒頭に付けられていてもおかしくないかもしれない(その意味で、本作で独裁者と孫の最初の逃亡先が「床屋」なのは意識的だろう)。何の躊躇や葛藤も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 PM

November 18, 2015

『約束の土地』アンジェイ・ワイダ
隈元博樹

 引き攣った顔の連続が、スクリーン越しに押し寄せてくる。カメラのクロースアップがそれを助長するかのように、時代の潮流に揉まれた人々の表情が、およそ40年の時を経てもなお刻まれている。舞台となる19世紀末のウッチは、世界でも有数な繊維工業地帯として栄華をきわめ、さらにはドイツ、ユダヤ、ポーランドによる民族と文化の入り混じる只中にあった時代だ。だからこのフィルムが描くウッチには、民族の多様性があり、貧...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 PM

November 10, 2015

『岸辺の旅』黒沢清
梅本健司

僕らと映画とその間  瑞希が言うように、瑞希と優介には違いなんてないのではないか。死んだように生きていている瑞希が、突如思いつき白玉を作っていると、生きているかのように死んでいる優介が帰ってくる。「たぶん、身体はカニにでも食べられてるだろーねぇ」と言いながら白玉を食らう優介と、「そう」と平然と答える瑞希は、3年ぶりに再会した夫婦であるのだが、それが生死を超えた再会には見えない。もしかしたら二人とも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

November 6, 2015

『タンジェリン』ショーン・ベイカー
常川拓也

デュプラス兄弟が製作総指揮で携わる『タンジェリン』の舞台となるLAのクリスマス・イヴは、暖色の太陽が燦々と照っている。セックスワーカーをしているふたりのトランスウーマンと、アルメニア移民のタクシー運転手を中心に、掃き溜めのようなストリートが全編iPhone5Sでゲリラ的に撮影されているが、それによってショーン・ベイカーは街に溶け込むことに成功しているように思える。まるでラップをスピットするかのよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

November 2, 2015

『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー
高木佑介

よせばいいのにロベール・クライン(=アラン・ドロン)は自分と同じ名を持つもうひとりの「クライン氏」を追いはじめる。ナチス占領下のパリでユダヤ人から美術品を安く買い叩くクラインと、ユダヤ人と思しきもうひとりのクライン氏。単純に話の筋だけ追っていくと、出来の悪いミステリーを見ているかのような気がしてくる。自己の分身を追いかけることの不毛さ、あるいはその裏返しとしてのアイデンティティーの再獲得。もしくは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:09 AM

October 31, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
高木佑介

TIFFにてベロッキオの新作を見る。とても奇妙な映画だ。魔女の嫌疑をかけられた修道女に課せられる数々の試練――そしてそれを乗り越えて神への無償の愛を体現する聖女の物語という話で終わるのかと思いきや、全然違った。中世のキリスト教魔女裁判を巡る話が前半部分を占め、後半では突如として現代を舞台にした話が展開される。魔女裁判のくだりでは、敬虔そうな神父たちが修道女に試練を課して、サタンと契約したことを示す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:46 AM

October 30, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
田中竜輔

デヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』ではレディオヘッドの「Creep」のカヴァーが用いられていたベルギーの聖歌隊グループ、Scala and Kolacny Brothersによる本作の主題歌は、なんとメタリカの「Nothing else matters」。選曲がベロッキオ本人によるものなのかどうかはわからないが、ともあれ、「So close, no matter how far...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:55 PM

October 22, 2015

『マッドマックス2』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ジョージ・ミラー
結城秀勇

早稲田松竹で二本立て。やっと見た。 『マッドマックス』も『マッドマックス/サンダードーム』もテレビでは見てるはずだがまったく記憶にないので、あくまで『2』と『怒りのデス・ロード』を比較しての印象だが、メル・ギブソンとトム・ハーディのマックスの違いは、とりあえず仲間になりそうな感じの人たちへの応対の違いにあるんじゃないだろうか。ギブソンは無関心を装った苛立ちみたいに見えるのに対して、ハーディは無関心...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 AM

October 16, 2015

『パウリーナ』サンティアゴ・ミトレ
常川拓也

2015年カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いた『パウリーナ(原題:La Patota)』は、判事の父を持つ弁護士のパウリーナ(ドロレス・フォンシ)が、そのキャリアを捨て、社会奉仕を志してアルゼンチンの都会から生まれ故郷の田舎町へ帰るところからはじまる。誰かの人生のためになるべく、そこで暮らす貧しい若者たちへ現代の民主的な権利などを教える教師となった彼女だったが、しかし、同僚女性の家でワイ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:14 PM

October 9, 2015

『黒衣の刺客』ホウ・シャオシェン
結城秀勇

フィルムによる撮影・上映ではなく、デジタルによる撮影・上映でのみ可能になる映像のあり方があるんじゃないのか、と数日前に書いたばかりだが、『黒衣の刺客』がまざまざと見せるのは、とりあえずフィルムで撮っておけば、あとはデジタルのポスプロで作れない画面なんてない、という圧倒的な事実だ。フィルムで撮影しさえすれば、この世に存在するあらゆる映像はつくりだせる、そんな断言にも似た力強さーーそう呼ぶにはあまりに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:14 PM

October 5, 2015

『アカルイミライ』黒沢清
結城秀勇

『岸辺の旅』を見ていてすごく気になったのは、浅野忠信と一緒にいないときの深津絵里の生活が、極端に彩度の低い画面で映し出されていることだった。とくに中盤の、旅を中断して東京に帰る場面。ほとんど灰色と言ってもいいような色調で、旅の間に枯れ果てた鉢植えの植物が画面に映る。そのとき、なんだかとてつもなく取り返しのつかないことが起こったような、取り返しもつかないような途方もない時間が経過したような、そんな気...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:55 PM

October 3, 2015

『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』ロン・マン
隈元博樹

 ある事物の性質やその特徴を言い表すとき、私たちは「らしさ」という接尾語を使うことがある。ここでの「らしさ」とは、礼節を重んじた人物に対する紳士らしさであり、しとやかで品格を備えた人物に対する淑女らしさのことを指している。ただしこれらは、実体に近しいことを表現しているにすぎず、それ自体のことではない。紳士らしさとは紳士に近い存在であり、完全なる紳士ではない。また淑女らしさとは、そのすべてをもって淑...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 PM

September 23, 2015

『みんな蒸してやる』大河原恵
渡辺進也

いまユーロスペースで「たまふぃるむナイト」が開催されている。 「たまふぃるむ」を説明しておくと、もともとが多摩美術大学の映像演劇学科の映画制作の授業の一環からはじまったものだったが、当学科がすでに募集を止めてしまったためにそこから派生して在学生やOBを含めた組織となった。彼らは、制作だけに留まらず上映も定期的に行っている。おそらくそのメンバーは10数人ほどで構成されていると思うのだが、誰かが作品を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:38 AM

『ひこうせんより』広田智大
渡辺進也

人里離れた廃墟のような場所で、男女7人が生活している。時代もまるで現代ではないような雰囲気で、無機質な衣装と無機質な物質の中で彼らは生活している。ある者は写真を撮り(フィルムが実際に装填されているのかわからない)、ある者は廃品だろうか機械を修理し、ある者は外部からの侵入者を警戒しているのだろうか金属バットを振り回し、ある者は紙に赤や青のペンキを塗り続け、ある者はひまわり型の風車をつくり、ある者は近...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 AM

July 23, 2015

特別講義「〜日仏映画作家「現代映画」を語る〜」@映画美学校(2015.6.28)
渡辺進也

今回、映画美学校で行われたマスタークラスでは、「〜日仏映画作家「現代映画」を語る〜」と題して、フランス映画祭2015に最新作『アクトレス〜彼女たちの舞台〜』と共に来日したオリヴィエ・アサイヤス監督が青山真治監督を相手に、映画制作の方法や映画への考え方、また『アクトレス』についてなど多岐に渡り話を聞く機会となった。 その講義の中でも特に印象に残ったアサイヤスの言葉は、映画制作の際に常に自分でもわから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:52 AM

July 17, 2015

『海街diary』是枝裕和
若林良

『そして父になる』に続いてカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された、是枝裕和監督の新作である。日本の美を色濃く残すような"古都"鎌倉で、四姉妹が織りなす一年間の日々をじっくりと描いている。鎌倉を舞台にした映画と言えば、小津安二郎の『晩春』『麦秋』など「家族の静かな別れ」を描いた作品が有名であるが、本作で描かれるのはそうした作品群とは対照的な、「家族の再生/誕生」である。それは『誰も知らない』『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:04 AM

July 10, 2015

『サイの季節』バフマン・ゴバディ
グフロン・ヤジット

重い扉の開く音がする。不穏な影に、冷たい水。白く老いた髭。そして目に射し込むのは、暖かさを失った太陽の光――ある男の企みによって不当に逮捕されたクルド系イラン人の詩人サヘル・ファルザンが、30年間の獄中生活から釈放される場面で物語が幕を開ける。 時代はイスラム革命のさなか、サヘルは反革命的な詩を書いた罪を問われ投獄されてしまう。投獄中、政府の嘘によりサヘルは死んだことにされていた。釈放後に彼は愛す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:55 PM

July 9, 2015

『チャイルド44 森に消えた子供たち』ダニエル・エスピノーサ
高木佑介

数年前に『デンジャラス・ラン』という映画が公開されていたダニエル・エスピノーサの新作。デンマークの国立映画学校にキャリアの出自を持つというこの南米系スウェーデン人監督のことは詳しくは知らないが、彼の前作『デンジャラス・ラン』は、CIAの「裏切り者」のベテランと新米の師弟関係を軸に、法と無法、行動と待機のあいだを絶えず行き来する人物や物語がそうした主題を最も得意としていたかつてのアメリカ映画への尊敬...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:41 PM

July 6, 2015

『冷たい水』オリヴィエ・アサイヤス
白浜哲

映画がエンディングを迎え川の流れる音が短くフェードアウトしていくと同時に、わたしの身体は再びいつもの重さを取り戻していた。『冷たい水』を見ることとは、まるで水のなかにいるようにふわふわと浮遊するような体験であり、また深く息つぎを繰り返すような重々しさを受け入れ、そこからの解放を伴なう体験であると言えるかもしれない。鬱屈を抱えた少女と、それに付き合おうとする少年の青春時代を描いたこの映画は、それがそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:35 PM

『約束の地』リサンドロ・アロンソ
渡辺進也

new century new cinema やfilm commentで紹介されているように、数少ないリサンドロ・アロンソのフィルモグラフィーで繰り返し描かれてきたのは、孤独な男が、孤独な場所で、孤独に時を過ごすその様である。『La libertad』における木こりの男の1日の時間。『Los muertos』における刑務所を出た男のその後の時間。『Fantasma』における自分の出た映画(その劇...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 PM

June 20, 2015

『アクトレス ~女たちの舞台~』オリヴィエ・アサイヤス
坂本安美

シルス・マリアの雲とともに 電車の中でいくつもの携帯やコンピューターを使い、何人もの人たちとやり取りしている女性ふたり。世界的に活躍する40代のフランス人女優マリア(ジュリエット・ビノッシュ--おそらくこれまででもっとも素晴らしいビノッシュをこのフィルムでは発見できるだろう)と、そのアシスタントである20代前半のアメリカ人ヴァレンティーヌ(クリステン・スチュワート--もはや演技を越えた何かに到達し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:27 AM

June 11, 2015

『だれも知らない建築のはなし』石山友美
長島明夫

建築家および建築関係者へのインタヴュー映像を主につなぎ合わせて作られた73分間のドキュメンタリー。ところどころで実際の建築の映像が短く挿入される。話者は安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクスら合計10名。インタヴュアーが中谷礼仁、太田佳代子、石山友美。もともとはヴェネチア・ビエンナーレの展覧会場で流しておくために作られた本作の制作の経緯は、石...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:14 PM

June 10, 2015

『パプーシャの黒い瞳』ヨアンナ・コス=クラウゼ、クシシュトフ・クラウゼ
長谷部友子

冒頭、けたたましいソプラノがジプシーについて歌い出し、一体何がはじまったのかと思った。どう考えたってこれはジプシーの音楽ではない。多分これはオペラなはずで、しかし何故こんなことになっているのだろう。この不自然さ、なにかおぞましいおどろおどろしい不穏なものがはじまっていく感覚こそがこの映画をもっとも端的にあらわしているように思う。 このオペラの歌詞を書いた人物は、「パプーシャ」(人形)という愛称で呼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 AM

『パロアルト・ストーリー』ジア・コッポラ
四倉諒太郎

ジア・コッポラは『パロアルト・ストーリー』の監督を、職人的にこなしている。この作品は、ジアのセンスを堪能する映画ではない。『ヴァージン・スーサイズ』(1999)や『ガンモ』(1997)のような、ソフィア・コッポラやハーモニー・コリンの処女作にあった被写体への愛情を期待すると、大きく評価を損ねてしまう。ここでジアに対する評価を「ソフィアやハーモニーよりセンスがない」としてしまったら、それこそ不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

June 8, 2015

『ローリング』冨永昌敬 
渡辺進也

 小金をうまいことせしめた元高校教師とその元生徒たちは、東京の弁護士に何もないただ広い荒野に連れていかれ土地を買わされようとしている。この土地にソーラーパネルを置いて一儲けしないかと提案されているわけだ。そこで弁護士は次のような言葉で彼らの購買欲をかきたてる。 「想像してください。この土地にソーラーパネルが並ぶ様を」 「見てください。この眩しい太陽を。なぜ眩しいのか。それは電気だからです」  まる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:46 AM

June 7, 2015

『マナカマナ 雲上の巡礼』ステファニー・スプレイ&パチョ・ヴェレズ
渡辺進也

 映画のタイトルになっている『マナカマナ』は、女神像のある聖地のような場所で、かつては険しい山道を3日かけて登ることでようやくたどりつけるような場所にある誰でも簡単に行けるようなところではなかった。それが山の麓から頂上までをつなぐロープウェイができたことによりわずか10分ほどで行くことができるようになった。  と、書いてみたけれど、そういったことはこの映画の中で説明などされるわけでない。あくまでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

June 4, 2015

『僕の青春の三つの思い出(僕らのアルカディア) Trois souvenir de ma jeunesse - Nos arcadies』アルノー・デプレシャン
坂本安美

若き芸術家の肖像 © Jean-Claude Lother / Why Not Productions 「僕は思い出す」 ポール・デダリュス。この奇妙なちょっと発音し難いラスト・ネーム(それはジェイムズ・ジョイスの小説の主人公スティーヴン・ディーダラスから取られていると言われる)を持つ、アルノー・デプレシャンの長編2作目『そして僕は恋をする』の中で生み出されたこのひとりの登場人物は、90年代以降多...全文を読む ≫

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June 3, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.05 
槻舘南菜子

5月16日 朝起きると連日の睡眠不足と栄養不足でなんだか体調が思わしくない。やばい。だが、見逃すわけにはいかないので8時半のプレス上映でナンニ・モレッティ『Mia Madre』からスタート。 Film Still © SACHER - FANDANGO 彼自身の私的なエピソードを元にした物語で、女性映画監督の制作現場と病床にある母親を見舞うエピソードが並行して語られる。最近のコメディータッチのモレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

June 2, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.04 
槻舘南菜子

5月15日 朝8時半からのプレス上映のために7時起床。前作『Alps』がかなり変わった作品で面白かったYorgos Lanthimos『The Lobster』からスタート。 近未来を舞台としたSFで、その世界では法律によって独身の男女は拘束され、あるホテルに送られる。そこで45日以内に相手を見つけられなければ、動物(ただし何になるかは選べる)に変えられ、森に放たれることになるという。そこから逃げ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:25 PM

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.03 
坂本安美

5月14日 夜20時近く、カンヌに到着。槻舘南菜子のお陰でフランスの若い批評家たちと6人でアパートを共有させてもらうことになっていたのだが、予想以上の狭さに一瞬たじろぐ。なんとか荷物を整理し、二段ベッドの下を寝床に確保させてもらい、長旅で疲弊した身体にむち打ち、南菜子ちゃんと共に「ある視点」部門のオープニング・パーティーに顔を出す。それで帰ればいいのに、しばらく会っていなかった友人に一目と出かけて...全文を読む ≫

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May 28, 2015

『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』シャウル・シュワルツ
常川 拓也

100万人が住むメキシコのシウダー・フアレスは、年間4000件近い殺人事件があり、警察は麻薬組織からの報復を恐れて黒い覆面を被って事件現場に向かう。この「世界で最も危険な街」フアレスからひとつの川を挟んだ国境の向こうには、年間殺人件数5件の「全米で最も安全な街」エルパソがある。イスラエル出身で米ニューヨーク在住のフォトジャーナリストであるシャウル・シュワルツ監督は自ら撮影も務め、シニックな視点...全文を読む ≫

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May 24, 2015

映画『ローリング』完成披露試写会@水戸芸術館ACM劇場(2015.4.11) 
鈴木洋平

 4月11日に水戸芸術館ACM劇場にて行われた完成披露試写会で、2002年の水戸短編映像祭グランプリを経たのち、映画監督という職を得ることができたことへの感謝を述べつつ、監督の冨永昌敬は「また水戸芸術館で上映できたことが嬉しい」と観客の前で素直に語った。主演の三浦貴大は1年のロケの大半を茨城で過ごしているほど北関東に親しいらしく、ヒロインを演じた柳英里紗は映像祭で監督と初めて出会い、かねてから冨永...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:19 PM

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.02 
槻舘南菜子

5月14日 今朝は監督週間の開幕上映作品、フィリップ・ガレルの新作『L'ombre des femmes』+『Actua I』からスタート。 『Actua I』は当時のゴーモンやパテによるニュース映画批判として、68年5月ザンジバールのメンバーとともに撮影されたが、長年消失されたとされていた作品だ。昨年シネマテーク・フランセーズにより修復され、パリの短編映画祭 Côté court を皮切りに上映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:34 PM

May 23, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.01 
槻舘南菜子

5月13日 パリ・リヨン駅7時19分発のTGVで出発。つまり朝5時半起き。いつも通り電車の中で眠れるはずがないので、印刷した上映スケジュールを睨みつけながら予定を立てていく。コンペティションを中心に監督週間部門や批評家週間部門の気になる作品をピックアップし、移動時間と待ち時間を計算する(私のプレスパスは青色、どの上映にも易々と入れてしまう魔法のピンクパスよりランクは下で、プレス上映は最低1時間半...全文を読む ≫

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April 30, 2015

『THE COCKPIT』三宅唱
田中竜輔

三宅唱は、小さな部屋で2日間にわたって行われたOMSBやBimら若きHIPHOPミュージシャンの作曲&レコーディングの様子を被写体とした最新作『THE COCKPIT』において、真正面に据えられたカメラの前で機材に向かいトラックをつくり続けるOMSBの姿を見つめつつ、まるで鏡に向かい合っているような気分でこの作品の編集をしたと語っていた。それはたんにふたりの人物が、カメラ/モニターというひとつの面...全文を読む ≫

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April 21, 2015

ミケランジェロ・アントニオーニ展 ――アントニオーニ、ポップの起源
茂木恵介

夏時間が始まって早一週間。ようやく、コート無しで外を出歩けるようになった。街にはサングラスをかけた人たちが、カフェのテラスや公園で飲み物片手に楽しそうに話している。ようやく、パリにも春が訪れた。そんな誰もがウキウキしてしまう季節の中、映画の殿堂シネマテーク・フランセーズにてミケランジェロ・アントニオーニの展覧会がオープンした。 展覧会に合わせたレトロスペクティブのオープニングには新旧のシネマテーク...全文を読む ≫

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April 15, 2015

『La Sapienza(サピエンツァ)』ウジェーヌ・グリーン
茂木恵介

「工場は現代のカテドラルだ」という台詞を聞いたとき、スクリーンに映し出されるのは取り壊され半ば廃墟のような工場跡の映像であった。工場が資本主義の象徴のひとつであることは言うまでもない。昔、どこかのお偉いさんに「工場はひとつの村だ」と言われた記憶があるが、大工場を持つ企業がある地域の産業を支えており、その周辺に住む多くの人たちはその企業に勤め、工場に通勤している。加えてその地域の行政がそのような企業...全文を読む ≫

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March 14, 2015

『ドノマ』ジン・カレナール
楠大史

この作品を見て、いまだに戸惑いを隠し切れない自分がいる。観客に対してここまで挑発的な姿勢の映画も、近年では珍しいのではないか。ジン・カレナールの『ドノマ』は良くも悪くも、映画の新しい形式をこれでもかと突きつけてくる作品である一方で、その基盤にはフランス映画がこれまで培ってきた即興演出の流れをも強く感じさせる。不思議な作品であり、こう言ってよければ怪作だ。 とはいえ『ドノマ』の面白さは、その新しい形...全文を読む ≫

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March 5, 2015

『5 windows eb』『5 windows is』瀬田なつき
結城秀勇

どれだけの人が共感するかはわからないし、これが的を射た観点だとも思わないのだけれど、私にとって「5 windows」とは、『ローラ殺人事件』(オットー・プレミンジャー、1944)や『デジャヴ』(トニー・スコット、2006)の系譜に連なる「すでに死んだ女に恋をする話」の最新版なのであり、こうしてもともとのプロジェクトから時間も空間も距離をおいた◯◯ヴァージョンが付け加えられるたびに次第にその思いは強...全文を読む ≫

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March 3, 2015

『さらば、愛の言葉よ』2D版 ジャン=リュック・ゴダール @横浜シネマリン
結城秀勇

2014年度ベストでも書いたことだが、この映画についてどう語るべきなのかを悩んでいた。つまり自分がこの映画で見たものと同じものを、自分以外の人たちも当然のように見た、という前提に立ってよいのかわからなかったのだ。もちろん、人と話せば「タイトルの3Dって文字が飛び出してたよね」とか「右目だけパンする画面があったよね」とか、自分が見たと思うものがたしかにスクリーンに映っていたらしいことは確認できる。だ...全文を読む ≫

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February 7, 2015

『少女と川』オレリア・ジョルジュ
隈元博樹

 この映画の水面には、ふたつの働きがあると思う。ひとつは物質として存在し、つねに外からの光を照り返すようにして反射させること。もうひとつは地上にかけて存在する現実の世界から、その奥底へと繋がる別の世界を想起させることだ。だからここに映る幾多の川はその水面下の状況を映し出すことはないし、つまりはどの水面も透き通ってはいない。目上の太陽や街灯を反射させることはあるけれど、私たちは水中の状況を知ることさ...全文を読む ≫

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February 5, 2015

『メルキュリアル』ヴィルジル・ヴェルニエ
結城秀勇

「第18回カイエ・デュ・シネマ週間in東京」のチラシには、この作品の物語が、いま現在ここにある世界とは別の世界を描いたある種のファンタジーのようなものとしてあらすじが書かれているのだが、実際映画を見てみて、半分同意するとともに半分納得できないでいる。ヴィルジル・ヴェルニエという若い映画監督の過去作について書かれた海外のいくつかの文章にちらっと目を通してみると、決まってドキュメンタリーとフィクション...全文を読む ≫

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January 27, 2015

『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』アルノー・デプレシャン
結城秀勇

第二次世界大戦の従軍中に頭部に障害を負ったアメリカインディアン、ジミー・ピカード(ベニチオ・デル・トロ)は頭痛とめまいの治療のために、陸軍病院に入院することになる。その際に行われる様々な検査のなかで、ロールシャッハテストのような、特定の図像を見て思うことを述べる検査が行われるのだが、示された絵を見てしばし黙りこんだジミーは、やがてこんなことを言う。「代わりに毎晩オレが見るイメージの話をしよう」。高...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 AM

December 6, 2014

『自由が丘で』ホン・サンス
隈元博樹

 映画のなかの時間とは、ほんとうに厄介なものだと思う。どんな映画を見るにしろ、私たちはある決まった上映時間のなかで数多のシーンを目撃しつつ、物語の顛末や登場人物たちの過程を知るために、そのほとんどを映画のなかの時間に負うているからだ。だからその時間とは、基本的に登場する人物の行為や物語に委ねられている。そして時間を操作することのできる作り手は、そうした時間の経過を説明するための所作さえも必要とされ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:17 AM

November 23, 2014

『ショート・ターム』デスティン・クレットン
常川拓也

エドガー・ライトが2013年のベストの一本に挙げ、ジャド・アパトーが絶賛した(アパトーは次回作『Trainwreck』に本作主演のブリー・ラーソンをキャスティングしている)まだ無名の新鋭監督の長編二作目『ショート・ターム』の舞台となる短期保護施設にいるのは、家庭のトラブルで深い傷を負った子どもたちだ。つらい秘密を持ったナイーヴな彼らを、時に愛が傷つけている──触れると灯りが点いたり消えたりするラン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:18 PM

November 20, 2014

『息を殺して』五十嵐耕平
高木佑介

 上映終了が間近に迫っているが、五十嵐耕平の『息を殺して』が川越スカラ座にて上映されている。舞台はゴミ処理工場の内部とその近辺にあるとおぼしき森のみ。新年の訪れが朗らかに祝われそうな気配はなく、人々は皆一様に声が小さく活力が感じられない。年末ということで仕事納めは済んでいるはずなのだが、彼らが一向に家に帰ろうとしないのは、その工場の外側が大して面白くない場所だからだろうか。倦怠感や閉塞感に似た雰囲...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:01 AM

November 11, 2014

『下女』キム・ギヨン
常川拓也

姉と弟が愉しげにあやとりしているオープニング・シーン。幸福な家族然としたその場面に重なるのは、正反対であるはずの大仰で不吉な音楽だ。姿形を変えては絡まるあやとりの糸は、蜘蛛の巣のようでもあり、絡みつく女の性を想起させる。そして、いつほどけるかも知れないあやとりの脆さは、突如訪れる不穏な死を連想させもする。その危うさが『下女』を象徴している。 一見円満な暮らしを送るブルジョワ的な一家を舞台にした『下...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:46 PM

November 10, 2014

『ジャージー・ボーイズ』クリント・イーストウッド
吉本隆浩

 「あ、この曲聞いたことがある!この人たちが唄っていたのか。」こう思った瞬間、人々は不思議と感動に包まれる。監督のクリント・イーストウッドも同じ体験をしたであろう。彼自身、「フォーシーズンズ」についてはあまり知らなかったが、「ジャージー・ボーイズ」の舞台を見てストーリー、キャラクター、そして素晴らしい楽曲を純粋に楽しみ、映画化に挑戦した。その日の撮影を終えたあと、知らず知らずに彼らの歌を口ずさんで...全文を読む ≫

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October 20, 2014

女優・中川安奈のこと
佐藤央

 2014年10月18日。二日酔いの朝に中川安奈さん逝去の知らせを聞く。今から6年前、それは2008年8月17日だったと思う、『シャーリーの好色人生』というとても小さな映画を撮影していた酷暑の水戸で、はじめて安奈さんにカメラを向けた時の驚きを今もはっきりと覚えています。いや、正確にははじめてカメラを向ける前、日本家屋の玄関口で出勤する夫(小田豊)を見送る場面での何でもないセリフのトーンについて、た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:34 AM

October 16, 2014

『やさしい人』ギヨーム・ブラック
田中竜輔

 ギヨーム・ブラックが『女っ気なし』に続けてヴァンサン・マケーニュとのタッグで手掛けた長編『やさしい人』にまずもって惹きつけられるのは、やはり前作と同じく試みられる16ミリでの撮影だ。水彩の絵の具が混ざり合ったような、さまざまな事物の「あいだ」の質感。どこからどこまでが人物でどこからどこまでが背景なのか、あるいはどこからどこまでが「私」でどこからどこまでが「あなた」なのか。何かと何かを区分するパキ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:40 PM

October 10, 2014

『ジェラシー』フィリップ・ガレル
奥平詩野

 恐らく嫉妬という感情について描いたのだろうと思って見始めていると、クローディア(アナ・ムグラリス)の嫉妬心に捕らえられて窮屈そうなぎこちない笑みがやたら印象に残るシーンが続く。彼女がルイ(ルイ・ガレル)と居ることで彼に依存的になってしまう不安と危機感、満たされ得ずに増幅していく具体的に言葉には出来ない欲求に雁字搦めになって神経が過敏になって行く様子はリアルであって痛ましい。しかしこの映画は一組の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:47 PM

October 9, 2014

『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』サイモン・ブルック
三浦 翔

この映画はある重要な問いを含んでいる。というのは、伝説と言われる演劇人ピーター・ブルックの舞台制作メソッドが明らかにされるからではない。ピーター・ブルックが問題にするリアリティとは、如何にして生きた舞台を作り上げるかという単純なことだ。この映画では特に、役者の振る舞いが問題になる。それを映像化するということは、如何にして映像に力を与えるかという単純かつ重要な問いになっていく。 映画はピーター・ブル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

October 6, 2014

『ファーナス 訣別の朝』スコット・クーパー
高木佑介

『クレイジー・ハート』(2009)に続く、スコット・クーパー2本目の監督作。アメリカの片田舎の製鉄所で働く兄をクリスチャン・ベイルが、その廃れた町から逃れ出るようにイラク戦争に行く弟をケイシー・アフレックが演じている。安い賃金ながらもまっとうな仕事は祖父や父親たちの代から続くその製鉄所くらいなもので、あとは兵隊になるか博打で稼ぐか悪党になるしかないというようなスモールタウンの閉塞感がこのふたりの兄...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:21 PM

October 1, 2014

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームズ・ガン
常川拓也

赤い革ジャンを着て、フェイス・マスクを装着しジェット・ブーツで悠々と空を舞う、そんな『ロケッティア』を想起させるフォルムを持ったピーター・クイル(クリス・プラット)は30過ぎではあるけれど、子どもである。そもそも誰もそう呼ばないのに自らを「スター・ロード(星の支配者)」と名乗るなんて、ただの中学生男子じゃないか? 彼が子どもであることを象徴するアイテムは、死んだ母からもらったカセットテープ「Awe...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 PM

September 30, 2014

マティアス・ピニェイロ映画祭2014
渡辺進也

 9月28日。渋谷アップリンクにてマティアス・ピニェイロ監督特集。『みんな嘘つき』、『ロサリンダ』、『ビオラ』の各作品と監督によるアルゼンチン映画のレクチャー。  どの映画も、男女が語らい、本を朗読し、歌い、演技をする。映画の中を言葉や台詞、物音が映画の中を豊かに飛び回っている。そうした音に耳を澄ませながら、これまで知ることのなかった若き監督の作品に魅了された。  一連の映画を見ていてまず気づくの...全文を読む ≫

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September 29, 2014

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームズ・ガン
結城秀勇

最近毎日これを聞いている。 Guardians Of The Galaxy: Awesome Mix, Vol. 1 [OST] - Full album 2014 正直言ってこれがサントラとしてそんなに秀逸だとも思わないし(厳密にはサントラではなく登場人物のひとりが聞いているBGMなわけだが)、作品内での一曲一曲の使い方もそんなに飛び抜けてすごいということもないと思う(例えば最近聞いた「Ain...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:12 PM

September 21, 2014

『ヘウォンの恋愛日記』/『ソニはご機嫌ななめ』ホン・サンス
隈元博樹

 『ヘウォンの恋愛日記』では、女学生のヘウォン(チョン・ウンチェ)と映画監督の大学教授(イ・ソンギュン)、そしてアメリカの大学教授を名乗るジュンウォン(キム・ウィソン)との三角関係が描かれ、『ソニはご機嫌ななめ』では女学生のソニ(チョン・ユミ)と元カレのムンス(イ・ソンギュン)、先輩のジェハク(チョン・ジェヨン)、大学教授のドンヒョン(キム・サンジュン)による四角関係が描かれる。ひとりの女性によっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:49 PM

September 15, 2014

『渇き。』中島哲也
田中竜輔

 役所広司という俳優が、ある種の「普通ではないもの」をめぐって右往左往する姿を、私たちは幾度となく目にしてきた。たとえば正体不明の殺人鬼や、徘徊する幽霊たち、あるいは自分自身にそっくりな誰か。「普通ではないもの」とは「理解し得ないもの」とも言い換えられるだろう。そういったものどもを追いかける役所広司は、いつもきわめて具体的なものと接触し、論理的に振る舞っていた。痕跡を調査し、調査から推論し、推論に...全文を読む ≫

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August 21, 2014

『300<スリーハンドレッド>~帝国の進撃~』ノーム・ムーロ
常川拓也

前作『300<スリーハンドレッド>』(06、以下『300』)で最も特徴的だった点はその「男根」性である。スパルタ兵は皆白人であり、戦場に女は存在しない。レオニダス王(ジェラルド・バトラー)は軍隊のように命を賭けてスパルタ兵を統率する。『300』は反時代的なマチズモの映画であった(軍隊同士の盾を持ってのぶつかり合い、押し合いはアメリカのジョックスの象徴であるフットボールのようですらある)のに対し、監...全文を読む ≫

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August 14, 2014

『ジョナスは2000年に25才になる』アラン・タネール
中村修七

 「ジョナスは2000年に25才になる」。そのように歌われて、妊娠を明らかにした女性は、これから生まれてくる男の子の名前の候補を幾つも挙げられた末に、テーブルを囲んでワインを飲み交わす知己の人々から祝福を受けることとなる。グラスに入っているワインの量が少なくなれば部屋の壁に寄りかかって佇む子供たちが大人たちに注いで回る、奇妙といえば奇妙に違いない状況で、酔っ払った大人たちが合唱するシーンが素晴らし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:03 AM

August 9, 2014

『消えた画 クメール・ルージュの真実』リティ・パニュ
中村修七

 リティ・パニュの映画は、不在をめぐる映画だ。彼の映画はいつも何らかの不在を抱え込んでいる。『さすらう者たちの地』(2000)では、被写体となる人々が敷設工事を行っている光ファイバーケーブルを利用することになる人々の姿が不在だった。あるいは、光ファイバーの敷設工事を行っている人々がそれらを利用して恩恵を蒙ることになる映像は、撮影されることがなく、失われたままだった。『S21 クメール・ルージュの虐...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:29 AM

July 28, 2014

『収容病棟』ワン・ビン
渡辺進也

 『収容病棟』に出てくる人々は昼だろうが夜だろうが通路をうろうろして、何の抑揚もない生活というか四六時中ほとんど変わらない生活をしているように思える。彼らがいるのは刑務所のように閉じ込められて外に出ることはできない場所で、しかも彼らは自分たちがその中にいる理由もよくわかっていない。彼らは病気だから収容されているということになっているが、収容されている理由も家族に迷惑をかけているとか、政治的な行動を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:09 PM

July 16, 2014

『エンリコ四世』マルコ・ベロッキオ
渡辺進也

 アストル・ピアソラの、うねってるというか弾けてるというか、スクリーン上で何ひとつ起こっていなくとも何か意味があるようにしか聞こえない、一言でいうとラテン風のドラクエみたいな音楽が流れている。その音楽をバックに車が林の中を進んでいく。  車に乗っているのは運転手の他に、精神科医風の男、後部座席には妙齢の女性とその彼女の愛人風な男。精神科医風の男は若い男が仮装した姿の写真を見ていて、その理由を質問し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:45 AM

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ダグ・リーマン
渡辺進也

 2008年ぐらいに『ジャンパー』という映画があって、これは主人公が時空を飛び越える能力を持っていて、敵からその能力を使って逃げ切るというものだった。この映画で主に展開されるのは、(実際にはあったのかもしれないが)敵との戦闘シーンではなくて、ひたすら主人公が逃げるというものであって、その能力の発揮の仕方がハードルのように跳ぶと東京からエジプトというように瞬間移動するということもあり、ハードル競技を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:39 AM

July 3, 2014

『X‑MEN: フューチャー&パスト』ブライアン・シンガー
結城秀勇

「X‑MEN」シリーズが結局あまり好きになれないのは、プロフェッサーXが「導く」ところのミュータントと人間の共生が、つまるところミュータントだけの自律した世界(エグゼビア・スクール)をつくることに他ならないからだ。外部から隔絶した環境で、カッコつきの「マイノリティ」として認めてもらうこと。そこが本当にブライアン・シンガーの鼻持ちならないところで、かつて『スーパーマン・リターンズ』について書いたよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 PM

May 21, 2014

『吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館』@LAST BAUS
渡辺進也

 この本の後ろの方に「バウスシアター年間上映年表1984〜2014」という80頁の資料があって、バウシアターのオープンしてからのすべての上映作品が掲載されている。ぼんやりとこの資料を見ていると、僕が最初にバウスに行ったのは2001年5月の〈「降霊」劇場初公開記念・黒沢清監督特集〉が最初らしい。『地獄の警備員』とか『ワタナベ』とか見たなあと思う。  吉祥寺の近くに住んだことなどないから、僕がバウスシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

May 17, 2014

『ソウル・パワー』ジェフリー・レヴィ=ヒント@LAST BAUS
中村修七

1974年にザイール(現・コンゴ民主共和国)の首都キンシャサで、モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの世界ヘビー級王者決定戦が行われるのに先駆け、“ブラック・ウッドストック”とも呼ばれる音楽祭が、3日間に渡って開催された。 音楽祭に出演したのは、ソウル・グループのザ・スピナーズ、“ソウルの帝王”ジェイムズ・ブラウン、“ブルーズの神様”B.B.キング、“サルサの女王”セリア・クルースとファニア・オー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:52 PM

May 10, 2014

『ニール・ヤング/ジャーニーズ』ジョナサン・デミ@LAST BAUS
田中竜輔

自らの故郷トロント州オメミーを2011年の世界ツアーのファイナルに選んだニール・ヤング。このフィルムで私たちはギターを持ったその人の姿より先に、コンサート会場マッセイ・ホールへと、自らハンドルを握って車を走らせようとするニール・ヤングの横顔を見る。ニール・ヤングに(あるいは彼の車をマッセイ・ホールまで別の車で先導する実の兄に)導れるトロントの短い旅。車を運転しながらこの片田舎での思い出を語り続ける...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 AM

May 8, 2014

『ザ・シャウト/さまよえる幻響』イェジー・スコリモフスキ@LAST BAUS
隈元博樹

 穴のあいた缶詰をひっかく、グラスの淵を指でこする、タバコに火をつける……。あらゆる音源をダイナミックマイクで録音し、その振動音を電気信号に変えてミキシングするアンソニー(ジョン・ハート)に対し、クロスリー(アラン・ベイツ)がポツリと挑発する。「君の音は空疎だな」。どこか自信さえうかがえるその一言に、笑みを浮かべるのも無理はない。彼にはこの世の生物を一瞬にして殺めるための「叫び」があるのだから。 ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:56 PM

『プラットホーム』ジャ・ジャンクー@LAST BAUS
結城秀勇

『プラットホーム』はシネスコの映画だと、長らく勝手に思い込んでいたのだが、実際にはヴィスタサイズだった。あの、石造りの狭い室内を光が零れる開口部方向にカメラを向けて撮る、初期ジャ・ジャンクースタイルを決定的に特徴づける美しいショット群と初めて出会ったのはこの作品だったが、その小さな家から一歩足を踏み出せば、巨大な山々や霞む地平線などの広大な中国の大地がどこまでも広がっている、そんな印象を持っていた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 AM

May 3, 2014

『アメイジングスパイダーマン2』マーク・ウェブ
結城秀勇

スパイダーマンが他のマーヴェルヒーローやDCヒーローよりもスペクタクル的な理由として、彼が重力や慣性といった物理法則に拘束されているから、そしてそれを利用して運動のダイナミズムを生み出すからだというのは言を待たないだろう。その運動の快感はおそらく、球技において走り回るプレイヤーを置き去りにしつつ一瞬でゲーム全体の状況を一変させるボールの動きを見つめることに似ているのではないか。スタンドの向こうに消...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:33 PM

April 28, 2014

『闇をはらう呪文』ベン・リヴァース、ベン・ラッセル
結城秀勇

未明の湖上で、カメラはゆっくりと360°パンする。 レンズが南東側に向かうにつれてほのかな陽の光とともに画面は白んでゆき、また次第に黒みを帯びていき、やがて再び北西方向を指したときにはスクリーンの大半が闇に沈む。その闇のもっとも深い部分、フィルムがほとんどなににも感光せずに残ったはずのその場所で、灰白色の蠕虫に似たデジタルノイズがにぎやかに蠢きだす。光量の少なさが一定の閾値を越えて、情報の無として...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:46 PM

『ゴダール・ソシアリスム』ジャン=リュック・ゴダール@LAST BAUS
田中竜輔

たとえばジェームズ・キャメロンは『タイタニック』で、豪華客船を直立させる様子を圧倒的なスペクタクルとして私たちの目の前に映し出した。一方でジャン=リュック・ゴダールは、船ではなく「海」そのものをひとつの壁としてスクリーンに屹立させることを選ぶ。もちろん『ゴダール・ソシアリスム』の海は、その上に浮かぶ豪華客船に乗り込んでいた人々(=イメージ)を落とし込みなどしない。ゴダールがこのフィルムにおいて真に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:53 AM

April 22, 2014

『クローズEXPLODE』豊田利晃
渡辺進也

 くすんだねずみ色の中に灰のような白い塊がふわふわと舞っている。小さい男の子が母親に手を連れられて孤児院へと連れて入るときに降っているこの雪は冷たいとか、重いとか、そんなことは考える由もなく、ただただ乾いていて、軽い綿のように見える。そして、例えばこの雪は、この映画で後ほど出てくる、ふたりの男が殴り合いをする産業廃棄場に舞う綿ぼこりか何かとまるで同じもののように見える。この2つの場面の雪がほとんど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:04 PM

April 13, 2014

『ダブリンの時計職人』ダラ・バーン
三浦 翔

 夕焼けの海辺の中でフレッド(コルム・ミーニイ)が見上げるのは、落書きをされた彼の車がいきなりクレーンで廃棄にされるという光景だ。ダラ・バーンという監督はもともとドキュメンタリーの監督だと聞いていたものだから、いかにも嘘っぽく見えるこの始まりには、正直戸惑ってしまった。ただそんなことは私の勝手な思い込みに過ぎない。時には幻想的な光を帯びるアイルランドの自然や街のなかでユーモアを炸裂させながら、どの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:25 PM

『チトー・オン・アイス』マックス・アンダーソン&ヘレナ・アホネン
隈元博樹

 カメラによって切り取られた現実のドキュメントと、カメラによって切り取られた現実のストップモーション。現実のドキュメントとは旧ユーゴスラビア以降の国々の現在やその記憶を語る人々の証言であり、ストップモーションとはその現実をもとに100パーセントの再生紙によってデフォルメされたモノクロ映像のことを指している。  ふたつの世界をマックス、ラースとともに媒介していくのは、スウェーデンから旧ユーゴへと向か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

April 10, 2014

『悪魔の起源 -ジン-』トビー・フーパー
結城秀勇

霧が怖いのは、たんによく見えないからではなくて、見通せない状況と見通せる状況の間にあるはずの境目、閾値がどこにあるのかわからないからなのではないか。くっきりと見えているものがだんだん遠ざかるにつれて、細部がぼやけ、シルエットだけがかろうじて判別できる状態になり、やがてなにも見えなくなる。澄んだ空気のもとであれば長大な距離を経て表れるそうしたプロセスが、極濃の霧の中では極限まで圧縮され、たった一歩の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:49 AM

April 1, 2014

『それでも夜は明ける』スティーヴ・マックィーン
渡辺進也

 最初に、まるでこれから起こることをダイジェストで示すように一連の様子が描かれる。サトウキビの収穫の仕方を教えられ、金属の皿に載せられた食事を素手で掴み、木の実からインクを作ろうとして失敗し、夜中横に寝る女奴隷に誘われる。そこにあるのは、陥ってしまったことに対してどうしようもないあきらめの表情なのか、それともうまくいかないことへのいらだちなのか。  『それでも夜は明ける』の原題は、’12YEARS...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 PM

March 14, 2014

『アメリカン・スリープオーバー』デヴィッド・ロバート・ミッチェル
高木佑介

 何か突飛なことをするには遅すぎる、でもこのまま終わってしまうのはつまらない。若さを無邪気に謳歌したいわけでも、少し背伸びして大人の気分を味わいたいわけでもない。夏の終わりの空気とともに揺らぐティーンエイジャーたちの、そんな感情。すぐに終わりが訪れることなど言われなくともわかっている、楽しくもありどこかもどかしくもあるその時間。実際にあるのかどうかもわからぬそのような一時期を迎えつつある人々のあり...全文を読む ≫

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March 8, 2014

『パリ、ただよう花』ロウ・イエ
三浦 翔

 この映画の後半に、印象的な場面がある。中国の知識人による、インタビューの場面だ。「中国では共同で見る幻想として映画があります。そうではなく、私たちが求める本当の映画とは悪夢のことなのです」この知識人とは、いわゆるロウ・イエの生き写しであるわけだが、中国政府に5年間の制作を禁じられた彼は、いまどのようにして、「映画」を撮り続けようとしているのか、そして彼の答えにある悪夢とはいったい何のことなのだろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:54 AM

『息を殺して』五十嵐耕平
田中竜輔

2017年の12月30日から2018年1月1日にかけてのとある清掃工場での出来事。未来と呼ぶには近過ぎて、現在と呼ぶには遠過ぎる、そのような『息を殺して』の時代設定とはいったい何なのだろう。このフィルムの登場人物たちは、どうやら自衛隊が「国防軍」と名前を変え、若い人々が戦地で命を落とすことが決して珍しい出来事でなくなった時代を生きているようだ。しかし一方で、彼らは2014年と同じような機種のスマー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:42 AM

March 4, 2014

『お気づきだっただろうか?』core of bells
徳永綸

「『怪物さんと退屈くんの12ヵ月』は降霊術と極めてよく似ています。」 公演フライヤーの裏にはそう書いてあった。core of bells――バンドという形態でありながらも、映画制作、ワークショップ、お泊りキャンプ、ホルモン屋などなど活動の範囲を自由に設定する彼ら(HPプロフィール欄参照)は、今年いっぱい、毎月一回ずつ舞台に立つらしい。それがこの「怪物さんと退屈くんの12ヵ月」という企画であり、その...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 PM

February 23, 2014

『ワンダー・フル!!』水江未来
隈元博樹

作品は本来「work」と呼ばれ、なした仕事が積もり積もれば「works」となる。だから作品を作ることが仕事である以上、作家は労働者であり、作品を作り続けることが労働の集積となる。いっぽう仕事は「job」とも言い換えられるのかもしれない。だけど「仕事をしろ」「定職に就けよ」と日々のなかで口酸っぱく言われてやってしまうものが「job」ならば、能動性を孕んだ労働こそが「work=作品」であり、やっぱり作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 PM

『ハロー、スーパーノヴァ』 今野裕一郎
汐田海平

北千住を拠点とし、演劇・映画・写真等ジャンルを横断しながら、独創的な作品を生み出しているユニット・バストリオ主宰の今野裕一郎。彼が様々な手法を通して表現し続けるものは「日常」であると同時に、「寓話」でもある。   バストリオは今冬、東京を中心に、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアでもツアーを行うエレクトロ・アコースティックユニットminamoとのコラボレーションでも注目された『100万回』の公演...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:06 PM

February 22, 2014

『ラッシュ/プライドと友情』ロン・ハワード
結城秀勇

このストレートに痛快な作品をストレートに痛快だと言おうと思って書き始めたのだがどうもうまくいかない。男がふたりいる、マシンが二台ある、そのどちらかが世界一。それでおもしろくないわけないだろ、ごちゃごちゃ言うな、ってな具合にいけばよかったのだが。そもそも『ラッシュ/プライドと友情』の痛快さはそれほどストレートなものではないのかもしれない。 というのも私の思い違いでなければ『ラッシュ』は、ドイツGP当...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:09 PM

February 13, 2014

『祖谷物語-おくのひと-』蔦哲一朗
隈元博樹

35ミリのシネスコで捉えられた「祖谷(いや)」とは、40近くの山村集落からなる祖谷山地方の通称である。現在は徳島県三好市に合併された限界集落であり、かつて屋島の戦いに敗れた平氏の残党たちが、平家復古の望みをつなぎつつ、身を潜めて暮らした場所でもあるらしい。『祖谷物語-おくのひと-』とはそうした平家伝説の諸説しかり、いわゆる「秘境の地」と呼ばれる特別なロケーションのもとで撮影されたフィルムだ。 残念...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:33 AM

January 28, 2014

『Dressing Up』安川有果
松井宏

 そのプリンセスは自分の血に呪いがかけられていることに気づく。いまはもういない母がかつて患っていたなにかを、自分もまた受け継いでいるのだと。母は自分のなかにあるそれに耐えられず自殺したのだろうか? わからない。だがとにかくそのなにかが、呪いが、自分の身体のなかを流れていることは確かだ。いや、その少女は自らのそんな血に気づいた瞬間から、プリンセスとなるのだった。おぞましさと気高さが彼女のなかでひとつ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:27 PM

January 14, 2014

最高の映画作家、ジャン・グレミヨン
ステファン・ドゥロルム

第17回「カイエ・デュ・シネマ週間」ジャン・グレミヨン特集:2014年1月17日(金)~2月2日(日)フランス新世代監督特集:2014年2月14日(金)~2月16日(日)@アンスティチュ・フランセ東京 ジャン・グレミヨンの著作や言葉を出版することは、 彼が映画の伝道師であり、理論家であったことを明らかにするだろう  呪われるとはどういうことなのか? それは自分のことについて他のいかなる言い換えも不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:09 AM

January 7, 2014

『A touch of sin』ジャ・ジャンクー
増田景子

ジャ・ジャンクーは「世界」を描こうとしている。それは世界名所を寄せ集めた「世界」を舞台にした『世界』だけに限らず、ノイズを編集し、記憶を再構成することで「ある物語」だけではなく、その物語が置かれている土台の「世界」までもカメラに収めてきた。2013年の新作『A touch of sin』では、新聞の三面記事から着想を得たという、中国各地で起きた貧困をめぐる大なり小なりの4つの犯罪を描く。 驚くべき...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 AM

December 10, 2013

『あすなろ参上!』真利子哲也
結城秀勇

愛媛県松山のご当地アイドル「ひめキュンフルーツ缶」と愛媛のゆるキャラたちを起用し全編松山ロケにて製作された『あすなろ参上!』という全6話のドラマを見た素朴な感想は、松山ってほんとにいいとこそうだな、ということである。 その「いいとこ」そうな感じはどこからきたものなのか。一話目のオープニングを彩る『坂の上の雲』的な雰囲気の映像からくる、歴史ある街な感じかといえば、そうでもあるがそれだけではない。梅...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:24 PM

November 27, 2013

『フラッシュバックメモリーズ 4D』松江哲明+GOMA&The Jungle Rhythm Section@立川シネマ・ツー
田中竜輔

『フラッシュバックメモリーズ 3D』は見逃してしまっていた。だから『フラッシュバックメモリーズ 4D』が、3Dヴァージョンからどう変化したものなのかということは(特に音響の側面において)言えない。けれども今のところ二夜限りのこの「作品」に圧倒され、そして感動した。なぜなのだろう。まだ全然まとまっていない考えを、ひとまず言葉にしてみようと思う。ここには、現在の映画をめぐっての、そして現代の上映をめぐ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:07 PM

November 25, 2013

『悪の法則』リドリー・スコット
高木佑介

 もちろん、『ノーカントリー』(07)をすでに見ている者としては、リドリー・スコットの手によるこのコーマック・マッカーシー脚本の映画に少し物足りなさを感じもするが、それでもとても面白く見た。麻薬ビジネスに足を踏み入れた野心溢れる弁護士=カウンセラー(マイケル・ファスベンダー)の転落と、彼が支払うその代償。この物語は、たしかに色気あるさまざまな登場人物たちが交錯するものの、ほぼそれだけしか語っていな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:26 AM

November 21, 2013

ALC CINEMA vol.4 『やくたたず』三宅唱
隈元博樹

青春映画に流れる時間には、絶えず終焉の影が潜んでいる。徴兵を間近に控えた若者たち、ひと夏のバカンスがもたらす出会いと別れ、結婚や葬儀による通過儀礼もそのひとつだろう。その必要不可欠な「終焉=リミット」とは、時代とともにさまざまな方法で語り継がれてきた。もちろんそれは、若者時分のものだけではない。老若は関係なしに、青春は己の記憶として生き続けていく。 作り手が青春映画というジャンルを選ぶならば、「終...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 PM

November 6, 2013

『眠れる美女』マルコ・ベロッキオ
隈元博樹

たがいに交わり合うことのない3つのマリアの物語は、テレビに映る植物状態のエルアーナ・エングラーロとつねに伴走している。昏睡状態の妻を安楽死させたウリアーノ(トニ・セルヴィッロ)とその娘マリア(アルバ・ロルヴァケル)、かつて舞台女優だったディビナ(イザベル・ユペール)、そして医師のパッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)と名もなき精神疾患者ロッサ(マヤ・サンサ)。彼らはエルアーナの尊厳死を巡る2...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:41 PM

October 30, 2013

『華麗なるギャツビー』バズ・ラーマン
結城秀勇

「アメリカでは身元不明の死体を「ジョン・ドー」と呼ぶが、身元不明の生者を「ジェイ」と呼ぶのかもしれない」。そう樋口泰人は爆音収穫祭で上映の『マーヴェリックス』について書いたが、未見だったもうひとつの「ジェイ」の物語を見る。しかも音楽と製作にはJay-Zが名を連ねている! それにしても、ジェイ・ギャツビーほど、「身元不明の生者」と呼ぶにふさわしい者はあるまい。ドイツの皇帝のいとことも暗殺者だとも噂さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM

October 20, 2013

『ウルヴァリン:SAMURAI』ジェームズ・マンゴールド
高木佑介

 公開から時間が経ってしまい、遅きに失してしまったが、このジェームズ・マンゴールドの最新作について、と言うよりも、思い返してみれば何故か全作品に付き合ってしまっている「X-MEN」シリーズについて主に。  ブライアン・シンガーらが手掛けた本筋の「X-MEN」三部作はまったく面白くなかったのにも関わらず、そこからスピンオフした『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09、ギャビン・フッド)、その後に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:05 AM

September 24, 2013

『映像の歴史哲学』多木浩二 /今福龍太編
長島明夫

 多木浩二が2011年4月に82歳で亡くなった後、多木に関連する本がいくつか出版された。1991年刊行の磯崎新との対談集『世紀末の思想と建築』の復刊(岩波人文書セレクション、2011.11)もそのひとつに数えられるかもしれないが、新刊の著作としては、2007年の講演をまとめた『トリノ──夢とカタストロフィーの彼方へ』(多木陽介監修、BEARLIN、2012.9)と、主に1970年代の建築やデザイン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:32 PM

『祭の馬』松林要樹
結城秀勇

『花と兵隊』という映画を見た誰もが抱く感想なのではないかと思うのだが、私もまた多分に漏れず、この映画からビルマ・タイ国境にとどまった旧日本軍兵士の数奇な運命などといったことを考える以前に、まず真っ先に「みんな奥さんがとんでもなくカワイイな」と思ったのだった。それとほとんど同じレベルで、『祭の馬』の冒頭10分間ずっと思っていたのは、映る馬のどれもがみな美しい顔をしているということだ。彼らは震災によっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:39 PM

September 9, 2013

『La Jalousie(嫉妬)』フィリップ・ガレル
槻舘南菜子

ほぼ2年の歳月をかけていた企画――前作『灼熱の肌』(11)と同様、イタリア、チネチッタを舞台とし、モニカ・ベルッチ、ルイ・ガレル、ミシェル・ピコリ、ローラ・スメットを迎え、映画撮影と現実が交錯していくような作品となる予定だった――が頓挫した後、ほんの数ヶ月で書かれたシナリオと3週間の撮影。フィリップ・ガレル自らもっとも「無意識」に近い映画と称する『La Jalousie』のモノクロ、シネマスコー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:33 PM

August 30, 2013

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』J.J.エイブラムス
結城秀勇

もはや船長というよりただの上陸部隊の隊長じゃないか、という感じのUSSエンタープライズ号の艦長ジム・カークは、登場シーンからすでにとある惑星の原住民に追われている。その作戦の実行の際に絶体絶命の危機に陥ったミスター・スポックの命を救うため、現地の住民の文化に干渉すべからず、という規則を破り、カークは住民たちにエンタープライズの姿を見せながらもスポックの命を救う。そして助けたスポックからは規則を破っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:45 AM

August 28, 2013

『不気味なものの肌に触れる』濱口竜介
結城秀勇

キャストの名前が表示されていくのと平行して繰り広げられる、染谷将太と石田法嗣のふたりによるダンスで、この作品は幕を開ける。手のひらや腕が相手の体に触れるか触れないかの距離をとるのにあわせて、ふたりの体幹の位置関係が変わっていき、石田が染谷に振れてしまうことで、そのダンスは中断される。もちろん「触れるか触れないかの距離」と書いたのは修辞に過ぎなくて、距離があるというからには触れてはいない。言ってみれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 PM

August 14, 2013

『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリン
結城秀勇

スプリングはおろかサマーも半ば終わったというのにやっと『スプリング・ブレイカーズ』を見た。最高だった。 だいたい、おれは大学生が嫌いだ。中学や高校には、学校になんか微塵も来たくもないけどサボって遊びに行く場所もそうそうねえから仕方なく来て、この平板な時間をいかにしてやり過ごすか考えてるヤツらがいて、そういうのとは仲良くなれる。でも大学になるとそういうヤツらは本当に学校にこなくなるから、学校にいるの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 PM

July 10, 2013

『3人のアンヌ』ホン・サンス
隈元博樹

『3人のアンヌ』は映画学校に通うウォンジュ(チョン・ユミ)が、短編のシナリオを書くことからはじまる。だけど彼女が黄色い小さなメモ用紙に書くシナリオは、映画学校の課題でもなければ、プロデューサーを説得するものでもない。借金取りから逃れるために、彼女は民俗学者の母(パク・スク)と海辺の街モハンへ逃れてきたらしく、シナリオを書きはじめたのは、このことに対する腹いせだという。「それでこの映画ははじまってし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:23 AM

June 23, 2013

『遭難者』(仮)『女っ気なし』(仮) ギョーム・ブラック
代田愛実

パリの友人の評判通り、とても面白い作品だった。個性があり、次の作品も見たいという欲求に駆られる監督の発見に、胸を躍らせた。 撮影された土地への愛着、友人を起用したキャスティング、撮影時ちょうど孤独を感じる時期だったという監督、季節や時間帯で変化する光と、脚本に書かれていない役者の突発的なアクションを大切にする姿勢・・・それら全てがこの2作品で成功している。時間を長く取る/切り取るといった配分が絶妙...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:28 PM

June 14, 2013

『女っ気なし』ギヨーム・ブラック
増田景子

「この男、まじで女っ気ないな」と確信したのは、食べ方からだった。ふたについたアイスクリームまできちんと指でなめ、いちごに見えなくなるほどスプレークリームをかけたその上にざらめをかけて食べる。どうやら彼に気があるような若い女性も、そのいちごの食べ方を前に「いつもそんな風に食べているの?」と一瞬引いていた。こんながりがりと音を立てて(ざらめのせいだ)いちごを食べるような奴が女にもてるわけがない。「女っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 AM

May 19, 2013

『グッバイ・ファーストラブ』ミア・ハンセン=ラブ
代田愛実

 前半に展開される若い2人の恋愛事情の描写は、監督が女性だからなのだろうか、女の私に取っては、いささか凡庸に映った。ロメールであれば、トリュフォーであれば、もう少し女性に対する"あこがれ"の視点が介入するであろう——女という生き物の、そばにいても手の届かないミステリアスな部分や、理解に苦しむ奔放な姿が描かれたであろう——、だからこそ、観ている者をときめかせたるのだが、このクリシェのような、凡庸さは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:25 PM

May 18, 2013

『コズモポリス』デイヴィッド・クローネンバーグ
代田愛実

 2台のリムジンがカンヌを湧かせていたのは、ちょうど1年前の今頃のことだろう。『ホーリー・モーターズ』と『コズモポリス』。レオス・カラックスとデビッド・クローネンバーグの、全く似ていないような2人の監督の奇妙な共通項にとても驚かされた。  同名小説をたった6日間で脚本化したというし、台詞はほぼ原作通りだというから、サマンサ・モートンが発する散文詩のような魅惑的な言葉についてもここでは言及する必要は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:30 PM

May 2, 2013

ベン・リヴァース インタビュー

location.href="/interview/benrivers/"; 今年の2月に開催された第5回恵比寿映像祭(http://www.yebizo.com/)での、ベン・リヴァース『湖畔の2年間』との出会いは本当に幸福なものだった。森と雪と湖に囲まれた中で暮らすひとりの初老の男性を見つめる90分間。16mmの粒子とコントラストが織りなす映像、そこに被さる音。それらはかつて経験したことのない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:46 AM

April 23, 2013

『グッバイ・ファーストラブ』ミア・ハンセン=ラブ
中村修吾

 ノースリーブのワンピースを着た女性が、麦わら帽子を被り、木の杖を手に持ち、木々の葉や草の美しい緑に囲まれた道を歩いている。傍らには誰もおらず、彼女はひとりで川へと向かっている。あたりの風景には、空から南仏の明るい陽光が降り注いでいる。  自転車での走行や街中での歩行や部屋の中での移動といった、フレームの中の空間を動く人物を捉えたショットが多いミア・ハンセン=ラブの『グッバイ・ファーストラブ』にお...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

April 15, 2013

『小さな仕立屋』ルイ・ガレル
結城秀勇

この映画の、コントラストの強い白黒で映し出されたパリとそこにいる男女の姿に、父フィリップの影響を見るのはたやすい。テイラーとしての師匠である、二世代は離れた老人と向き合う主人公アルチュールの顔に、『恋人たちの失われた革命』で故モーリス・ガレルとテーブルを挟んで対峙していたルイの面影が重なる。しかしこの作品全体からより強く感じるのは、高名な映画監督を父に持った青年が先天的に継承した演出の遺伝子とい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:41 PM

ALC CINEMA vol.2 『PASSION』濱口竜介
増田景子

ALC CINEMAが催されたのは、建築・アート関係の書物が天井近くまで並べられた横浜吉田町のArchiship Library&Caféで、木枠できちんとゾーニングされているため圧迫感はないが、40人座ればいっぱいになってしまう小さなスペースである。2階が建築事務所でもあるこの場所で「映画」「場所の記憶」「そして、これから」を再考しようというALC CINEMAが第2回目の作品として選んだのは濱...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:40 PM

April 11, 2013

『ホーリー・モーターズ』レオス・カラックス
増田景子

かつて見た映画がある時、自分の日常にすっと寄り添ってくることがある。 初めてリアルタイムで見られるレオス・カラックスの新作、そして監督の来日とお祭り騒ぎの熱狂のなか、午前中に日仏(現アンスティチュ・フランセ東京)で行われた廣瀬純さんの映画講義(スペシャルゲストにカラックス!)を受け、そこから渋谷に移動してユーロスペースでの日本初上映を立見席で見たのは、まだ息の白かった1月末だった。 その時は霊柩車...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:50 PM

March 30, 2013

『オデット』ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
田中竜輔

 『オデット』は、ペドロというひとりの同性愛者の男の死を契機に、彼の恋人であるルイという男、そして同じアパートの住人であっただけのつながりしか持たない、恋人と別れたばかりのオデットという女を出会わせる。ひとりの男の死を決定的な喪失として生きる男と、一方でその死を自らの妊娠願望を叶えるための新たな出会いとして利用する女。二重の身体という映画の原初的な欲望を原動力とするこのフィルムは、当然のことながら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:31 AM

March 23, 2013

『あれから』篠崎誠
結城秀勇

かつて安井豊作が語ったという「黒沢清のカタカナタイトル問題」を、いろんな人経由で聞いた。本人からは聞いていないので正確にどういう問題提起だったのかはわからないのだが、それを聞かせてくれた人たちの意見を捨象すると、黒沢清の映画にはカタカナのタイトル、それもおそらく他の監督ならカタカナにしないような言葉のタイトルがあり、それらにはなんらかの共通性がある、ということだった。これに倣ってもし「○○の漢字...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 AM

March 17, 2013

東横線渋谷ターミナル駅
藤原徹平

3月16日から、副都心線と東横線が相互乗り入れし、東武東上線~副都心線~東横線~みなとみらい線が一つにつながった。これで気持ちよく泥酔すれば埼玉県・川越から東京を縦断して横浜・元町中華街まで寝過ごすことが可能になったわけだ。僕は1975年生だが記憶している限り、横浜駅はずっと昔から工事中で、つい先日駅ビルを見上げてみたら半分くらいなくなっていることに気が付いた。詳しい人に聞いてみれば全部解体して...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 AM

February 27, 2013

「週刊金曜日」2013年2/22号
結城秀勇

人間は悲しいものだ。希望の少ない人ほど善人だ。正確な引用ではないが、先日見たフレデリック・ワイズマンの『最後の手紙』にそんな言葉があった。ワシリー・グロスマンの『人生と運命』中の一章を戯曲化したものを、主演女優のカトリーヌ・サミーのためにワイズマン自身が脚色した一人舞台。サミー演じるアナ・セミノワはユダヤ人収容所の中で、希望を抱く人間ほど利己的になり、生存本能の奴隷となっていくさまを見る。医者で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

February 14, 2013

『アウトロー』クリストファー・マッカリー
高木佑介

 この映画によってトム・クルーズは現代のシャーロック・ホームズになった。と、見終わったあとにさまざまな手続きを省略して秘かに呟きたくなるような作品、それがこの『アウトロー』である。  元軍のエリート捜査官で今はアメリカ各地を放浪とする謎の人物ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)が、数奇な縁あって無差別殺人事件の容疑者からの要請で捜査に乗り出し、(いろいろ問題はあったけれど)見事この壮大な陰謀事件...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

February 8, 2013

『湖畔の2年間』ベン・リヴァース
結城秀勇

人気のない森に降り積もった雪。その中を歩いて行く男の後ろ姿。それを形作る白黒の粒子、不規則に変化する影のグラデーション。16mmで撮影(そしておそらく監督自身の手で自家現像)されさらに35mmにブローアップされた映像は、粒子の大きさやノイズの乗り方にも関わらず、紛れもなく美しい。もちろんその美しさとは、解像度や輝度や鮮明さといった、いつしか映像の美しさを語るのにあたかも必要不可欠なもののように振...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:49 PM

February 6, 2013

『あなたはまだ何も見ていない』アラン・レネ
梅本洋一

 この作品の幾重にも折り重なった豊饒さを書き記すにはかなりの字数が必要だろう。かつての和田誠の書物のタイトルにもなった『お楽しみはこれからだ』という『ジャズ・シンガー』の台詞You ain’t seen nothing yetからタイトルを借りたこのフィルムの豊饒さを一端でも語ろうとすれば、オルフェウスとエウリディケの神話のように、ぼくらも冥界への長い旅に出なければならない。  ジャン・アヌイの『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 PM

January 30, 2013

『コックファイター』モンテ・ヘルマン
結城秀勇

『カリフォルニア・ドールズ』のピーター・フォーク、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』のベン・ギャザラ、あるいはもっと時代をくだって『さすらいの女神たち』のマチュー・アマルリック。彼らが演じた役柄に対する愛着をどうしても抑えきれない。女子プロレスのマネージャー、ストリップバーのディレクター、バーレスク劇団のプロデューサー、といった彼らの役柄は、つまるところ女たちを喰い物にしているのだし、その免罪...全文を読む ≫

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『ホーリー・モーターズ』レオス・カラックス
隈元博樹

目の前に映る登場人物たちに、僕たちはそれぞれの行動原理や動機を求めたがる。登場人物の頭に、必ず「なぜ、どのようにして」といった簡単な疑問詞を投げかけるのだ。行動原理や動機が説得される場面に出くわすと、僕たちはそのフィルムの浄化作用(=カタルシス)に触れ、ポンと膝を打ったように満足感を覚える。だけどカタルシスは時に迂回し、見え隠れするものだ。そう最初からたやすく目の前に現れてくるものでもない。一度全...全文を読む ≫

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November 3, 2012

『5windows』劇場用編集版と、円山町篇
代田愛実

『5windows』劇場用編集版 何度も繰り返される「ニジゴジュップン」という声(=音)と、ピっという電子音とともに表示される「14:50」。 ニジゴジュップンとはある時刻を指す。あるいは、60秒間の時間を指す。あるいは、14:50ごろ、という曖昧な時刻と曖昧な長さの時間を指す。 いったいどのニジゴジュップンが正解なのか?という問いが立つかもしれないが、答えは、「どれも正解」。 "14:50"ある...全文を読む ≫

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October 28, 2012

【TIFF2012】映画祭後半レポート
代田愛実

10月25日−26日、鑑賞作品〈コンペティション部門〉『イエロー』(ニック・カサヴェテス/アメリカ)〈日本映画・ある視点部門〉『少女と夏の終わり』(石山友美)〈ワールドシネマ〉『5月の後』(オリヴィエ・アサイヤス)『ヒア・アンド・ゼア』(アントニオ・メンデス・エスパルザ)『眠れる美女』(マルコ・ベロッキオ)前半に比べて明らかに鑑賞本数が減ってしまった。25日の最後に観た『5月の後』が、あまりにも大...全文を読む ≫

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October 26, 2012

『ミステリーズ 運命のリスボン』ラウル・ルイス
結城秀勇

パンフレットに掲載のインタヴューで、ラウル・ルイスは次のように語っている。「連続ドラマは、全てを消化することのできる優れた肝臓を持つ生物である」。この作品はラウル・ルイスという映画史でも有数の巨大な肝臓をもつ監督の持つ消化力が遺憾なく発揮された作品であり、同時に観客の肝臓を信頼した「ひらめき」に満ちた作品となっている。壮大で優雅であると同時にどこか胡散臭くもありそこがまた魅力であるという、ルイス...全文を読む ≫

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October 25, 2012

【TIFF2012】前半レポート
代田愛実

10月22日−24日、鑑賞作品 〈コンペティション部門〉『風水』(ワン・ジン/中国)『ティモール島アタンブア39℃』(リリ・リザ/インドネシア)『アクセッション ― 増殖』(マイケル・J・リックス/南アフリカ)『シージャック』(トビアス・リンホルム/デンマーク)『黒い四角』(奥原浩志/日本)『NO』(パブロ・ラライン/チリ=アメリカ)『未熟な犯罪者』(カン・イグァン/韓国)『もうひとりの息子』(ロ...全文を読む ≫

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【TIFF2012】レポートvol.02 10月22日(月)
増田景子

この日は当日券の列に並ぶところから始まった。お目当ては在仏カンボジア人の若い監督の撮った『ゴールデン・スランバーズ』(監督:ダヴィ・チュウ)。ポル・ポト政権前の幻のカンボジア映画全盛期といってもピンとこないが、見た人は誰もがおもしろいと口を揃えて言うこの映画のために朝から並んだのだ。座席指定やチケット発券で時間がかかっているのだろう、新しい映画史との出会いに胸をふくらましつつも、列の進みの遅さに業...全文を読む ≫

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October 23, 2012

『ゴールデン・スランバーズ』ダヴィ・チュウ
結城秀勇

 1960年代から70年代前半にかけて、東南アジアを代表する映画の都であったプノンペン。だがポル・ポト政権によって、産業としての映画は完全に崩壊し、またフィルム自体の圧倒的多数が消失した。本作品はそれらの失われた映像を巡るドキュメンタリーである。黄金期の映画を直接的に記録するはずのフィルムは失われており、したがって作品中に引用される映画のシーンはごくごく限られたものである。その代わりに、その時代に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:42 PM

TIFF2012に寄せて
代田愛実

第25回東京国際映画祭が始まっている。 昨日は東京国際映画祭にてコンペ作品4本、ある視点部門1本を鑑賞した。 コンペは中国、インドネシア、南アフリカ、デンマークと国際色豊か。どの作品もある個人の日常を追う事で背景となる国や社会を映し出そうとする企画意図があるようだが、個人的キャラクターの掘り下げ不足によって、結局は個人的な物語にまとめてしまっている感があった。どの主人公にも辛い状況が次々と襲ってく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:00 AM

October 22, 2012

【TIFF2012】レポートvol.01 10月21日(日)
増田景子

今日はインドの右に始まり、左で終わった1日であった。 午前中はザ・ボリウッド映画の『火の道』(監督:カラン・マルホートラー)を見る。どうやら最近インドもシネコン化が進み、回転のいい2時間ものが増えているらしいのだが、この映画はそんな波に抗いながらの167分。もちろんアクションも歌もダンスも盛りだくさん。しかしボリウッドをあなどってはいけない。ハリウッド映画に比べ、ボリウッドの方が昔堅気な職人気質な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:29 AM

October 3, 2012

『バビロン2―THE OZAWA―』相澤虎之助
高木佑介

 東南アジアをバックパッカー旅行していたという監督の相澤虎之助は、自分や欧米人がビーチで能天気に遊んでいるこの旅には何か欠けている、それは恐らく「歴史」だと思い至り、『花物語バビロン』(97)から始まるこの「バビロンシリーズ」を構想したという。 「なぜなら歴史とは列強国の植民地支配の歴史であり、その基で経済と文化の交流が行われていることを意味するからです。過去を忘れ未来に向けて意識を覚醒しようとも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:28 AM

September 20, 2012

『蜃気楼』製作報告イベント『今、僕は』竹馬靖具
増田景子

竹馬靖具監督の最新作『蜃気楼』の製作報告イベントに行ってきた。しかし『蜃気楼』の撮影は現在7分の1しか終わっておらず、今回のイベントでは前作の『今、僕は』(09)と数分の『蜃気楼』の特報の上映、そしてゲストによるトークショーが行われた。なので『蜃気楼』についてふれる前に、『今、僕は』の話をさせてもらう。  『今、僕は』はとてつもなく閉鎖的な映画だ。主人公は20歳の引きこもり青年。部屋にはゲームや漫...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 AM

September 13, 2012

『適切な距離』大江崇充
隈元博樹

映画における現実と虚構とのはざまのなかで、虚構が現実へと歩み寄っていく時間を思い起こしてみることがある。たとえば古参の隠遁画家が、新参画家の恋人である女性とのやりとりを通じ、その豊満な裸体を精緻に描いていくあの時間(リヴェットの『美しき諍い女』)や、舞台と私生活とのはざまを往来する老名優の時間(オリヴェイラの『家路』)など、映画には何にも代えがたい奇妙なひとときが存在する。挙げればキリがないけれど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:46 PM

August 10, 2012

『親密さ』濱口竜介
結城秀勇

 当然だが、電車が走る線路というものは平行して進むふたつの線からできている。この映画のタイトルである「親密さ」とはその線路みたいなものなのではなかろうか。ふたつの長い長い線を、どこまでも離れず同じ距離で寄り添って走るものだとみなすのか、それともどこまで行っても決して交わらないものだと見るのか。それだけが親密さを巡って問われる唯一の事柄なのであって、そのことに比べれば実際にふたつの線の間にある距離な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 PM

August 3, 2012

『アメイジング・スパイダーマン』マーク・ウェブ
結城秀勇

おそらく前シリーズと『アメイジング〜』との最大の違いは、ピーター・パーカーの父の存在だ。いや前シリーズだけでなく、幾度となく繰り返されてきたスパイダーマンのリメイクにおいて、これほどまでに父親の存在がクロースアップされたスパイダーマンはないだろう。たとえばサム・ライミ版では彼はあらかじめ孤児なのであって、そのことを改めて思い出させるかのように伯父は死ぬ。ピーターに力を与えるクモにしたって、ほとん...全文を読む ≫

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July 18, 2012

『愛の残像』フィリップ・ガレル
高木佑介

 恋人との結婚を間近に控えているフランソワ(ルイ・ガレル)は、1年前に彼が捨てたことで死んでしまった元恋人・キャロル(ローラ・スメット)の幻影を見るようになる。「あなたが愛したのは私だけ。あなたは今の人生に飽きている。だから私のほうに来なさい……」。鏡の中のキャロルからの問いかけに対し、はじめは自分に言い聞かせるかのように今の恋人エヴ(クレマンティーヌ・ポワダツ)への愛を口にしていたフランソワも、...全文を読む ≫

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July 12, 2012

『5 windows 吉祥寺remix』
安田和高

 Cinema de Nomad「漂流する映画館」。それは街全体を映画館に変えてしまう試み。『5 windows』は、5つの空間と、5つの物語を、観客それぞれが街を漂流しながら体験するというもので、昨年の10月にシネマ・ジャック&ベティを起点としてロケ地である黄金町界隈で上映された。じっさいにスクリーンで見た風景のなかを歩き、同じように空を見あげ、同じように「緑色に濁った川」の匂いを嗅ぎ、同じよう...全文を読む ≫

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July 5, 2012

『バビロン2ーthe OZAWAー』相澤虎之助
結城秀勇

「旅行なんてなあ、結局誰かが占領したり侵略したところに行くだけなんだよ」、そんなようなことを伊藤仁演じる古神は言う。だからだろうか、この映画のあらゆる映像や音や言葉は、○○の後に映し出され、鳴り響いているように感じた。映画における映像や音は本質的に現実より先には起こらない、というような原理的な言説としてではなくて、もっと経験的な考察として、たとえば旅行者として踏みしめているこの地面は、侵略者や征...全文を読む ≫

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June 26, 2012

ユーロ2012──(3)クォーターファイナル
梅本洋一

 結局まったく予想通りの4チームが残った。ポルトガル対チェコも、ドイツ対ギリシャもアップセットがなかった。スペインが順当に勝利し、イタリアがしぶとく残った。  4ゲームのうち最低だったのが、スペイン対フランス。ローラン・ブランのレブルーは、前半を0-0で終えるつもりだったのだろうが、シャビ・アロンソの一発でそのゲームプランが狂うと、ほとんど無抵抗。外していたナスリを入れたりしたが停滞したゲームに変...全文を読む ≫

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June 25, 2012

小出豊『綱渡り』ほか
結城秀勇

小出豊の作品には必ずDVが存在する。それは彼の監督作だけではなく、『県境』や佐藤央『MISSING』といった他監督への脚本提供作にも必ずある。 ここでまず付け加えなければならないのは、もちろんDVの定義などではなく、また一ぬ見してそれとわかる具体的なアクションとして記録されたヴァイオレンス=Vのありようですらなく、なにはさておき彼の作品におけるドメスティック=Dの重要性なのだ。鋭利なVよりも、内部...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:15 AM

June 22, 2012

ユーロ2012──(2) グループリーグ総括
梅本洋一

 もう明日の明け方から準々決勝だ。結局アップセットはなかった。チェコ対ポルトガル、ドイツ対ギリシャとだいたい見るまえから勝負がついている──もちろん、ゲームだから何が起こるか分からないのだが、こういうゲームは、チェコやギリシャには健闘して欲しいが、PK戦でも何でもいいからポルトガルとドイツが勝利を収めて欲しい──2ゲームの後に、フランス対スペイン、イングランド対イタリアという、これまた最初の2ゲー...全文を読む ≫

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June 14, 2012

ユーロ2012──(1) オランダは古くなった!
梅本洋一

 ユーロのグループ・リーグも2巡目に入った。すべてのチームが1ゲーム以上消化したことになる。ポーランド=ウクライナという馴染みのない場所での開催。毎ゲーム開催場所を地図で確かめている。ワルシャワやキエフといった大都市名は知っているし位置も分かるが、ハリコフとかリビウなんて初耳でいったいどこにあるのか確かめてみるとハリコフはハリキウだったりするし、ポーランドにしてもグダニスク、ボズナニという場所は知...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:06 PM

『ミッドナイト・イン・パリ』ウディ・アレン
結城秀勇

冒頭、まるで絵ハガキのような構図で切り取られたパリの街角が連なっていく。イメージ通りのパリ。だがだからといって、それらが魅力を欠いているわけではない。ひとつひとつの映像というよりも、雨が降りだし、止み、いつの間にか昼は夜になる、そうした時間の流れに、気づけば魅了されている。 同じ事が、オーウェン・ウィルソンが行う時間旅行にも言える。その行き先もまたイメージ通りの「黄金時代のパリ」なのだ。フィッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:20 PM

June 8, 2012

『ミッシングID』 ジョン・シングルトン
結城秀勇

 ここまで顕著になったのはいつからだろうか、気付くとアメリカ映画の主人公たちは皆、アイデンティティを探している。ヒーローやヒロインたちも(『アヴェンジャーズ』の設定説明だけのために作られたかのような『キャプテン・アメリカ』、ついに幕を閉じるノーランの「バットマン」)、そうではない平凡すぎる人々も(『ヤング≒アダルト』『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』)。単に『ボーン・アイデンティティ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:51 AM

May 28, 2012

『ダーク・シャドウ』ティム・バートン
増田景子

 盟友であるジョニー・デップ、ミッシェル・ファイファー、エヴァ・グリーンにヘレナ・ボナム=カーター。さらに最近話題のクロエ・グレース・モレッツやガリー・マクグラス。ざっとクレジットを並べるだけで、この映画に出ている面々がどれだけ華やかかということが分かってもらえると思う。それも、すべては「監督ティム・バートン」という名のもとに集まっている。わたしは渋谷駅構内で、キャストがひとりずつ映ったポスターが...全文を読む ≫

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May 26, 2012

『先生を流産させる会』内藤瑛亮
田中竜輔

 現実の事件において用いられた「先生を流産させる会」という言葉、その得体の知れなさにこそ、このフィルムの着想は得られたのだと、内藤監督はすでにいくつかの場所で証言している。たとえば「先生を殺す会」のような直接的な悪意とは異なり、より曖昧で、より底知れぬ異様さをしたためたこの言葉にこそ、『先生を流産させる会』というフィルムは突き動かされているのだと。しかしながら『先生を流産させる会』は、そのような不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 AM

May 14, 2012

『灰と血』ファニー・アルダン
田中竜輔

 パウロ・ブランコ製作によるファニー・アルダンの果敢な監督第1作、『灰と血』にはふたりの母がいる。ひとりは一族の歴史を支える白髪の女であり、もうひとりは夫の死を契機にその呪縛から一度は身を引いた女だ。三つの家族をめぐる複雑なシナリオの中で、彼女たちはつねに特異点としての役割を担っている。多くの場面で椅子に腰掛けながらも、そこに映る誰よりも強大な力を占有し、誰彼構わず檄を飛ばし、一族の法を強要する白...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:16 PM

May 6, 2012

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル
梅本洋一

 クロード・シャブロルは、この遺作で映画をかつてないくらいに抽象的な場に導いた。もちろん、形態はいつもの刑事物である。丁寧なことに、このフィルムのタイトルには、このフィルムをシムノンとブラッサンスに捧げるという言葉まで見つかる。つまりベラミー警視とは、メグレ刑事なのであり、キャリアも晩年に達したジェラール・ドゥパルデューは、メグレ=ベラミーのメランコリーをを演じるにふさわしい存在なのだろう。妻の出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:58 PM

April 27, 2012

『灼熱の肌』フィリップ・ガレル
田中竜輔

 豊満な肉体をしなやかに弾ませ、見知らぬ男性と踊る女優のアンジェル(モニカ・ベルッチ)に、その夫である画家のフレデリック(ルイ・ガレル)は「まるで娼婦みたいに見えた」と吐き捨てる。ひと組のカップルにおける深刻な危機を明確に示すこの言葉を耳にして、しかしそれに当惑せざるを得ないのは、映画が始まった時点ですでに成立していた(と、同時に破局していた)このカップルの育んだであろう「愛」のありようを、私たち...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:45 AM

April 8, 2012

『少年と自転車』ダルデンヌ兄弟
梅本洋一

 父親に捨てられた息子は、それでも父親を信じようとする。だってまだあそこに父親は住んでいる。だって、まだあそこに父親が買ってくれた自転車があるじゃないか。施設の指導員たちは、隙を見て常に脱出を試みようとする少年に「落ち着け、落ち着くんだ」と繰り返す。それでも脱出を繰り返す少年。  偶然、逃げ込んだクリニックの待合室で噛みついた女性と知り合い、彼女は、盗まれた自転車を少年に買い戻す。なぜか? そんな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 PM

March 16, 2012

『おとなのけんか』ロマン・ポランスキー
増田景子

『おとなのけんか』は黄色いチューリップと電話の映画だったと記憶しようと思う。 2011年にヒットした『ゴーストライター』(2010)の監督として記憶に新しい、ロマン・ポランスキーの作品が公開されている。ヤスミナ・レザの戯曲『大人は、かく戦えり』を映画化した『おとなのけんか』は会話ばかりの80分作品。戯曲から生まれた映画だけあって限られた空間を巧みに利用した室内劇で、登場人物も4人と少ない。しかし、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 PM

March 15, 2012

『グッバイ・マイ・ファースト・ラヴ』ミア・ハンセン=ラヴ
結城秀勇

 ミア・ハンセン=ラヴは井口奈己らとのトークで、『人のセックスを笑うな』と自分の作品とのドラマタイズにおける共通点は「暴力的なシーンの欠如」にあるのではないか、と語っていた。続けて、「暴力的なシーンを回避することはなにか保守的なことだと思われがちだが、むしろ暴力的なシーンが存在してしまうことの方がよほど因習的なのだ」とも言っていた。  その言葉は、これまでよく見えていなかった彼女の作品のある側面を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:44 PM

March 14, 2012

「恐怖の哲学、哲学の恐怖——黒沢清レトロスペクティヴによせて」
ジャン=フランソワ・ロジェ

 黒沢清は、B級映画とジャンル映画でデビューした多作の映画作家だが、彼は、国際的な舞台で次々に評価される、異論を挟む余地のないほどに個人的な作品世界を築き上げてきた。彼は恐怖と不安の映画作家だと考えられてきたが、恐怖映画の諸々の規則が、彼にあってはしばしば、それを通して日本の文化的な歴史と社会的な現実を垣間見せるプリズムにもなっている。その演出術は、自らの映画から、これまで実現されたことのない極限...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:24 PM

March 12, 2012

『ロング・グッドバイ パパ・タラフマラとその時代』パパ・タラフマラ、小池博史
増田景子

 2012年パパ・タラフマラが解散する、ということは知っていた。観劇するともらう分厚い折り込みチラシの束にたしか最終公演のフライヤーを目にしたからだ。でも、「パパ・タラフマラが解散する」ということが何を意味するかは知らなかった。さらに、パパ・タラフマラがどんな劇団で、どんな歴史を築いてきたかってことも知らなかった。そう、何も知らなかったのだ。 「パパ・タラフマラは1982年に小池博史を中心に結成さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:33 AM

February 19, 2012

『なみのおと』酒井耕&濱口竜介
松井宏

 声による圧倒的な体験。  酒井耕、濱口竜介という初めてドキュメンタリーを撮るふたりの監督によるこの作品は、声による圧倒的な体験と言い換えられる。ふたりは2011年3月11日の東日本大震災以後に宮城県に入り、各地の何人もの(何組もの)人々との接触を何度も重ね、やがて彼ら自身の体験をそれぞれ語ってもらい、そのなかの11人をこの作品に登場させている。昭和初期に同地域に発生した大地震を経験したおばあさん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

February 17, 2012

淡島千景追悼
梅本洋一

 映画って本当に不思議だ。森繁に「たよりにしてまっせ」と言われていたり、原節子の長年の友人の料亭の娘だったりした、あのキャピキャピしていて、屈託のない、それでいて頼りがいのある女性が、87歳でこの世を去ってしまった。映画の中ではいつも美しくて、行動的で、「いいなあ、こんな人が友だちにいたらな」といつも思っていた人が、実は、現実の世界では80歳をとおに越えていた。当たり前のことだ。小津安二郎(『麦秋...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:54 AM

February 16, 2012

『ドラゴン・タトゥーの女』デヴィッド・フィンチャー
隈元博樹

リスベット(ルーニー・マーラ)の背中から美尻にかけて彫られた漆黒のドラゴン・タトゥー。その美しいドラゴンから一瞬たりとも目が離せないかのように、気がつけば誰もがこの158分の「犯人探し」の旅へと巻き込まれていくだろう。ただしデヴィッド・フィンチャーのフィルモグラフィーをたどってみると、『セブン』では捜査中に連続猟奇殺人事件の犯人が自ら出頭してしまうことで「犯人探し」は終わりを告げた。『ゲーム』や『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

February 15, 2012

『ヒミズ』園子温
増田景子

園子温監督ははやくも震災を映画にとりこんだ。それが『ヒミズ』だ。結果、この映画は今後の被災地のひとつの可能性を描きだしたといえる。 この映画は古谷実による同名の漫画(2001-2003年連載)を原作とした映画で、9月に行われたヴェネチア映画祭ではコンペティション部門で主演の染谷将太と二階堂ふみがマルチェロ・マストロヤニン賞(新人賞)を受賞、1月から全国でロードショーが始まった。「普通」を夢見る中学...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 PM

January 30, 2012

『J・エドガー』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 イーストウッドは、あるインタヴューで、ものごころついたときからFBIの長官はずっとフーヴァーだった、と言っている。49年間も同じ地位になった人物なので、イーストウッドの感想も当然のことだろう。だが、ぼくはこの人をまったく知らなかった。この人の名前を知ったのも、イーストウッドが、ディカプリオ主演でこの人についての伝記映画を撮影中だというニュースを聞いたからだ。つまり、ぼくは、まったくの白紙でこのフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 PM

January 21, 2012

『永遠の僕たち』ガス・ヴァン・サント
梅本洋一

 このフィルムの原題はrestless。文字通りrestがない。「落ち着きがない」とか「動き続ける」とか、「そわそわしている」とか、だから「不安」や「不穏」だという意味になる。見知らぬ他人の葬儀に出席し続ける登校拒否生徒のイーノックは、ある葬儀で短髪で色白の少女アナベラに会う。  難病もの? 青春映画? どちらも当たっている。青春映画というのは、タイムリミットのある若さを疾走する映画であり、その極...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:49 PM

December 20, 2011

『ラブ・アゲイン』グレン・フィカーラ&ジョン・レクア
松井宏

「長年連れ添った妻に突然離婚を告げられた中年男スティーヴ・カレルがなんとか彼女を取り戻そうとがんばる」。そんなあらすじを読んだだけでわかるけど、これは典型的なリマリッジ・コメディである。つまり冒頭でさっそく駄目になったカップルが以降、どのように再生するかが問題となる。「再生するかどうか」じゃなくて「どのように」こそが、このジャンルの焦点だ。    その点『ラブ・アゲイン』は見事。妻エミリー(ジュリ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 PM

December 9, 2011

『カルロス』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

 このフィルムが5時間半という時間を通じて映し出すカルロス=イリイッチ・ラミレス・サンチェスとは、もちろんかつて世界を揺るがした極左テロリストのことだ。膨大な一次資料に目を通し、俳優の国籍や使用言語にも固執し、 いくつかのシーンでは現存する資料の中に再構築されたカルロス自身の言葉をそのままに使い、実在の関係者たちと面会するにまで至ったというオリヴィエ・アサイヤスの史実に接する態度は、きわめて誠実な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:37 PM

『ウィンターズ・ボーン』デブラ・グラニック
松井宏

 ファーストカット。ああ、16ミリ!と思い、それだけで画面に釘付けになってしまったのだが、エンドクレジットで「レッド・ワンで撮影」とあった。レッドというのはこんな画面まで可能なのか。しかしいったいどうやって、どんなプロセスであんな映像になるのか。正直よくわからないので、どなたかわかる方がいたら教えてほしいです。  バーバラ・ローデンの『Wanda』(70)も、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』(99)も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:16 PM

December 8, 2011

関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対明治 18-16
梅本洋一

 ちょっと遅きに失したが備忘録として今年の早明戦について。  早慶戦でツボにはまった早稲田のワイドに振る方法とキックパスだが、早明戦の明治では毎年のことだが、ここ一番のディフェンスをシャローで仕掛けてこられると、ふたつともうまく行かなかった。もちろん強風の影響がキックパスをためらわせたかもしれない。だが、SOが狙いを定めたキックをする余裕が明治のディフェンスで与えられていなかった。さらに明治のシャ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

December 7, 2011

『トゥー・ラバーズ』ジェームズ・グレイ
高木佑介

 ジェームズ・グレイの新作(と言っても、製作は2008年)が、先日紹介したリチャード・リンクレイターの新作と同じくDVDスルーされている。シネコンではハリウッド大作映画だけが画一的に公開されている一方で、こういった「多様」な海外作品が劇場公開すらされない事実には頭を抱えるばかりだ。たとえば、シネコンと大手配給会社が結託した「デジタル上映システム」への完全移行がこのまま推し進められていくと、弊害が巡...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 PM

December 5, 2011

『CUT』アミール・ナデリ
隈元博樹

鎌倉にある黒澤明、池上にある溝口健二、そして北鎌倉にある小津安二郎の3つの墓場。秀二(西島秀俊)が、黒澤の墓石の前でただ静かに「先生」とつぶやく。溝口の墓石の前では記念碑に彫られた『雨月物語』の文字を自らの指でなで合わせる。そして小津の墓石の前では「無」と彫られた一点の文字を見据え、静かに両手を合わせる。 このフィルムには、たくさんの墓場が登場する。秀二の兄の慎吾が殺されたヤクザのシマの倉庫の便所...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:03 PM

November 28, 2011

『ニーチェの馬』タル・ベーラ
増田景子

 10分ほどだっただろうか。数分遅れて入り着席して数秒後には、荷車を引く馬が走る様だけをただただ見ていた。  きっと白か灰色で、お世辞にもきれいとは言えない毛並みの痩せ馬なので、そのものに目を奪われたというよりも、馬が全身の筋肉を使って行っている運動に目を奪われたということなのだろう。だからといって、馬が変わった動きをするわけではない。馬は鼻息荒く、課された任務、つまり荷車を引っ張るために淡々と走...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

November 24, 2011

関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対慶應 54-24
梅本洋一

 点差はもちろんトライ数でも早稲田9トライ、慶應3トライで早稲田の快勝。少人数でラックから速くボールを出し、一気に攻めるという早稲田の戦術が見事にはまった。ブレイク・ダウンでの慶應の劣勢と慶應のディフェンスに「魂のタックル」が見られなかったことが原因。早稲田のアタックは、ウィングの外側に山下や金が立っているという往年のレ・ブルーのマーニュ、ベッツェンの時代を彷彿とさせた。  スペースと間合いを作る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

November 23, 2011

『独り者の山』ユー・グァンイー
高木佑介

 いや、数時間前に見た本作に対する興奮がまったく冷めやらぬままにこの文章を書き始めたものの、絶対にこの言葉だけは書くまいとさっきまで固く心に誓っていた常套句を、ここで早くもあっさりと吐きだしてさっさと楽になってしまいたいと思う。やはりこの監督は、ほかの誰よりも「映画」から祝福を受けている作家だ、と。なんだ、そんなことなら3年ほど前のフィルメックスで上映された『サバイバル・ソング』を見たときから知っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:04 AM

November 22, 2011

『フライング・フィッシュ』サンジーワ・プシュパクマーラ
高木佑介

 東京フィルメックス・コンペ部門の一本。開映前に「小津安二郎に捧げます」という監督からの言葉がアナウンスされたこの作品は、スリランカにおけるシンハラ人(政府軍)とタミル人(反政府軍)の内戦を背景に描かれた若手映画監督のデビュー作である。冒頭に映し出される、夕陽が沈んでいくスリランカの海辺をとらえた一連の画の美しさには目を見張るものがあったが、まるで鬱屈した時勢に対する感情を吐き出すかのように、途中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:05 AM

『カウントダウン』ホ・ジョンホ
高木佑介

 本年度の東京フィルメックス・コンペ部門の一本。余命3カ月の肝臓ガンと宣告された、借金の「取り立て屋」を生業とする男が主人公で、彼の死んだ息子の心臓を移植されたことのある女から肝臓を移植してもらうために奮闘するというのがこの物語の主な筋。つまり自分が生きるために肝臓を取り立てに行く、ということである。こう書くと至極シンプルなお話のように思えるのだが、実際に映画を見ていると物語の「錯綜ぶり」に驚く。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 AM

November 18, 2011

『猫、聖職者、奴隷』アラン・ドゥラ・ネグラ+木下香
田中竜輔

 『猫、聖職者、奴隷』は「セカンドライフ」なるものの、その魅力やら中毒性やらを理解することの手助けになるような作品では一切ない。「なぜ人々はセカンドライフに熱中するのか」などといったことを心理学的に解きほぐすような手つきもほとんどゼロだと言っていい。彼らはすでに「セカンドライフ」を生きている。これは前提であり、探求の目的ではない。では、このフィルムは何を映し出そうとしているのか。仏映画レーベルカプ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

『べガス』アミール・ナデリ
増田景子

 新しい映画監督との出会いほどワクワクすることはないし、その出会えたばかりの監督の最新作の公開が近日中に控えているなんていう状況は、2011年現在の映画状況からしてみれば希有な幸福で、興奮をよぶ興奮、その歓喜をさけばずにはいられないのである。ともかく、アミール・ナデリとの出会いは衝撃であった。  恥ずかしながら私は『CUT』の監督名を見るまで、東京国際映画祭の常連で、今年の第12回東京フィルメック...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 PM

November 17, 2011

『サウダーヂ』富田克也
増田景子

いま巷の映画ファンで一番の話題作はまちがいなく空族の『サウダーヂ』だろう。あらかたの映画雑誌、新聞各社、テレビやラジオ番組で取り上げられ、多くの人がこの映画に関して発言を残している。そのせいもあってか、ミニシアターの不況が嘆かれているにもかかわらず、唯一の上映館であるユーロスペースには『サウダーヂ』を見ようと連日大勢の人が押しかけている。 でも、一体『サウダーヂ』のなにがすごいのか。自分たちで資金...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:00 PM

October 31, 2011

チェルシー対アーセナル 3-5
梅本洋一

 溜飲を下げるという表現はあまり好きではないけれど、こういうゲームの後は、その表現を使いたくなる。  アーセナルというチームに疑いを持ち始めてからずいぶん経つ。いったい何度期待を裏切られたのだろう? 別にタイトルを取れなかったことが残念なのではない。かつてこのチームのフットボールを見ることで、フットボールを見る快楽を感じ、それからこのチームと共に何年も歩んできたのに、最近、快楽どころか不満や苦痛ば...全文を読む ≫

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October 28, 2011

『MISSING』佐藤央
高木佑介

「息子は自分のせいで失踪してしまった」と負い目を感じている母親であるとか、「悪い行いをすれば必ず悪いことが起こるのよ!」と物事の因果を熱弁する女であるとか、「嘘」ばかり言う少年であるとか、とにかくそのような人物たちのやり取りが1時間にも満たない慎ましい尺のなかで描かれているこの『MISSING』。まず何よりこの映画を見て驚かされるのは、各々が独自の価値観を持って行動しているように見える上記のよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:17 AM

October 9, 2011

ラグビーW杯──(8)クォーターファイナル(1) 
梅本洋一

アイルランド対ウェールズ 10-22 理想的な組み合わせになったクォーターファイナルの第1戦。スタッツは、ポゼッション(54-46)でも敵陣22メートルに侵入した時間(14,51-6.34)でもアイルランドが勝っていたことを示すが、スコアは見ての通り。トライ数では1-3と上記とまったく逆の数字を示している。  もちろんラグビーは、サッカーとは異なり、スタッツの内容は勝負とは異なることが多い。だが、...全文を読む ≫

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October 5, 2011

『5 windows』瀬田なつき
松井宏

Stay Gold!    横浜の京急沿い、つまり大岡川沿いの黄金町界隈の屋外や屋内の各所に4つの小さなスクリーンが設置されている。それぞれで、瀬田なつき監督が撮った約5分の異なる短編がループ上映されていて、観客はまちを歩きながらそれぞれをめぐり見てゆく。そして最後は映画館ジャック&ベティにて、25分ほどのまとめヴァージョン(各5分のものを単につなげただけではなく、新たなショットもたくさん加えてひ...全文を読む ≫

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October 1, 2011

ラグビーW杯2011──(6) フランス対トンガ 14-19 イングランド対スコットランド 16-12
梅本洋一

 ワラビーズ対アイルランドに続いて2戦目のアップセットが対フランス戦のトンガの勝利。具体的には異なるけれど、抽象的なレヴェルで考えれば、トンガの勝因はアイルランドと同じ。戦術を単純なものに落とし込んで、自分たちの長所を活かす戦いをすれば、たとえ相手の方が力が上でも僅差の勝負に持ちこめるということだ。1対1のぶつかり合いになればトンガは負けない。さらに重量級のSHと走力抜群のナンバー8とウィングにボ...全文を読む ≫

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『5 windows』瀬田なつき
結城秀勇

 橋の上、電車の中、マンションの屋上、川沿いの道。さしたる理由もなく、彼らはその時、その場所にいる。歩きながら、電車や自転車などの乗り物に乗りながら、ぼんやりと立ち尽くしながら。それがたった一度きりの人生のまぎれもないひとつの断片だなどとは微塵も意識しようはずもない、ただ通り過ぎていくだけの時間の中で、彼らは皆孤立している。たとえば未曽有の大地震でも起きない限り、そんな瞬間があったことすら知覚され...全文を読む ≫

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September 28, 2011

『宣戦布告』ヴァレリー・ドンゼッリ
高木佑介

「この世界は素晴らしい。戦う価値がある」と言ったのはヘミングウェイだった。「その後半の部分には賛成だ」と言ったのは、『セブン』のモーガン・フリーマンだった。そして、戦い疲れた元ボクサー役の彼がナレーションを務めた映画で、戦う女ボクサーにイーストウッドが投げかけた言葉は、“Tough is not enough”だった。いつか耳にしたそんな言葉をあれこれと思い返しつつ、遅ればせながら、先日の東京日...全文を読む ≫

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September 22, 2011

『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』アンドリュー・ラウ
隈元 博樹

このフィルムの主人公チェン・ジェンはかつてブルース・リーが『ドラゴン 怒りの鉄拳』で演じた架空の武道家である。その名前は、ブルース・リーという伝説的なスターがかつて演じたひとつのキャラクターであることを越えて、その後のカンフー映画に繰り返しその影を落とす。後にこのチェン・ジェンは、彼の死後を物語にしたり、リメイクをしたりしてジャッキー・チェンやジェット・リーによって演じられてきた。今回の『レジェン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:35 PM

September 21, 2011

ラグビーW杯2011──(3)トンガ対ジャパン 31-18
梅本洋一

 もう誰かが正直に書いてもよい頃だろう。結果論なら誰にでも書けるよと言われるだろう。確かに結果は上記の通りだ。ノルマは最低2勝。相手はトンガとカナダ。そしてゲームを見た者なら誰にでも分かるとおり、まったく勝つ気配が感じられなかった。選手たちは頑張っているのだろうが、このやり方では勝てないとゲームを見ている者は確信してしまう。さらに、この4年と少しの間、W杯で2勝すると豪語し続けたのだから、それなり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:44 PM

September 20, 2011

『ソラからジェシカ』佐向大
高木佑介

 “地域発信型映画”企画の一本として、千葉を舞台に撮影された今作。だが、佐向大のこの新作短篇のベクトルは、そうした「企画もの」の枠組みを大きく越えた場所へと向けられていると言えるだろう。実際、『マッチ工場の少女』(90)を否応なしに彷彿とさせる一連の見事なショットによって映し出される落花生工場は、もちろんロケ地である千葉という土地の地域性を十二分に担っているのだが、他方で、海外からの出稼ぎ労働者が...全文を読む ≫

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September 3, 2011

『ゴーストライター』ロマン・ポランスキー
梅本洋一

 すでにこのフィルムについてはいろいろなことが語られている。ヒッチコック的な作品、堂々とした古典的な作品、流浪を余儀なくされたポランスキーの似姿……どれも当たっている。冒頭の豪雨の中、フェリーが港に着くシーンから、無駄なショットなどひとつもないし、見事な編集で見る者の関心を惹き付けて放さない。ヒッチコック的な分類に従えば、「巻き込まれ型」の物語。前任者の死によってイギリス前首相の二人目のゴーストラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:52 PM

August 29, 2011

マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 8-2
梅本洋一

 対ウディネーゼ戦の勝利の後、マンU戦は引き分け狙いで、とぼくは書いた。ところが上記の結果だ。サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』の冒頭ではないが、Rien à faire! どうしようもない。こうしたゲームは堅く落ち着いて入り、ゲームを「殺す」方向へ進めていくのが鉄則だ。だが、当日の先発メンバーを見ると、誰でもが理解できるそうした方向性は「絵に描いた餅」であることが即座に納得される。まず...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

July 25, 2011

季刊「真夜中」2011 Early Autumn
結城秀勇

「真夜中」の最新号をぱらぱらめくっていて、ふたつの文章に真っ先に目がいった。全部読んでいないので特集全体に対するコメントではないのだが、最近考えていることも含め書いておこうと思った。ふたつの文章はどちらも、HIPHOPに関係していて、3月11日の地震に関係していて、人生に関係している。  目にとまった文章のひとつは、三宅唱によるラッパー・B.I.G.JOEへのインタヴューで、「とりかえしのつかな...全文を読む ≫

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July 23, 2011

『MISSING』佐藤央
濱口竜介

たった一つの声      役者たちとのワークショップから生まれた前作『Moanin’』(10)を見れば、佐藤央が役者に課す最も根本的な演出とは、発話の統一であるのは明らかだ。現実には様々な声質、発声が溢れるのがこの世界であるわけだが、佐藤央はその多様さを認めない。いや、実際のところ単に一見多様であるに過ぎない「個性」としての声を佐藤央は抑圧する。「発声」でなく「発話」と言うのは、佐藤央の演出が、お...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:41 PM

July 9, 2011

『MORE』 伊藤丈紘
槻舘南菜子

 可能性ではなく不可能性からしか自分の未来を想像できなくなりはじめる頃。振り返るにはまだ早いであろう生々しい過去の時間の中にありえたかもしれない現在を夢想せずにはいられない頃。新しいことを始めるには少し遅い。でもまだ何かを諦めてしまうには少し早い。そう、もう一度やり直そうと思えば、可能性はゼロではない。  『MORE』の主人公は3人の女性だ。OLのユリ(小深山菜美)、フリーのカメラマンであるモエコ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:33 PM

June 25, 2011

『サウダーヂ』富田克也
結城秀勇

 昼休憩の時間が終わりに近づき、味噌ラーメンを食い終えたふたりの男は冷房の効いたラーメン屋を出る。その戸口で彼らは、呼吸と共に急激に襲いかかる熱気にむせかえるようにしながら、大きく伸びをする。そして、「こんな日に仕事しちゃだめっすよねえ」。  ただそれだけのことで、その暑さを理解する。山梨の夏がどんなものかは知らないし、その暑さの中での肉体労働の経験があるわけでもない。でもなんとなく、生まれ育った...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:32 PM

June 15, 2011

『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』マルコ・ベロッキオ
増田景子

「あなたはひとりでファシズムや国と戦おうとしている。」と、若き日のムッソリーニの愛人であるイーダは言われる。この映画はまぎれもなく第二次世界大戦に続いていく戦争の話であり、また、イーダというひとりの女性の戦いの話でもある。しかしながら、結局この映画の中で彼女はいったい何と戦っていたのだろうか。     ムッソリーニとイーダのふたりが愛し合っていた頃、彼女はファシズムに勝利していた。成り上がるために...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 PM

June 14, 2011

『NINIFUNI』真利子哲也
渡辺進也

 まだ興奮冷め切れぬままにこれを書いているので、乱文であること、ご容赦いただきたいと思う。とにかく、一刻も早く吹聴して回りたくて仕方ないのだ。『NINIFUNI』がとんでもない傑作であること。どれだけ言葉を費やそうともかなわないくらいにすごい作品であり、少しでも多くの人の眼に触れることを願ってやまないことを、もうとにかく吹聴したくてたまらないのだ。  『NINIFUNI』はこれまで見たことがないよ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:04 AM

June 10, 2011

『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』代島治彦
萩野亮

「土本典昭お別れの会」のようすを映した冒頭、壇上の熊谷博子は、次の弔辞に立つ人物をこのように紹介する。 「土本さんの容態が少し悪くなり、皆さんが駆けつけたときがありました。土本さんは大津さんを見つけると、必死に起き上がろうとしながら、大津さんの手を強く握り締め、こう云いました。『ぼくはきみに会えて本当に幸せだった。きみのおかげでぼくの人生はゆたかなものに変わった』と」。  そうして前に立った大...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:57 AM

June 9, 2011

モーリス・ガレルが亡くなった
梅本洋一

 不思議なことに若かりし頃の彼をほとんど覚えていない。フィルモグラフィーを見れば、トリュフォーの『柔らかい肌』にも『黒衣の花嫁』にも出演している。だが覚えていない。ジャック・ロジエの『アデュー・フィリピーヌ』にも父親役で出演している。こちらは朧気に覚えている。  やはり決定的だったのは息子フィリップの映画『自由、夜』の彼だ。彼は1923年2月24日生まれだそうだから、このフィルムの完成時、60歳。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

May 21, 2011

『甘い罠』クロード・シャブロル 
増田景子

 リストの「葬送曲」が繰り返し演奏される。それは、ピアニストであるジャック・デュトロンが、そこを訪れるピアニストの卵であるアナ・ムグラリスに間近に控えたコンクールに向けてレッスンをしているからなのだが、それ以上の接点がこの曲とこの映画自体にあるように思えてしょうがない。この映画のタイトルが「葬送曲」でもうなずけるほどである。  誰を葬送するのか。それはイザベル・ユペールに他ならない。イザベル・ユペ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:17 AM

『悪の華』クロード・シャブロル 
隈元博樹

 冒頭からダミアの『UN SOUVENIR』に呼応するように、外部から内部へとゆっくりと移動していく長回しのキャメラ。左に首を振ってダイニングをなめたあと、深紅のカーペットがかかる階段を(これもゆっくりと)上がり、2階に横たわる何者かの死体を捉えた瞬間にその場で立ち止まる。なぜ最初からこれほどまでにシャブロルは邸宅を丁寧に撮っているのだろう?  ドイツ占領下の時代、父親にレジスタンスとして殺害され...全文を読む ≫

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May 20, 2011

『最後の賭け』クロード・シャブロル 
渡辺進也

 長らく日本で未公開であったクロード・シャブロル監督の3つの作品が公開される。  そのうちの1本である『最後の賭け』は1997年製作、デビュー作となった『美しきセルジュ』以来ほぼ毎年、3年と空けず監督作を残しているシャブロルの長編映画47本目にあたる。  『最後の賭け』は『ヴィオレット・ノジュール』以来シャブロル映画の常連となったイザベル・ユペールと『帽子屋の幻影』以来の出演となるミシェル・セロー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:58 PM

May 8, 2011

『歓待』深田晃司 
増田景子

 川沿いにある東京の下町。下町特有の車がすれ違えなさそうな狭い路地の一角にある特徴のない建物のすりガラスに書かれた小林印刷の文字。この、歩いていたら足を止めないような地味な家族経営の印刷所が、この映画の舞台である。ガラスの引き戸を開けると、そこには通路を挟んで大きな印刷機が2台置かれていて、奥には8畳間ほどの居間と上に続く急な階段。どうやら印刷所と居間の境には風呂があるようだが、それくらいしかない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:10 AM

May 6, 2011

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月3日 
隈元博樹

Il quinto giorno  午後からのロベルタ・トッレ『キスを叶えて』。ここまでタイトルに「キス」がついてしまえばもはやお手上げである。このフィルムは今年のサンダンス映画祭コンペ部門出品作であり、行方不明になった聖母像の頭部をシチリア・リプリーノに住む美容師見習いの少女が自分の見た夢によってその居場所を発見したことに端を発し、その「奇跡」に便乗して彼女の母親が金稼ぎに奮闘するというあらすじ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

May 3, 2011

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月2日 
隈元博樹

Il quarto giorno  「A pancia si consulta bene」(=「腹が減っては戦はできぬ」)。以前からとても気になっていた銀座7丁目の交詢社通りにある「銀座 梅林」でカツライス、980円。ここも昭和2年創業と歴史古く、本店のほかに銀座三越店やハワイ、羽田空港カウンター、最近では秋葉原にも小売展開しているという。自分が頼んだカツライスのカツより隣のサラリーマンが頼んだラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:26 PM

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月1日 
隈元博樹

Il terzo giorno  映画祭も前半を折り返す。ダニエーレ・ルケッティ『ぼくたちの生活』。「Sacher Film」設立当初からナンニ・モレッティと協働していたということは知っていたけども、このフィルムにはどこかオリヴィエ・アサイヤス、とくに『8月の終わり、9月の始め』を喚起させる瞬間が随所に存在している。それは人物をキャメラが尾行(ルケッティ曰く、「ペディナメント」と呼ぶらしい)し、ま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:16 PM

イタリア映画祭2011レポート 2011年4月30日 
隈元博樹

Il second giorno   本日1本目はカルロ・マッツァクラーティ『ラ・パッショーネ』。昨日の『われわれは信じていた』同様、去年のヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門出品作である。さて映画監督のスランプと言えば必然的にフェリーニの『8 1/2』や北野武の『監督・ばんざい!』などの再審に付すフィルム群が思い浮ぶけれども、シルヴィオ・オルランド扮する映画監督のジャンニはフェリーニのよ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 AM

イタリア映画祭2011レポート 2011年4月29日
隈元博樹

Il primo giorno   GWに開催されるということで毎年恒例のイタリア映画祭も今回で11回目。今年はなぜか去年のCL決勝でインテルのスタメンにアズッリの選手がいなかったこと(マテラッツィは途中出場したけども)を思い出したり、その頃ロブ・マーシャルの『NINE』がハリウッド資本で製作されたり、あれやこれやと反芻しながら気がつけば有楽町・朝日ホール。日比谷の高架下近くにあるピザトースト発...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:43 AM

April 26, 2011

『引き裂かれた女』クロード・シャブロル
梅本洋一

 小説家のシャルル・サン=ドゥニ(フランソワ・ベルレアン)が、テレビで天気予報をやっているガブリエル・ドゥネージュ(リュドゥヴィーヌ・サニエ)に狙いを付け、彼女を最初に誘う場所はオークションだ。父ほどの年齢に達した小説家に惹かれた女性は、彼女に一目惚れした金持ちのどら息子(ブノワ・マジメル)の誘いを振り切ってオークションに出かける。若い女性に、オークションに行かないか、という信じがたい誘惑手段を用...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 AM

April 22, 2011

『ファンタスティックMr.FOX』ウェス・アンダーソン
高木佑介

 この作品が好評を博していることは雑誌の論評などですでに知っていたし、ロアルド・ダールの原作を映画化することがウェス・アンダーソンの念願の企画であったこと、そしてその意気込みに見合った力作であることもなんとなく耳にはしていた。とはいえ、特に大きな期待を抱くわけでもなく、いわば消極的な心構えで映画館に足を運んでしまったことをまず正直に書いておきたい。前作の『ダージリン急行』(07)がそれほど面白くな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:44 AM

April 15, 2011

『悲しみのミルク』クラウディア・リョサ
隈元博樹

 ファウスタ(マガリ・ソリエル)には常に「母性」が依拠しており、彼女という存在は彼女の母から与えられたその一連の系譜から逃れることのできない運命にあるのかもしれない。  とは言うものの、彼女と実母が同じスクリーン上に捉えられるのは冒頭の場面、あるいは遺体となって言語を失ってしまった「以後」にしか二人の女性はひとつの空間をともに生きることを許されてはいない。 しかし息絶えし間際、ケチュア語で紡ぎ出さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:38 PM

April 11, 2011

『神々と男たち』グザヴィエ・ボーヴォワ
増田景子

 この映画を観て、遠藤周作の『沈黙』を思い出す。『沈黙』は鎖国をしていた江戸時代の長崎を舞台とした隠れキリシタンの日本人と宣教師たちの話である。ちなみにこの『神々と男たち』は、アフリカのアルジェリアの小さな村が舞台であり、イスラム教のアルジェリアの人とフランスから来たキリスト教の修道士たちの話であり、平和だった村がテロリストの攻撃によって戦場へと変貌してしまうのだ。こうして文字にしてみるとふたつの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

February 20, 2011

『ヒアアフター』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 正直に告白しよう。イーストウッド・ファンを自認するぼくだが『グラントリノ』も『インビクタス』もなぜか絶賛することができなかった。『グラントリノ』は俳優イーストウッドの喪の儀式には相応しかったし、それなりに感動したけれども、すべてが「想定の範囲内に収まっていた」気がしたし、肝腎のクルマがあまり好きになれなかった。たとえば『センチメンタル・アドベンチャー』のクルマの方が良かった。そして『インビクタス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:35 PM

February 15, 2011

『SOMEWHERE』ソフィア・コッポラ
田中竜輔

 ほとんど風景と呼べるランドマークのない、サーキットのような道路をグルグルと抑揚なく走る一台の真っ黒なフェラーリ。運転しているのは無気力な映画スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)。車に乗るか、酒を呑むか、適当な女とセックスするか、はたまたポールダンサーをデリバリーするか、一応映画の仕事は続けているようだけれども、記者会見では質問に満足な受け答えもできないほどの熱のなさ、ルーティンと惰性...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 AM

January 27, 2011

『アブラクサスの祭』加藤直輝
松井宏

 東京藝大大学院卒の加藤直輝監督による「商業映画」第1作目となる今作。「商業デビュー作として今作は云々かんぬん」とか「以前の加藤監督作品と比べて云々かんぬん」とか「監督の作家性が今作では云々かんぬん」などと言った話を抜きにして、『アブラクサスの祭』はごく素直に心動かされる作品だ。  まず成功の理由として、物語の構造のシンプルさがあると思う。同名の原作小説でもそうらしいのだが、ラストはライブである。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:25 AM

January 26, 2011

2011アジアカップ準決勝 日本対韓国 2-2(PK3-0)
梅本洋一

 今野のブロックがPKに値するかどうか(もちろん後半の岡崎に対するファウルがPKに値するかどうかも含めて)は、主審の問題に帰着するので(より高いレヴェルのレフリングができる審判の養成を希望する以外)書きようがない。だが、前半の日本は、今大会で一番の出来だったことは疑いようがない。パススピード、ボールの回り、ポジショニングもとても良かった。悪かったのは1点しか取れなかったこと。だが、こんなことはフッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:42 PM

January 22, 2011

アジアカップ2011準々決勝 日本対カタール 3-2
梅本洋一

 このゲームが終わった後、遠藤は、6年前に似てきた、と言っていたそうだ。6年前の中国開催のアジアカップでも確かに薄氷を踏む勝利の連続だった。準々決勝のヨルダン戦では、PK戦で俊輔、アレックスが連続して外し、宮本の機転で反対側のゴールが使用されたこともあった。(懐かしいね!)  遠藤の言っていることは、ゲームの結果については、近いかも知れないが、ゲーム内容について見ると、今回の方が数段上だ。開幕戦の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 PM

January 6, 2011

『アブラクサスの祭』加藤直輝
梅本洋一

 暮れから正月にかけていろんな人が死んでいく。ブレイク・エドワーズ、そして高峰秀子……。ここ7〜8年、ブレイク・エドワーズのロマンティック・コメディを再見したり、成瀬の『浮雲』や『流れる』を授業で何度も見て、高峰秀子の凄さを感じていた。もちろん数年前のオスカー授賞式で、もう歩けなくなって車椅子で移動し、それでもギャグを飛ばしているブレイク・エドワーズの姿を目にしているし、その傍らに唄を歌えなくなっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 AM

December 16, 2010

『キス&キル』ロバート・ルケティック
高木佑介

 家族旅行で南仏ニースを訪れたジェン(キャサリン・ハイグル)は、結婚秒読みかと思われた彼氏に最近フラれたばかり。両親と一緒に旅行なんて、もう子供じゃないんだから・・・・・・みたいなことをニース行きの機内で口にしつつも、婚期を見事に逃しちゃった感が全身から毒々しく滲み出ている彼女の姿を見ていると、このあと起こるだろうロマコメ的展開に否が応でも期待が高まってしまう。顔は全然似てないけど、キャメロン・デ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 AM

December 4, 2010

『海上伝奇』ジャ・ジャンクー
増田景子

 喋り声、物を売る声、テレビやラジオの放送音、中華鍋で炒める音、食器がぶつかる音、椅子やテーブルのぶつかる音、麻雀牌の音、歩く音、車のエンジンをふかした音、けたたましいクラクションの音――。  賈 樟柯の新作である『海上伝奇』からは、まるで上海にいるかのごとく音が鳴り響く。路地にも、店内にも、どこでもかしこでもあらゆる音が鳴り響き重なり合って存在しているのだ。それらの音に私は感動を覚える。というも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 AM

November 30, 2010

バルセロナ対レアル・マドリー 5-0
梅本洋一

 火曜日の朝から信じがたいものを見てしまった。チャビの一発に始まり、ジェフレンの5点目まで、バルサがディフェンダーを付けたアタック練習のように得点を重ねていく。ディフェンス側は、ボールを奪取するまでの仕事で、アタック側は決め事の確認。息子のチームでさえよくやっている練習だ。彼によれば、ディフェンス組に入ると「つまんないよ!」ということ。このゲームではディフェンス組がこのゲームまで無敗のレアルなのだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:33 PM

『行きずりの街』阪本順治
梅本洋一

 志水辰夫の原作を読んでいないし、水谷豊主演で一度テレビドラマ化されたようだが、それも見ていない。何となくこの映画を見た。平日の午後の横浜ブルク13という新しいシネコンはガラガラだった。  見る者に少しずつしか物語のキーを与えない編集が続く。きっと複雑な話なのだろうと思う。田舎の病院で呼吸器を付けている老婆。見守る波多野(仲村トオル)。老婆の遠縁にあたる娘を東京へ探しに行く波多野。なぜ?  確かに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

November 26, 2010

『The Depths』濱口竜介
結城秀勇

 濱口作品のトレードマークとなりつつあるモノレールの車窓を通じて、デジタルカメラが風景を切り取る。そのフレームはシネマスコープであるこの作品自体のフレームより小さい。ふたつのフレームに挟まれた中間領域はグレーに沈み、見られると同時に見なかったもの、カメラによって切り取られたと同時に切り取られなかったものにされる。あえていうまでもないが、濱口竜介の映画における登場人物の「深さ」とは現実感や奥行きの問...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:47 AM

November 22, 2010

『森崎書店の日々』日向朝子
梅本洋一

 片岡義男の新刊短編集『階段を駆け上がる』に収められた7篇の短編の中に『雨降りのミロンガ』という素敵な短編がある。地下鉄の神保町を出ると雨が降っていて、そこで主人公は20年ぶりの偶然ある女性に会う。その女性は、20年前「ミロンガ」のウェイトレスをしていて、主人公はそこの客だったという話だ。「ミロンガ」とか「ラドリオ」とか「さぼうる」とかを知っている人には、とても吸引力のある短編だ。ぜったいに神保町...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

November 3, 2010

『ナイト&デイ』ジェームズ・マンゴールド
結城秀勇

 謎に満ちたエージェント・ロイ(トム・クルーズ)に連れ去られるようにして、ジューン(キャメロン・ディアス)は世界中を駆け巡る。カンザス、ブルックリン、南海の孤島、オーストリア、スペイン……。その移動の過程はほとんど描かれることなく、彼女の意識が薄れた後再び甦ることを意味する黒いスクリーンが、その距離を埋める。唯一映画だけが、その空間的な距離をなにも映らない映像によって代用することが出来る。ブラック...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:31 AM

October 28, 2010

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき+『神々と男たち』グザヴィエ・ボーヴォワ@東京国際映画祭
結城秀勇

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき。東京湾岸の光景、横たわる少女と彼女の生足、スクリーンのこちら側だけに向かって放たれる「嘘だけど」という台詞、宇宙の姿を映し出すスクリーンプロセス……。瀬田なつきの商業映画第一作はどこをどう切っても瀬田印が満載だ。 陰惨な過去の事件ーーそうではなかったこともあり得たのかもしれない過去ーーによってだけ結びつくひと組の少年少女。過去はなぜかいま唐突に現在を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

October 27, 2010

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル+『ゲスト』ホセ・ルイス・ゲリン@東京国際映画祭
結城秀勇

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル。墓地とそこに流れる口笛。カメラがゆっくりとパンし始め、それがクレーンを使ったパンに切り替わって左回りにぐるりぐるりとこうべを巡らせていくと海へ。しかし最終的にカメラが指し示すのは美しい海の姿の方ではなくて、その縁の掛けしたに落ちた丸焦げの車と、そのすぐそばに転がる丸焦げの死体である。 この事件の発端を示すショットを映した後すぐに、そこから30km離れたベラミー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:51 AM

October 26, 2010

『そして、地に平和を』 マッテオ・ボトルーニョ、ダニエレ・コルッチーニ+『ハンズ・アップ!』ロマン・グーピル@東京国際映画祭
結城秀勇

ローマ郊外の低所得者層向け集合住宅を舞台とする『そして、地に平和を』は、ひとつの場所を描こうとする試みであるだろう。 長い刑務所生活から帰ってきたひとりの服役囚を観察者として、非常にフォトジェニックな大型の集合住宅の姿が切り取られる。ある共同体への帰還者の視点を通じて、高い建物に見下ろされる公園や広場や駐車場は、単に荒廃した地方都市の生活のドキュメントとなるのではなく、サーガ的な空間が立ち上がる場...全文を読む ≫

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October 12, 2010

池部良追悼
梅本洋一

 池部良が亡くなった。享年92歳とのことで、大往生だ。  とりわけ最近になって、このハンサムな2枚目スターに興味を持っていた。かつて、この俳優が現役の時代──といっても、高倉健の傍らにいつもスッと立っている彼の図像ではなく、テレビを含めて、俳優・池部良が際立っていた、それ以前のことだ──、どうもこの俳優の演技が好きになれなかった。好きになれなかった、という表現は正しくない。この俳優の演技がうまいと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 PM

September 28, 2010

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき
梅本洋一

 かつて、『女は女である』でジャン=クロード・ブリアリとアンナ・カリーナが住むアパルトマンには自転車が置いてあった。かつて、母娘に扮した桜田淳子と田畑智子は、相米慎二の『お引越し』で乗る電車の中で「ある日、森の中……」とクマさんの歌を唄った。黒沢清の『回路』でしばしば映るビルの屋上からは、東京の「意気地なしの風景」が映り込んでいた。映画には、そうした無数の「かつて」がある。映画的な記憶と呼ばれたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:54 PM

September 22, 2010

『黄色い家の記憶』ジョアン・セーザル・モンテイロ
結城秀勇

 モンテイロの映画を見るといつも、演奏(ダンス)、酒宴、犬の3つが出てきて、なぜかはまったくわからないが、そのどれかでも画面に映し出されると反射的に心躍る。 「幼い頃、私たちは刑務所を「黄色い家」と呼んでいた」というインポーズからこの映画は始まる。黄色い家がこの映画の終盤に出てくる精神病院を意味しているのか、あるいはもっと他のものなのかはわからない。だがモンテイロ扮するジョアン・デ・デウスが住ん...全文を読む ≫

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September 21, 2010

10-11プレミアリーグ サンダーランド対アーセナル 1-1
梅本洋一

 チャンピオンズリーグの緒戦でブラガに6-0で大勝した2日後の対サンダーランドのアウェイゲーム。ブラガ戦がロンドンだったとはいえ、わずか2日後のゲームで、疲労が蓄積している様子はゲームを見ていても手に取るように分かる。ボールへの寄りが遅いし、パススピードも落ちている。アーセナルようなチームは疲労が溜まっていると好ゲームはできない。そんなことはどのチームも同じさ、と言われるだろうが、そうではない。あ...全文を読む ≫

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『ZERO NOIR』伊藤丈紘
高木佑介

 映画の可能性が不意に大きく刷新されてしまった瞬間、あるいはまさにいまそれが刷新されようとしている瞬間に立ち会うとはこういうことなのだろうか。こう言うと大袈裟に聞こえるかもしれないが、この映画にはとにかく打ちのめされた。何から書けばいいかわからないけれど、とりあえず何か書き始めることにしたい。  冒頭、モノクロの戦争記録映像がモンタージュされたあと、アイリスの効いた画面からこの映画は始まる。クリス...全文を読む ≫

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September 13, 2010

クロード・シャブロル追悼
梅本洋一

 9月12日にクロード・シャブロルが亡くなった。リベラシオン紙は、「フランスは、自らの鏡を失った」(オリヴィエ・セギュレ)と書き、レザンロキュップティーブルのサイトも「フランスは、その最良の肖像画家を失った」と書いている。自らが属するブルジョワジーへの表裏一体になった愛着と嫌悪が彼の作品の多くには噎せ返っていたし、『美しきセルジュ』以降、70本ほどになる数多い作品で、彼が描き続けたフランスの地方の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:52 PM

August 14, 2010

『ソルト』フィリップ・ノイス
結城秀勇

 東西冷戦の落とし子として、数十年間という時間をかけてアメリカ人になりすましCIAに潜入したロシア人女スパイ。そのシンプルかつ典型的な設定にもかかわらず『ソルト』のストーリーには、どこかタガの外れた部分がある。ロシア人大統領を暗殺し、その報復に見せかけてアメリカの大統領を殺し、中東を巻き込んで世界規模の核戦争を引き起こす、などというどこの国家の利益にもならない陰謀自体がそうなのだが、それを食い止め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:41 PM

July 23, 2010

スポポリリズムvol.12 プレ録音映画祭
渡辺進也

 今回の録音映画祭にも縁がある、『SR サイタマノラッパー』の音楽のP.O.P ORCHeSTRA(「1」「2」に出演のSHO-GUNGやB-huckも姿を現す)、『ライブテープ』の前野健太とDAVID BOWIEたちのライブが(映画をなぞるように『天気予報』から『東京の空』へと。ステージ上で暴れてた。)が終わると、暗くなったステージ上で厳かにセッティングが始まる。  真ん中に簡易的なスクリーンが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:08 AM

July 17, 2010

『クレイジー・ハート』スコット・クーパー
梅本洋一

 落ちぶれたカントリー&ウェスタンの歌手の巡業、そして人生の最後の輝きと再生──ありふれた物語だろう。もちろんこのフィルムを見に行ったのは、このフィルムで主演してオスカー主演男優賞を獲得したジェフ・ブリッジズのことを俳優として大好きだという理由もあるけれども、このフィルムを監督したスコット・クーパーのインタヴューを読んだからでもあった。  今年40歳になるスコット・クーパーにとってこのフィルムが初...全文を読む ≫

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July 7, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
松井宏

 処女長編『すべてが許される』に引き続いて、自殺する男を仮の中心に据えたミア・ハンセン=ラブの長編第2作目は、やはり前作と同じく「どのように不幸を描くか」ではなく「どのように幸福を描くか」をまずもって問題にする作品だった。弱冠30歳のこの女性監督は、たぶん不幸を描くための前段として幸福を描いておこうなんて、そんなチャチなことは考えていない。幸福は否定されない。幸福はこの作品のルールそのものだ。だか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:57 PM

June 24, 2010

『アイアンマン2』ジョン・ファヴロー
結城秀勇

 テレンス・ハワードが降板した時点で、このシリーズ続編には正直あまり期待していなかった。スカーレット・ヨハンソンの起用が大々的に宣伝され、先日公開されていた『シャーロック・ホームズ』ではロバート・ダウニーJr.の演技がほとんどトニー・スタークに見え、完全にブロックバスター的な大作にシフトしたのだろうと思っていたのだ。前作のダウニー Jr.、グウィネス・パルトロウ、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:41 PM

June 19, 2010

『アウトレイジ』北野武
結城秀勇

 ビートたけしがいつもとちょっと違うな、と見ていて感じた。なんだかあまりこわくないのだ。『アキレスと亀』のような作品の彼と比べてさえ。しばらくしてその理由がわかった。普通にしゃべったり怒鳴ったりしてるからだ、と。彼に限らず、椎名桔平も北村総一朗も杉本哲太も三浦友和でさえもが、「ばかやろう」「なめんじゃねえ」とほとんど無内容な暴言(?)を吐き散らす。まるで掛け合いのように繰り返されるそのやりとりは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:01 AM

June 18, 2010

『夜光』桝井孝則
松井宏

桝井孝則監督の2009年作品『夜光』。その51分のなかでは、ある風通しの良さ、というか解放感のようなものが本当に強く感じられる。そして見るたびごとに、この印象は増すばかりだ。その理由を考えてみた。そしてこう言ってみようと思った。つまり、まさしく「無垢」こそをこの作品が提示しようと試みているからだ、と。  けれど無垢とは何だろう。それは生まれつき与えられたお気楽なものでもないし、単純さや素朴さでもな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:22 PM

June 15, 2010

『テト』後閑広
田中竜輔

 このフィルムが私たちに明瞭に提示してくれる最初のことは、水に濡れたパラシュートはとても重い、というごく単純な事柄である。何らかの理由でパラシュートによる降下訓練に臨まされた国家諜報員見習「テト」が、沼地に足を取られつつ着水したその場所から陸地までそれを引き摺る冒頭のシークエンスから、私たちはその大きな布の重みを見てとることができる。そんなものを実際に引き摺った経験など誰にでもあるわけはないという...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:23 AM

June 12, 2010

『やくたたず』三宅唱
渡辺進也

 ざらついたモノクロの画面の中、背後にうっすらと雪がとけ残るあぜ道を、学生服を着た3人の少年が歩いていく。言葉を交わすわけでもなく、並んで歩くわけでもなく、思い思いの表情で歩いていく。しかし、それまで3人に寄り添うようにあった画面は、少しずつ彼らを置いてけぼりするようにスピードを持って離れていく。彼らはそれに遅れをとるまいと早足で、そして全力で走り始めるが、画面は彼らを置いてけぼりにする。画面に追...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:57 AM

『やくたたず』三宅唱
松井宏

 冬。北海道。卒業間近の高校生3人。ガンちゃん、タニくん、テツヲ。彼らは、先輩イタミが働く会社で研修めいたバイトをはじめる。先輩の他に社長と、その愛人だか妻だか、はたまだ何だかよくわからないような女性社員キョウコからなる、小さな会社。また社長には息子ジローちゃんがいるが、彼は刑事だ。  そんな三宅唱監督の処女長編『やくたたず』を見ると、何はともあれ役者たちの顔と振る舞いが、とても良いのだ。何を阿呆...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

June 1, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
梅本洋一

 このフィルムの物語について記すと、インディーズ系の映画プロデューサーの自殺とそれ以後の家族の物語ということになる。ミア・ハンセン=ラブの長編第2作にあたるこのフィルムは、彼女の処女作のプロデューサーになるはずだったアンベール・バルサンが突然自死を選んだことから想起されたという。確かにアンベール・バルサンの自殺というのは大事件でもあったけれども、このフィルムに描かれているのは、今世紀の映画が背負わ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:02 AM

May 31, 2010

『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』ピーター・デイヴィス
高木佑介

 アフガンやイラク戦争を経てきたいわゆる9.11以降のアメリカで、再び注目を集めているというヴェトナム戦争を巡ったドキュメンタリー作品がここ日本でも公開される。政府高官やヴェトナム帰還兵たちの証言がニュース・フィルム映像を交えながら映し出されていくこの作品が製作された期間は1972年から2年間――つまりナム戦の終結前夜、アメリカが“名誉ある撤退”に奔走していたとき――である。ということは、すでにこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 AM

May 28, 2010

『音の城 音の海 SOUND to MUSIC』服部智行
田中竜輔

 知的障害を有した人々と音楽家・音楽療法家たちが未知の音楽を求めて即興演奏を行うワークショップ「音遊びの会」、そこを初めて訪れた際に大友良英氏が発言していた、「「空調の音」を「音楽」として聴くことができるかどうか」という問いかけは、オーケストラの演奏や3分間のポップスを「音楽」として聴くことができるかという問いと、本質的には同じことであり、とどのつまりそれは「音楽とは何か」という根源的な問いへと通...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:03 PM

May 18, 2010

『トラッシュ・ハンパーズ』ハーモニー・コリン
菅江美津穂

 ハーモニー・コリンの新作。『ミスター・ロンリー』で見た「逃亡から対話」をハーモニー・コリンは新しい形で表現してくれたように思う。  この映画は「80 年代に誰かが撮影して、そのまま捨て去られていたホームビデオ」というコンセプトで作られた作品である。その内容とは3人の老人がゴミ箱に対して腰を振り続け、子どもが刃物を持ち振り回す……というその破壊的な行為は枚挙に暇がない程である。主人公たちはそれぞれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:52 PM

May 13, 2010

『勝利を』マルコ・ベロッキオ
田中竜輔

 この驚嘆すべき傑作『勝利を』を目にしてから随分と日が経ってしまったが、いまだその衝撃から逃れられていない。今すぐにでももう一度スクリーンでこのフィルムを見直してみたい欲求に駆られている。このフィルムについての熱狂は様々なblogやTwitter上で目撃したが、その熱狂がこのフィルムの公開へと繋がることを願ってやまない。  少なからぬ人々がベニート・ムッソリーニの愛人のひとりイーダ・ダルセル=ジョ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 AM

May 11, 2010

『シャッターアイランド』マーティン・スコセッシ
梅本洋一

 もちろん思い出してみれば『アリスの恋』のハーヴェイ・カイテルや『タクシー・ドライバー』のロバート・デニーロもそうだったのだが、マーティン・スコセッシのフィルムにおける男性主人公のパラノイアは、どこから来るのだろう。レオナルド・ディカプリオが、スコセッシ映画の主人公に迎えられてからも、彼は常にパラノイアを生きているように感じられる。「感じられる」どころではない。たとえば、『シャッターアイランド』で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:23 AM

April 25, 2010

『脱獄囚』鈴木英夫
結城秀勇

 窓辺に立った人間の太ももから上がまるまる見えてしまうような、高さ150cmはあるだろう大きな窓が、正面にみっつ並んだ住宅。小川一夫の手によるこのセットによって、練馬区にあり、近所にプールや市場があるらしい、池部良と草笛光子の平凡な家庭は、どこか現実感をはぎ取られたような空間になる。自分を捕まえた刑事への恨みからその妻の命を狙う脱獄囚による監視と、その監視に気づきながらも囮として開け広げられた窓...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 AM

April 19, 2010

『死に至る愛』アラン・レネ
結城秀勇

 タイトルには『死に至る愛』の名を挙げたが、この文章は東京日仏学院とユーロスペースの特集「アラン・レネ全作上映」を終えて、思いついたことをとりとめもなく書き記す。この作品と前年の『人生は小説なり』は、レネの複雑怪奇なフィルモグラフィに道筋を与える手がかりとなるような気がしている(あるいは『アメリカの叔父さん』を含んだジャン・グリュオーとの3本の共同作だろうか)のだが、考えがまとまっていない。  こ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:41 AM

April 18, 2010

『息もできない』ヤン・イクチュン
梅本洋一

 このフィルムについて侯孝賢は、まるでゴダールの『勝手にしやがれ』が出てきたときと同じだ、と言っている。このフィルムの英語タイトルが « Breathless »という『勝手にしやがれ』の英語タイトルと同じことから来る発想だろうが、それだけではない。そこに何かが生まれるときに必ず感じられる同質の強度を感じるからだ。同質の強度と書いたが、『勝手にしやがれ』と『息もできない』は異なる。『勝手にしやがれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 PM

April 16, 2010

『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグロー
結城秀勇

 『ハート・ロッカー』を見ていると、爆発物処理班とは爆発物を爆発させない人なのではなくて、むしろ積極的に爆発の契機になる人なのではないかと思ってしまう。無論、はじめに先任の班長が行う選択のように、適切に爆発させることは爆発物処理の一環ではあるのだが、なぜだかこの映画の中の爆発は「爆発させてしまった」とでもいうようなやましさに満ちている。130分ほどの映画で、4回も5回も沸き立つ噴煙と爆発音を耳にす...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:32 AM

April 7, 2010

チャンピオンズリーグ09-10 準々決勝2nd Leg
バルセロナ対アーセナル 4-1
梅本洋一

 メッシの4得点! ぼくらアーセナルのサポーターにとっては、溜息しか出ないゲームだった。単なるラッキーで2-2のドローだったロンドンの1st Legから判っていたことだが、今のバルサとアーセナルには、この2nd Leg程度の差があるということだ。このゲームでは切れ切れメッシの素晴らしさについては、誰もが語るだろう。このゲームでメッシの両側にいるペドロやボージャンとはやはりモノが違う。  それよりも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:50 PM

April 1, 2010

『シャーロック・ホームズ』ガイ・リッチー
結城秀勇

 魔術と科学の対立という構図に持ち込んだ時点で、原作に忠実な映画化はあり得ない。もともとガイ・リッチーがそんなものを目指していないのは、同性愛的な匂いすら感じさせるホームズとワトソンの関係、頭脳というより肉体的な情報処理能力を示すホームズ、という点からも明らかであるが、結果としてそれがなにに似てくるかと言えば『ダヴィンチ・コード』のような過剰な情報の横溢によってのみ展開する類のアクション映画だ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:49 PM

March 21, 2010

『風にそよぐ草』アラン・レネ
梅本洋一

 かなり前からクリスティアン・ガイイのファンだったぼくはこのフィルムを心待ちにしていた。アラン・レネとクリスティアン・ガイイの遭遇。そして何よりも、その遭遇を望んだのはレネだった。レネがやるこの種の遭遇はいつも重要だ。最初は、たとえばマルグリット・デュラスとの遭遇、もちろん『ヒロシマ、モナムール』だ。そしてアラン・ロブ=グリエとの遭遇、『去年マリエンバードで』。いちいち挙げることはしないけれど、ア...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

March 19, 2010

『愚か者は誰だ』渡辺裕子
高木佑介

 30分という尺に留めておくには惜しいほどに贅沢な短篇だった『テクニカラー』(船曳真珠)と並び、今年の「桃まつり」の中でもとりわけてクオリティの高い作品に仕上がっているこの『愚か者は誰だ』。渡辺裕子が脚本を担当した濱口竜介の新作『永遠に君を愛す』(09)も男女が向かえる修羅場とその極端なタイトルが印象的だったが、あるいは彼女が持つ「色」のようなものがあるのだろうか、やはり今作でもひとりの女の不貞を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:35 PM

March 17, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
結城秀勇

 ジョナサン・リッチマンの「エジプシャン・レゲエ」が流れる中、矢継ぎ早にパリの街角の映像が継ぎ接ぎされ、その上に色とりどりのクレジットが重ねられる。「エジプシャン」と「レゲエ」の突飛な組み合わせからなる曲名からも想像できるそのままの、どこかすっとぼけたようなエキゾチシズムが断片的なパリを積み上げていく。ホテルの入り口から姿を現した男が、これまた非常に短いショットの連なりの中で続ける携帯電話越しの会...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:27 PM

March 10, 2010

『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグロー
鈴木淳哉

 私は「戦争」に反応できない。なにか考えても、思うところがあっても、それらは戦争経験のない身にとって、反応からはるかに遅れた、それとは別のある振る舞いとしかならない。「振舞う」こと自体すらも何らかの倫理基準に抵触するのではないかと思い、縮こまるのである。だから、映画の冒頭で、「戦争は麻薬だ」という提言がなされても、「戦争」とも「麻薬」とも縁遠い身としては、どういう意味か考えてしまい、また「反応」は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 PM

February 24, 2010

『The Anchorage 投錨地』C.W.ウィンター&アンダース・エドストローム
結城秀勇

 セルジュ・ダネーは、「目のための墓場」と題されたストローブとユイレの映画についての文章で、次のように述べている。「映画を、映像を、声を、投錨するということ、それは映画の不均質性を真剣に受けとめることである。また、そういった投錨、つまりひとつの映像にとって、他の場所ではなくそこでしか可能ではなかったという事実、それは単に言葉と声の問題だけではない。それはまた身体の問題でもある」(「カイエ・デュ・シ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:41 AM

February 22, 2010

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ
結城秀勇

 吉祥寺バウスシアターで行われている「爆音ナイト傑作選2009」にて。  爆音上映ということで当然期待していたのは、BORISのサウンドトラックでもあるのだが、冒頭イザック・ド・バンコレとアレックス・デスカスとジャン=フランソワ・ステヴナンの3人の対話で、予期していなかった音の位相のありように気づく。アレックス・デスカスの言葉を英語に翻訳して反復するステヴナン。そこでセンターから聞こえてくる彼らの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

February 17, 2010

『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
梅本洋一

 アルモドバルはもう完全に「巨匠」だ。彼の監督歴もすでに40年近く、そして年齢も還暦に達している。諦念と達観、そしてメランコリー。失った恋と眼差し、家族、そして職業としての映画。ほとんどアルフレッド・ヒッチコックのようなタッチで恋愛を描き、なんとかロッセリーニの『イタリア旅行』のような透明な単純さに到達しようとする倒錯的な欲望。ペドロ・アルモドバルのこのフィルムは、そうした混濁と透明の中間地帯を浮...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:27 PM

February 15, 2010

『(500)日のサマー』マーク・ウェブ
結城秀勇

 「彼女のキスで俺は生まれ、彼女が去って俺は死んだ。彼女が愛した数週間だけ、俺は生きた」。そんなセリフを『孤独な場所で』のハンフリー・ボガートは脚本の中に挿入したが、主人公トムにとっての500日間が意味するのもひとつの「生」のサイクルだろう。いや、「生」というほどハードボイルドなものではとてもないので、タイトルどおり、ひとつの季節を彼は通過する、というくらいにしておくのが適切か。渡辺進也はこの映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:08 PM

February 13, 2010

『まだ楽園』佐向大
結城秀勇

 曖昧で矛盾したやりとりは、対話をどこへも導かないまま、その量を増加させていく。前進しているのにどこへも行かない、月並みだけれど見たことのない風景がどこまでも広がっていく。そうした世界を名付けるとすれば、その公開から4年を経たいまでも、やはり“まだ”楽園なのだと呼ぶほかない。  この映画を初めて見た2004年の初夏から、何度か繰り返しこの映画について書いてきた。この作品に捉えられた私たちを取り巻く...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:36 PM

February 1, 2010

『サロゲート』ジョナサン・モストウ
結城秀勇

「ターミネーター」シリーズを3でキャメロンから引き継いだジョナサン・モストウ。日本では奇しくもキャメロン12年振りの劇場長編と同じタイミングで、モストウの新作『サロゲート』が公開されている。偶然にしては出来過ぎなほど、キャメロン『アバター』とモストウ『サロゲート』は比較対象としてうまい対になっている。  どちらの作品も、生身の人間が異なった外見の人工物に乗り込み、人工物の体験を生身のものとして感...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

January 30, 2010

『永遠に君を愛す』濱口竜介
結城秀勇

 ああしておくべきった、あるいは、ああすべきではなかったという、日常私たちが無批判に繰り返す些細な誤った振る舞いを、濱口竜介の作品は上映時間いっぱいをかけて極限まで高めていく。結婚式の3ヶ月前にあった浮気を些細なこととみなすかどうかは意見の分かれるところだろう。というか、『永遠に君を愛す』の登場人物は誰ひとりとして些細なことだとは認識しない。だがここであえて些細な過ちと呼ぶのは、結婚式3ヶ月前の浮...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:22 AM

January 26, 2010

『夜光』桝井孝則
梅本洋一

 「未来の巨匠たち」特集上映の枠で、桝井孝則の『夜光』を見た。プログラミングに携わるひとりなのに、初めて見たと告白する無責任さを許して欲しい。関西に住む彼の作品に触れる機会がなかったと言い訳するのも、DV撮影されているのに、ディジタル時代のアナログメディアである映画がなかなか距離を踏破しづらいことを示しているのかも知れない。  海老根剛の文章はこのフィルムにはうってつけのイントロダクションになるだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:50 PM

January 23, 2010

『オルエットの方へ』ジャック・ロジエ
結城秀勇

 職場では偉そうにしているが好きな部下の女の子には頭が上がらない男が、偶然を装ってヴァカンスにその女の子とその女友達ふたりと、大西洋岸のとある海辺の町で2週間ばかりの夏の日々を過ごす。  この映画のなにが素晴らしいかを一言で言えば、2時間半あまりあるこの映画のほとんどの時間で女の子たちがバカみたいに笑ってきゃあきゃあ言っているだけということだ。木靴を履いて踊ってはきゃあきゃあ言い、エクレア食っては...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:16 PM

January 21, 2010

『インビクタス 負けざる者たち』クリント・イーストウッド
結城秀勇

 モーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラは、民族融和のための象徴的なイベントとして1995年のラグビー・ワールドカップを位置づける。その成功のために彼は、南アフリカ共和国代表チーム・スプリングボクスのキャプテン、マット・デイモン演じるフランソワ・ピナールとの面会を行う。ふたりは互いに自分の立場を重ね合わせるかのようにして、実現不可能に見える目標に向かって人々を指導(リード)していくことについ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

January 15, 2010

『怒る西行 これで、いーのかしら。(井の頭)』沖島勲
田中竜輔

 誰の目にも明らかなように、竹中直人の代表芸である「笑いながら怒る人」とは、「笑い/怒り」という感情を、「顔」と「声」によるたったふたつのイメージによって分断する芸である。つまりこの芸が成立するためには、このふたつの感情がそれぞれまったく別の次元に属するイメージであると、そう認めなければならないのだ。しかし「笑い」と「怒り」の境界など本当に存在するのだろうか。もしもそんなものがあるとしても、それは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:43 PM

January 14, 2010

『蘇りの血』豊田利晃
結城秀勇

「手に職を持ってますから、どうとでも生きていけます」と按摩のオグリは言う。この映画のなかで名指しされる具体的な職業は「按摩」と「薬屋」だけだ。その貴重な職の中でも、「手」で行う仕事は按摩だけなのだから彼は極めて特権的な職業に就いていると言えるだろう。ヒエラルキーの頂点にいると思われる「大王」でさえもが病に苦しむこの社会で、あらゆる経済活動は健康を通じて行われる。そしてこの「健康」は、「死」の対義...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 PM

January 7, 2010

『ジュリー&ジュリア』ノーラ・エフロン
結城秀勇

 自宅のキッチンがスミソニアン博物館に展示されているというほどの、アメリカでのジュリア・チャイルドの人気のほどはあずかり知らないが、とにかく料理と恋愛の共有部分を描いた佳作だと思う。正直なところ、美味しそうな料理が出てくる映画はそれだけでいつも高評価を与えてしまっている気もする……。  パリを訪れたジュリアが初めて食べる平目のムニエルから、彼女の料理レシピを制覇しようと試みるジュリーが最後の難関と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:29 PM

January 6, 2010

『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』ケニー・オルテガ
結城秀勇

 憧れの舞台に立つために世界中から集まり、見事オーディションを勝ち抜いたダンサーたちのインタヴューを見て、ハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』を思い出してしまう。ずっと夢だった、マイケルのためならなんだってする、口々にそう語り、あるいは感極まって泣き出しすらする彼らは、もちろん国籍も人種も年齢も性別もスタイルも様々なのだが、なぜかふとした瞬間、口調や呼吸が『ミスター・ロンリー』のディエゴ・ル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:47 PM

December 29, 2009

『アバター』ジェームズ・キャメロン
結城秀勇

 非3D上映にて。  脊椎の損傷によって下半身不随になっているサム・ワーシントンに、上司である大佐が「任務に成功すれば足を与えよう」と言うとき、問題になっているのは大地に接するふたつの足ではなくて、その間にあるもう一本の足であることは明らかだ。車椅子に乗ったサム・ワーシントンには、アクションの欠如によるフラストレーションは感じられない。それよりもむしろ、苦み走ってなにかを思い詰めたようなワーシント...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:26 PM

December 24, 2009

『明日が、あなたの日々の最高の一日になりますように。なぜなら、あなたの最後のであるから』ベン・リヴァース
結城秀勇

 渋谷イメージフォーラムで行われた「Imaginary Riverside」と題された上映会で、ベン・リヴァースの作品群を初めて目にし、衝撃を受ける。ロッテルダム映画祭のタイガーアワードに2年連続ノミネート、そして同賞を受賞と、世界ではまさに評価の固まりつつある作家であるだけに、こうした機会に発見できたのはとても良かった。  彼の作品を薦めてくれた中原昌也さんも言っていたことだが、とにかく音の処理...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:17 PM

December 10, 2009

『パンドラの匣』冨永昌敬
安田和高

1945年~1946年。といえば、体制が大きく変化し、日本社会が少なからず混乱していた時期であろう。ところが『パンドラの匣』は、1945年~1946年にかけての物語でありながら、そのような混乱とはほとんど無縁である。まるで戦禍を逃れるかのように、混乱した社会を避け、結核を患った主人公は山奥の療養所へと“疎開”していく。そこでは戦後のドタバタなど、どこ吹く風。時間はゆったりと流れていく。そう。これは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:27 PM

December 3, 2009

『動くな、死ね、甦れ!』ヴィターリー・カネフスキー
結城秀勇

 開催中の特集上映にはなかなか駆けつけることができず、気づけば他の2本(『ひとりで生きる』『20世紀の子供たち』)の上映は終了してしまっていたが、なにはともあれ『動くな、死ね、甦れ!』だけでも見直しておこうとユーロスペースへ。レイトショーだがほぼ満員。  かつての記憶の中では、とにかく靴にまとわりつくぬかるみがひどく心に焼き付いていた。それは見直したいまでもそうだが、まとわりつくぬかるみの質こそが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:50 PM

December 1, 2009

アーセナル対チェルシー 0-3
梅本洋一

 やはりチェルシーは強い。ファン・ペルシの怪我が靱帯の断裂という大きなものであることはアーセナルに大きくのしかかっている。セスクを中心に、ナスリ、アルシャヴィン、ソング、デニウソンをいう中盤は、さすがにボールがよく回り、一見、中盤をほぼ押さえているかに見えるのだが、エドゥアルドのワントップだとボールが収まらない。サニャ、トラオレの両サイドまで含めて、何度もバイタルエリアまで侵入するのだが、チェルシ...全文を読む ≫

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November 27, 2009

『2012』ローランド・エメリッヒ
結城秀勇

 この作品を見るために新宿ピカデリーへ向かう。MUJIの前の階段を上り3階のチケット売り場へあがるエスカレーターがある踊り場には、もう一台別のエスカレーターがある。プラチナルーム及びプラチナシートの利用客だけが使う専用入り口である。その入り口を使わない客は3階のチケット売り場に並ぶ。 『2012』の世界の終末は、それとまったく同じ仕組みでやってくる。そこではまずプラチナシートを買う必要があるのだ...全文を読む ≫

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November 17, 2009

『ロト』/『MUGEN』甲斐田祐輔
松井宏

2009年において1971年生れの監督の過去2作品がひょっこり公開されるのは、やはり珍しい出来事だろう。しかも中編2本。そう『ロト』と『MUGEN』は2007年『砂の影』と2002年『すべては夜から生まれる』の長編たちの間に、それぞれ作られた。 16ミリでデビューを飾り、最新作『砂の影』では、キャメラマンたむらまさきと一緒に何と8ミリで撮影を行った甲斐田祐輔。そんな「時代錯誤」的な監督が、ついに初...全文を読む ≫

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November 9, 2009

『アバンチュールはパリで』ホン・サンス
梅本洋一

 正直に書く。ホン・サンスのフィルムを見たのはこの作品が初めてだ。天の邪鬼なのか、韓流映画の流行が嫌で韓国映画というだけで素通りしていた。もちろんホン・サンスが、韓流に収まらないことは知識として知っていたが、知っていただけではどうしようもない。反省も込めて行動に移した。  そして『アバンチュールはパリで』を見た。すごいフィルムだと思った。以下、その理由を述べる。  まず、驚いたのが、ロケ地がパリと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:54 AM

2009年10月23日

10/23
渡辺進也

映画祭ももう佳境。残すも3日となった。 数日前には人気の多かったプレスセンターの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:34

2009年10月21日

10/21
結城秀勇

本日は渡辺に代わり私結城が。10/21は、今年の東京国際映画祭に一日だけ来るなら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 22:25

2009年10月19日

10/19
渡辺進也

三日目。 当初見る予定の映画がチケットをとれず断念。時間が合う映画を仕方なく見に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 16:49

『ヴィヨンの妻──桜桃とタンポポ』根岸吉太郎
梅本洋一

 もし根岸吉太郎にスタジオという背景があったなら、このフィルムはかなりの傑作になったのではないか。田中陽造のシナリオも太宰のテクストを活かし、松たか子をはじめとする俳優たちもよい。演出のテンポも揺らぎがなく、見事に収まっている。  つまり、このフィルムはかなり良好な作品に仕上がっていることは認めよう。しかし、もしこのフィルムが同様のシナリオで同じ俳優たちで今から50年前に撮影されたとしたら、素晴ら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

October 18, 2009

『RAIN』堂本剛
黒岩幹子

堂本剛という人が作る音楽には、単なるアイドルの余暇活動として切り捨てられないものを感じる。そのナルシスティックな言動やファッション、「自分探し」の一貫として書かれたような歌詞、あるいは「剛紫」(前作のアーティスト名義)といったネーミングセンスなど、凡人の私には受け入れがたい部分を持った人ではあるのだが、彼の音楽には何か考えさせられるものがある。近田春夫は以前、彼が前シングル曲の「空~美しい我の空」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:36 AM

2009年10月17日

10/17
渡辺進也

 仕事を終えて六本木の夜へ。  第22回目を迎える東京国際映画祭は今日開幕。ホセ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 21:40

October 15, 2009

『The World』牧野貴+ジム・オルーク
田中竜輔

 釘なのか有針鉄線なのか、その形状の有する鋭角なイメージをスピーディーに旋回させる『EVE』、テープリールがそこら中で回転するスタジオとその中を走り回る男を部屋の中心近くに置かれたキャメラがぐるりとおよそ360度回転して捉える短い映像が、ループしながら重なり合い色合いを変えることでマーブル状の色彩を獲得していくジム・オルークの『Not yet』は、映像というものが、そして音が、まぎれもない「物質」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

2009年10月14日

最終日
結城秀勇

もう最終日である。 原將人『マテリアル&メモリーズ』8mm三面マルチライヴを前半...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 03:52

『無印ニッポン──20世紀消費社会の終焉』堤清二、三浦展
梅本洋一

 辻井喬名義の小説は読んでいないけれども、セゾン・グループの総帥を退任してからの堤清二の発言は本当に興味深い。前に上野千鶴子との対談本を採り上げたことがあるが、今回は、『下流社会』の三浦展だ。上野も三浦もパルコ出身といってもいいから、当時は「天上人」(三浦の表現)だったにせよ、セゾン・グループは、確かに多くの人材を輩出している(もちろん居なくなっちゃった人もたくさんいるけど)。  三浦展が書いたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:09 AM

October 8, 2009

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ
安田和高

 ティルダ・スウィントン、工藤夕貴、ジョン・ハート……と、じつに世界各国さまざまな俳優が登場する『リミッツ・オブ・コントロール』は、しかしけっきょくのところサングラスをかけていない者同士——つまりイザック・ド・バンコレと、ビル・マーレイ——の一騎打ちの物語である。ほとんどの登場人物がサングラスをかけているなか、そのふたりは透明な目で世界を捉えている。宇宙には——と、劇中で工藤夕貴は言うのだが——“...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:52 PM

September 29, 2009

『空気人形』是枝裕和
結城秀勇

「私は空気人形」と彼女は言うけれど、ペ・ドゥナの美しさは存在感の希薄さや空虚感を連想させるようなものではない。それよりはむしろ、ダッチワイフとしての彼女が動き出して初めて触れる、物干し竿から垂れる水滴のような美しさだと思う。表面張力で凝結して、周りの風景をきらきらと反射して、わずかな風にふるふると震える。登校途中の女の子から「いってきまーす」という挨拶を学び、富司純子の「ご苦労様」という挨拶に腰...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

September 25, 2009

『クリーン』オリヴィエ・アサイヤス
結城秀勇

 No home, no money, no job. 出所したマギー・チャンがニック・ノルティに子供に会うことを避けてほしいと告げられる場面で、確か彼女は自らの母親としてのダメさ加減をそんなふうに形容していたのだった。その言葉通り、この映画全体を通して彼女の住処はまったくと言っていいほど描写されることがない。「思い出のあり過ぎる」ロンドンのアパートはおろか、物語の起点となるモーテルを離れて以降に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:56 PM

September 15, 2009

『The Anchorage』C.W.ウィンター&アンダース・エドストローム
松井宏

『The Anchorage』は、何よりもまず映像を「anchor=定着」させる。共同監督のひとりであり、キャメラを廻すアンダース・エドストロームは、そもそも写真家だ。スティルをつねにフィルム撮影する彼にとって、映像とは現像なしには存在し得ない。この作品がフェード・インで始まる理由もその点にある。現像液に浸された印画紙と同じく、ここでの映像は徐々に暗闇から浮かび上がり、そして現像=定着させられる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:25 AM

September 11, 2009

一丁倫敦と丸の内スタイル展@三菱一号館美術館
梅本洋一

 復元された三菱一号館と竣工記念として開催されている「一丁倫敦と丸の内スタイル」展を見た。  コンドル設計の三菱一号館は、丸の内が100フィートの高さに設定され、モダニズムのオフィスビルが建ち並んだ後も、1968年までこの場所に残っていた。「一丁倫敦」という呼称の名残のように、周囲との不調和のままここにあった。ぼくもかすかに覚えている。もちろん中に入ったことはなかった。復元され美術館として誕生した...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:26 PM

September 9, 2009

『リプリー 暴かれた贋作』ロジャー・スポティスウッド
結城秀勇

『太陽がいっぱい』、『アメリカの友人』をはじめとして、それぞれ複数回映画化されているパトリシア・ハイスミスのリプリー・シリーズ中のThe Talented Mr. RipleyとRipley's Gameだが、なぜかその間に挟まるRipley Undergroundは映画化されていなかった。『トゥモロー・ネバー・ダイ』のロジャー・スポティスウッド監督によって2005年に撮影された本作はdvdスル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 PM

September 4, 2009

ケンチク+ XXX 『 Dialogue and Studies in XXX , 2009 Tokyo 』15人の建築家と15人の表現者による対話実験@ワタリウム美術館 第一回 長坂常×植原亮輔+渡邊良重[D-BROS]
結城秀勇

 このサイト、およびnobody本誌でも時折ご寄稿いただく藤原徹平さんが企画・コーディネートをつとめる15回の対話。その第一回は、書籍『B面からA面にかわるとき』が先日発売された長坂常と、D-BROSにてデザインを担当する植原亮輔と渡邊良重のふたりという組み合わせ。毎回、その両者がそれぞれにプレゼンを行った上で、その後に質問や意見を交換し合うというスタイルになっているようだ。  プレゼンはD-BR...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:40 AM

August 27, 2009

Aimee Mann JAPAN 2009 @ SHIBUYA-AX
宮一紀

 4年ぶりとなるエイミー・マン単独来日ツアーの東京公演が8月25日に行われた。前回のツアーは恵比寿リキッドでのバンド編成だったそうだが、今回は3人による変則的なアコースティック。ほとんどがスタンディングのフロアで、7,500円というやや強気な価格設定。何となく開始前からイベントのオーガナイズに対して不信感が募る。とはいえ当日はけっこうコアなエイミー・ファンが集まって、イントロでは即座に大きな歓声が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:02 AM

August 6, 2009

『ボルト』バイロン・ハワード、クリス・ウィリアムズ
結城秀勇

『魔法にかけられて』に引き続きまたしてもディズニーは、入れ子状の、ファンタジーの生成についての自己言及的な作品を製作している。そしてこの『ボルト』も『魔法にかけられて』と同様に、その過程を経てできあがった作品が果たしてファンタジーとして成立するのかという点においては、あまり検討を重ねているようには見えない。  プリンセスが現実の世界にやってきて、現実とファンタジーは違うことを学び、現実の中で生き...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:15 PM

August 4, 2009

『3時10分、決断のとき』ジェームズ・マンゴールド
渡辺進也

 アメリカでの公開から2年遅れて、この度日本公開されるジェームズ・マンゴールドの新作は1957年にデルマー・デイヴィスによって監督された『決断の3時10分』のリメイク作品である。名の知れた悪漢を生活苦の農場主が金のために護送するストーリーを持つ、勧善懲悪に収まらないこの西部劇を、オリジナルのストーリーをほぼ変えることなく、そこにオリジナルでほとんど描かれることのない、駅馬車を襲う場面や護送する道中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:26 PM

August 3, 2009

ル・コルビュジエと国立西洋美術館展
梅本洋一

 世界遺産には登録されなかったものの(ぼくにとってはどうでもいい問題だが)、この展覧会の機会に西洋美術館をつぶさに観察すると、この空間は実にル・コルビュジエらしい。無限増殖美術館のコンセプトをそのまま体現しているのはもちろんだし、この建物の全体が、螺旋状の周回というプロムナードになっていることや、メイン会場の19世紀ホールの自然光の差しこむ空間が、とても心地よいこともある。  最近ずっと坂倉準三の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 PM

July 26, 2009

建築家 坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間 都市 空間
梅本洋一

 やっと鎌倉に行ける時間ができた。  もともと坂倉準三の傑作であるこの鎌倉近代美術館(俗称)で、作者についての回顧展が開催されるのは2度目だが、ぼくは1度目は行っていない。だが、ここは本当に好きな空間だ。前に書いたカフェのダサさも改善されていた。「白い小さな箱」──それも宝石箱ようなこの建築は、周囲の環境も含めて、今回の回顧展のカタログで、磯崎新が書くとおり「ルコルビュジエよりもルコルビュジエ的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:41 PM

July 23, 2009

『麻薬3号』古川卓巳
高木佑介

見るからに胡散臭い新聞社で寝起きをし、道で気に食わない男とすれ違えば問答無用で殴りかかる、そのうえ麻薬3号=ヘロインのヤバい取引にも平気な顔で手をのばし、挙句の果てには損得勘定を考えずにとりあえず拳銃をぶっ放して事態をややこしくもさせるのだから、この映画の主人公である長門裕之はまさに見紛うことなき“ならず者”だ。飽きた女には目もくれず、隙あらばヒロポン、もちろん堅気の労働は一切拒否(しかしこの映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:43 AM

July 22, 2009

『麻薬3号』古川卓巳
結城秀勇

 海。反対側には山。国鉄の機関車が走り過ぎる神戸駅からタクシーに乗って繁華街を通り過ぎると、傾いたトタン屋根が複雑に入り組んだドヤ街がある。狭い路地に南田洋子が足を踏み入れたとたん、まだ陽も高い時間帯だというのに画面の面積の約半分を奇妙な幾何学模様を形成する影が占領し、それが昼下がりの強い陽光に照らし出された空間に対してくっきりとしたコントラストを生む。立ち並ぶ建物のうちのひとつの中に彼女が入り込...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

July 20, 2009

『VISTA』佐々木靖之
田中竜輔

 瀬田なつき監督作品や濱口竜介監督作品等々、近年話題となった多くの若い映画監督たちのキャメラマンを務める佐々木靖之初監督作品である本作『VISTA』が、第31回ぴあフィルムフェスティバル・コンペティション部門PFFアワードに出品されている。上映終了後の舞台挨拶では、本作はアントニオー二『欲望』の強い影響下にあると佐々木監督本人に語られていたが、しかしもちろんそれは単なるコピーというわけではなく、映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:37 PM

July 19, 2009

『トランスフォーマー リベンジ』マイケル・ベイ
結城秀勇

 前作『トランスフォーマー』を見て思ったのはだいたい以下のようなことだった。地球外からやってきた機械生命体であるところのトランスフォーマーたちは、映画の画面内においてもある種のエイリアンであり、フィルムとの光学的な関係からその姿を写し取られる他の被写体とは異なった原理の上に成り立つ存在である。それはCGだから当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、そんなことをいまさら強く思ったのも、人間のスケール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:56 PM

July 18, 2009

『そんな彼なら捨てちゃえば?』ケン・クワピス
結城秀勇

 ベン・アフレック、ジェニファー・アニストン、ドリュー・バリモア、ジェニファー・コネリー……と続く名前の列に近年でも珍しいラブコメ大作の香りを感じるが、なんのことはないアルファベット順での表記である。「SEX AND THE CITY」のスタッフによる原作をもとに描く恋愛群像劇ということになるようだが、この群像を形成する群がいったいどのようなつながりによって成り立っているのかが希薄だ。まるでこの映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:54 PM

July 17, 2009

『ノウイング』アレックス・プロヤス
田中竜輔

 ニコラス・ケイジが世界を救うヒーローなのだ、と断言されてしまうとそれはどうにも何か別の作品のパロディ程度のものにしか思えなくなってしまうのだけど、しかしすべては彼自身の勘違いで、彼は勝手に自分自身をヒーローだと信じ込み、勝手に窮地に飛び込んで勝手にひとりで混乱しているだけだ、と言われればそれは途端に別の意味で真実味を増す。リー・タマホリの『ネクスト-NEXT-』はそれが夢オチというかたちで提示し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:38 AM

July 13, 2009

建築家 坂倉準三展 モダニズムを住む 住宅、家具、デザイン
梅本洋一

 アテネフランセで映画を見ることを学び、東京日仏学院でフランス語を学び、渋谷パンテオンでハリウッド映画を見、東急名画座でかつての名画を多く見たぼくにとって、もっとも時間を過ごした建築の作り手は明らかに坂倉準三だった。アテネフランセも同じルコルビュジエ門下の吉阪隆正だから、東京日仏学院やパンテオンや東急名画座が入っていた今はなき東急文化会館の設計者である坂倉準三という固有名は極めて重要なものだ。  ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:40 AM

『ディア・ドクター』西川美和
梅本洋一

 一昨年『ゆれる』で大方の好評を博し(ぼくは批判的だったが)、その原作が直木賞候補にもなっている西川美和の『ディア・ドクター』を見た。主演の笑福亭鶴瓶は、封切りに際して西川美和とテレビに出まくっていた。  物語を記すと「ネタバレ」になるので書かないが、それ以外にいったい何を書けばいいのかと頭を抱えざるを得ない。笑福亭鶴瓶と瑛太の組み合わせもつまらないとは言わない。たったひとりの「医者」しかいない村...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:36 AM

July 10, 2009

『サブウェイ123 激突』トニー・スコット
結城秀勇

 原題は『THE TAKING OF PELHAM 123』だが、そのハイジャックされた車両が「ペラム123」と呼ばれているのはペラム駅を1時23分に出発したから、というただそれだけの理由である。なぜその車両が狙われなければなかったのかと言えば、その名の通り時間帯とコースが適当だったということに尽きて、それが劇中で話題にされる日本製の新型車両なのか、なにか他の車両と違った視覚的特徴を持つのか(そん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:28 PM

July 9, 2009

「Suddenly VOL.01」宣伝チラシ上の誤植のお詫び

現在各所に配布されています「nobody presents SUDDENLY VOL.01」宣伝チラシの文章中に以下の誤りがございました。 *チラシ裏面、『軒下のならず者みたいに』紹介文の最下行 (誤)斎藤陽一郎 → (正)斉藤陽一郎 ご本人様および関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。 nobody編集部...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:20 AM

July 8, 2009

『セントアンナの奇跡』スパイク・リー
渡辺進也

 スパイク・リーの作品に慣れ親しんだものもそうでない者もブラックムーヴィーのひとムーヴメントをつくった監督のひとりとして、スパイク・リーの映画といったときにある程度イメージすることはできるだろう。同人種として黒人の姿を生々しく描いたということ、自らのアイデンティティに寄る映画つくりをしてきたということ。その実際がどうであれ、この監督が語られるときにそうしたイメージはこの監督にずっとつきまとうものと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:56 AM

July 2, 2009

『それでも恋するバルセロナ』ウディ・アレン
茂木恵介

 ヴァカンスを楽しむために訪れたバルセロナ。季節は7月。紋切型の記号としてちらっと映るガウディやミロ。そして、女性を惑わす赤ワインとスパニッシュ・ギター。それらは、主人公の2人の側に寄り添いつつも物語の流れに絡み付くことなくちらっと映り、次のショットへと切り替わる。おそらく、この映画の中で記号として重要な意味を持つのは彼女達を迎え、そして送り出す空港のエスカレーターだけだろう。空港の入り口から出た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:37 AM

July 1, 2009

『クリーン』オリヴィエ・アサイヤス
梅本洋一

 エミリー(マギー・チャン)は、いくつもの風景といくつもの音響を通り過ぎなくてはならない。カナダのハミルトンにある煙突から燃えさかる炎が上がる工場を背にした寒々しい川、人々が折り重なるように身を捩る中でマイクの前で多様な音声を絞る人たちのいるライヴハウス、どこでもまったく同じインテリアで、ここがどこだか判らなくなるようなモーテルの一室、売人と買い手が金銭と白い粉を交換する人気のないパーキング、息子...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:00 AM

June 26, 2009

『ランニング・オン・エンプティ』佐向大
結城秀勇

 その構造を剥き出しにして得体の知れない煙を吐き出し続ける信じがたく巨大な建築物の群れから、小さなアパートのベッドの上で寝そべる女性のピンクの下着を履いた尻へとカットが切り替わる。前者はどことなく『Clean』の冒頭を彷彿とさせるし、後者は『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソンのケツに勝っている。それがなんの仲介も無しに結びつけられる、一足飛びの移動の速さの中にこそ『ランニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:37 PM

June 22, 2009

『ターミネーター4』マックG
結城秀勇

 セカンドチャンスとパロディを履き違えてはいけない。いま目の前で起こっていることを、かつて起こったことにデジャヴュのようにすり替えていかない限りなにも起こらないこの映画にはなにひとつチャンスがない。  冒頭に登場するヘレナ・ボナム=カーター、影の薄いヒロイン役ブライス・ダラス・ハワード、そして音楽のダニー・エルフマンと(もしかしたらそこにクリスチャン・ベイルを加えても良いのか)現在のアメリカ映画で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:36 PM

June 19, 2009

『スタートレック』J.J.エイブラムス
田中竜輔

 J.J.エイブラムスが『クローバーフィールド/HAKAISHA』のプロデュースに引き続いて「スタートレック」映画化を手掛けると最初に聞いたときには、きっとこのシリーズに思い入れたっぷりなのだろうなと勝手に思い込んでいた。しかしどうやらインタヴューによると、どうも彼自身は「トレッキー」ではまったくないらしい。この作品についての絶賛の評を見ていると、いわゆる「ビギンズ」もの(元々のタイトル案は「ST...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 AM

June 15, 2009

『ウルトラミラクルラブストーリー』横浜聡子
梅本洋一

 彼女のフィルムを初めて見た。つまり、これが長編2作目の横浜聡子だが、ぼくは彼女の処女長編を見ていない。もし画面やそこに盛られた物語に大きな特色を感じることができるとき、その作り手を仮に「映画作家」と呼ぶなら、彼女はまちがいなく「映画作家」である。冒頭から聞こえてくるけたたましいヘリコプターの騒音、その騒音に負けないくらいに、主人公・陽人を演じる松山ケンイチが発するノイズと意味との境界線上を走る音...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:00 AM

June 13, 2009

『私は猫ストーカー』鈴木卓爾
黒岩幹子

『私は猫ストーカー』、そのタイトルに偽りなし。これは「猫好き」じゃなくて「猫ストーカー」の映画だ。「猫好き」と「猫ストーカー」の違いは、猫への愛情の大きさにあるのではなく、猫との関わり方にあるのだと思う。「猫ストーカー」を自認する主人公のハル(星野真理)は、猫を飼わず、特定の猫に愛情を注がず、猫を分け隔てず、とにかく猫を探し回り、とにかく遭遇した猫を追いかける。自分の生活のなかに猫がいるのではなく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:02 AM

June 10, 2009

『イエローキッド』真利子哲也
高木佑介

 その男はいったい誰で、そこはいったいどこなのか。しばし自分の目を信じることができない。などと言ってみるといささか大袈裟かもしれないが、だがしかし、現についさっきまでトイレでボコボコと殴られていたはずのその男の弱気な表情はどこかへと消え失せ、横浜だと思っていた風景は、まったく見知らぬ場所であるかのようにスクリーンに広がりだす。さっきまでそこにあったものが、何かまったく違うものに見えてくる。そんな瞬...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 AM

June 9, 2009

『4』『マイムレッスン』『スパイの舌』三宅 唱
田中竜輔

 とりあえずは「習作」に近い3本の短編なのかもしれないが、ずいぶん前からその噂を耳にしていた三宅唱監督の作品を見て、率直にとても興奮させられた。  21歳時の作品であるという『4』の、ホテルのひと部屋に詰め込まれた4人のそれぞれの時間における持続感覚(とりわけほとんど異物である外国人女性の「空気の読めない」些細な仕草が「彼ら」の時間についての共有感覚を明瞭に分断しているようだった)にまず舌を巻いた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:45 AM

June 4, 2009

『持ってゆく歌、置いてゆく歌―不良たちの文学と音楽』大谷能生
梅本洋一

 もっとも旺盛な活動を示している批評家が大谷能生であることは明らかだ。大きな書店に行くと、必ず彼の本が2冊以上平積みにされている。若い批評家──もちろん彼は音楽家でもあるが──の書物が、数ヶ月間に次々に出版されることはわくわくするような体験だ。『散文世界の散漫な散策──二〇世紀批評を読む』(メディア総合研究所)、瀬川昌久との対談本『日本ジャズの誕生』(青土社)、そしてこの『持ってゆく歌、置いてゆく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

June 1, 2009

『久生十蘭短篇選』川崎賢子 編
高木佑介

 1920~30年代についての特集を組んだ「nobody」誌最新号の編集中にも、たびたびその名前が挙がった久生十蘭。といっても気軽に著作を探してみてもどうも在庫切れやら絶版ばかりが目につくし、とはいえ去年から国書刊行会より出版されている少々高価な全集(全11巻になるという)にも手が出せず、さてどうしたものかと考えていた矢先に岩波文庫より短篇集が5月に出たので、これ幸いと購入。定価860円。  本書...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:15 AM

May 28, 2009

『夏時間の庭』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

 『冷たい水』の美しさが、ふと目を離した瞬間に消え去ってしまうヴィルジニー・ルドワイヤンの纏う無垢≒フィクションの淡い色彩によって生み出されていたとして、しかし近年のアサイヤスの「女たち」によるフィルム――『DEMON LOVER デーモンラヴァー』『CLEAN』『レディ アサシン』――の基軸となるのは、「女たち」にとって、すでに失われてしまったルドワイヤンの「無垢」なるものを、どのように生きかえ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

May 23, 2009

『夏時間の庭』オリヴィエ・アサイヤス
梅本洋一

 満員の銀座テアトルシネマの上映後、銀座の舗道に出ると、背後からこんな会話が聞こえてきた。「あのオルセー美術館のレストランのシーンを見てたら、オルセーに行ったときのことを思い出したわ」「そうね。2年前だったわね」かなりの年長の婦人たちがそんな会話を交わしながら、銀座を歩いていた。  だが、とりあえずオリヴィエ・アサイヤスのフィルムで、映画館が満員になったことは良いことだ。このフィルムにはオルセーが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 AM

May 22, 2009

『レイチェルの結婚』ジョナサン・デミ
茂木恵介

 右ストレート一閃。よろけながら、反撃の左フック。リングサイドからリングを見上げ、反撃する選手の背中を興奮しながら見つめるセコンド。もちろんそんな「シーン」なんてないのだが、そんな「パンチ」はこのフィルムにはある。しかし問題は右目を腫らせる程のパンチが出てくることではなく、そのパンチが打たれる瞬間を見上げる形で見てしまったことだ。そして、それは誰が見ているのか。もちろん、それは観客であるわけだが、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

May 14, 2009

『四川のうた』ジャ・ジャンクー
梅本洋一

 こうした偽ドキュメンタリーというスタイルは、とりわけ、このフィルムの内容には合致している。8人の労働者たちが成都の420工場について語る、という構想は説得力がある。綿密に書き込まれたテクストと、おそらくかなりの時間をかけただろうリハーサル。挿入されている工場や成都の映像。「知的」という言葉がこれほど当てはまるフィルムを見るのは、本当に久しぶりのことだ。誰でもトリュフォーの『野生の少年』を思い浮か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:13 AM

May 12, 2009

アーセナル対チェルシー 1-4
梅本洋一

 今シーズンのプレミアリーグも大詰め。今節を含めて残り3ゲーム。チャンピオンズリーグ準決勝で敗退したアーセナルの目標は、来シーズンのチャンピオンズリーグにストレートインできるプレミア3位以内の確保。そして現在の3位はチェルシー。非常に分かりやすい。  風邪のアルシャヴィンが欠場。左にディアビ、右にウォルコット、トップ下にセスク、ファン・ペルシの1トップ。セントラルにナスリとソングという布陣。最初か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:59 AM

May 9, 2009

『ミルク』ガス・ヴァン・サント
梅本洋一

 ぼくらが『エレファント』や『ジェリー』、そして『ラスト・デイズ』などに夢中になっていた時代──つまり、今からほんの少し前のことだ──、アメリカではガス・ヴァン・サントという固有名はまったく忘れられた存在になってしまっていた。確かにそうかもしれない。せっかくハリウッドでそこそこの地位を獲得したというのに、彼は『マラノーチェ』を撮ったホームタウンのポートランドに帰ってしまい、インディーズの映画作家と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 AM

May 3, 2009

忌野清志郎追悼
山崎雄太

 昨夜、忌野清志郎が死んだ。58歳。  武道館で復活ライブを敢行したのは去年の2月だった。超満員の武道館、観客の平均年齢はいままでに行ったどのライブより高かったが、若いお客さんもちらほら見かけられた。安くはないチケット、「死ぬまでに一度は見たい」と嘯き買って……そういえば武道館にライブに行ったのも初めてだった。お客さんはみなニコニコしながら、しかし時折仔細らしい顔をして連れに耳打ちしたり、気忙しい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:34 AM

May 1, 2009

チャンピオンズリーグ08-09準決勝
バルセロナ対チェルシー 0-0
マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 1-0
梅本洋一

 シーズンも大詰め。チャンピオンズリーグの準決勝を迎えるこの頃になると、今シーズンはいったい何ゲーム見たのだろう、と考え込んでしまう。去年の今頃は、この季節の後、ユーロが開催されたのだから、「お楽しみはこれからだ」状態だったけれど、今年は、重要なゲームも10ゲームを切った。  まずカンプ・ナウのバルサ対チェルシー。バルサはいつもバルサだと相手によってスタイルを変えることのないバルサと、ヒディンク就...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:48 AM

April 28, 2009

『ワンダ』バーバラ・ローデン
結城秀勇

 泣き喚く子供の声に顔をしかめながら目を覚ます。この映画の冒頭、ワンダ=バーバラ・ローデンが置かれた状況とほぼ同じ唐突さで、観客は映画の中に引き込まれていく。同じような日常がこれまで継続してきたはずなのに、自分の置かれた状況が理解できない混乱した起きぬけの頭。窓の外に広がるのは荒涼たる採掘場。その中を横切り、裁判所で離婚訴訟を行い、職を失い、行きずりの男と寝て、置いてきぼりを食う。カーラーを頭に巻...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:59 AM

『ワンダ』バーバラ・ローデン
田中竜輔

 ズブズブと沈み込んだ『俺たちに明日はない』、コメディタッチもある『地獄の逃避行』、いやそれではこの作品について何も語っていないことと同じだろう。東京日仏会館で開催された〈カンヌ映画祭「監督週間」の40年を振り返って〉の最終上映作品、マルグリッド・デュラスやジャック・ドワイヨンが絶賛した、エリア・カザンの前妻であるバーバラ・ローデン監督兼主演作『ワンダ』について、無理矢理ひとことで感想を述べるとす...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:47 AM

April 23, 2009

「広告批評」336号(最終号)
宮一紀

 雑誌「広告批評」が30年という長い歴史に幕を下ろした。広告の世界にあまり関心がなくとも、その企画がときとして対象に寄り添いすぎていると感じることはあっても、コンセプトの部分で基本的にブレることのない誌面に概ね好感を持っていた。A5サイズで590円という気楽な価格設定もよかった。  休刊の理由は部数減や経営難ではないという。そこには同誌が主な批評の対象としたマス広告が時代とともに大きくかたちを変え...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:11 AM

April 22, 2009

『パンドラの匣』冨永昌敬
結城秀勇

 なにかとんでもないことが起こっているかもしれないと気付いたのは映画が始まり舞台がメインの「健康道場」へと移りタイトルが映るまでの少々長めの時間が経った後でだったから、いささか遅きに失していたのかもしれない。  それまではと言えば、人や物、そして音がフレームの中に見事に収まっていることに見とれていた。『シャーリーの好色人生と転落人生』のあの貫禄を見れば、当然至極のこととも思えるこの事実になぜ気を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:17 PM

April 17, 2009

チャンピオンズリーグ準々決勝 2nd Leg アーセナル対ビジャレアル 3-0
梅本洋一

 チェルシー対リヴァプールの4-4(7-5)という強烈な打ち合いを見ていて思ったのは、両チームの監督の資質の差だ。ヒディンクが「ここ一番」で強さを発揮する一発勝負型の監督であるとすれば、ベニテスはまさに育成型。数年前のリヴァプールよりも数段レヴェルアップしたチームを作り上げている。ヒディンクの戦術が、このゲームでのアネルカの右サイドでの起用という選手交代の妙にあったとすれば、ベニテスのリヴァプール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:06 PM

April 13, 2009

『一緒にいて(Be with me)』エリック・クー
結城秀勇

 タイプライターにセットされた真っ白な紙が、愛の言葉で埋められていく。ゆっくりとした文字の歩みが次第に文を形作る。"Is true love truly there?"。この声なき問いかけは、続く一文によって条件付きで肯定される。もしあなたの温かい心があれば、と。  何人かの登場人物たちがこの声なき問いを、それぞれのやり方で投げかける。雑貨屋の店主、警備員、女子高生。彼らはほとんど声を発することが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:06 AM

April 10, 2009

『ウォッチメン』ザック・スナイダー
高木佑介

 1985年。米ソ冷戦時代。アメリカがベトナム戦争に勝利し、ウォーターゲートを経ても未だにトリッキー・ディッキー政権が続いているという設定のこの世界には、常人よりもそこそこ強いスーパーヒーローたちがいる。といっても、過去の栄光を謳歌した彼らの現在は、それほど華やかなものではない。むしろ、核戦争勃発が目前となっている世界を生きる彼らは、全員が何やら暗い闇を抱えながら生きている。ヒーローたちの活躍では...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 PM

April 8, 2009

『ヘンリー・プールはここにいる〜壁の神様〜』マーク・ペリントン
結城秀勇

『隣人は静かに笑う』『プロフェシー』のマーク・ペリントンの最新作『ヘンリー・プールはここにいる〜壁の神様〜』がdvdスルーでリリースされた。ルーク・ウィルソン主演で、カリフォルニアの晴天を背景に彼が微妙な表情を見せるパッケージからは、ペリントンも芸風を変えたのか?と思わずにはいられなかったが、見てみると紛れもないペリントン節全開、ほとんど『プロフェシー』と同じような話なのだった。  不治の病に冒さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 PM

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
鈴木淳哉

冨永昌敬監督と佐藤央監督とは偶々幸運なことに知遇を得て以来、尊敬してやまない大先輩である。そうしたわけで背筋を正して試写に望んだのだが、二人の作品ともにすっくと格調高い。どうやら2作品には多くの美女が登場するようなので、少し底意地悪い気もするが、それぞれの女性に向ける視線を意識して鑑賞した。 水にぬれたアスファルトを歩く裸足の女の足音が佐藤央監督の『好色人生』に聞こえる。これは別に比喩表現ではなく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:59 PM

April 7, 2009

プレミアリーグ アーセナル対マンチェスター・シティ 2-0
梅本洋一

 インターナショナル・マッチデイを挟むと常にアーセナルにバッド・ニュースが流れる。ファン・ペルシもエドゥアルドも足の付け根を故障した。ナスリは風邪。  だが、出場メンバーを見て、それが予告されたことであっても、多くのファンはグッド・サプライズ! 待ちに待ったセスク・ファブレガスの復帰、そしてなんとFWにはアデバイヨールがでんと構えている。そしてフォーメイションは、久しぶりに4-2-3-1。2にはデ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 AM

April 5, 2009

『フロスト×ニクソン』ロン・ハワード
結城秀勇

 ボクシングの試合に見立てられたふたりの男のパフォーマンス。そこに賭けられているものはなにか。前代未聞のインタヴューの為に動く巨大な金、そのために一喜一憂してみせる人々の俗人ぷりが単なる韜晦でしかないことに観客はすぐ気付く。『ボディ・アンド・ソウル』、『ハスラー』、あるいはハワードの『シンデレラマン』などを引き合いに出すまでもなく、そこにあるのは栄光、たぶんアメリカと呼んでもいい栄光だ。ここに見ら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:17 AM

April 1, 2009

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
田中竜輔

 結局のところ「シャーリー」とは、いったい誰で、いったい何なのか? 冨永昌敬の創出したこのひとりの人物は、彼をひとつの意味として形成するようなあらゆる設定やら理由づけやらの外側でずっとうろちょろしている。彼のような類の人物を「キャラクター」とか「キャラ」とかと呼んでしまう私たちの習慣はとりあえず頭から捨て置くべきかもしれない。彼はある種の「記号」として交換可能な存在ではないし、どこぞの「データベー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:26 PM

March 21, 2009

『ベッドタイム・ストーリー』アダム・シャンクマン
黒岩幹子

アダム・サンドラーとリメイク版『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマン、そしてディズニーが手を組んでつくられた映画。ディズニー的には、一昨年の『魔法にかけられて』と同系列で、かつFOXにやられてしまった『ナイト・ミュージアム』の要素を取り込もうという発想でつくったんじゃないかと思うのだけど、これがちゃんとアダム・サンドラー映画になっているのだった。 子供を寝かしつけるときに創作する物語が現実になると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:26 AM

March 20, 2009

『月夜のバニー』(「桃まつり」より)矢部真弓
松井宏

老いてなお客を引き、ときに若い男を漁りもしよう、そんな場末の女性がバーバラ・スタンウィックを通り越してリリアン・ギッシュに近付くとき、そのフィルムは禍々しくも神々しい何かを纏うに決まっている。そもそも、ギッシュとは場末の女性以外のなにものでもないのだと、それを改めて気付かせてくれただけでも素晴らしい『月夜のバニー』は、だがそこに西部劇のフォルムさえ持ち出して、一挙に観客を惹き付ける。 血の繋がらな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM

March 19, 2009

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
宮一紀

 昨年夏の終わりに初めて仙台を訪れたときのこと。仙台メディアテークをしばらくうろついた後、仙台在住の友人・今野くんに連れられて近くの〈マゼラン〉という古書店に赴いた。映画や音楽、そして文芸方面で充実したラインアップを揃える小さな店内の一角はカフェ・スペースになっていて、そこで常連さんとおぼしき女性がひとりコーヒーを飲んでいた。  秋口の仙台で、時間は午後で、外は小雨が降っていて、店の軒先に猫が寝て...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:06 AM

追悼・フランチシェク・スタロヴィエイスキ
宮一紀

 ポーランドの画家で映画ポスターを数多く手掛けたフランチシェク・スタロヴィエイスキが先月亡くなった。  1960年代以降、世界中で映画が盛り上がる時期が訪れる。東欧でのそれは多分に宣伝用ヴィジュアルとともに受け入れられることになるのだが、そこには50年代後半の自由化と、自由化以降も実質的に続いたソ連の実行支配という背景があったことは否めない。東欧におけるグラフィック表現とは政治的な暗喩の純度の高い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:10 AM

March 18, 2009

『サッカー批評』42号「LOVE or MONEY」
渡辺進也

 雑誌には週刊誌、月刊誌、季刊誌とあるけれども、僕にとっての季刊誌といえば現在も、もう何年も前から『サッカー批評』である。個人的にも大好きな名前が執筆陣に並び、ネットやスタジアムでは知ることができないサッカーの話に溢れ、往年のサッカーファンをも唸らせるインタヴューが並ぶ。サッカーだけで140ページが組まれる読み物。今年も『サッカー批評』が出る度に新たな季節が巡ってきたことを知ることになった。  最...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:53 PM

March 15, 2009

『あとのまつり』瀬田なつき
宮一紀

 頭上をゆりかもめが走る東京湾岸・運河沿いの埋立地。「この辺、むかし海だったんだよ」と少女が少年に教える。その面影にまだあどけなさを残した少女が唐突に口にする「むかし」という言葉。もちろん「むかし、むかし……」というあのアニメ番組の前口上を持ち出すまでもなく、ここで使われる「むかし」という言葉はいわゆる「伝聞過去」に由来している。出来事を強く喚起するその言葉は再開発が着々と進行する湾岸地帯を突き放...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:37 PM

March 13, 2009

『火と血と星』キャロリーヌ・デルアス
結城秀勇

 白黒の画面、独特のタイトル、レナ・ガレルとその祖父モーリス・ガレルというキャスティング、若い左翼活動家が選挙の結果に幻滅するというストーリー、そうした要素を含んだ映画で(しかもフランス映画祭で上映されるとなればなおさら)フィリップ・ガレルという固有名詞を思い浮かべない方がむしろ難しいが、冒頭で若い女性と幼い娘のふたりが過激な歌詞を伴ったパンクなビートに身を躍らせるのを見れば、過剰にそうしたことに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:51 PM

チャンピオンズリーグ08-09 決勝トーナメント1回戦 2nd Leg
ローマ対アーセナル 1-0 (1-1, PK 6-7)
梅本洋一

 120分の死闘が終わり、PK戦。アーセナルの先攻。まずエドゥアルド。ローマのキーパー、ドニのナイスセーヴ。一番確率の高いキッカーが失敗することはよくある。PK戦というのは、運みたいなもので、この勝負はドローというのが正しい。結局、アーセナルがサドンデスでローマに勝ち、準々決勝に勝ち残った。  どちらもチームも勝ちきれなかったのはなぜか。いつものようにポゼッションではアーセナルだが、決定機はローマ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 PM

March 12, 2009

『7つの贈り物』ガブリエル・ムッチーノ
黒岩幹子

 深夜にふらりと立ち寄ったシネコンで、最終回に間に合うのがこの映画と『マンマ・ミーア』だけだったために観ることに。『マンマ・ミーア』でなくこの映画を選んだのは、アバがあまり好きではない上に数日前に友人の結婚式に出たばかりだったというのと、この映画にはロザリオ・ドーソンとバリー・ペッパーが出演しているから、という単純な理由によるもの。  冒頭に「7日で神は世界を創った。7秒で僕は自分の世界を壊した」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 AM

SPT(Setagaya Public Theatre)5号 戯曲で何ができるか?
山崎雄太

 認知度はかなり低いと思われるので説明をすると、SPTは世田谷パブリックシアターがおそらく不定期に発行している演劇雑誌で、「劇場のための理論誌」といううたい文句である。2月末に発行された5号の特集は「戯曲で何ができるか?」。「劇場のための理論誌」「戯曲で何ができるか?」と書かれた表紙をチラと見るだけで、ほとんどの人はうわッと拒否反応を示し、無関心、といって素通り、手にされることすら稀であろうSPT...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 AM

March 11, 2009

『SR サイタマノラッパー』入江悠
渡辺進也

 先日行われた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のオフシアター部門のグランプリ受賞作品。  かつて「もう一度だけチャンスを」と歌ったのは若かりし頃のマイケル・ジャクソンだった。「チャンスを追いかけろ」と安室に歌わせたのは後に詐欺で逮捕されることになる小室哲哉だった。自分の出自ゆえに馬鹿にされ虐げられようともそれでも、セカンドチャンスを待ち続け成り上がっていこうとするのは『8mile』のエミネ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:49 AM

『あとのまつり』瀬田なつき
田中竜輔

 その街の人々は「忘れる」ことを恐れている、でもそれって本当に怖いことなのだろうか。『あとのまつり』の主人公であるローティーンの少女が抱く疑問はそれだ。だって「アディオス」とどこかに行ってしまったかのように見えた先輩は、あっというまにそこにまた戻ってきたじゃないか。ついさっき街路ですれ違ったキスを交わしていた恋人たちも、平手打ちを繰り出す大喧嘩をしてはいるけれども、バンドと一緒にダンスを踊ったその...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:01 AM

March 10, 2009

『オーストラリア』バズ・ラーマン
松井宏

 165分。2時間45分。この長さをどう処理するか。まずは半分真っ二つに割ってみる。しかしそれでも手に負えない。ということで、後半部をさらに細かく割ってみる。そうして完成したのが『オーストラリア』だ。とでも言いたくなるような、つまり予め一大叙事詩として構想されたゆえに求められた諸ジャンルの混合が(西部劇、ラヴロマンス(植民地系)、戦争ものetc.)必然性を奪われ、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」に堕...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:08 PM

『あとのまつり』瀬田なつき
梅本洋一

 このフィルムに出会えたことが素直に嬉しい。こんなことはそんなにあることではない。ぼくは、もう少年ではない。ぼくは、もう少女に出会っても心がときめく歳ではない。でも、かつて、そう、もうずっと前だ。そんなことがあった。でも、それは一度きりしかなくて、もう絶対に戻ってくることもない。二度と起こらない何かが、ずっと前に起こった。そして、このフィルムの少年少女のようなことは、きっと、否、ぜったいに誰にでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:38 AM

『パッセンジャーズ』ロドリゴ・ガルシア
高木佑介

 以前どこかでこの映画のチラシを見たとき、『フォーガットン』とまったく同じような匂いがしたので、封切り後すぐに映画館に駆け付ける。  飛行機事故を奇跡的に生き残った5人の生存者たち。彼らのグループ・カウンセリングを担当することになったアン・ハサウェイは、患者たちが次々と失踪していくのを目の当たりにし、何やら自分たちが大きな陰謀に巻き込まれているのではないかと疑い始める。もちろんその先に待ち受けてい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:48 AM

March 7, 2009

『毒婦高橋お伝』中川信夫
田中竜輔

 車を引く前夫に、床に臥したままの亭主に、人身売買を裏稼業とする宝石屋の店主に、そして自らの罪を誤魔化すために誘惑した若い警官に……あらゆる全てに対し演じ続けること。それがお伝(若杉嘉津子)の唯一の処世術であり、麗し過ぎさえもする彼女の顔は生きるための嘘を生み出すための哀しい武器だ。人に「顔」を見せることを「演じる」という武器と同義のものとして生きたひとりの女性が、どうしようもなく「演じる」ことを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:12 AM

March 6, 2009

『チェンジリング』クリント・イーストウッド
結城秀勇

 トロリーバスが市民の足として行き来し、もはや一部の者の所有物に過ぎないとは言えない高い車高の自家用車がゆっくりと道を行き交う。その街は汚職に支配されている。新聞はそうした警察や政治家の見解を翌日の誌面に忠実に反映するが、その一方、放送が開始されてまだ10年と経たないラジオもまたマイノリティのためのメディアとして力を蓄えつつある。女性が仕事につくことはもはや当然のことと見なされ、そうした経済条件さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:59 PM

March 4, 2009

『オーストラリア』バズ・ラーマン
高木佑介

 「AUSTRALIA」というタイトル・ロゴが、地図に描かれたオーストラリア大陸の輪郭上に現れる。世界地図やgoogleアースを見れば明らかなように、オーストラリアはとにかく地理的にでかいわけだが、そのでかい大陸の地名をぶっきらぼうにそのままタイトルにしてしまっているこの映画の主題のひとつもまた、でかいこと、すわなち「壮大」であること、「広大」であることだと言えるだろう。第二次世界大戦と、白豪主義...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 AM

March 2, 2009

ラグビー日本選手権決勝 三洋対サントリー 24-16
梅本洋一

 すごく忙しい土曜日だった。早朝、何と現地で金曜夜開催になったシックスネイションズのフランス対ウェールズを見て、ゴゴイチには、このゲーム。そして深夜には、スキーのノルディック世界選手権のラージヒル団体。もちろん、各ゲームの間には日常の細々したことを片づけているわけで……。  時系列で書こう。  ますフランス対ウェールズ。レ・ブルーの監督も、シックスネイションズは土曜日の午後3時キックオフというもの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:15 AM

February 28, 2009

『このあいだ東京でね』青木淳悟
黒岩幹子

 表題作の中編1本と短編7作――うち1本は、「ごくごく一般的な戸建て住宅をまるごと一軒『トレースするだけ』の小説」の創作ノートに、西沢立衛設計の個人住宅への訪問記を(注釈の形態を用いて)添えたもの――で構成されたこの本は、青木淳悟の3作目の小説集とのこと。表紙カバーではどこのものともわからぬ白地図に、番地と思われる数字や信号とバスのマークだけが描かれていて、そのカバーをとると、やや高い位置(信号が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:26 AM

『このあいだ東京でね』青木淳悟
渡辺進也

 書き始めておいて何なんだけれども、実はまだこの『このあいだ東京でね』を僕は全部読み終わったわけではない。言い訳するわけではないけれども、それでもこうやって見切発車であろうと書き始めてしまうのは、一刻も早くこの本が店頭に並んだことを知らせたいという気持ちが強いからなのである。おそらくこれはここ数ヶ月で最も心躍らせる本だから。  そもそもこの本と真剣に向き合ったとしたら、2、3ヶ月は平気で時間を必要...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:16 AM

February 27, 2009

『スモーキング・ハイ』デヴィッド・ゴードン・グリーン
結城秀勇

『無ケーカクの的中男/ノックトアップ』の監督ジャド・アパトー、主演セス・ローゲンによるプロデュース作品がまたDVDスルーでリリースされた。アパトープロデュース作品は去年から今年にかけてだけで5、6本あるんじゃないだろうか。本作品では主演のセス・ローゲンが、『スーパーバッド/童貞ウォーズ』でも組んだエヴァン・ゴールドバーグとともに、脚本に参加している。『無ケーカクの~』でも異彩を放っていた「ユダヤ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:31 PM

08-09チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦1st Leg
アーセナル対ローマ 1-0
梅本洋一

 久しぶりに躍動するアーセナルのゲームを見た。  プレミアリーグでは5ゲーム連続のドロー。中盤から前戦にかけての連動が乏しく、もうこのチームを応援するのはよそうと思うくらいだった。別にロンドン在住でもないし、このチームを応援する理由などもともとなかった。だが、前世紀の終わり辺りから、ショートパスとミドルレンジのパスを組み立てながらスペースを創造するこのチームのフットボールに魅せられ、構成するメンバ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

February 25, 2009

『ベルサイユの子』ピエール・ショレール
松井宏

 「『ランジェ公爵夫人』のモンリヴォーの役によってこの俳優の稀有な才能が明らかとなり、彼のキャリアが再び開始されたと言えるでしょう」と、パスカル・ボニゼールはギヨーム・ドパルデューについて語っていた。キャリア初期にバイク事故を起こし、やがては義足を纏うことになるこのフランス人俳優を苛立たせていたのは、だが偉大な父ジェラールとの比較よりも、自身の出演作『ポーラX』の監督レオス・カラックスとの間にひと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:27 AM

February 24, 2009

『ベルサイユの子』ピエール・ショレール
結城秀勇

 とある事情から、作品全体について云々できるほど集中できる環境でこの映画を見ていないのだが、それでもこうしてなにか書き付けずにいられないのはひとえに俳優ギヨーム・ドパルデューのためである。彼が先日急逝したということを思い出す、というような感傷的な気持ちとはまったく無縁に、彼がスクリーンに映し出されると反射的に目を奪われてしまう。ジャック・リヴェット『ランジェ公爵夫人』では暴力的なまでに即物的な肉体...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 PM

February 23, 2009

『チェンジリング』クリント・イーストウッド
田中竜輔

 ダニー・ボイルの圧勝に終わった第81回アカデミー賞の結果がはたして妥当なものかどうかは、『スラムドッグ$ミリオネア』だけでなく『MILK』や『フロスト×ニクソン』、そしてケイト・ウィンスレットが主演女優賞を獲得した『愛を読むひと』といった作品をまだ目にしていない私には判断できないけれども、アンジェリーナ・ジョリーの生涯最高の配役のひとつに違いないクリスティン・コリンズ婦人ならば、はたしてどの作品...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:19 PM

February 19, 2009

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』デヴィッド・フィンチャー
田中竜輔

 ベンジャミン・バトンに刻まれていくのは、重力によって不可避に与えられる皮膚の歪みではなく、彼が体験した様々な出来事の集積だけだ。しかし老年期から出発する彼の人生には、その時間のベクトルの逆転を別にすれば、はたしてドラマティックな事柄など存在したのだろうか。もちろんこれは映画でありフィクションなのだから、現実の人生に比べればよっぽど派手で突出しているのかもしれない。けれども実のところこのフィルムに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:17 AM

February 18, 2009

ジャック・ドゥミの『ローラ』と『天使の入江』
松井宏

 『ローラ』(61)でひとを驚かすのは、何よりもその速さだ。それはクラシックの、というかホークスの、なにもそのスクリューボールコメディだけでなく敢えて言うなら『コンドル』にこそ顕著だと思うのだが、速さだ。ひとびとはみな急いでいる。誰もが時計の時間を気にしている。「あと30分で行かなきゃ」「次の約束があるの」。ひとつの出来事/会話の最後に、必ずと言っていいほど次の出来事へ急ぐひとの姿が描かれる。その...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:47 PM

February 16, 2009

“Let’s Stay Together”Live @ the 51st Grammy Awards
黒岩幹子

 8日に行われたグラミー賞授賞式のライヴ・パフォーマンスを動画サイトであれこれチェックして、T.I.+JAY-Z+リル・ウェイン+カニエ・ウエスト+M.I.Aの競演やらロバート・プラントの後ろで湿った音をかき鳴らすTボーン・バーネットの存在感やらを堪能していると、アル・グリーン先生が何故かジャスティン・ティンバーレークと“Let’s Stay Together”をデュエットしている動画を発見。  ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:03 AM

『中国中央テレビ・新本部ビル(CCTV)およびテレビ文化センター(TVCC)』レム・コールハース(OMA)
宮一紀

 2月9日、中国・北京の新興ビジネス街にある中国中央テレビのビルが焼け落ちた。春節を祝って自社で打ち上げた大型花火が引火したとの説が有力であるが、ネット上にアップされた写真や映像を見るにつけ、高さ159メートルもの巨大なヴォリュームを持ったRC建造物がここまで派手に燃え上がることにただただ驚くしかない。幸いなことに、と言うと語弊があるけれども、あれだけ大規模な火災だったにも関わらず死者が消防士一...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:39 AM

February 15, 2009

『ザ・クリーナー 消された殺人』レニー・ハーリン
渡辺進也

 一見するとひどく平凡な映画にみえる。昨今のサスペンス映画につきものの、「ラスト6分40秒、この罠は見抜けない」といった宣伝文句を見るとジェームズ・フォーリーの『パーフェクト・ストレンジャー』のような作品を思い浮かべてしまう。しかし、もしそうした点からこの映画をみるとひどくつまらない映画のようにみえるのである。この映画のラストの、観客をびっくりさせるような度合いは非常に低い。これをサスペンス映画と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:55 PM

February 14, 2009

『ザ・クリーナー 消された殺人』レニー・ハーリン
高木佑介

 サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、エヴァ・メンデスとキャストは充実しているが、都内では一館だけでしかやっておらず、客の入りもそれほど良いとは言えなそうなので、もしかするとすぐに公開が終わってしまうかもしれないレニー・ハーリン監督作。  その豪華と言えば豪華なキャストと、親切に添えられている副邦題と、物語を支える主人公の経歴と舞台背景にただようフィルム・ノワール的な芳香のせいでか、(全然関...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:59 PM

February 12, 2009

W杯アジア最終予選 日本対オーストラリア 0-0
梅本洋一

 やはり勝ちにいったゲームでスコアレスドローというのは、このチームに、力がないということだ。多くが欧州のチームに所属しているオーストラリアの選手たちが、ベストコンディションになく、怪我人もいる現状。それに対して日本代表は、ほぼベストメンバー。ホームゲームなのに勝ち点3が取れない。  だが、すごいゲームのスコアレスドローもないわけではない。勝ち点1が問題なのではなくて、このゲームにワクワク感がなかっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:17 AM

February 11, 2009

『ロルナの祈り』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
梅本洋一

 『ロゼッタ』についての批評の中で、ジャン=マルク・ラランヌは、ロゼッタという少女の身体の中にキャメラが埋め込まれたようだ、と書いたことがあった。ダルデンヌ兄弟のフィルムを見ていると、いつもその文章が思い浮かぶ。ロングショットを欠いた極度に主人公に近いキャメラ、そして、主人公が出ていないショットはいつもひとつもない。だから、ぼくらには、主人公とその小さな周囲しか見えない。そして、いつものように、付...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:54 AM

『レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで』サム・メンデス
梅本洋一

 「あれから11年後……」ということは、『タイタニック』からもう11年が経ったということか。ぼくも歳をとったものだ。レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが、1955年のニューヨーク郊外に住む夫婦を演じている。妻は女優を夢見ているが挫折、夫は家族を支えるために大企業のビルの15階で「死ぬほど退屈な仕事」に耐える。ふたりは郊外の「レボリューショナリー・ロード」という呼ばれる一角に素敵な家を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:51 AM

February 7, 2009

『感染列島』瀬々敬久
田中竜輔

 タイトルとは裏腹に「感染」という現象に対するこのフィルムの関心はきわめて薄い。それは前提条件にすぎず(それが空気や体液といった経路によってもたらされることが説明されれば十分なのだとオープニングのCGは雄弁に語っている)、その結果としての状況の描写だけが並べられていく。荒廃した東京の相貌にせよ、病院に押し寄せる人の群れにせよ、それらは別に未知の病原菌をその原因とせずとも、正体不明の怪獣でも宇宙人で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:32 AM

February 6, 2009

『ラーメン・ガール』ロバート・アラン・アッカーマン
松井宏

 『ラーメン・ガール』は決して出来の良いフィルムではない。むしろ多くの失敗や穴がある。ところが穴から垣間見える美徳のようなものがある。ところがそれを美徳と呼んでいいかどうかは、やはりまったく確かではない。  ブリタニー・マーフィと西田敏行主演なのにまったく世間を騒がせなかったこのフィルムは、始まって一瞬『ロスト・イン・トランスレーション』の30歳版かと思わせるが、実際はあっけらかんとそんな危惧を掃...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 AM

『ランド・オブ・ウーマン/優しい雨の降る街で』ジョナサン・カスダン
結城秀勇

 日本では劇場未公開、昨年11月にDVDリリースされた一本。2/13発売の「nobody」29号では2008年に出たDVDスルー作品の星取をおこなっているが、その中でも、『マーゴット・ウェディング』(ノア・バームバック)や『ロビン・ウィリアムスのもしも私が大統領だったら……』(バリー・レヴィンソン)などと並んで評価の高い一本だった。  ということで見てみると、メグ・ライアンがいい。無根拠な断言だが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:13 AM

February 5, 2009

『グラン・トリノ』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 このフィルムのタイトルであるグラン・トリノはクルマの名前だ。アメ車に詳しくないぼくはスペックを調べてみた。このクルマは72年から76年にかけて生産されたもので、そのスペックはV8、排気量7542cc、出力219/4000、最大トルクは50.6/2600ということだ。その巨大な排気量から考えても、グリーンニューディールが叫ばれる現在、決して作られることはないだろう。排気量の割には出力も219馬力で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:16 AM

February 4, 2009

『グラン・トリノ』クリント・イーストウッド
高木佑介

 脚本を読んでイーストウッド自身も思ったそうだが、かつて彼が撮った作品を駆け巡るかのように、この『グラン・トリノ』はそのどこにあるとも知れない場所——だが、どこにでもありそうな世界——を、私たちの目の前に広げていく。『センチメンタル・アドベンチャー』、『許されざる者』、『パーフェクト・ワールド』……。ポーチに腰かけ缶ビールを飲み干すウォルト・コワルスキー(=イーストウッド)が時折語る自身の経歴は、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:45 PM

January 24, 2009

『我が至上の愛 アストレとセラドン』エリック・ロメール
梅本洋一

 ずいぶん前のことになるが、「別冊宝島」が映画特集をしたことがあった。その中に安井豊が、とても面白いロメール論を書いていた。タイトルは『いい加減にしろよ、じいさん』だったように思う。たとえば、ロメールの歴史物をめぐって、バザンに遡って写真映像の存在論を論拠に、まじめな文章をぼくも書いたことがあった。この『我が至上の愛』にしても、耳に響いてくる変なフランス語──17世紀の書き言葉そのまま──を『O侯...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:45 PM

January 14, 2009

『近代日本の国際リゾート──1930年代の国際観光ホテルを中心に』砂本文彦
梅本洋一

 建築史家、砂本文彦の博士論文が下敷きになった大著である。大東亜共栄圏に向けて中国侵略を開始した時代、当時の鉄道省を中心に、日本で初めての国際観光ホテルの建設が進んでいたことは知られている。外貨不足が侵略という軍事的な結末を見た当時、外貨不足を観光立国で補おうとする政策も進められていた。もちろん観光立国政策は戦争に向かって頓挫することになるが、その政策の成果が、30年代に建設された国際観光ホテルで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:32 AM

January 13, 2009

『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』ジャド・アパトー/『寝取られ男のラブ♂バカンス』ニコラス・ストーラー
結城秀勇

 買ってしまった映画の消化スケジュールというだけなのかもしれないが、新作コメディの二本立て上映という近年稀に見るプログラムに惹かれ、新宿ミラノ座へ。予習のためにDVDを借りた『40歳の童貞男』が予想外に面白かったのでかなり期待していたのだが……。  結論から言えば、両作品ともひどく無難な出来、という印象だ。途中で席を立ちたいと思わない程度には面白いが、いかんせん長い……。こちらの勝手な期待としては...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:03 AM

January 12, 2009

08-09ラグビー大学選手権決勝
帝京対早稲田 10-20
梅本洋一

 豊田の2トライで早稲田の完勝のゲーム。見事に対抗戦のリヴェンジ、ということになるかもしれない。だが、全体的なゲームそのものの面白さはまったく伝わってこなかった。小さな部分から指摘すれば、ノックオン等のミスが多すぎる。早稲田のセンターがノックオンするのはいけない。プレッシャーがかかる部分での練習不足なのだろう。次にゲームメイクにおいてインテリジェンスが見られない。前半、帝京陣内深くに攻め入った早稲...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:23 PM

January 8, 2009

09 新年のラグビー
梅本洋一

○まず1月2日の国立競技場の2ゲーム。 早稲田対東海 36-12  ここまで魅力的なラグビーで勝ち上がってきた東海だが、早稲田の前に出るディフェンスに対すると打つ手を失う。東海の6番と8番を主なるターゲットに早稲田のディフェンスが前へ前へとプレッシャーをかけると、東海のアタックが寸断されてしまう。かつてのフランス代表のようなフレアを実現するためには、高度の個人技が必要になることが痛感される。  ス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:52 PM

08-09ヨーロッパジャンプ週間
梅本洋一

 今シーズンの4ヒルズは予定通り行われた。昨年はインスブルックがキャンセルになり、ビショクスホーフェン2連戦、しかもノットアウト方式ではなかったから、ちょっと興ざめ観があったし、優勝したのがアホネンだったから、時間が止まったような気がした。  今シーズンは従来通り。しかも、かなり高レヴェルの戦いが繰り広げられたと思う。マルティン・シュミットの本格的なカムバック、そして五輪を控えるロシアのヴァシリエ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:49 PM

December 31, 2008

『アンダーカヴァー』ジェームズ・グレイ
梅本洋一

 ブルックリンにあるクラブ・カリブ、1988年。そこの支配人がロビー(ホアキン・フェニックス)。彼は兄ジョー(マーク・ウォールバーグ)の昇進パーティーに恋人(エヴァ・メンデス)と出かけるところだ。兄は父(ロバート・デュヴァル)と共にニューヨーク警察に勤務している。法の抜け穴そのもののように白い粉が取引されるクラブ、そこを取り締まる警察。兄弟という血縁の強い絆は、法の内側と外側という境界線でもある。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:58 AM

December 25, 2008

セスク・ファブレガスの負傷
梅本洋一

 リヴァプール戦の前半終了間際、シャビ・アロンソとの攻防でセスクが倒れる。びっこを引きながら退場し、彼の代わりに後半開始から現れたのはディアビだった。重くなければいいが、と思うのは、アーセナル・ファンなら当然のことだろう。ギャラスに代わってキャプテン・マークを巻き、若いガンナーズの象徴であるこの選手を失えば、このチームの輝きの約半分はなくあってしまう。ちょっと行き詰まっていたので、この交代が吉と出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:02 AM

December 22, 2008

ラグビー大学選手権1回戦
早稲田対関東学院 21-5 帝京対慶應 23-17
梅本洋一

 抽選で1回戦の組み合わせが決まったため、決勝になってもおかしくない2ゲームが1回戦で行われた。このことについては、すでに多くの批判が語られているので繰り返さない。関東地区についても、上記の2ゲームが同時刻に行われた。熊谷と秩父宮のキャパを考えても、興業という側面から見ても、またぼくのようにスカパー!で見る人々にとっても、暴挙以外のなにものでもない。スポーツはそれをやる人のためにあるのと同時に、そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 AM

December 18, 2008

『1408号室』ミカエル・ハフストローム
結城秀勇

 いわずとしれたモダンホラーの王様スティーヴン・キングだが、実は彼の作品の映画化で、映像として具現化されたギミックやクリーチャーのかたち自体が恐ろしいという例は余りないんじゃないだろうか。膨大な映画化作品の中でたいした本数は見ていないけれどぱっと思いつく90年代以降のものは、『マングラー』のプレス機にしろ、『ドリームキャッチャー』の怪物にしろ、キモカワイイ系が多い気がする(キングの音楽の趣味のせい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:43 PM

December 16, 2008

『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』ジョージ・A・ロメロ
結城秀勇

 この映画を見て、巷ではそれなりに評判の高い『クローバーフィールド/HAKAISHA』(マット・リーヴス)を、なぜちっとも面白いと思えないのかがよくわかった。冒頭(というか作品全体の構造)の形式の差異はひとまず脇に置いておくとすると、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』の序盤におけるカメラを持つ男の視点と、『クローバーフィールド』の終盤までのカメラを持つ男の視線は、確かによく似ていると思う。でもここで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:24 AM

December 12, 2008

『チェンジリング』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 この壮大な作品についていったい何を書き記せばいいのだろう。いま、こうした作品を演出できるのはクリントしかいないだろう、と考えたこのフィルムのプロデューサーであるロン・ハワードの直感は正しい。自らの企画──それは次作の『グラン・トリノ』を待とう(You tubeでトレーラーが流れている)──ではなく、頼まれた企画の監督を請け負ったクリントの底知れぬ力には溜息が出るだけだ。映画とは何なのか、という途...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

December 8, 2008

『どこから行っても遠い町』川上弘美
梅本洋一

 同じひとつの商店街を行き交う人々とそこある店に集う人々が織りなす11篇の小説を集めた短編集。それだけ書けば、誰でもバルザックを思い出すだろう。BSの「週刊ブックレビュー」を見ていたら、川上弘美がゲスト出演していて、彼女もバルザックの名を口にしていた。  句点が文章の奇妙な位置にふられている彼女の文体と、それがもたらす効果は、この短編集でも同じだが、それについて考えはじめると深みにはまってしまいそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 AM

08関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対明治 22-24
梅本洋一

 途中出場の田邊のコンヴァージョンが右のポストをたたいてノーサイドのホイッスル。入れば24-24 というゲームだった。多くの人々が語るとおり、明治の面子ならこの程度やれて当たり前だ。だが、本当に早稲田は弱い、これがぼくの実感。弱い上にナイーヴ。帝京に負け、良薬になったと思ったが、その敗戦はもう忘れられているようだ。明治の面子ならこの程度やれて当たり前なら、早稲田の面子なら、この程度ではどうしようも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:01 AM

December 7, 2008

ホンダF1撤退
梅本洋一

 かつて海老沢泰久の『F1地上の夢』と『F1走る魂』の2部作を読んでホンダとF1のただならぬ関係を知る者にとってホンダのF1からの撤退のニュースは本当に悲しい。本田宗一郎の不屈の魂でシャシからエンジンまで自社制作しF1に乗り込んでいく姿、そして中島悟が豪雨のオーストラリアGPで4位入賞したレースを目にした者にとって、ホンダは日産でもトヨタでもない。もちろん、BARホンダから始まった第3期の不甲斐な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:57 PM

『日本語が亡びるとき—英語の世紀の中で』 水村美苗
山崎雄太

 十代前半で水村さんは家庭の事情によりニューヨークへと渡るも、英語に馴染むことが出来ず、家に閉じこもって日に焼けた『日本近代文学全集』を愛読していたそうだ。曰くしばしば「私は古びた朱色の背表紙を目に浮かべて心を奮い立たせた」(『私小説 from left to right』)。いっぽう、水村さんとほぼ同世代の僕の母もまた、同じように十代半ばに家庭の事情によりロスアンゼルスに渡るも、英語によく馴染み...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:12 PM

December 4, 2008

『秋深き』池田敏春
渡辺進也

  情報誌か何かを見ていたときに、佐藤江梨子が織田作之助原作の映画に主演するという記事があって、なんでいまごろオダサクをやるんだろうと読んでいたら、この映画の監督が池田敏春だと知った。 いま、池田敏春と聞いてどれだけの人がわかるのかは知らないけれど(実際、『秋深き』を池田敏春の最新作と銘打って宣伝している媒体はほとんどないはずだ)、日活ロマンポルノ末期にデビューしたこの監督は、ディレクター...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:42 AM

December 3, 2008

『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン
梅本洋一

 この不思議な家族の話を要約するとかなりの文字数になるだろう。物語は単純ではない。ここでは、血縁、生と死、そして善と悪という根源的なことがらが物語のエンジンになっている。それらが複雑に絡み合って、血縁を抗いがたい求心力にした家族が提示されている。場所は、デプレシャンの他の映画同様、ルベーだ。そして、季節は、タイトルが示唆するように、クリスマス前からクリスマスにかけての数日間。散り散りになった家族は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:59 AM

December 2, 2008

『日本語が亡びるとき──英語の世紀の中で』水村美苗
梅本洋一

 いまから10年以上も前のことになる。仕事で滞在していたパリのホテルでボーっとテレビを見ていたときのことだ。旧日本海軍についてのドキュメンタリーが放映されていた。もうよぼよぼになった旧日本海軍の将校たちのインタヴューが多く含まれていた。内容はすっかり忘れてしまったが、とても驚いたことがあった。そのお爺さんたちが全員、見事なフランス語で質問に答えていたことだ。戦前の人たちなんかは、「西欧文化」の輸入...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 PM

November 28, 2008

『木のない山』ソヨン・キム
田中竜輔

 上映後のQ&Aにて、客席に座っていたアミール・ナデリは自ら挙手し「魔法のような作品」と賛辞を送っていたが、まったく同意だ。素晴らしいフィルムだと思う。  夫が失踪し、生活に困窮した母親は、ふたりの娘を叔母に預け、自身もまた身を消す。その母親を待ち続けるふたりの少女は、小さなブタの貯金箱にお金が貯まったら母親が帰ってくると信じている……このフィルムはそんな状況に生きる幼い姉妹を描いた劇映画だ。もち...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:40 AM

November 25, 2008

『文雀』ジョニー・トー
梅本洋一

 ちょっと前のこのサイトにジョニー・トーの『エグザイル/絆』について、伝統工芸に到達しているとぼくは書いた。『エレクション』から『エグザイル』への道程は確かに伝統工芸へのそれだった。だが、『僕は君のために蝶になる』を見たとき、それまでのジョニー・トーのフィルムとはまったく異なるスタイルと物語を持っていたため、本当に驚いてしまった。スターが出演し、ありふれた恋愛物語がそこにあったから、ぼくはてっきり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:55 AM

マンチェスター・シティ対アーセナル 3-0
梅本洋一

 先週のアストン・ヴィラ戦に続いてアーセナル完敗のゲーム。マンU戦に、アストン・ヴィラに敗れ、このチームの不安定さが気になっていたが、このゲームを見ると、アーセナルの症状の重さが伺える。  アーセナルが、ヨーロッパでもっともスタイルを持ったチームであることは論を待たない。ショートレンジからミドルレンジのパス交換と両サイドのスピード感溢れる上がりを中心に、スペースをついてくるアタックは、チームのメン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:52 AM

November 24, 2008

『完美生活』エミリー・タン
田中竜輔

 長編二作目になるというエミリー・タン監督の本作は、理想とはほど遠い人生の在り方に苦悩する二人の女性を、フィクションとドキュメンタリーとの双方で被写体に選び、それを並列的に映し出したフィルムだ。実際の製作過程としては、当初は完全なフィクションとして製作されたこのフィルムの出来に不満を持ったタン監督が、後付けのようなかたちでドキュメンタリーサイドを撮影し、最終的なラストシーンがそのあとで付け加えられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:09 PM

ラグビーテストマッチ 日本対アメリカ 32-17
梅本洋一

 テストマッチ2連戦2連勝は、ニュージーランダーやアイランダーに頼った日本代表が戦術的な的を絞ってある程度レヴェルアップできている現状を伝えているだろう。新ルールに則って、積極的にキッキングゲームを仕掛け、それにSOのウェブがうまく応え、ニコルス、ロビンスの両センターを核として安定したゲームを組み立てている結果である。ジョン・カーワンの手腕は確実で、ステップ・バイ・ステップ、日本代表を上昇させてい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:24 AM

『サバイバル・ソング』ユー・グァンイー
田中竜輔

 ユー・グァンイー監督の処女作にして前作『最後の木こりたち』は恥ずかしながら未見で、そのことを本当に悔やむかたちとなった。本作はその続編にあたり、監督自身が兵役のときに戦友だったという羊飼い/猟人のハン、そしてその妻と、彼の元を一時離れた「裏切り者」であるシャオリーツーたちの共同生活をその被写体としている。貯水地の建設を名目に当局から立ち退きを強いられるも、ハンはひたすらに抵抗し、厳しい冬を密漁に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 AM

November 23, 2008

『マクナイーマ』ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ
田中竜輔

 第9回東京フィルメックスの朝日ホール上映1本目は、国内初上映となるジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督特集のなかでも最高傑作と言われる本作。とりあえず解説を流し読みしただけでも相当な怪作であろうことは伺えたが、冒頭の主人公マクナイーマの衝撃的な(ほかにどう表現していいものか……)生誕シーンからしてただ感嘆、爆笑である。  最初から最後までマクナイーマが揺られ続けるハンモックのように、映画は蛇...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41 AM

November 17, 2008

『ブロークン』ショーン・エリス
宮一紀

 「70年代アメリカのサスペンス映画のような作品を撮りたかった」と語る謙虚で正しいショーン・エリス監督のコメントを聞いた時点で否応にも期待は高まった。実際、このイギリス人の若手映画作家は出来事の推移を適正な時間の中で観客に伝えることができ、風や暗闇といったそれ自体は決して画面に映らないものをとても大切に扱っているようにも見て取れる。だが、このフィルムは冒頭に引用されたエドガー・アラン・ポーの短編小...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:34 AM

November 15, 2008

『おかしな時代──『ワンダーランド』と黒テントの日々』津野海太郎
梅本洋一

 この本の帯にはこうある。「アングラ劇団旗揚げのかたわら、『新日本文学』で編集を学び、晶文社で雑誌みたいな本を次々に刊行。黒テントをかついで日本縦断のはて、幻の雑誌『ワンダーランド』を創刊! 60年安保から東京オリンピック、そして70年前後の大学紛争まで、若者文化が台頭した『おかしな時代』を回想するサブカルチャー創世記」。過不足なく、見事に本の内容がまとめられていると思う。「新日本文学」はともあれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:09 PM

November 12, 2008

『かけひきは、恋のはじまり』ジョージ・クルーニー
梅本洋一

 もっとも困難な映画とはどんなフィルムを指すのだろうか? あるいは、彼岸にあるフィルムとは何なのか? どちらの質問にも同じ解答を与えることができるだろう。解答例として挙げられるのは、『ヒズ・ガール・フライデー』(ホークス)、『フィラデルフィア物語』(キューカー)。複雑なキャメラワークも、凝った編集もなく、俳優たちが立ったまま、台詞を言っているだけだと感じられるように見えるのだが、それが極めて自然に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:07 AM

November 11, 2008

『赤めだか』立川談春
梅本洋一

 好評につき版を重ねている本をここで紹介するのは本意ではない。だが、誰からも、あれはめっぽう面白い本だ、と言われれば、どうしても本屋で手に取り、何ページか立ち読みしたくなるものだ。で、立ち読みしてみると、なるほど、これは面白い!と感じられ、平積みになっているその本を下の方から取って、レジに持って行ってしまうものだ。帰ってから寝る前に少しずつその本を読み進め、残りページが少なくなると、もう終わりかと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:26 PM

November 5, 2008

『エグザイル/絆』ジョニー・トー
梅本洋一

 おそらくハッピー・エンディングは来ないだろうと誰でも思うだろう。だが、それでも、ジョニー・トーの演出は、ぼくらを捉えて放さない。究極の「型」の世界。つまり、それは演出の果てとでも呼べるだろうが、ストーリーの進行とは関係なく、銃撃戦があれば、それを磨きをかけた演出で描ききる。それぞれの登場人物に、「型」があり、その「型」と別の「型」が結ぶとき、新たな「型」が生まれ、映画は「型」から「型」へと不定形...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:11 AM

October 28, 2008

『宮廷画家ゴヤは見た』ミロス・フォアマン
宮一紀

 18世紀末、スペインで長らく廃止されていた異端審問がカトリック教会の名の下に復権する。ポルトガル移民の子孫で裕福な商人の娘イネス・ビルバトゥア(ナタリー・ポートマン)は、ある晩居酒屋で豚肉に手をつけなかったことからカトリック教会にユダヤ教徒と見なされ、異端審問への出頭を命じられる。審問とは名ばかりの拷問——全裸で後ろ手に天井から吊るされる——によって罪の自白を強要されたイネスは牢獄に収容されるこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:39 AM

October 27, 2008

『アイアンマン』ジョン・ファヴロー
結城秀勇

 ロバート・ダウニーJr.、テレンス・ハワード、グウィネス・パルトロウ、そしてジェフ・ブリッジスの4人がほぼすべてのキャストなのだから、どんな風にしようと映画になる。しかしまったく子供向けではない人選……。かといって真っ当な大人向けでもない。  アイアンマンとして生まれ変わったロバート・ダウニーJr.が、今後一切自分の会社で兵器を作らないと宣言する記者会見でこんなことを言う。「自分が無責任なシステ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:01 PM

October 23, 2008

『シルヴィアのいる街で』ホセ・ルイス・ゲリン
結城秀勇

 最初に主人公の男を映し出したショットから既に監督の技量は明瞭に示されて、この作品を見て間違いはなかったことは明らかなのだ。それにとどまらず、そこから続く80分余りの時間は、まるで次第に活性化されていく自らの視覚と聴覚に翻弄されるかのような体験だった。  ストラスブールのカフェ。賑わう昼下がりオープンテラスで、それぞれの客が自らの連れと談笑し、見つめ合い、あるいはひとりで佇んでいる。建物のガラス窓...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 PM

October 22, 2008

『アンナと過ごした4日間』イェジー・スコリモフスキ
結城秀勇

 たとえば『ザ・シャウト』などにも見られたような、単純に語りの効率性に奉仕するわけではない時系列の交錯が、この『アンナと過ごした4日間』にもある。だが、ここで描き出されるものを物語として要約すれば、非常にシンプルなかたちにまとめることができる。すなわち、ひとりの男が隣に住む女性の部屋に忍びこむ、それが4夜の間続くということ。時折男の過去が、その間に挿入される。それら過去の出来事が、主人公の男レオン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:09 AM

October 18, 2008

東京中央郵便局、ついに高層へ
梅本洋一

 すでに郵便局からは基本計画が発表されていて、ヘルムート・ヤーンによる現状一部保存(詳細な計画を見ていないのだが、ファッサード保存程度だろう)と38階建になるという。今回、700億円を越える金額で大成建設が落札した、というニュースを新聞で読んだ。  小泉前首相が、都心の一等地に低層で土地を大きく占めている公共物件があっていいのか?という郵政民営化のシンボルがこの建物の解体だった。その小泉の新自由主...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

October 16, 2008

『崖の上のポニョ』宮崎駿
田中竜輔

 あまりに露骨な「父殺し」の描写があるとはいえ、少女と少年の閉塞された状況からの離脱というごくありふれた物語を、極端に平面化された――ほとんど一枚絵にまでデフォルメされた――風景の描写に、偽の空間性を徐々に導入するという発想、言い換えれば2次元の空間であるアニメーションに3次元的な偽のリアリティを導入するという発想だけに拠って解決をもたらそうとした『ゲド戦記』の凡庸な想像力の持ち主に対し、その父で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:02 AM

October 15, 2008

『その土曜日、7時58分』シドニー・ルメット
梅本洋一

 ニューヨークのおそらくダウンタウンの一角にある古いオフィスビルにはDiamond Centerと表示されている。そのビルの中のさらに古びた一室で、傷だらけの木製のテーブルの上のダイアモンドを鑑定している老人ウィリアムがいる。「盗品を横流しいているんだろう?」アンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)が尋ねる。彼を警戒する老人にアンディは、不動産会社に勤める自分の名刺を渡す。  時制が何度も行き来...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:51 AM

October 12, 2008

『La frontière de l'aube』フィリップ・ガレル
槻舘南菜子

 公開初日にして観客は四人。たぶん暇つぶしの爺さん(わざわざ挨拶までしてきて、「昼間からこんな映画見てるのか、おまえ暇なんだろ?」と言われた)、若者(途中で離脱)、妙齢……ではない女性と、私。  シンプルなオープニングのタイトルを締めくくる「キャロリーヌに捧ぐ」という言葉には、見覚えがある。そう、『白と黒の恋人たち』も同じように・・彼女に捧げられていた。さらに、映画監督であるフランソワと、かつての...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

September 30, 2008

『アキレスと亀』北野武
山崎雄太

 絵を描き続ければ人が死に続ける。なんで映画観てこんな辛い思いをしなければならないのかとまた悲しくなってしまう……。  少年真知寿(マチス)は、大金持ちである生家に出入りする画家との素朴な交流から画家になることを志す。しかし、父親の会社が倒産に追い込まれてから生活は一変する。少年−青年−中年と時代を追って半生が語られてゆく真知寿を貫く無表情、過去への執着のなさは、すべて他人への無関心に端を発するも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:40 AM

September 27, 2008

『東南角部屋二階の女』池田千尋
梅本洋一

 若く才能のある映画作家たちが小さな世界に身を落ち着けてしまうのはいったいどうしてなのだろうか?  壊れかけた木造アパートの脇に庭付きの日本家屋があり、その縁側で老人はタバコを吸っている。会社を辞めた男はそのアパートの一室に住み、同じ日に会社を辞めた同僚と男と見合いをした女性が同じアパートに転がり込む。アパートのオーナーで小さな飲み屋を営む女性が老人の世話をする。男は老人の孫であり、父の残した借...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:03 AM

September 18, 2008

08-09チャンピオンズリーグ第1戦 ディナモ・キエフ対アーセナル 1-1
梅本洋一

 かつてディナモ・キエフはそのスピード溢れるフットボールでチャンピオンズリーグを席巻したことがある。シェフチェンコを擁した98-99シーズンのことだ。コーチのロバノフスキーは、中盤をやや省略し、あっという間に敵ゴール前に攻め込むフットボールで強豪を次々になぎ倒し準決勝まで進出した。シェフチェンコがこのシーズンの得点王になった。  アーセナルの緒戦の相手はこのディナモ・キエフだ。いくらプレミアで調子...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:27 PM

September 8, 2008

『ハンコック』ピーター・バーグ
結城秀勇

 ドリュー・バリモア、ルーク・ウィルソン主演の『100万回のウィンク』を見て、ラヴコメというジャンルから八割がた逸脱したその脚本にちょっとびっくりしてしまった。その脚本家ヴィンス・ギリガンが『ハンコック』にも参加しているというので見に行った。全体的に大味な印象は否めないが、この映画もまた歪な回路をたどって家族の物語へ至る。  あるいはこれはスーパーヒーローものというより、怪獣ものといったほうが近い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:50 AM

August 31, 2008

『ダークナイト』クリストファー・ノーラン
松井 宏

 バットマン出来の善し悪しは悪役にかかっている、というのがティム・バートンの教訓だったとすれば、ノーランの前作『ビギンズ』はそれを破ったゆえに駄目だったのわけかと勝手に納得していたものの、どっこい本作はジョーカー登場である、さてどうなるものかと期待は膨らむ。  で、やはりこのフィルムはジョーカーの肩にかかっていた。で、ジョーカーの存在に対して妙な感覚を持ってしまったので、このフィルムに対しても妙な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:38 AM

August 22, 2008

『ダークナイト』クリストファー・ノーラン
結城秀勇

 暗い夜かと思ったら、kがつくナイトだった。バットマンが活躍するゴッサムシティには「騎士」よりも「夜」の方がよく似合う。DCコミック版でもティム・バートン版でもアニメ版でもいいが、ゴッサムシティとはその大半を夜が支配する街、そして夜の生活者たちが支配する街である。まっとうな人間も一握りはいるようだが、あくまでも少数派で、そんな人たちの価値観の通用しない街であることが嫌われものヒーロー・バットマンの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:12 PM

August 17, 2008

『TOKYO!<メルド>』レオス・カラックス
山崎雄太

 日本人の目は女性器のようであるから汚らわしい……  こう被告席で吐き捨てるメルド(ドニ・ラヴァン)は、下水道の怪人である。といっても彼は、渋谷の事件以外とりわけ怖がられるようなこともしておらず、銀座においてもちょっと攻撃的な浮浪者といった程度で、けが人もいないようだ(食事も花にお札とわりと高尚)。メルドは、もうそもそもから「東京の人々」に恐れられており、われわれもまた「ニュース」を見ることによっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:01 PM

August 11, 2008

『JUNO/ジュノ』ジェイソン・ライトマン
結城秀勇

 前作『サンキュー・スモーキング』もそうだったが、この監督(『ゴーストバスターズ』のアイヴァン・ライトマンの息子である)の作品は嫌いになれない。一見小品だが重厚な味わいがあるというわけではなく、小品は小品ながら、その尺度身の丈にあった誠実な作品を見せてくれる。  なにかと『ゴーストワールド』と比較されている『JUNO/ジュノ』だが、重要な比較要素としては主人公と年上の男性との音楽の交換が挙げられる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:42 AM

August 8, 2008

北京オリンピック・サッカー男子 アメリカ対日本 1-0
梅本洋一

 天津はすごく暑そうだ。ゲーム開始当初、気温は35度。画面が引いたときバックスタンドがぼやけて見える。湿気も多いのだろう。公害のせいもあるか。解説の山本昌邦は、アテネでの自らの体験を「オリンピックというのは、ユーロとはちがうんです。ピッチは綺麗ではないし、気温だって高い。綺麗なサッカーをして勝とうとしてもダメなんです」と語る。メキシコ・オリンピックの銅メダルは5バックで5-2-3という布陣だった。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

August 5, 2008

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー
宮一紀

 一組の父と子が核戦争後と思しき灰燼と化した大地を延々と歩き続ける。空は暗澹たる分厚い雲に覆われ、そこに鳥の姿などあろうはずもない。寒冷化が進み、灰色の海の水は冷たい。もちろん魚など死に絶えているだろう。どうやら世界には〈道〉だけが残されたようだ。とても危険な〈道〉である。〈悪い者〉が出るかもしれないからだ。それでも彼らはひたすら〈道〉を南下して進んでゆく。多くの絶望的な光景に接しながら、父と子は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:58 AM

『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』古澤健
田中竜輔

 現在の日本映画の実製作にかかわる状況というものがどのようなものなのか、映画監督でも何でもない一観客である私が知る由もないが、莫大な予算がかけられた信じ難い作品の予告編に対し、ただ呆然とすることにさすがに飽きてきた。もちろんそういった作品の多くを実際に見ていない怠惰故に、作品自体を全否定することなど許されるはずもないのだが、しかしそれら作品の多くに数億円という金額が費やされていると言われてもまるで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:19 AM

August 1, 2008

『告発のとき』ポール・ハギス
高木佑介

 ダグラス・サーク特集にせっせと通う傍ら、気がつけば終了間際になってしまっていた『告発のとき』を見に行く。トミー・リー・ジョーンズの息子がイラク戦争から帰還したのち、謎の失踪を遂げたことが冒頭で知らされ、物語は終始その事件の捜査という一点に絞られる。ほどなくして失踪事件は息子のバラバラ焼死体の発見によって殺人事件へと発展し、元軍警察トミー・リー・ジョーンズの異常な活躍ぶりで事件の真相が明らかにされ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:23 PM

『レディ アサシン』オリヴィエ・アサイヤス
結城秀勇

『クリーン』の冒頭を飾る工業地帯の夜景に打ちのめされて以来、アサイヤスの映画を見直してそこに映り込むインダストリアルな美しさを持ったものたちを再発見するたびに、愛としか言いようのない感情に心打たれる。たとえば『感傷的な運命』における、陶器という工業製品がそれを作った人間の手に柔らかに包まれる時。あるいは『夏時間』の、すべての身の回りのものがアノニマスな他と交換可能なものへ取り換わっていく中、主を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:12 AM

『レディ アサシン』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

 『デーモンラヴァー』のコニー・ニールセン、『CLEAN』のマギー・チャン同様、『レディアサシン』のアーシア・アルジェントもまたひとりぼっちだ。夥しい物量と運動に支配されている都市の空間の中で、彼女たちは自分自身を証明することができない。自分がどこに属していて、そして自分を護ってくれるものがどこにあるのかを、彼女たちは知ることができない。状況は彼女たちに無関心でありつつ彼女たちを束縛していて、彼女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:44 AM

July 29, 2008

『ハプニング』M・ナイト・シャマラン
結城秀勇

 科学の教師であるマーク・ウォルバーグが(その設定が既に驚きなのだが)、授業の中で子供たちに原因不明のミツバチの失踪について語っている姿は予告編でも見ることができる。恥ずかしながら、私は数年前から実際に世の中を賑わせているこの事件についてまったく知らなかった。Colony Collapse Disorderと呼ばれるこの現象は、『ハプニング』の中で語られるとおり、ミツバチの群れががある時突然一匹の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:32 AM

July 28, 2008

『ハプニング』M・ナイト・シャマラン
宮一紀

 前作『レディ・イン・ザ・ウォーター』は、驚くほど何の確証もないままに、「他のどこでもないここ・他の誰でもない君」という、あらかじめ取り決められた予定調和の世界を彷徨するフィルムだった。まるでロール・プレイイング・ゲームででもあるかのように事件が起き、物語が進展する様を、私はただじっと傍観するより他になかった。  常に「ここではないどこか」を目指し、「ここにはいない誰か」を欲している点で、『ハプニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:16 AM

July 27, 2008

『奇跡のシンフォニー』カーステン・シェリダン
結城秀勇

 予告編を見て、『ボビー・フィッシャーを探して』に近い映画に違いない、見に行かなきゃなと思いつつも、同様に予告から『スリーキングス』だと判断した『ハンティング・パーティ』がそれほどそうでもなかったので、足がなかなか向かなかった『奇跡のシンフォニー』を終了間際になってやっと見た。  チェスと音楽というそれぞれの題材の映像的な処理の面では『ボビー・フィッシャー』に及ばないとはいえ、『奇跡のシンフォニー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:44 AM

July 12, 2008

『歩いても 歩いても』是枝裕和
梅本洋一

 これまで是枝裕和のフィルムとは、とても相性が悪かった。それどころか、彼のフィルムには、映画のエッセンシャルな要素だとぼくが考えてきたことを裏切る何かがあると感じられ、それを強く批判さえもしてきた。  だが『歩いても歩いても』を見る限り、かつてぼくが批判してきた彼のフィルムに関わる要素は、かなり稀薄なものになってきている。これは「『カポ』のトラヴェリングだ」と批判した死を超自然的な美意識に溢れた映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:02 AM

July 5, 2008

レーモン・ドメネク留任!
梅本洋一

 イタリアではドナドーニが解任されマルチェロ・リッピが再任されたというのに、フランスでは、レーモン・ドメネクが代表監督として留任した。ユーロのグループCを最下位、しかも得点1,失点6という最悪の成績であるにも関わらず、昨日フランス・フットボール協会のジャン=ピエール・エスカレット会長はドメネクの留任を発表した。ぼくも含めて誰でもが、すんなりディディエ・デシャンにその任が任されると考えていたのに、フ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:13 AM

June 27, 2008

成城コルティ
梅本洋一

 成城学園駅で降りたのはほぼ30年ぶりのことだ。目的は世田谷美術館分館清川泰次記念ギャラリーで開催されている、抽象画家・清川泰次が学生時代に撮影した「昭和十五年十一月十日.東京,銀座」の写真展を見るためだった。  だがせっかく成城学園で本当に久しぶりに降りたのだから、まずここで昼食を、と考え、「とんかつ椿」へ。東京の5指に入るこのとんかつの名店は、北口から徒歩10分ほどの完全な住宅地の中。おかげで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:01 PM

June 24, 2008

『最後の抵抗(マキ)』ラバ・アメール=ザイメッシュ
結城秀勇

 積み上げられた無数のフォークリフト用パレットが赤く視界を染める。そこはパレットの修理とトラックのメンテナンスを行う工場だ。輸送の根底に関わるその場所には、しかしながら流通の主体となるようなものはない。パレットはあってもその上に乗せる商品はなく、壊れたトラックはあってもそれが商品を積んでどこかへ流れていく姿はない。ここで働く人々を含めこの作品に現れるすべてのものは、工場の狭い敷地内で修理と再配置を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:54 PM

『イースタン・プロミス』デヴィッド・クローネンバーグ
高木佑介

 床屋で男が豪快に首を掻っ切られる光景を観て、まだ記憶に鮮明に焼き付いている『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を思い出した。ティム・バートンと同じく、クローネンバーグの新作もロンドンがその舞台となっている。そして『イースタン・プロミス』の始まりを告げるべく男の首を掻っ切ったのは、もちろんジョニー・デップではなく、ロシアン・マフィアと関係を持つ怪しい人間たちである。  このフィルムに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:00 PM

June 18, 2008

『イースタン・プロミス』デヴィッド・クローネンバーグ
梅本洋一

 このフィルムの中盤に知的障害の16歳の少年が、チェルシー戦のチケットを手に入れてとても喜ぶシーンがある。スタンフォード・ブリッジと思われるスタジアム近辺にはサポーターがたくさんが詰めかけている。おそらくチェルシー対アーセナルのロンドン・ダービーだろう。  物語と骨相とほとんど関係のないこのシーンは、実へこのフィルムにとってとても重要なものだ。クローネンバーグは、スティーヴン・ナイトによるシナリオ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:49 AM

June 15, 2008

『ミスト』フランク・ダラボン
結城秀勇

 どこかからほとんどなんの理由もなく異生物がやってきて人々が右往左往するこの映画を見て、『クローバーフィールド』を思い出した。この2本を私はまったく評価しないけれど、私たちがなにを見ているのかを(逆説的に)考えさせられた。  閉鎖空間となったスーパーマーケットの、ファサードに貼りめぐらされたガラス越しに襲来する怪生物を評して、女性教師は次のようなことを言う。それらはいるはずのないもの、私たちの知る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 AM

June 14, 2008

『ぐるりのこと』橋口亮輔
梅本洋一

 『ハッシュ』以来6年ぶりの橋口亮輔の新作。『二十歳の微熱』以来、彼のフィルムを見続け、当初はどうしても目を背けたくなるようなナルシズムに閉口したこともあったが、それが次第に稀薄になり、「登場人物」という映画において必須の他者に眼差しが向かうようになる様を観察してきたつもりだ。  『ぐるりのこと』のすべては、子どもを失ったカップルの欠落と再生までの長い道程である。このフィルムを見終わって多くのこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 AM

June 10, 2008

『コロッサル・ユース』ペドロ・コスタ
山崎雄太

 真っ白い壁にもたれかかって役人から部屋の説明を受けるヴェントゥーラは、一点のシミのようでもある。  ひと月ほど前—、横浜・寿町にひっそりとたたずむマンションの一室を改装する現場に立ち会わせていただく機会を得た。寿町は元町・中華街とほど近い場所にありながら、東京の山谷、大阪の釜ヶ崎(あいりん地区)と並び日本三大ドヤ街として知られている。いまこれらの場所は、総じて外国人観光客向けの安宿として「クリー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:47 PM

June 8, 2008

『トウキョウソナタ』黒沢清
梅本洋一

 佐々木家の主婦であり母を演じる小泉今日子は、目が覚めたらこれが悪夢であってくれたらいい、というようなことを言う。それまで、平凡きわまりない日常生活を営んでいたはずの、佐々木家には、父の失業をきっかけに次々に事件が起こっていく。否、それもまた日常なのかもしれないが、それまで平穏だと感じられた日常に、一旦、小さな亀裂が入ったように感じられると、佐々木家は世界の荒波にもまれてしまうようだ。  電車の線...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:46 AM

June 5, 2008

『ランボー 最後の戦場』シルヴェスター・スタローン
結城秀勇

 先月号のキネマ旬報の星取コーナーでは4人の評者がそろってこの映画にひとつ星をつけていた。その論旨は総じて殺人描写が残酷すぎて悪趣味だ(北小路隆志は、そこから政治的な意図を汲み取ることが不可能だというようなことを書いていた)ということだった。  いったいこの映画のなにを見てるのか不思議だ。この映画の極めて明確な政治的態度とは、虐殺はもちろん醜悪だし、なおかつそうした行為を行う最低な人間を殺す場合に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:41 PM

June 1, 2008

バウハウス・デッサウ展@東京藝術大学大学美術館
梅本洋一

 すでに世界遺産にも登録されているからデッサウのバウハウスの校舎は、誰でもその姿を知っているだろう。シンプルなモダニズムの建築物でその縦型の広い窓からは自然光が降り注いでいる。いかにも居心地が良さそうな校舎。  ヴァルター・グロピウスの指揮の下に、カンディンスキーが、クレーが、シュレンマーが、そしてミース・ファン・デル・ローエがこの校舎に集い、この校舎周辺に新たに設計された宿舎に住まい、世界中から...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:50 AM

May 31, 2008

『PASSION』濱口竜介
宮一紀

 上映前の舞台挨拶で俳優の渋川清彦がいみじくも口にしたように「映画っつうのは映画館で観るもんです」。立ち見さえままならないほど多くの観客が詰めかけ、むせ返るような空気の中で(とはいえ次第に空調が効きすぎて寒くなってはきたが)映画が上映されるという久しく体験したことのなかったことがユーロスペースで起こっていた。しかもそれが平日のレイトショーで起こった。もちろんイベントの性格上、関係者が多く集まってい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:53 AM

May 30, 2008

『彼方からの手紙』瀬田なつき
高木佑介

 不動産会社に勤める吉永と彼の前に現れた少女ユキは、ユキの父親がかつて住んでいたという思い出の家を目指して旅に出る。我々にはその思い出の家が具体的にどこにあるのかは告げられない。真っ赤なニット帽を被った男と真っ白な服を着た少女は、彼らが出会った横浜から「どこか」へと向かって旅立つのである。  このような単純明快なストーリーを持つ『彼方からの手紙』は、我々がかつてヴェンダースの映画で観たような風景と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:11 PM

May 28, 2008

『丘を越えて』高橋伴明
梅本洋一

 銀座にルパンという文壇バーがあるという。ぼくは行ったことがない。1928年開業のバーで、「里見・泉鏡花・菊池寛・久米正雄といった文豪の方々のご支援を頂きました」とルパンのサイトに掲載されている。『丘を越えて』の撮影は、このバーのシーンでクランクインしたということだ。菊池寛に扮する西田敏行と文藝春秋社重役の佐々木茂索に扮する島田久作が、このバーのカウンターで「モダン日本」の出版について話し合ってい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 PM

May 26, 2008

『PASSION』濱口竜介
結城秀勇

「東京藝術大学大学院映像研究科 第二期生修了制作展」が渋谷ユーロスペースで開催されている。昨年に引き続き、すべての作品の技術の高さに目を見張るが、濱口竜介監督『PASSION』には、そうした水準を遙かに超えた感銘を受けた。5/29(木)の上映には、おそらく会場の客席は観客で埋め尽くされるだろうが、それだけではないより多くの人の目に触れるべき作品であるように思う。  30歳を目前にした幾人かの男女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:56 PM

『ポスト消費社会のゆくえ』辻井喬 上野千鶴子
梅本洋一

 バブルが弾けてから、「失われた10年」を経て、いろいろなものがなくなった。バブルの時代までのリードした国土計画やセゾングループがなくなったものの代表だろう。どちらも堤康次郎が起こした西武鉄道に端を発し、一方が堤義明、他方が異母兄の堤清二によって経営されていた。苗場スキー場や軽井沢といったリゾートが国土計画によって開発され、パルコやシネセゾンがセゾングループによって経営されていた。本書は、後者の社...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:20 AM

May 23, 2008

2007-2008チャンピオンズリーグ決勝
マンチェスター・ユナイティド対チェルシー 1-1 (PK 6-5)
梅本洋一

 暗いロシアというイメージとチャンピオンズリーグ決勝という晴れがましさとはどうも似合わない。そう思っていたが、ゲームが始まれば、フットボールはどこでも同じだ。そして、決勝はどの決勝でも緊張感に包まれる。  ウェス・ブラウンの最高のクロスがロナウドにドンピシャのファインゴールでマンU先制。だが、前半にうちにロナウドのゴールの「戦犯」エシアンのシュートがディフェンダーに当たってコースが変わったところを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:14 AM

May 22, 2008

爆音映画祭2008 佐々木敦レクチャー
『ヌーヴェルヴァーグ』ジャン=リュック・ゴダール
田中竜輔

 ゴダールの『ヌーヴェルヴァーグ』に先立って行われた佐々木敦氏によるレクチャーは、「現象、あるいは運動としてのヌーヴェルヴァーグとは、見ること、聴くことの不可能性をポジティヴに捉え直すためのものであったのではないか」という仮説から始まった。映画音楽と現実音の混交とは、見ることと聴くことにおける不可能性の極値であり(つまり現実において「絶対に見えないはずの音」と「絶対に聞こえないはずの映像」が映画に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:50 AM

May 21, 2008

爆音映画祭2008に寄せて
結城秀勇

 体験試写の『クルスタル・ボイジャー』、前夜祭の『CLEAN』、かえる目によるトーク&ライヴと『喜劇 とんかつ一代』、『台風クラブ』などを体験して、各々個別にレビューを書こうしてみたが、どうもうまくいかないのでこんな文章を書いている。  その難しさは、まあひと言でいえばすごいから見てご覧なさいというなんとも陳腐な感想へと収束してしまうのだが、しかしそれではみもふたもない。一歩進めてその困難さは、爆...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:53 AM

May 15, 2008

『NEXT-ネクスト』リー・タマホリ
結城秀勇

 ここまで原作から遠く離れるとそのことに対して特に不快な気もしないが、フィリップ・K・ディックの名前を出すとそれほど集客力に影響があるのかと不思議にもなる。ただ、原作における黄金に光り輝く美しい突然変異体が、どう考えてもくすんだニコラス・ケイジに変わっているという点が、原作とこの映画の「予知」に関する視点の距離感を明確に示しているのだろう。彼の役はどこか、才能を浪費したかつての天才児といった趣すら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:08 PM

May 11, 2008

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ポール・トーマス・アンダーソン
梅本洋一

 同じスコット・ルーディンをプロデューサーとする『ノー・カントリー』におけるトミー・リー・ジョーンズの抑揚のある演技(否、存在と呼んだ方が適切だ)と、このフィルムのダニエル・デル=ルイスの過剰な演技を比較してしまうと、どうしてもトミー・リー・ジョーンズに軍配が上がり、もしこのフィルムもトミー・リー・ジョーンズが主演していたら、などと考えてしまうのだが、それでもポール・トーマス・アンダーソンの志は高...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:11 PM

May 3, 2008

07-08チャンピオンズリーグ準決勝
マンチェスターユナイティド対バルセロナ 1-0(1-0)
チェルシー対リヴァプール 3-2(4-3)
梅本洋一

 やはり今年のバルサには大きな問題があるようだ。特にエトー。彼の弱気の原因はどこにあるのだろうか。それに何人もが連携する動きが乏しい。ホームでもアウェイでもポゼッションこそ上回ったけれども、危険を感じさせるのはメッシとデコだけ。シャビもイニエスタも細かい芸当はうまいのだが、決定的な仕事をするには至らない。メッシのシュートがキーパーに止められ、デコのシュートが枠を捉えなければ、ハードワークを厭わない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 AM

May 2, 2008

『さよなら。いつかわかること』ジェームズ・C・ストラウス
田中竜輔

 戦地に赴いた軍人である妻の死を伝えられた夫が、ふたりの娘とともに自動車に乗って行くあてもない旅に出る。「Grace is gone」という原題は慎ましくも完璧にこのフィルムの物語のほとんどすべてを語ってくれている。しかし、ジョン・キューザック演じる夫の妻であったこの「グレース」という女性について、私たちはほとんど何も知ることは出来ない。冒頭に重ねられた遠距離電話での日常会話、そして自宅の留守電用...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 PM

April 18, 2008

「音楽に批評は必要なのか」佐々木敦vs湯浅学with南部真理
宮一紀

 佐々木敦によって95年以降に書かれた数々のライナーノートがこのたび一冊の書籍に纏められ(『LINERNOTES』、青土社)、その刊行を記念したトークイベントがジュンク堂新宿店内のカフェにて開催された。  次から次へと紡ぎ出される魅力的な固有名詞の数々と、話者たちの口ぶりの軽やかさも相まって、危うくそこにある切実さが耳からこぼれ落ちていきそうになるのだが、「音楽に批評は必要なのか」と題されたこのト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:02 AM

April 17, 2008

『石の微笑』クロード・シャブロル
結城秀勇

 中原昌也『作業日誌2004-2007』の中では、『石の微笑』のタイトルの後ろに「★」(国内でソフト入手困難を示すマーク)が着いていた。DVDが出るのを待っていたのだが出ないらしい。ということで三軒茶屋中央劇場に足を運ぶ(余談だが二本立てのもう一本は『タロットカード殺人事件』。ウディ・アレンとクロード・シャブロル、アガサ・クリスティとルース・レンデル、スカーレット・ヨハンソンとローラ・スメット。な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:24 PM

April 15, 2008

アーセナル、この10日間
梅本洋一

 アーセナルの今シーズンはほぼ終えてしまった。日曜日のマンチェスター・ユナイティド戦に1-2で敗れ、重要なゲームが4ゲーム続いた中で、2分2敗。先々週の水曜日と先々週末の対リヴァプール戦を連続して引き分け、そして、先週水曜の対リヴァプール戦を4-2で敗れた。このゲームに敗れて、チャンピオンズリーグ敗退が決まり、マンU戦に敗れて、プレミアシップもほぼ3位が決定した。つまり、水曜と週末のゲームは、今シ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 PM

April 10, 2008

『ポストマン』今井和久
結城秀勇

 長嶋一茂はちょっとシルベスター・スタローンに似てるかも、というただそれだけの理由で見に行った。  始まってすぐに「バタンコ」と呼ばれる自転車にまたがる長嶋一茂の姿は、あの発達した上半身の筋肉のせいで既に異様なのだが、しかしなにかそれだけにとどまらない違和感を感じて見ていたところ、線路脇の道路を鈍行列車と併走するシーンではたと気付いた。 「自転車がすげえ速い!」  ちなみにもうこの一言で、この映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:35 PM

April 9, 2008

『ノーカントリー』ジョエル&イーサン・コーエン
梅本洋一

 『ノーカントリー』は、それまでぼくらが持っていたコーエン兄弟についての先入観を払拭してくれた。確かに多くの人たちが言うようにコーエン兄弟の多くのフィルムは、とても出来の良い映画学校の卒業生の作品のようだった。ひとつひとつのショットが適切で、物語を過不足なく語る技術が秀でていて、何よりも映画には歴史があることを心得ていて、その中の最良の部分を自らの作品に取り入れてきた。それは別の言い方をすれば、コ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

April 2, 2008

『きつね大回転』片桐絵梨子(「桃まつり」より)
松井 宏

『きつね大回転』はその名の通り「回転」に満ちている。回転こそが内部を作り出す。ここにあるのは内部だけだ。きつねの住まう世界と人間の住まう世界は内部と外部に別れてはいない、そのどちらもが内部であり、ふたつの世界は分身なのだ。彼ら彼女らがともに都市(東京)に巣食い、闘いを挑み、そのリヴェット的遊戯が都市の分身さえも生み出す。だがまた冒頭とラストに映し出される上下のエスカレーターが示すように、『きつね大...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 AM

『granité(グラニテ)』大野敦子(「桃まつり」より)
松井 宏

『granité』の映し出す三浦の海岸と広大な畑の風景は、どこまでも重く鈍い鉛色だ。空も、そして海さえも登場人物にとっては逃げ場とならない。このフィルムが土、水、火、大気の四大元素からなるフィルムだとすれば、それはその四元素がひとりの若者にとって、歓びに満ちた保養材ではなく、あくまでも切迫した何かとしてあり(その切迫さは大野のもう1本『感じぬ渇きと』でも明瞭だ)、膨張しながらいまにも彼に襲いかかろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:21 AM

April 1, 2008

『冷たい夢、明るい休息』渡邊琢磨
宮一紀

 今さら説明も要らぬとは思うが、渡邊琢磨はcombopiano、sighboat等のプロジェクトで精力的に音楽活動を展開してきたアーティストである。これまでキップ・ハンラハンやジョナス・メカス、あるいはダニエル・シュミットといった「重鎮」たちを嗾けて(?)アルバムを制作し、また日本の若い映画作家たち——冨永昌敬や甲斐田祐輔——に楽曲を提供するなど、まさに「精力的」という形容に相応しいアーティストの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 AM

March 25, 2008

『FAN』group_inou
田中竜輔

「うかうかしてらんない おちおち寝てらんない」、group_inouの1stフルアルバムのテーマは幾度も繰り返されるこのフレーズだ。とりあえず焦ってみるということ、彼らの行動規範がそのまま音楽になっている。彼らのライヴを何度目かに目にしたとき、音楽は馴れ合いのための「方法」なんかじゃなく、ときには敵を生み出すような「行動」であるべきなんだと、あまり音楽そのものとは関係ないことを考えた覚えがあった...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:51 AM

プレミアリーグ
マンチェスター・ユナイティド対リヴァプール 3-0
チェルシー対アーセナル 2-1
梅本洋一

 今シーズンのプレミアシップを占う大一番が2番連続! もちろん、期待を込めて見た。だが、結果はどちらのゲームもややあっけないもの。期待を裏切ることにはなったが、こういうことはよくあることだ。  まずマンU対リヴァプール。フェルナンド・トーレスにイエローが出されたのに抗議したマスケラーノが2枚目のイエローをもらったところで、このゲームの趨勢は決まった。もちろん、リヴァプールもある程度持ちこたえられた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:51 AM

March 18, 2008

2008シックスネイションズ ウェールズ対フランス 29-12
2008ラグビー日本選手権決勝 三洋対サントリー 40-18
梅本洋一

 ウェールズがフランスに完勝し、ウェールズが久しぶりにグランドスラムを成し遂げた。ワールドカップでは評価を下げたチームをここまで再生させたのは、ヘッドコーチに就任したウォレン・ガットランドの力だ。彼は、特別なことをしたわけではないのだが、セクシー・ラグビーに呼ばれたウェールズが、低迷した原因を手際よく立て直した。まずはディフェンス。そのセオリーを遵守し、このシックスネイションズで与えたトライはわず...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:41 PM

February 27, 2008

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ウォン・カーウァイ
梅本洋一

 そのほとんどのフィルムを見て思うのは、ウォン・カーウァイのフィルムは、とても通俗的だということだ。通俗的といっても決して悪い意味ではない。通俗的な物語が、思いっきり通俗的な音楽の中で語られていて、しかも、自らを売り出す方法が通俗的な意味で、とてもうまい。こう書くとますます通俗的というのが悪い意味であると断定されそうだ。だが、通俗的という言葉をポピュラーという形容詞に置き換えてみよう。「ポピュラー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:22 AM

February 20, 2008

『身をかわして』アブデラティフ・ケシシュ
梅本洋一

 アルノー・デプレシャンなどからその名声を聞いていたケシシュのフィルムを初めて見た。つい最近3作目がフランスで封切られたばかりだが、このフィルムは、彼の2作目にあたり、大きな評判をとったものだ。  パリ郊外の高校。もちろん、ここには郊外集合住宅に住む多くの移民軽労働者の子女たちが通っている。「郊外問題」「移民問題」の巣窟であり、「郊外映画」というジャンルまで生まれている。ジャン=クロード・ブリソー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:51 AM

February 15, 2008

『テラビシアにかける橋』ガボア・クスポ
結城秀勇

 絵が上手いのと足が早いのだけが取り柄のいじめられっこの貧しい少年が、転校生のボーイッシュな女の子と仲良くなり、ふたりは家の裏の森に空想の王国を作り上げる。こんなとき転校生の女の子が冴えない男の子にしてあげることの相場といえば、聞いたことのない音楽を聞かせたり、読んだことのない小説を貸したり、そしてなにより恋を教えたり、といったことであるはずなのだが、それを行う「年上の女」は別にいる。転校生が行う...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:45 PM

『ルイスと未来泥棒』スティーヴン・アンダーソン
結城秀勇

「前に進み続けよう」というウォルト・ディズニーの言葉をストーリーの中心に据えた『ルイスと未来泥棒』は、逆説的に「前」とはいったいどこなのかを考えさせるような作品だった。未来へのタイムスリップを描く作品でありながら、そこで描かれる未来像は、テクノロジー的に進化しているとか、イデオロギー的に素晴らしいとかをまったく感じさせない。単に変な世界なのだ。  発明に取りつかれたフリーキーな少年ルイスは、未来...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:58 PM

February 12, 2008

『パリ、恋人たちの二日間』ジュリー・デルピー
結城秀勇

 もちろん『ビフォア・サンセット』でアカデミー賞脚色賞を受賞した彼女のつくるダイアローグは、テンポよくリズミカルに観客を魅了する。それなりの文化レベル(?)の高さを感じさせるセリフもいやみじゃないし、ビル・アーケム橋で『ラストタンゴ・イン・パリ』の真似をするシーンも、やり方によっては凄く恥ずかしいものにもなりかねないのに、恋人たちの微笑ましいやりとりとして出来上がっている。この映画の見所がジュリー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:47 PM

建築の記憶展@東京都庭園美術館
梅本洋一

 建築が人々の記憶に留まるためには、写真が必要である。挿絵や図版以上に写真と建築の関係は色濃い。「建築の記憶」と題された写真展の発想は正しい。東京都庭園美術館という、まるで空間それ自体が「建築の記憶」のような建物で、この写真展が開催される意義は大きいだろう。旧朝香宮邸のアールデコ建築は、その歴史的な意義はともあれ、それほど好きになれる空間ではないが、目黒区のど真ん中にこれほど静寂観溢れる場所は他に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:48 AM

February 6, 2008

ジム・オルーク アコースティック・ライブ@横浜国立大学 2/2
宮一紀

 かつて『ユリイカ』誌上のインタヴューで「ソロはもうやらない」と語ったジム・オルークだが、どういう風の吹き回しか(後に語ってくれるのだが)、この日はアコースティック・ギターを抱えておよそ一時間半のパフォーマンスを披露してくれた。  オルークは、静寂の中にそっと弦の揺れを響かせると、何度も同じフレーズを反復させながら、彼自身の言葉を借りれば「自問」するように、少しずつ音楽を前進させていく。幾度も重ね...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:42 AM

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
宮一紀

 それにしてもティム・バートンは徹底的に大人たちに死を与え、子供たちに生を与える。それが彼のファンタジー作家としての倫理であろう。先日テレビで放映された『チャーリーとチョコレート工場』(2005)では、様々に残虐な機械に回収されていった子供たちが、最後の最後でどういうわけか〈生〉だけは奪われずに帰還するのであった。結局のところ、文字通り〈子供〉の頃からティム・バートンを見てきたあなたや私のような若...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:56 AM

February 1, 2008

『ジェシー・ジェームズの暗殺』アンドリュー・ドミニク
結城秀勇

 伝説的な偉大さと凡庸な卑小さ。その対決が見られるものと思い足を運んでみたものの、期待は裏切られる。ブラッド・ピット演じるジェシー・ジェームズは、異様な人物ではあるものの偉大な英雄などではない。彼の行動自体は、後に「coward」の烙印を押されるロバート・フォードのとった行動とまったく同じだ。では何が彼を英雄に仕立て、ボブ・フォードを臆病者に貶めるかといえば、それはジェシーの生前は小説やジャーナリ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:19 AM

January 28, 2008

キリンチャレンジカップ 日本対チリ 0-0
梅本洋一

 代表チームの前に監督名をつけるのは確かに余り格好のいいものではないが、ナンバー誌最新号の特集の通り「監督力」というのも事実だ。ましてや代表チームの監督は選手を選べる。岡田武史の代表監督復帰第一戦の相手がビエルサのチリだったのは、組み合わせとして面白い。そして、岡田がキャッチフレーズに大西鐵之祐の「接近、展開、連続」を挙げたのも、面白い。  そしてゲームは? これがまったく面白いものではなかった。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:28 AM

January 26, 2008

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ティム・バートン
梅本洋一

 ティム・バートンがこのブロードウェイ・ミュージカルの傑作に興味を持ったのは、本当に自然なことだと思う。初期の『バットマン・リターンズ』の時代から、彼は地下という空間や、その空間の持つ外界から隔絶されたほの暗い世界に異様なまでの興味を抱いていたからだ。バートンの世界というのは、ファンタジーでもドリームでもなく、そうした「心温まる」ものや「バラ色の未来」のようなものとは正反対の、どうしようもなく救い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 PM

January 25, 2008

『新・都市論TOKYO』隈研吾 ・清野由美
梅本洋一

 あるサイトに建築家隈研吾とジャーナリスト清野由美が、汐留や六本木ヒルズを歩きながら、対話を重ねるページが連載されていた。とてもおもしろく読んでいた。東京改造に携わる側の建築家である隈研吾にジャーナリスト(決して素人ではない)清野由美が直裁的な質問をぶつけ、ときには明解に、ときには苦渋を込めて、そしてときには悔恨を表しながら、それでも正直に清野の質問に答えていく隈の言葉が興味深かったからだ。  本...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:04 PM

January 23, 2008

『人のセックスを笑うな』井口奈己
梅本洋一

 山崎ナオコーラの原作をぼくは読んでいない。だから原作と比較してどーのこーのとは言えない。でも、このフィルムは大好きだ。快晴の田園地帯を2両編成の電車が走り、遠くに山々が霞んで見える風景の中に住む登場人物たちの話だ。19歳の美術学校の生徒「みるめ」と、39歳のその学校のリトグラフの先生「ゆり」の恋物語だ。 「ゆり」が詳細にリトグラフを作るプロセスがいい。「みるめ」が「ゆり」の指導でリトグラフを作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:15 PM

January 16, 2008

『東京1950年代―長野重一写真集』
梅本洋一

 本書の63ページに「表参道 青山」(1952年)と題された一枚の写真が載っている。横位置の写真がぼぼ中央で区切られ、上方にはごくわずかな雲しかない空がある。空と陸を区切るのは黒々とした林だ。青山通りから原宿駅に向けて捉えた写真。表参道の幅の広さは今のままだろう。かつてあったもの。同潤会アパートメント。まだ窓には洗濯物がはためいている。そして、おそらく明治通りから原宿よりは両側が林だったのではない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 AM

January 12, 2008

『アメリカン・ギャングスター』リドリー・スコット
松下健二

 主人公である麻薬王フランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)と刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)は、「正義」について反対方向から実践を試みる、対をなすコインの裏表のような関係にある。  麻薬を牛耳るギャングスターは、ギャングといえども単に私欲に目が眩んで荒稼ぎしているのではなく、ある独自の「正義」に則して、麻薬事業に身を投じる。その「正義」とは、彼が15年間運転手として仕えた師であるバン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:38 PM

三越日本橋本店
梅本洋一

 運転免許の更新を東陽町の試験場でやった帰りに、久しぶりに人形町や日本橋を歩いた。  人形町から日本橋への道は、川を隔ててずっと三菱倉庫のビルがかなり長く続いている。正面からの写真は何度も見たが、背後も側面もかなりの意匠を凝らしてある。レンタル倉庫の大きな看板が「うざい」し、もっと有効活用できそうだ。周辺には日清製粉のビルが数棟あるが、一番人形町よりのビルは、使用率が低いようだ。だが、シンプルなモ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:17 PM

January 10, 2008

『再会の街で』マイク・バインダー
松井 宏

興味深い点はひとつ、どうして彼らは旅にも出ずNYに留まり続けるのかということだ。彼らとはすなわち9.11で妻子を失って心を病んでいる元歯科医アダム・サンドラーと、かつて大学時代ルームメイトで数年ぶりに偶然彼に再会した歯科医ドン・チードル。つまりこれは恰好のロードムーヴィネタだろうということで、たとえばヴェトナムで心病んだ男たちは旅に出ていたではないか、そこでわけもわからず海を目指してみたり、どうし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:55 AM

December 30, 2007

『ベオウルフ/呪われし勇者』ロバート・ゼメキス
松井 宏

 『ベオウルフ』の焦点は画面前にある。  それは「前に飛び出す」という3D上映の焦点でもあり、そして演繹的にか帰納的にか、『ベオウルフ』というフィルム自体の焦点も画面前にある。ゼメキスにとっては画面外=フレーム外という概念は消失し、新たになのか始源的になのか、画面前という概念が重要になってきたと言えようか。  この3D上映を見つつまず驚くのは、一種の始源性めいた何かがそこにあるということ。技術的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:19 AM

December 23, 2007

『接吻』万田邦敏
黒岩幹子

住宅街にあるコンクリートの階段を上がっていく男の後ろ姿からこの映画は始まる。手すりをつかみながら上っていくその足取りはいくぶんヨロヨロしているが、彼が疲れているのでも酔っているのでもないことは一目でわかる。くたびれたジャンパーを着たその背中はすっと伸びている。 彼はほどなくして殺人者となる。河原で逮捕されるのを待っている彼の姿が再び後ろから映される。両腕を大きく広げるとき、その背中はまるで鳥が羽を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:25 PM

December 22, 2007

『スリザー』ジェイムズ・ガン
結城秀勇

 エイリアンものとゾンビものとサイコキラー(地縛霊か?)ものを合わせたような作品である。といってもそれらの特色を適当につまんで盛り合わせたというものではない。この順番こそが大事なのである。エイリアン→ゾンビ→人間の怨念というシフトが、画面内の物体の運動速度を変化させる。  宇宙からやって来た生命体が地球人に寄生し、だんだんその支配を広げやがて街全体が人間でない生物に変わっていく……なんてストーリー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:44 AM

『牡牛座—レーニンの肖像』アレクサンドル・ソクーロフ
松下健二

『モレク神』(99)『太陽』(05)と連作を成す『牡牛座—レーニンの肖像』(01)がようやく公開される。この作品が公開されるまでに実に七年の歳月が経っている。この間、僕は『エルミタージュ幻想』(02)も『ファザー、サン』(03)もそして『太陽』も見てしまっており、ソ連時代から一貫して芸術家であったこの映画作家の動向をすでに目の当たりにしていたのだが、そんななかでも『牡牛座』はまた新鮮に僕の目に映っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:34 AM

December 21, 2007

『接吻』万田邦敏
宮一紀

 コミュニケーションとは本来的に実現不能な諒解のプロセスないしはその帰結の様態を理念として指し示す語であろう。すなわち人と人とは互いに見知らぬ空白の関係に始まるが、それは共有される言葉や時間によって填充される余白などでは些かもなく、私たちはつねに誤解をもって諒解と解釈するしかない。誤解と諒解とは対極に位置づけられると同時に限りなく近似的である。その意味で私たちはみな等しく孤独な存在である。  遠藤...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:25 PM

December 19, 2007

『接吻』万田邦敏
梅本洋一

 各所から評判を聞いていた『接吻』をようやく見ることができた。期待に違わぬ傑作だ。小池栄子、豊川悦司、中村トオルの3人の俳優が見事だ。収監された猟奇殺人犯・坂口を演じる豊川、国選弁護人・長谷川を演じる中村、そして誰よりも、逮捕される瞬間が放映されたテレビ画面で微笑む坂口を見て人生を決めた孤独な女性・遠藤京子を演じた小池栄子が素晴らしい。  テレビの小さなモニターの微笑む顔と、たったひとりで住む小さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:42 AM

December 18, 2007

アーセナル対チェルシー 1−0 
梅本洋一

 フットボール・ファンにはやたら忙しい日曜日。午後にはラグビー大学選手権1回戦の同志社対筑波、早稲田対中央、同時刻にトップリーグ、三洋対東芝、これでもう夕刻だ! 今年の関西はレヴェルが低い。筑波のディフェンス勝ち。そして中央は頑張るけど、早稲田の順当勝ち。そして三洋の好調ぶりの前に東芝の完敗。来週のサントリー対三洋が事実上の優勝決定戦か。早めに夕食を済ませ、仕事を早々に片づけると22時過ぎ。今日の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:30 PM

December 13, 2007

『呉清源 極みの棋譜』 ティエン・チュアンチュアン
鈴木淳哉

荻野洋一氏のブログに導かれて観劇に行ったという梅本洋一氏の文章に登場する「ものの肌理」という言葉に引き寄せられて観にいったものの、それは「キメ」と読むのだ、「キリ」ではないと洋行帰りの友人に冷や水を頭からかけられ愕然とするまでは、熱に浮かされるような、とにかくこの映画を駆動するエネルギー、そ の在り様にあてられて要はぽうっとしていた。くわえて「でんそうそう」と呼んで憚らないという国辱的に無知な、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:02 PM

December 12, 2007

ミドルスブラ対アーセナル 2-0
梅本洋一

 先節のニューキャッスル戦からアーセナルの調子が落ちている。故障者リストには、フレブ、フラミニ、ファン・ペルシ、セスク、ディアビが並んでいる。ファン・ペルシとディアビは替えがきくからまだいいが、フレブ、フラミニ、セスクの怪我は痛い。4人のミッドフィールダーのレギュラーのうち、3人が故障者リスト入り。そして、残ったメンバーは皆疲れている。  ニューキャッスルに続いてそんなアーセナルにボローが襲いかか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:11 PM

December 9, 2007

『呉清源 極みの棋譜』 ティエン・チュアンチュアン
梅本洋一

 ぼくは碁を打たないからどれがどういう勝負なのかまったく知識がない。このフィルムを見る前に少しばかり危惧した内容についての無知は、杞憂に終わった。荻野洋一のブログに導かれてこのフィルムを見ると、ふたつのことを語るべきだろうと思う。  まず映画が持っている肌理ということ。それぞれのショットは物語を語るために用意されているのだが、それ以上に、ショット内部の至る所に仕掛けられた「ものの肌理」を、まるで演...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

岡田武史代表監督就任
梅本洋一

 いずれはこの日が来るだろうとは思っていた。98年のフランスW杯では、相当悔しい思いをしたろうから、岡田としてはリヴェンジという気持ちを持ち続けていたろう。マリノスでの連覇も、彼になかったクラブチームの監督としてのキャリアを積むためだったろう。だが、ジーコといい、オシムといい、岡田武史といい、どうして日本代表の監督には、こうも育成型の指導者が並ぶのだろうか? 長い期間の合宿を組むことも出来ないし、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

December 4, 2007

『タロットカード殺人事件』ウディ・アレン
結城秀勇

 珍しくスカーレット・ヨハンソンに好感を持った。いつもいつも彼女が演じるセクシーで謎めいた女性にはあまり説得力がないように感じてしょうがない。たとえば、ウディ・アレンとはじめてコンビを組んだ前作『マッチポイント』でもファムファタルめいた女を演じていたけれど、映画の終盤になってわかるのは、彼女がつまらん女だということだった。ところがこの『タロットカード殺人事件』におけるヨハンソンは、はじめっから開け...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:56 PM

November 26, 2007

『サッド ヴァケイション』青山真治
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

 若崎と戸畑を結んでいる若戸大橋は、不思議な橋だ。その赤くペイントされた橋は、ずいぶん高いところを通っていて、確かそれは東洋一高い吊り橋だと誰かに聞いた気もするけれど、それにしても随分と高いな、あるいは遠いなという印象で、街を歩いていてふと目に入ると、どこか現実から剥離したような不思議な空気感を持っている。すぐそこにあるようなしかし無いような存在感に妙に心が騒ぐ。それは、若崎と戸畑を結んでいる。確...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:21 PM

November 15, 2007

『酔眼のまち──ゴールデン街1968~1998』たむらまさき、青山真治
梅本洋一

 今から25年も前のことだ。テオ・アンゲロプロスの『アレクサンダー大王』の試写を銀座の東宝東和第二試写室で見てから、軽く食事をとって、ぼくは、彼女とゴールデン街に行った。伊勢丹の前から横断歩道を渡り、花園神社の脇の遊歩道を通り、ゴールデン街に入って、小路をふたつ通り、角の自販機でタバコを一箱買い、三軒ほどの先の急な階段を上がったところにジュテはあった。狭い店に入ると、あなたたちさっき見てくれていた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:45 PM

『ラ・ヴァレ』バルベ・シュローデル
結城秀勇

 全編ニューギニアロケで撮影されたこの映画の撮影がどのようなものだったのか、出演者やスタッフのひとりひとりに聞いてみたい気がする。70年代前半、ネストール・アルメンドロスとともに、ギニアでのいくつかの短編ドキュメンタリーやウガンダでイディ・アミン・ダダのドキュメンタリーなどを撮影しているシュローデルだが、この映画においては撮影の過程がそのまま、未踏の地への旅というこの映画のストーリーそのものになっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:05 PM

October 28, 2007

「労働の拒否」廣瀬純レクチャー@東京日仏学院
『労働喜劇』リュック・ムレ
田中竜輔

 廣瀬純はその講演の冒頭で、大胆にジル・ドゥルーズの『シネマ』をおよそ次のように要約する。ドゥルーズの論理において、個々の映画作品(フィルム)とは有限個の要素からなる宇宙(メタ=シネマ)の組み換えによって生みだされるものであり、それら映画作品は決してその宇宙=シネマを全体とする部分に相応するものではない、と。そしてそれぞれ単一の要素にはひとつとして「特権的瞬間」は存在せず、それらはいずれも「どれで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:53 PM

October 24, 2007

第20回東京国際映画祭レポート『タイペイ・ストーリー』エドワード・ヤン
宮一紀

 エドワード・ヤン監督の長編第2作『タイペイ・ストーリー』が本国では公開2日目で早くも打ち切りになったという上映後のホン・ホン監督(今年の東京国際映画祭に出品されている『壁を抜ける少年』を監督)の言葉が重くのしかかる。つねに制作や配給の実際的な困難に悩み、憤っていたと伝えられるエドワード・ヤンだが、そのような当時の台湾の閉塞感はそのまま画面に映り込んでいる。台北を舞台としながら僕たちの眼にも既視の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:40 AM

October 23, 2007

第20回東京国際映画祭レポート『誰かを待ちながら』ジェローム・ボネル
宮一紀

 渋谷に向かう東横線の車内で中学時代の同級生を見かけたような気がした。電車を降りてから声を掛けようと思ったら、雑踏にまぎれて見失ってしまった。ふと、それほど親しかったわけでもない同級生に声を掛けようとした自分が滑稽に思えた。  気鋭の若手作家と呼び声の高いジェローム・ボネルの新作『誰かを待ちながら』はフランス郊外の日常を生きる匿名的な人々のすれ違いを描いた群像劇である。もっとも、偶然を装ったすれ違...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:14 AM

October 21, 2007

第20回東京国際映画祭レポート『恐怖分子』エドワード・ヤン
宮一紀

 第20回東京国際映画祭が開幕した。メイン会場となるTOHOシネマズ六本木ヒルズに上映作品の出演者たちが多数登場したことが大手メディアでも報じられている。日本の映画業界がそんなに華々しい世界だったとは寡聞にしてついぞ知らなかった。僕が訪れたのはもうひとつの会場である渋谷Bunkamura。会場周辺ではボランティア・スタッフたちが呼び込みをしていたが、そもそも普段から混雑したエリアなので、果たしてそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:17 AM

October 7, 2007

知識人の役割

本日見た2本はどちらも立ち見。かなりの盛況ぶり。メイン会場である中央公民館ホール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:22 AM

October 6, 2007

魔女のダンス、革命の歌、母親の写真

スケジュール調整と体調管理の悪さのせいで、今回の山形国際ドキュメンタリー映画祭は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

『すべてが許される』ミア・ハンセン=ラブ
梅本洋一

 過去のすべての事どもを忘れることなどできないのだが、時間と空間の大きな隔たりが、遺恨や後悔をもっと大きな寛大さへと変貌させうることを、ぼくらは『サッド ヴァケイション』を見て学んだばかりだ。そんなとき、弱冠26歳の女性が、ほぼ同じことを別の空間と時間で考えていた。ミア・ハンセン=ラブだ。  ぼくらが彼女の姿を初めて見たのは、オリヴィエ・アサイヤスの『八月の終わり 九月の初め』に出演した姿だった。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:33 AM

September 28, 2007

教文館ビル@銀座
梅本洋一

 秋の到来を告げるような雨の中を銀座に向かった。『東京遺産』というDVDを見て、その中にバー「ボルドー」という短編を見たからだ。ボルドーは、新橋駅側の銀座中央通りから2本昭和通り側にある通りにひっそりと建っていた。この蔦の絡まる古い古いバーでゆっくりアルコールをいつか楽しんでみたいと思う。この辺にも銀座の再開発の波が本当にすごい勢いで訪れている。YAMAHAも解体され、工事中の塀に囲まれていた。5...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:33 AM

September 22, 2007

アントニン&ノエミ・レーモンド展@神奈川県立美術館鎌倉
梅本洋一

 レーモンド夫妻が特に日本の建築に果たした役割の大きさは知られている。何も前川圀男、吉村順三のふたりがレーモンド事務所に在籍していたからばかりではない。ライトの大きな影響下から出発し、モダニズムへ傾斜していき、日本の風土や社会・歴史環境の中でヴァナキュラーな建築を実践していった姿は、本当に興味深い。  今回の展覧会の特徴はアントニンの妻のデザイナー、ノエミにスポットが当てられていること。だが、多く...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:58 PM

September 21, 2007

モウリーニョ解任
梅本洋一

 今朝ジョゼ・モウリーニョ解任のニュースが飛び込んできた。不調のチェルシーで、しかもローゼンボリにホームで引き分け。だが、プレミアシップは始まったばかりで、チャンピオンズリーグもグループステージの緒戦が終わっただけ。  つまり、アブラモヴィッチは、モウリーニョ解任の機会を窺っていたのだろう。後任監督にはエイヴラム・グラントが就任したという。エイヴラム・グラントって誰? 「エイヴラム・グラントで検索...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:09 PM

September 11, 2007

『夜顔』マノエル・デ・オリベイラ
梅本洋一

 ユッソンが40年ぶりにサル・ファヴァールでのコンサートで見かけた女性、それはセヴリーヌだった。ドヴォルザークの交響曲8番の演奏が終わり、拍手が鳴りやみ、出口へと向かう観客たち。ユッソンはセヴリーヌを追う。セヴリーヌはユッソンを認めるが、それ故に足早に出口で待っているメルセデスに乗り込んで夜のパリに消える。サル・ファヴァール──ここはかつてオペラ・コミック座として、多くの軽歌劇が上演された場所でも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:33 PM

September 5, 2007

『ブラック・スネーク・モーン』クレイグ・ブリュワー
梅本洋一

 平日の午前中にブルースは似合わないかもしれない。だが、映画館にはTシャツでヒゲを生やした中年男たちが集まっている。どこかで(boid.net?)サン・ハウスの貴重な映像が入っていることを聞きつけた、世の中に回収されるのを今なお拒んでいる初老のオジサンたちのように見える。いつもならぜんぜん場違いなぼくの服装も、この朝のシネアミューズならスタンダードに思える。  ブルースは愛し合った男と女から生まれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:55 AM

September 4, 2007

『明るい瞳』ジェローム・ボネル
梅本洋一

 この古典的な完成を遂げているフィルムを前にして、それを撮ったのが1977年生まれの映画作家であるという事実は、十分に人を驚かせるものであるだろう。「若い」と「瑞々しい」というふたつの形容詞が並立することを普通のことであると考えるぼくらにとって、こうした完成は、若さと引き合わない何かだからである。  そして、ここで言う「完成」が、過不足ない編集であるとか適切なキャメラポジションであるとか、演出の巧...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 PM

August 30, 2007

伊東豊雄 建築|新しいリアル@神奈川県立美術館葉山
梅本洋一

 東京オペラシティ・ギャラリーでの展覧会を見逃してしまったので、たまたまヴァケーション先の葉山で開催されていたこの巡回展を見た。  まず佐藤総合計画による設計のこの美術館について。ずいぶん話題になっていたので、楽しみにしていたが、いざ訪れてみると、立地の素晴らしさを建物が十分に活かしていないように思えた。御用邸を過ぎ、一色海岸の上に建つという立地は、もちろん、ここにどんな建物が建とうとも、そこから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:02 AM

『長江哀歌』ジャ・ジャンクー
梅本洋一

 やはりこの映画作家は風景と遭遇したとき、その才能をもっとも発揮するようだ。前作の『世界』は、確かに批評のレヴェルでは見事なものだったし、ユネスコ村のような風景は、決して世界の縮図にはなれない「世界」でもあったのだが、やはり、そうした物語の構図が風景に先立っているように見えた。だが『長江哀歌』では、なんといっても長江が圧倒的だ。もちろんぼくらには長江という固有名よりも揚子江と言われた方がぴったりく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:58 AM

August 26, 2007

アーセナル対マンチェスター・シティ 1-0
梅本洋一

 エリクソンが監督に就任し、先節ではマンチェスター・ダービーに勝利を収めたマンチェスター・シティ。今シーズンはまだ負けがないどころか、無失点。ペーター・シュマイケルの息子のカスパーがゴールを守る。  対するアーセナルは、先週のギャラスに続いて今週はセンデロスが負傷。体調万全ではないジウベルトがセンターバックに入っている。しかも2戦連続でミスをしたレーマンが負傷し、アルムニアがGK。大丈夫かよ、アー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 AM

August 21, 2007

イタリア対ジャパン 36-12
梅本洋一

 風光明媚なアオスタ近郊でキャンプを張るジャパンのW杯前哨戦。地元イタリアとの対戦。ジャパンは、良いところなくトリプルスコアで敗れた。  FWの強いイタリア、シックスネイションズでもまれバックスも力をつけているイタリアに真っ向勝負を挑んでは、結果はこんなものだ。トライ数で5-2であって、ディフェンスがある程度通用したと考えるのは間違いだ。トライを取る方法論は相変わらずない。この日のトライもモールか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:59 PM

August 17, 2007

『レディ・チャタレー』パスカル・フェラン
梅本洋一

 D・H・ロレンスのこの小説を巡るスキャンダルについて語ることは、単に時代が変わったのだ、と言うことに過ぎない。「生きる」ことには身体がつきまとい、ふたつの身体が重なり合うことが「恋愛」に欠かせないとしたら、このフィルムは、「森番」パーキンと「チャタレー夫人」のふたつの身体をどのように解放するのかが眼目になるだろう。戦争で半身不随になった夫、彼は、移動する際に手動の車いすを嫌い、広大な領地を車で走...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:53 AM

August 15, 2007

『斧に触るな』ジャック・リヴェット
梅本洋一

 バルザックの『ランジェ公爵夫人』を原作に、タイトルロールにジャンヌ・バリバール、恋人のモンリヴォーにギヨーム・ドゥパルディユ。最近のリヴェットの中ではもっともすばらしい作品。『ランジェ公爵夫人』がなぜ『斧に触るな』になっているかは、モンリヴォーが台詞で語っているので、ここでは詳説しない。  『美しき諍い女』が同じバルザックの『知られざる傑作』を現代に翻案したものであるのに対して、こちらはそのまま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:33 AM

August 11, 2007

原爆は物語を拒絶する ——〈東京日仏学院での対話録〉
舩橋 淳

 8月4日、広島原爆投下の2日前、長崎原爆投下の5日前に、「映画においてヒロシマを表象することの不可能性を超えて」と題される座談会が東京日仏学院で開催された。オペラ「蝶々夫人」のメーキングビデオ、『吉田喜重 オペラ「マダム・バタフライ」と出会う』上映に続き、ミシェル・ポマレッド氏、吉田喜重監督、岡田茉莉子氏、青山真治監督によるトーク。鋭利な知性が集った濃密な時間であった。ここではその内容を紹介する...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:03 PM

August 8, 2007

『天然コケッコー』山下敦弘
田中竜輔

 このフィルムの主人公はのどかな田舎の風景の中に遊び、泣き、笑い、騒ぐ子供たちだ。それゆえに同じように子供を中心に置いた傑作を何本か思い出してみるが、『蜂の巣の子供たち』や『ションベン・ライダー』のような破綻寸前の冒険も、『大人はわかってくれない』『新学期・操行ゼロ』の抵抗も、『動くな!死ね!甦れ!』のような凍てついた叫びも、このフィルムの子供たちからは見えてくることはないし聞こえてくることもない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:34 AM

『SOUTH』安田南
梅本洋一

1974年の2月に南青山にあったジャズクラブ、ロブロイでのライブ版の復刻。安田南のこのレコードや続いて出た『Sunny』を愛聴版にしていたぼくは、かなり前からCDリリースを待っていた。大里俊晴から「出たらしいですよ」と聞いてタワレコに走った。  歳をとったせいか70年代のことをとてもよく思い出す。大学に入ってからこのライブが録音されたロブロイ──安倍譲治がやっていたジャズクラブ──や六本木のミ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:25 AM

August 4, 2007

『コンナオトナノオンナノコ』冨永昌敬
宮一紀

 斉藤陽一郎と桃生亜希子演じる若い夫婦がシネマ・ロサの階段を上るところからはじまるこの映画は、これまでの冨永監督作品同様にいかにも奇妙な状況をいくつもかいくぐりながら、しかし次第になにか恐ろしい事態がひそかに進行しつつあることを印象づける。そのことに気がついたのは、笑っていたはずの頬がいつのまにか引き攣っている、そんな収まりの悪さを何度か経てからだった。  たとえば杉山彦々とエリカによるベッドシー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:49 PM

August 3, 2007

『コンナオトナノオンナノコ』冨永昌敬
鈴木淳哉

 たまさか、スチール撮影で末席に加えてもらったということで呼んで頂いた試写会場で、いくらそのスクリーンに投影された光によって、なにやら色々な感情が沸き上がって来るのを感じ、そのいくつかの言語化に成功したとはいえ、それを即座に他人にも理解できるよう文章化するには、いかにも私の機知などが及ぶところではなく、また、油断すると監督の姿を見つけるやぬらりと脂ぎった顔で、その検討外れの称賛など投げかけるといっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:05 PM

August 1, 2007

ベルイマン、アントニオーニ追悼
梅本洋一

 大往生とは言え、ふたりの巨匠が同日に亡くなった。アントニオーニは『ある女の存在証明』以降のフィルムは、正直言って退屈の一語──目が見えなくなってしまったので仕方がない──だが、ベルイマンは何度も「遺作」を撮り、『サラバンド』が本当に「遺作」になってしまった。  このふたりについて少しばかり真摯に書いてみよう。「真摯に」というのは、ある一時、ぼく(ら)がふたりのフィルムをしっかりと見ることができな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 AM

アジアカップ2007総括
梅本洋一

 日韓戦はPK戦で敗れ4位に終わったアジアカップ。このチームで6ゲーム戦えたことは収穫だったが、それ以外に何か得たものがあったろうか。多くの人々がオシムの方向性の正しさを指摘するが、実際はトゥルシエよりもジーコよりも成績が悪い形でアジアカップを終えている。検証すべきものが多いだろう。  敗戦に終わったサウジ戦後の韓国戦。フレッシュな選手を使うかも知れないと言っていたオシムだが、実際は山岸を使い、カ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:44 AM

July 26, 2007

アジアカップ準決勝:日本対サウジアラビア 2-3
梅本洋一

 ゲームからすでに1日。敗因の分析があちこちに掲載されはじめた。ぼくもおそらく日本が勝つだろうと思っていたが、こういうときは敗れるものだ。それがフットボールだ。  こういうゲームは本当に難しい。最強と思われたオーストラリアをPK戦で退け、対戦成績の比較的良いサウジアラビア戦。移動とか休息とか様々な面で有利が伝えられる。UAE戦の後はほぼ固定メンバーで戦い、チームの「型」が出来上がりつつあると誰の目...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:29 PM

July 22, 2007

アジアカップ準々決勝:日本対オーストラリア 1-1(PK4-2)
梅本洋一

 オージーはこの日トライネイションズ、アジアカップで代表チームが連敗。もっともトライネイションズの方は、相手がオールブラックスなので、まだ傷は浅いかも知れないし、もともと勝つ可能性はそれほど大きくなかったし、その健闘は称えられてもいい。だが、アジアカップでのPK戦敗退は、このチームのこれからの方向性を決めるのに、大きな瞬間になるだろう。オーストラリアはわざわざアジアサッカー連盟に加盟し、W杯ベスト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 PM

July 18, 2007

『石の微笑』クロード・シャブロル
梅本洋一

 かつて、当時の夫人だったステファーヌ・オードランを使って、シャブロルは次々と傑作を生み出したことがあった。ジャン・ヤンヌ、ミシェル・ピコリといった怪優を相手に、小さな町の空間で繰り広げられる行き詰まるような瞬間は、極めて濃密な作品を作り上げてくれた。そして今、70代も中盤を迎えた彼は、自らのフィルムの虚飾を剥ぎ落とし、文字通りの絶頂期を迎えたのではないか。  大きな工場と港、そして、そこから展開...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:20 AM

July 9, 2007

アジアカップ2007:カタール対日本 1-1
梅本洋一

 勝てるゲームを引き分けてしまった。そう誰でもが書くだろう。阿部の与えたFK。そのときの壁の作り方も隙があった。セバスティアンの蹴った低い弾道のシュートがゴールマウスに吸い込まれる。川口は、あってはならないことが起こってしまった。オシムは憤懣やるかたない様子。  だが、ゲーム自体はまったく消化不良。こんなゲームをしていては、3連覇はおろか予選リーグも危ない。暑さと湿気は分かっている。でも、全員がこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 PM

『前巷説百物語』京極夏彦
結城秀勇

 直木賞を受賞した『後巷説百物語』に続く「巷説百物語」シリーズの最新刊では、前作までの時代設定を遡り、このシリーズの中心人物である「小股潜りの又市」が「御行」というキャラクターをいかにして獲得したかという物語が語られる。『バッドマン・ビギニング』『ハンニバル・ライジング』『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年版)などを思い出してしまうような、ヒーロー誕生秘話。前作までは、裏の世界にその名を轟か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:51 PM

July 4, 2007

『ボルベール』ペドロ・アルモドバル
宮一紀

 アパートのキッチンに血に塗れた男が倒れている。今回もまた「血」が問題になっている。アルモドバルにおける「血」とは、先祖から脈々と受け継がれる血縁の証明であり、性交渉においてエイズウィルスの感染する経路であり、そして人が傷つくことである。すなわち家族、セックス、暴力ということになる。アルモドバルは、少なくとも1982年の『セクシリア』以降、これら三つのテーマを中心に据えて映画を撮ってきたといえる。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 AM

July 3, 2007

『ボルベール』ペドロ・アルモドバル
梅本洋一

 『キカ』『私の秘密の花』あたりから、アルモドバルは、キッチュで「罰当たり」で「変態な」映画作家から、現代映画きっての「メロドラマ作家」へと次第に変貌していった。もちろん、その背後には、アルモドバルの成熟もあるのだけれど、それ以上に、時代の変化が大きいと言えるだろう。同性愛も性転換も近親相姦もそれだけでは、スキャンダラスな話題であり得なくなった時代にぼくらは生きている。かつてなら、それだけで「反社...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:29 PM

July 2, 2007

エドワード・ヤン追悼
梅本洋一

 朝刊の死亡欄のエドワード・ヤンの文字と写真が目に入る。  突然蘇るいくつかの光景。  91年の東京映画祭『クーリンチェ少年殺人事件』を見た晩のこと。翌日に彼に会うために赴いた、今はなきキャピタル東急ホテルでのロビーでのこと。ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』の話をしていて──その映画は『クーリンチェ』にとってとても重要なものだ──ふたりで涙ぐんでしまったこと。その直後に行った山形映画祭での数...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:45 PM

『殯の森』河瀬直美
田中竜輔

自身の作品をエンターテイメントとして消費されるものだとは考えてはいない、と自称する河瀬直美の、そしてカンヌ映画祭でグランプリを獲得した『殯の森』は、間違いなく「作家」の映画であるはずだ。このフィルムには妻を失った老人と子を失った若い女についての物語があり、そこには河瀬直美の「生」と「死」についての思索が充満しているのだろう。このフィルムにおいて、うだしげきと尾野真知子という二人の主要なキャストは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:26 PM

June 21, 2007

『ゾディアック』デヴィッド・フィンチャー
梅本洋一

 人はとても長い間ある事件とその首謀者に魅了され続ける。  1968年のサンフランシスコ。そこで始まる連続殺人事件。フィルムは、建国記念日の夜、郊外の空き地にクルマを止めたカップルに、後走するクルマから降りたひとりの男から何発も銃弾が浴びせられることから始まる。やがて犯罪声明がサンフランシスコ・クロニクル紙に送られてくる。奇妙な暗号文と共に。「ゾディアック」の始まりだ。  やがて、この事件はサンフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:14 PM

June 18, 2007

PNC第3戦:ジャパン対サモア 3-13、トライネイションズ開幕戦:スプリングボクス対ワラビーズ 22-19
梅本洋一

 早朝に懐かしいゲームをスカパー!で見る。91年W杯のアイルランド対ジャパン戦だ。結果は32-16でダブルスコアなのだが、ジャパンは面白いラグビーをしていた。素早いラックからボールを展開し、バックス勝負。戦術はこれだけ。だが、松尾(勝)、平尾、朽木のフロント3で必ずゲインする。そこに林、ラトゥーを絡ませて、大外へ。大外には吉田義人がいる。このゲームに出場し、そして、この日の解説をしていた梶原は、当...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

June 15, 2007

ル・コルビュジエ展@森美術館
梅本洋一

 ノマディック美術館が「仮構」されたお台場から「りんかい線」と「埼京線」を乗り継ぎ、恵比寿で東京メトロ日比谷線に乗車し、六本木で降りて、「ヒルズ」に向かう。ル・コルビュジエ展を見るためだ。6月の晴天の日は蒸し暑い。お台場も蒸し暑かったが、六本木ヒルズはもっと暑い。それに高層建築物の間に吹きすさぶ突風でぼくのキャップが吹き飛ばされそうだ。53階にある森美術館に上がる。ここはノマディック美術館の「仮構...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:47 PM

『ブラック・スネーク・モーン』クレイグ・ブリュワー
結城秀勇

 しかし、クリスティーナ・リッチの新作を見るたびに覚えるあの違和感はなんなのだろうか。別に彼女が出ている映画はすべて見るというほど好きな女優ではないし、好きではないが認めざるを得ないという程の実力を備えた女優だとは正直思えない。しかしなにかの折りに彼女を見るたびに、「あれ?クリスティーナ・リッチってこんなひとだったっけ?」という疑問が頭をかすめる。事実『ブラック・スネーク・モーン』の冒頭に置かれた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:39 PM

June 13, 2007

『Denim』竹内まりや
茂木恵介

 人生をデニムのようだと、竹内まりやは喩えている。それがこのアルバムのタイトルであり、アルバムのラストを飾る「人生の扉」においてもその比喩を用いている。確かにデニムは穿きこんでいけば、色褪せ、穿き始めた頃とは違う色合いや風合いを示すようになるが、同時にそれを穿く者の時間も同様に通過したことを忘れてはならない。キューカーの『マイ・フェア・レディ』のイライザとヒギンズ博士の関係を思い出して欲しい。訛り...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:28 PM

June 9, 2007

『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』シドニー・ポラック
梅本洋一

 シドニー・ポラックのフィルムを見るのはいつ以来だろうか。70年代の彼は多くの秀作を残しているのだが、今世紀に入ってやや低調な感じがする。久しぶりに見る彼のフィルムがドキュメンタリーであり、しかもフランク・ゲーリーについてのフィルムだ。  このフィルムを見るまで知らなかったことがある。たとえばデニス・ホッパーの自宅の設計者がゲーリーであることや、ゲーリーが一番影響を受けたのがアルヴァ・アールトだと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:38 AM

June 7, 2007

『監督・ばんざい』北野武
梅本洋一

 創作活動のある時期に自己言及性へと向かう映画作家たちがいる。フェリーニの『81/2』、トリュフォー『アメリカの夜』、ゴダール『パッション』、ヴェンダース『ことの次第』……。ちょっと思い出すだけでも何本も挙がる。  そして北野武も『監督・ばんざい』を撮った。多くのジャンルのジャルゴンを並べては放置する作業、それらは、このフィルムで常に登場する青い衣裳を着た「監督人形」のように、それぞれのジャンルを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41 AM

キリンカップ 日本対コロンビア 0-0
梅本洋一

 「海外組」が揃った参加した対コロンビア戦は、オシムがめざすフットボールがとても難しいものであることを証明した。中盤に稲本、左サイドに中田浩二が起用された前半は、中盤のプレスがまったくかからず、そのふたりがほとんど消えていた状態だった。後半にそのふたりに代えて羽生と今野が投入されると、まるでカンフル剤が打たれた体のようにチームが甦った。稲本と羽生のプレイスタイルが異なるのは事実だが、今野と中田浩二...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:40 AM

June 4, 2007

怒濤のテストマッチ・シリーズ
梅本洋一

 公私ともに多忙なのにラグビーの重要なテストマッチが重なる。パシフィック・ネイションズ・カップのトンガ対日本戦、南半球遠征中のウェールズがワラビーズと2戦、イングランドがスプリングボクスと2戦、そしてフランスがオールブラックスと対戦。  まずジャパンのトンガ戦。結果は20-17の辛勝。勝つことが目的なら、この結果でまずまずだろうが、ゲームとしてはストレスが溜まる。相変わらずのSOの判断ミスの多さ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:32 PM

『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』ジョー・カーナハン
結城秀勇

 利害の対立する複数のグループが、同一の標的をもとめて互いにつぶし合うという筋書きは決して目新しいものだとは言えない。複数のグループごとの視点が、ターゲットに近づいていくごとに収束していき、結果として同じ瞬間が重複して描かれる。すなわちそれぞれのグループと対象との距離に反比例するように、決定的瞬間の訪れは引き延ばされていく。そんな語りの手法も、これまた今となってはありふれたものである。張られた伏線...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:17 PM

June 2, 2007

「[新訳]今昔物語」東京藝術大学大学院 映像研究科制作作品
渡辺進也

中編作品の方を見に行く時間が取れなかったのでなんともいえないが、このオムニバス作品の方は中編作品とは違って、『今昔物語』という古典を原作とするということ、長さも20分前後にするといったようにあらかじめ制作にあたってより縛りがある。それゆえ、ここで問われるのは作品世界としてどうなのかということよりも、むしろエクササイズとしてどのようなレッスンを行えるかということだろう。もちろん登場人物をどう現代風に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:56 AM

『14歳』廣末哲万
渡辺進也

 最近、映画を見ていて「何も起こらないな」という印象を持つことが増えている。正確に言えば、何も起こっていないわけではないので、何か事件が起こったとしてもそこから物語が展開しないということだろうか。ずっと違和感を抱えていたのだが、先日、黒沢清が「いまの日本映画には物語がない。あるのは日常である」というようなニュアンスのことを話しているのを読んでそういうことかとすごく納得した。  『14歳』はそうした...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:50 AM

May 30, 2007

『CREEP』酒井耕、『from DARK』大門未希生
結城秀勇

 アップが遅くなってしまったが、芸大映像研究科の修了作品であるふたつの作品について述べておきたい。  まず『CREEP』。男子高校生と20代前半の女性との駆け落ちと、地質学者の秘められた過去が交錯していくさまを描くこの作品では、テーマである「埋もれてしまった過去が現在を揺り動かす」ということからくるのであろう、冒頭から微妙に揺れ動くカメラが印象的である。ここで取り上げる2作品、そして以前にこのサイ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:58 PM

東浩紀×仲俣暁生『工学化する都市・生・文化』(「新潮」6月号)
梅本洋一

 荻野洋一のblogに掲載された文章に触発されて、ぼくもこの対談を読んでみた。それ以前に、東と北田暁大の『東京から考える──格差・郊外・ナショナリズム』(NHK出版)を読んだとき、非常に強く感じた違和をここでも考えてみたいと思ったからだ。ふたりが長い対談で交わした言葉たちをワンフレイズで要約するのは失礼だが、郊外のジャスコ化という現象には、誰でもが頷くだろう。しかし都市の変貌がそうした方向でいいも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:15 AM

May 24, 2007

『兎のダンス』池田千尋
結城秀勇

冒頭の緩やかなパンダウンや、山道を車がカーヴするのを捉えたショット、あるいは古い一軒家の開け放たれた広い空間で人々が行き来するのを捉えたショットなどでのカメラの動きには心躍るものがあり、なるほど前評判の「レベルの高さ」とはこういったことかと納得する。しかしその反面で、静止する登場人物たちを見つめる視線の「日本映画」っぽさにはいささか閉口する。いやこのような言い方ではぐらかすのは良くないだろうか。動...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:25 PM

May 20, 2007

『ラッキー・ユー』 カーティス・ハンソン
松井 宏

 ギャンブルものに付随するあらゆる要素--暴力と欲動、陰謀、舞台裏、成り上がり、浮上と落下の悲劇etc--を削ぎ落とし、ではいったい何がこのフィルムに残されるのかと心配するやもしれぬが、心配無用、もちろんここには恋があり、また父子の物語さえ中心にある。だが『ラッキー・ユー』においてまず重要なのは共同体である。冒頭から少し奇妙な感触があるのだ。ハック(エリック・バナ)が郊外の寂れた質屋から煌めくヴェ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 PM

May 17, 2007

『リンガー! 替え玉★選手権』バリー・W・ブラウンスタイン
結城秀勇

 とりたててなにか言うべきことがある映画ではないのだがこの感動はなんだ。水曜のサービスデイの1000円で見たが、ひと言でいうと極めてコストパフォーマンスの高い映画だ。どんなに面白い映画を見ても、あまりこういった感想は持たないものだ。こちらが支払った対価に対して、非常に大きなものを返してくれてもったいない気持ちがする。これで人生が変わったりはしないが心地がよい。  ファレリー兄弟がプロデューサーであ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:14 PM

May 16, 2007

『東京タワー、オカンとボクと、時々、オトン』松岡錠司
梅本洋一

 松岡錠司は、かなり微妙な位置にいる映画作家である。リリー・フランキーのベストセラーの映画化は松岡自身が原作に惚れ込んで実現したらしいし、ベストセラーの映画化ゆえかフィルム版もヒットを続けている。ぼくが見に行った平日の午前中も中高年の観客を中心に多くの人々が映画館に入っていた。ぼくの隣に座っていた老夫婦の夫の方は、上映が終わってから涙に滲んだ眼鏡を拭きながら「悠木千帆(!?)はいいね!」と妻に告げ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:31 AM

May 10, 2007

『スパイダーマン3』サム・ライミ
結城秀勇

 前作同様クモの巣型のフレームの中にこれまでのシリーズで語られてきたストーリーの断片的なイメージが映し出されていくオープニングタイトルの終わりで、それまで直線的だったクモの巣型フレームは丸みを帯びて脳内のニューロンめいたかたちへと変形していく。そして物語は主人公ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)のモノローグで幕を開ける。あたかもそれがパーカー=スパイダーマンの脳内であったかのように。  この...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:29 PM

May 4, 2007

チャンピオンズリーグ準決勝2nd Leg: リヴァプール対チェルシー 1-0 (1-1、PK4-1)、ミラン対マンチェスター・ユナイティド 3-0 (5-3)
梅本洋一

 ファーストレグがスタンフォード・ブリッジ、セカンドレグがアンフィールド、そしてリヴァプールのビハインドが1点。赤い群衆に埋め尽くされたアンフィールドを見ただけで、リヴァプール優位が見える。アンフィールドの魔力と言われるのだが、そんなものを信じないぼくでさえ、この晴れがましい舞台をホームで迎えるリヴァプールの選手たちを心から羨ましいと思う。このスタジアムのほとんどの人々にとって、リヴァプールの勝利...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:20 AM

May 2, 2007

『フランドル』ブリュノ・デュモン
梅本洋一

 『ジーザスの日々』『ユマニテ』と続くデュモンのフィルムの中でもっとも完成しているのが、このフィルムであることはまちがいない。もちろん、完成とはいったい何なのか、という問題もあるだろう。明確な回答は見つけられないが、もしこのフィルムが「欲望」と「現実」を描きたいとするなら、その延長線上にこのフィルムが来ることは明らかだろう。「欲望」と言っても、固有のそれではなく、つまり、ぼくが君を求める、というも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:42 PM

April 30, 2007

『カイマーノ』ナンニ・モレッティ
結城秀勇

 これは難航する映画製作についての映画であるが、今回の主人公は映画監督ではないし、それを演じるのもナンニ・モレッティ自身ではない。代わりにシルヴィオ・オルランド演じる、長らく映画製作から遠ざかってしまっているかつてのB級映画のプロデューサー・ブルーノが主人公である。彼の久しぶりの復帰作となるはずのコロンブスについての映画が、長年の友人であった監督の降板によって実質製作不可な状態となる。追いつめられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:34 PM

『カイマーノ』ナンニ・モレッティ
田中竜輔

「うまくいってる?」と聞かれたら、いつだって大声で「そんなわけない!」と言い返さなきゃならない。「万事快調!」なんて瞬間はそうそう訪れるはずもなく、誰もが常にトラブルを抱えている。斜め読みした脚本をサスペンス映画と勘違いしてヒットするはずもない政治映画の製作を請け負ってしまったり、別居中の夫が新しく知り合った男性からプレゼントしてもらった素敵なセーターをズタズタにしてしまったり、12個の突起を持...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:38 PM

April 29, 2007

『ラブソングができるまで』マーク・ローレンス
松井 宏

 もしその原題が『ソフィとアレックス』であったならこのフィルムはまったく別物になっていたのだろうが、つまり実際の原題『Music and Lyric』とある通り『ラブソングができるまで』の男と女には自分の名前を獲得する前に、つまり恋をしてカップルを作る前に、まずせねばならぬことがあるのだった。もちろんそれはひとつの曲を一緒に作るということ。  男ヒュー・グラントは80年代元超売れっ子ポップスターで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 PM

April 21, 2007

『サンシャイン2057』ダニー・ボイル
松井 宏

久々ではないかと思われるB級宇宙SFフィルムとして確かにこのフィルムは楽しめてしまうのだが、しかし死に瀕した太陽を再び活性化させるミッションを課されたクルー8人のなかに誰一人悪くてヤバい奴がいないというのは、これはいったいどういうことか。密室内での常套たる心理的なぎりぎりした諍いや、腹黒さの浮上という説話の糸がほとんどないのである。冒頭からほとんど流れるままに進行し、いきなりキャプテンが犠牲的精神...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:49 AM

April 19, 2007

『サッド・ヴァケイション』青山真治
梅本洋一

 この壮大なフィルムをわずかな字数でまとめることなど不可能なことだろう。  ジョニー・サンダースの『Sad Vacation』を背景に若戸大橋が映し出されるヘリコプター・ショットでの壮大な開幕。だが、その風景の壮大さと比べて、このフィルムが展開するのは四方がわずか数キロの極小の空間だ。その中心にあるのが、間宮運送。行き場をなくした者たちが集う運送会社。そこにやってくるのが、『ユリイカ』の梢(宮崎あ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:12 AM

April 17, 2007

『パリの中で』クリストフ・オノレ
結城秀勇

 田舎での恋人との生活がうまくいかなくなり、弟と父の住むパリの実家へ帰ってきた兄。外国あるいは地方からパリへ出てくることがキャリアの転換点(そしてもちろん恋愛の転換点)になる映画は数あれど、パリへの帰郷という設定自体があまり耳慣れない。そしてそのパリへ帰ってきた本人、ロマン・デュリスは欝気味で部屋から出ることもなくベッドの上でごろごろしているばかりだ。彼はパリを見せてくれない。その代わり、ルイ・ガ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:31 PM

April 16, 2007

『天使の入江』ジャック・ドゥミ
結城秀勇

 82分間に流れる各瞬間があまりに激しい。ミシェル・ルグランのピアノが流れ始めた途端に、ほんのわずかにジャンヌ・モローの顔を写しただけではるか後方へ遠ざかっていくカメラの動きと同じような速度が、この作品のはじめから終わりまでを支配している。それはもちろん、ギャンブルというこの映画のテーマと関係している。瞬時にして、それまで所有していたものを失ってしまう、あるいはそれまでは無縁なものだったものに包ま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:11 PM

April 1, 2007

『ゴーストライダー』マーク・スティーヴン・ジョンソン
月永理絵

『デアデビル』の監督による、『スパイダーマン』や『Xメン』と同じアメリカン・コミックが原作のヒーロー映画である。舞台は西部、主役は悪魔の手先となり悪魔と契約した人々の魂を集めるゴーストライダー。この役目をかつてはカウボーイがその役目を担っていたというから、馬の代わりにハーレーダビッドソンでテキサスを駆け抜けるニコラス・ケイジを現代のカウボーイと見なすこともできるだろう。  しかし、この映画を西部...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:02 AM

March 30, 2007

『ホリデイ』ナンシー・メイヤーズ
梅本洋一

 レディーズ・デイで1000円で見られるためか、渋東シネタワーは9割方女性客で、しかもほぼ満員。松井宏が言う通り、ちょっと薹がたってはいるが、キャメロン・ディアズとケイト・ウィンスレットの「二大女優」とジュード・ローとジャック・ブラックの共演が多くの女性たちを誘っているのだろうし、「薹がたった」ふたりの女性(アマンダとアイリスというちょっと古風なファーストネイムだ)をうまくシナリオに盛り込んでいる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:47 AM

March 27, 2007

『カンバセーションズ』 ハンス・カノーザ
槻舘南菜子

 場所はマンハッタン。ホテルのウエディングパーティで10年ぶりに再会した男女がつかの間の一時を過ごす。ホテルの一室。タイムリミットは朝6時。新婦の兄である男(アーロン・エッカート)と新婦の友人であり、元妻(ヘレナ・ボナム=カーター)、彼女がロンドンにたつまでの数時間に交わされるカンバセーションズ。  このフィルムが特異であるのは、二つのキャメラを通して全シーン、全テークが撮影され、全編がデュアルフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:39 AM

March 26, 2007

日本対ペルー 2-0
梅本洋一

 イビチャ・オシムが初めて「欧州組」の高原と俊輔を呼び戻し、実質的な現在の「最強メンバー」で臨んだ親善試合。相手が若手主体のペルーであって、ペルーは「欧州組」を呼び戻していないことはまず確認しておいた方がいい。このゲームは、勝って当然のホームであり、スパーリングパートナーとしてはちょうどいいということ。  2-0という結果について書くべきことは少ない。解説のセルジオ越後が強調していたように、流れの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:16 AM

March 21, 2007

『あるスキャンダルの覚え書き』リチャード・エアー
松井宏

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェット(主演&助演女優賞ともにアカデミーにノミネート)、この「演技派」女優ふたりによる女性の間の愛と嫉妬物語たる本作には決定的に欠如しているものがあって、すなわち、ここにはベルイマンがいないということだ。つまりデンチとブランシェットのクロースアップを積み重ねながら「顔の劇場」たろうとするこのフィルムに決定的に欠けているのは、あるひとつのショット、すなわちふたりの女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:38 PM

March 20, 2007

『ブラックブック』ポール・ヴァーホーヴェン
須藤健太郎

 何の前情報もなく映画を見に行くのは難しいと思うが、とりわけそれがある程度キャリアのある監督の場合はなおさらだろう。ナチス・ドイツ占領下のオランダが舞台だと聞けば、まさかと思いつつ、38年オランダ生まれのヴァーホーヴェンによる自分探しの旅を危惧し、「ブラックブック=黒い革製の手帳」に記された真実を巡るサスペンスだと言えば、ヒッチコックへの彼なりの返答だった『氷の微笑』が想起され、もしくは、家族を目...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:28 PM

March 18, 2007

2007年シックスネイションズ総括
梅本洋一

最終日になっても優勝が決まらないシックスネイションズは確かに面白かった。結果的にはアイルランドとフランスが共に4勝1敗で並び、最終戦の対イタリア戦、対スコットランド戦に持ち去れることになった(もちろんイングランドにも可能性はあったがウェールズに大勝というのうは数字的に不可能に近いものだった)。 結果はアイルランドもフランスも頑張ったけれども、フランスは得失点差でアイルランドを上回り、フランスの優勝...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:03 PM

March 16, 2007

『ダフト・パンク エレクトロマ』ダフト・パンク
田中竜輔

選ばれた舞台はカリフォルニア、黒い衣装に身を包み、光り輝くロボットの頭部を持ったダフト・パンクのふたりが「HUMAN」と書かれたナンバー・プレートを掲げた黒いフェラーリに乗りこみ、「ロボット」から「人間」になるために小さな村に向かう。しかしそれにあっという間に挫折したふたりはあてもなく砂漠を彷徨い始める、というシンプルな物語。人間とテクノロジー、この二項にまたがって自身の表現活動を行なうミュージシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:36 AM

March 15, 2007

『ラストキング・オブ・スコットランド』ケヴィン・マクドナルド
松井宏

このフィルムは『ブラッド・ダイヤモンド』と同じくアフリカを扱い、どちらも実話をもとに構成されていて、どちらにも恐ろしい軍事独裁政権があって(もちろんそれはある時期からアメリカ映画でアフリカを物語るときに欠かせぬ要素となっている)、両者の物語のあいだに時代の差はあれど(『ラストキング』は70年代、『ブラッド』は90年代後半)、けれどもっとも重要な共通点は、どちらもがアフリカを父として扱っているという...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:45 AM

March 14, 2007

神奈川県立近代美術館 鎌倉「畠山直哉展」
梅本洋一

 小町通を大股で歩いて近代美術館に着く。この多様に組み合わされた「白い箱」は坂倉準三の真の傑作であり、撤去されずに残ることになったことはとりあえず嬉しい。だが建物のところどころに古さや歪みが目立つ。同じ建築家の東京日仏学院が何度かのリノヴェイションを繰り返しつつ、しっかり今という時を呼吸しているのとは対照的だ。モダニズムは時を経ても生き残るべきものであり、そのためには資金と知恵が必要なのだ。  本...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 PM

『今宵、フィッツジェラルド劇場で』 ロバート・アルトマン
結城秀勇

 カミュは『シーシュポスの神話』の中で、本質的な問題(ときにひとを死に至らしめるかもしれない問題)について思考方法はふたつしかないと述べている。それは、ラ・パリス的な思考方法とドン・キホーテ的な思考方法だと。ドン・キホーテ的なというのは改めて述べるまでもなく、熱情的な態度である。一方、ラ・パリス的なというのは明証性だということになっているのだが、それはラ・パリスという16世紀フランスの将軍が戦死し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 PM

March 13, 2007

『ダウト』ウェイン・ビーチ
須藤健太郎

 なんてやっかいな映画なんだろう。いわゆる「どんでん返しもの」とでも言うのか、オチを知ってしまうと見る楽しみが半減してしまう、しかし、ある程度ストーリーを説明しないことには、この面白さも伝えられない。ネタばれ覚悟で書くしかないのか、それともこのジレンマに悩み続けるべきなのか。「誰も見破れない!」というキャッチ。まるで『ユージュアル・サスペクツ』のそれだが、そうおそらく、二転三転するストーリー展開、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

March 12, 2007

シックスネイションズ07 イングランド対フランス 26-18
梅本洋一

ゲームとしてはスカパー!の解説をした箕内が言っていてように、「眠い」ゲームだった。両チームともミスが多かったし、大きく展開するラグビーが見られなかった。もちろん前半(9-12)の展開は予想できたことだったが、わずか1PGの差でフランスが逃げ切れるようには見えなかった。地域においてもポゼッションにおいてもイングランドが優勢だったし、イングランドがFWの攻撃でフェイズを重ねれば、どこかでフランスの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:29 PM

March 10, 2007

TNプローブ レクチャー・シリーズ「建築と写真の現在」第1回 多木浩二
結城秀勇

 今夏に行われる予定の同題の展覧会へ向けての連続レクチャーの第1回は多木浩二。写真史のはじまりから現代にかけて、写真と建築の出会いについての概論が語られる。それは「建築写真の歴史」とはまた別のものだ。  ダゲレオタイプが発明された年とされる1839年に、ダゲールはルーブル美術館を一枚の写真に写している。それはあえて彼が建築の写真を撮ろうと試みたというよりも、当時の写真の感光時間の長さから、目に入る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:06 PM

『今宵、フィッツジェラルド劇場で』 ロバート・アルトマン
槻舘南菜子

 ここには三つの終わりがある。ラジオショー「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の放送の最終回という終わり、105分という映画の終わり、そして『今宵、フィッツジェラルド劇場で』は、ロバート・アルトマンの遺作だ。  楽屋の鏡を前にして、ヨランダ(メリル・ストリープ)と、ロンダ(リリー・トムソン)は、昔はショーに歌う犬がいたこと、実はジャクソンガールズが四人組だったこと、そして母親の死を、思い出から紡ぎ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:03 PM

March 9, 2007

チャンピオンズリーグ アーセナル対PSV
梅本洋一

 今年のアーセナルのチャンピオンズリーグは終了した。圧倒的にポゼッションしつつ、1点のアウェイゴールを喫し、昨日のバルサに続いて去年の決勝に残った2チームが消えた。  敗因は何なのか? ぼくは相手がPSVで、1stLegは0-1で敗れているが、今度はホームで、しかもこのスタジアムができてからアーセナルは不敗だったことだろうと思う。もし相手がバルサやミランだったら話が違ったろうし、アウェイだったから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:19 PM

March 7, 2007

『Bug』ウィリアム・フリードキン
松井宏

 70年代の監督と言われる人々は、これは「ニューシネマ」と相反すわけではなく、密室劇を撮れるおそらく最後の世代なのだろう。それはハリウッドと演劇との関係やら、一方でカーペンターに代表されるホラーというジャンルとの関係やら、あるいは『カンヴァセーション』を考えるならそこに「ニクソン以後」の政治劇も関わってくるのやもしれぬが、とにもかくにもフリードキンの新作『Bug』は密室劇なのである(ちなみに戯曲の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:25 AM

March 5, 2007

『不完全なふたり』諏訪敦彦
梅本洋一

 このフィルムがフランス人の俳優たちとパリで撮影されたためだろうか。普段なら諏訪敦彦のフィルムにほとんど顔を見せない「映画的な記憶」がいろいろな場所に垣間見える。  このフィルムが別離の聞きを迎えた夫婦の短い時間の出来事とその顛末を追うという意味において、まず全体としてこのフィルムが準拠するのは、ロベルト・ロッセリーニの『イタリア旅行』である。リスボンで仕事をする建築家夫婦(ブリュノ・ドデスキーニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 AM

February 28, 2007

ニッポンのデザイナー展@ShiodomeItaliaクリエイティブセンター
梅本洋一

「AERA」のムック本と協賛して、「ニッポンのデザイナー展」が開催されている。建築家、プロダクトデザイナー、アートディレクター、インテリアデザイナー、デザインカンパニーなどデザインに関わる「ニッポン人」の多種多様な作品が展示されている。先日見た「柳宗理生活のデザイン展」の通り一遍の展示ではなく、それぞれの展示にも適切な解説が加えられ、ひとつひとつの展示物が興味深い。それに、もしレヴェルという言葉が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 PM

February 25, 2007

『ブラッド・ダイヤモンド』エドワード・ズウィック
松井 宏

 その30前後という実年齢のせいだろうか、あるいは単にその童顔ゆえか。レオナルド・ディカプリオの「永遠の息子」ぶりを我々はここ数年とみに目撃している。スコセッシとのコンビがもっともわかりやすい。ディカプリオを迎えた最近3作はいずれも(『アビエイター』におけるママとの関係も含め)「息子ディカプリオ」の肖像だ。最新作『ディパーテッド』を見ながらなぜにスコセッシはいまさら、彼のキャリアのなかでありえなか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:25 PM

February 24, 2007

『ディパーテッド』マーティン・スコセッシ
梅本洋一

『ディパーテッド』をとても面白く見た。このフィルムが『インファナル・アフェア』のリメイクだということで、まだ見ていなかったアンドリュー・ラウの『インファナル・アフェア』を見てみた。 物語上の差異は『ディパーティド』では、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが同じ女性(ヴェラ・ファーミング)を愛してしまうのだが、『インファナル・アフェア』だと同じ女性ではないこと。そのくらいの差異しかない。どん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:15 PM

February 19, 2007

『ロッキー・ザ・ファイナル』シルヴェスター・スタローン
松井 宏

 初めて親同伴なし友達だけで映画館に見に行ったフィルムが『ロッキー5/最後のドラマ』だったという小学6年の個人的な些事は措いておくが、しかしこの『ファイナル』を見たとたん驚愕するのはそこにある「救い難さ」だ。なにもフィルム自体が救い難い出来だというのではない。そこで冒頭から描写されてゆくロッキーの姿、その周囲、そしてフィラデルフィアの街があまりに救い難い様相を呈しているのだ。  ここでロッキーの言...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:15 PM

February 18, 2007

『恋人達の失われた革命』フィリップ・ガレル
槻舘南菜子

 初めて見たのはパリだった。映画館から一歩踏み出した街路に広がる石畳。ルイ・ガレルとクロティルド・エスムもそんな街路をすり抜けていった。だが、薄暗くなり始めた空を少し見上げると視界に入るエッフェル塔、賑わうカフェ……街路から見渡すことのできるそれらの光景はガレルの画面には決して現れてはこない。  彼のフィルムの空間を覆う街路と、緩慢な時間を過ごす古びたアパルトマン、そこは確かにパリだ。彼は『秘密の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:41 PM

『ヘンダーソン夫人の贈り物』スティーヴン・フリアーズ
月永理絵

第二次世界大戦下のイギリス、未亡人となったヘンダーソン夫人が買い取った小さな劇場を舞台にしたこの映画には、ひとつの絶対的な決まりごとがある。それは、どんな演目であれ必ず「裸の女たち」が舞台のトリを飾ること。戦争に疲れた兵士たちは、そのお約束を信じて、毎日劇場につめかけ、オーナーであるヘンダーソン夫人もまた、彼らに「裸の女たち」をプレゼントするためにだけその劇場を買い取り、上演を続けている。映画は、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:09 PM

February 14, 2007

『魂萌え!』 阪本順治
槻舘南菜子

 風吹ジュンの束のような白髪。深く刻まれた頬のしわ。フライパンを擦るもう若くはない手。それらの部分には、一人の女性の生きた時間が確実に刻み込まれている。彼女の時間の集積、老いを、まざまざと映し出す所からこのフィルムは始まるのだ。  夫の死後、風吹ジュンは夫の過去を辿るのと同時に、過去は形を変えて彼女を襲いにやってくる。夫に十年来の愛人がいたこと、彼が杉並蕎麦の会に通っていたこと、ゴルフクラブの会員...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:17 PM

東京工業大学緑が丘1号館 レトロフィット
梅本洋一

 職場の建物が耐震改修工事に入るので、その工法のワーキンググループの主査を言い渡され、その一環として、大学の建物の耐震改修工事としては話題の東工大緑が丘1号館を見学に行った。同行者は、北山恒さん、下吹越武人さん、田井幹夫さん、耐震の専門家である田才晃さん、そして勤務先の学部長、そしてぼく。  東急大井町線の中からすでにレトロフィットと命名されたファッサードが個性的なその全貌を見せていた。なんだかポ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:20 AM

February 13, 2007

アイルランド対フランス 17-20
梅本洋一

 前評判の高い事実上の今年のシックスネイションズ決勝戦。だが、アイルランドはオドリスコル欠場。ランダウンズ・ロードが改修中でクローク・パークというどでかいスタジアム。リオかサンパウロのサッカー場のように立錐の余地もない。  対イタリア戦快勝に気をよくしたラポルトは、故障者以外ほとんど面子を入れ替えず、ハーフ団もミニョーニ=スクレラをそのまま起用。クローク・パークについては小林深緑郎さんの蘊蓄を聞き...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:46 AM

February 9, 2007

『エレクション』ジョニー・トー
梅本洋一

 この人のフィルムの評価が異様に低いのはどうしてだろう。まだ封切られて3週間目だというのに、テアトル新宿は、昼間1回しか上映がなく、しかも明日(9日)まで。いわゆる「香港ノワール」ファンしかこのフィルムを見に来る人はいないのだろうか。確かに、終映後、テアトル新宿の地下から1階への階段を上がっていると、隣に老夫婦がいて、ダンナの方が、「何かなんだかぜんぜん分からなかった。こんな映画見せるんじゃない!...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 AM

February 6, 2007

マイクロソフトカップ決勝(東芝対サントリー 14-13)他
梅本洋一

怒濤の週末だった。日本選手権1回戦の2ゲーム(九州電力対早稲田、タマリバ対関東学院)、その晩、シックスネイションズの開幕戦2ゲーム(イタリア対フランス、イングランド対スコットランド)、日曜日はマイクロソフトカップ決勝(東芝対サントリー)と深夜にシックスネイションズ(ウェールズ対アイルランド)。計6ゲーム!こんなことをしていると別の仕事がまったく進まない! 皆さん、すみません。 キックオフの時間順に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:27 AM

February 1, 2007

『Apocalypto』メル・ギブソン
松井 宏

 すでにその喧噪から知るひとも多いだろうが『Apocalypto』はマヤ文明(末期)という壮大な主題を持っている。そして前作『パッション』と同様その「超残酷な」描写や、その歴史のあべこべぶりは方々で非難の的となり(マヤ文明とアステカ文明の混ぜこぜetc)、当然今回も全編「マヤ語」で、さらには近頃の彼自身の素行の悪さもあったりと話題騒然。だが「環境破壊、過剰な消費、政治腐敗などマヤ文明が直面した問題...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:13 PM

January 25, 2007

不二家伊勢佐木町店
梅本洋一

 ある晴れた午後に不二家伊勢佐木町店を見に行った。もちろん期限切れの牛乳を使用したシュークリーム事件の後のことだ。この事件で、アントニン・レーモンドのこの傑作建築の寂れぶりに拍車がかかったようだ。かつては天井の高い1階の喫茶室には中二階が設けられ……ぼくはそう『建築を読む』に書いたのだが、1階の喫茶室の前にあるシューケースは空っぽで、入り口には「お詫び」の紙が貼られ、営業中の不二家レストラン──い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:50 PM

January 24, 2007

『ア・グッド・イヤー プロヴァンスからの贈り物』リドリー・スコット
松井 宏

 リドリー・スコットにはどうにも妙な悲壮感が漂う気がする。真剣にやればやるほど滑稽になってしまうと言ってもいいのだが、たとえば前作『キングダム・オブ・ヘブン』のラストの籠城戦闘シーンはニコラス・レイ『北京の55日』のあの苦し気な息づかいのさらなるパロディだったはずで、まさに悲壮と滑稽の見事な合体以外の何物でもないように思われたのだった。  新作『ア・グッド・イヤー』はたぶん彼のフィルモグラフィでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

January 22, 2007

アーセナル対マンチェスター・ユナイティド 2-1
梅本洋一

ゲームを見ていると匂いというか、予感というか、そんな名状しがたいものを感じることがある。それを感じているのはぼくばかりではない。ピッチ全体をそうした予感が蔓延しているのだ。 53分。エヴラの見事なオーヴァーラップからクロス。ルーニーが頭で合わせてマンUのリード。アーセナルの右サイドエブエは、クリスティアノ・ロナウドのディフェンスに追われている。だが、エブエのスピードでロナウドにシュートコースを与え...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 PM

D.W.グリフィス 最初期短編作品集
田中竜輔

 早稲田大学演劇博物館21世紀COE・演劇研究センターの企画よる上映活動「失われた映画を求めて」にて、グリフィスの貴重な初期短編を6本見ることができた。それらのフィルムはまさにアメリカ映画が「物語る映画」としての映画的な機能をすでに100年前に生み出していたことの証明であり、グリフィスの存在がどれほどにアメリカ映画に、否、現在のすべての映画にとって逃れられぬものであるかを改めて感じさせるものに違い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:21 AM

January 18, 2007

『モンスター・ハウス』ギル・ケナン
結城秀勇

枝から離れくるくると舞い上がる紅葉した木の葉をカメラが追うことから、この映画ははじまる。カメラの動きは、この作品にエグゼクティヴ・プロデューサーとして名を連ねてもいるロバート・ゼメキスの『ポーラー・エクスプレス』のワンシーンを思い出させる。サンタのもとへ向かう列車に乗るために必要な「往復切符」が主人公の少年の手を離れて車外へ飛んでいってしまうという場面だ。もちろんその「往復切符」という名が示すとお...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

January 17, 2007

『ホリデイ』ナンシー・メイヤーズ
松井 宏

『The Holiday』などと、この選択は勇気なのか無謀なのか。キャストを見るとジュード・ロウ、ジャック・ブラック、キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレットと、女性陣に「ひと昔前」感を見る節もあるやもしれぬが一応の豪華四つ巴である。こんなガチンコ四つ巴はここ数年ハリウッドでは珍しい気がするが、とはいえ現在のディアスの崩れかけ感は本当に良い。藤原紀香の現在と同じと言えばいいか、このフィルムでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 AM

『ヘンダーソン夫人の贈り物』スティーブン・フリアーズ
梅本洋一

 ここ2〜3作フリアーズ作品を見ていなかったぼくの怠惰をまず反省したい。『ヘンダーソン夫人の贈り物』を見ていると、この人の巧みさが理解されるからだ。もちろん希代の傑作というわけではない。第2次大戦中のロンドンで爆撃に晒される中でも扉を閉じようとしなかったウィンドミル劇場のオーナー、ヘンダーソン夫人と支配人のヴァンダム氏の顛末を追うこのフィルムが、かつて同じような物語を扱ったトリュフォーの『終電車』...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:49 AM

January 15, 2007

『パーフェクト・カップル』諏訪敦彦
結城秀勇

おそらくハイディフィニションDVで撮影されたと思われる映像は、見る者にその鮮烈な黒さを印象づける。わずかなクロースアップのショットを除いたほとんどのシーンで、スクリーンに現れる人々の顔は影になり見えない。その黒さは、光が十分に当たらないという受動性よりも、ある種の積極性を持って画面に映り込んでいる。マリー(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)が訪れる美術館におかれた、ロダンの黒い彫像のように。 しかし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:48 PM

ラグビー大学選手権決勝 関東学院対早稲田 33-26
梅本洋一

 誰の目にも明らかなとおり、関東学院が早稲田のラインアウトを制圧して勝利。ぼくの予想は見事に外れた。ラグビーにおいても1対1に勝つことの重要性。だが、1対1の勝負に出てくる相手を交わしきれない早稲田のナイーヴさも見逃せない。  準決勝での関東学院の強さに驚き、ガツガツ来たらやばいぜと思っていたが、こういうチームに勝てない早稲田はまだまだだということだ。大学選手権の決勝とは言え、それが6年連続ともな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:01 AM

January 13, 2007

『LOFT ロフト』黒沢清
松井宏

 黒沢清の新作『LOFT』が先週よりパリで公開されている。日本より遅れることほぼ3〜4ヶ月だが現在の日本人作家の新作がこうして海外で公開されるのはやはり素直に喜ばしいことだ。「日本映画ブーム」が去って久しいフランスに限ればなおのことなのだ。それにしても黒沢清がファンタスティックというジャンルを掘り下げつつメロドラマの要素を明白にしてゆくのは、やはり世界がいまだ世紀の境にあるからだろうか(100年前...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:09 AM

January 12, 2007

『恋人たちの失われた革命』フィリップ・ガレル
田中竜輔

「しかしお前たちが現にいるところの夜はまだ本当の〈夜〉にとっての〈長い前夜〉にすぎない(……)あらゆる〈夜の子供たち〉よ、〈異形の者たちよ〉、まだ夜の底へ堕ちてゆけ。まだ毒の海に入ってゆけ。まだ狂気と亡びへ降りてゆけ(……)本当の地獄を探せ。本当の廃墟へ向かえ。お前たちの〈夜〉はありとあらゆる意味で忌まわしく狂おしくなければならない。そのためには最後の夢さえもしめ殺してゆかなくてはならない」(間章...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:32 PM

January 8, 2007

W杯男子スラローム第4戦(アデルボーデン)
梅本洋一

 先週のイタリア、アデル・バディアからW杯がヨーロッパに戻ってきた。フィンランド(レヴィ)、アメリカ(ビーヴァー・クリーク)、イタリア・アルプスから本場のスイスに戻ると、本当に景色が良い。三つ星観光地はやはり良い。本物のリゾートだ。青空を背景にヨーロッパ・アルプスが見えると、まるで絵葉書そのものだが、こんな景色があるのは、スイスだけだ。  だが、ここのスラローム・コースは難しい。最初に中斜面の広い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

January 7, 2007

『Songs in the Key of Z』アーウィン・チュシド
結城秀勇

ひとことでいえばトンデモアーティスト本である。ジャンルも年代もばらばらな20組以上のミュージシャンがこの本の中に納められている。いや、むしろこの本の中にはあるひとつのジャンルの音楽についての記述しかないというべきなのか。“アウトサイダー・ミュージック”という名前のもとに、著者は一連の「in the Key of Z」(ピッチの外れた)の歌たちをまとめている。 イントロダクションを読めばわかるとおり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:38 PM

January 5, 2007

『大人のための東京散歩案内(カラー版)』三浦展
梅本洋一

 一昨年にベストセラーになった『下流社会──新たな階層の出現』(光文社新書)を書いた三浦展の新刊。といっても本書は4年前の同名書物の改訂版でもある。東京は4年の間に大きく変貌してしまう。だから改訂版が必要になる。事情は小林信彦の『私説東京繁昌記』と同じことだ。  この著者の書物は『下流社会』ばかりではない。最近の彼の主張は、『脱ファスト風土宣言』! グローバリゼーションとは、マクドナルド化であり、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 AM

January 3, 2007

ラグビー大学選手権準決勝──大阪体大対関東学院 3-34、早稲田対京都産業大 55-12
梅本洋一

 どちらのゲームも詳細に見れば敗者の健闘はあったが、スコア──これが常に正しい──を見れば一方的なものになった。どちらかと言えばイージーな組み合わせに恵まれた関東学院が、たとえばリーグ戦で法政に敗れたようなヤワなところを見せず、明治に勝った大体大をノートライに押さえ、対慶應戦で最後に気を抜いた早稲田も、法政に勝った京産大のセットピースに最初の15分は苦しんだものの、後半一気に突き放す展開を見せた。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:42 PM

December 17, 2006

『スキャナー・ダークリー』 リチャード・リンクレイター
結城秀勇

フィリップ・K・ディック『暗黒のスキャナー』(この映画の公開にあわせて『スキャナー・ダークリー』と改題した新訳も書店に並んでいる)の映画化である。『がんばれ!ベアーズ』を、秀逸にとは言わないまでもそつのない出来にリメイクしたリンクレイターだけに、今回も『暗黒のスキャナー』という小説には何が書かれているのかがよくわかるような出来になっている。つまり原作を読んだ方がはるかに面白い。映画をその原作となっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:37 PM

December 13, 2006

『硫黄島からの手紙』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 イーストウッド自身の説明によればアメリカ側から硫黄島を描いたのが『父親たちの星条旗』、日本側からが『硫黄島からの手紙』ということだ。だが、この2作は、同じ戦争の両面を描いたものではない。『星条旗』が「英雄」たちの後日談を中心に描かれたのに対して、『手紙』が描くのは、硫黄島の戦いではあるけれども、そして守備隊長の栗林中将(渡辺謙)の話でもあるけれども、それらは口実に過ぎず、単に生きることと死ぬこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 AM

December 12, 2006

チェルシー対アーセナル 1-1
梅本洋一

 もしフットボールに判定があれば、明らかにチェルシーの判定勝ちのゲーム。アーセナル・ゴールのクロスバーやゴールポストに何度シュートを止められたことか。しかし、結果は1-1のドロー。これがフットボールだ。  より詳細に見れば、このゲームは、両チームの現在の姿を浮き彫りにしている。まずホームのチェルシー。バラック、シェフチェンコの両雄の加入は、このゲームでもまったく何の効果もない。後半にロッベン、ショ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:42 PM

December 11, 2006

『トゥモロー・ワールド』 アルフォンソ・キュアロン
茂木恵介

 渋谷のスクランブル交差点を歩いていて、ふと行き交う人を見渡すと、こぞって白いイヤホンを耳に着けている。それをちらっと観ながら、「一体、何を聴いているんだろう」と、ふと気になったりもする。視線をQ-FRONTの方に向けると、クリスマスが近づいていることを知らせる映像やら年末の音楽イベントへの予習ともいうべきPVが映っている。 「18年間子供が生まれていない」。2027年のイギリスにおいて、人類の希...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:44 PM

December 6, 2006

クロード・ジャド追悼

 数日前朝刊の死亡欄の片隅にひっそりとクロード・ジャド死去の記事が掲載された。58 歳とあった。ぼくらが初めて彼女を見たのはトリュフォーの『夜霧の恋人たち』だったから、当時、彼女は20 歳。現実の年齢と役柄の年齢は一致していたようだ。もちろんヒッチコックの『トパーズ』や熊井啓の『北の岬』にも彼女は出演しているけれども、ジャン=ピエール・レオーがアントワーヌ・ドワネルであるように、彼女は、ぼくらにと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 AM

December 4, 2006

関東大学ラグビー 早稲田対明治 43-21
梅本洋一

 結論から書いてしまえば、早稲田の圧勝。対抗戦43連勝などという記録はどうでもよい。他が単に弱いと言うこと。ゲーム全体の印象は、早慶戦の方が面白かったということだ。この日の早稲田は出来が悪かった。特に曽我部の出来は悪い。キックがブレ、パスを2度もインターセプトされ、自らのラインブレイクも見られなかった。五郎丸の3トライも個人技とゴッツァンによるもの。早稲田が明治を崩して取ったトライは、権丈がライン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

December 2, 2006

『おじさん天国』いまおかしんじ
渡辺進也

『たまもの』、『かえるのうた』に続くいまおかしんじ監督の劇場公開作。前の二本が銚子、下北沢と撮られた場所が重要視されていたように感じられたのに対して、『おじさん天国』ではむしろどこと特定できないような、そして地獄が隣り合わせにあるようなファンタジックとも思えてしまうような場所として設定されている。 冒頭、「大波小波も軽々と」と童謡ともポップソングともつかない歌が流れている。後にそれはハルオ(吉岡睦...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:23 PM

December 1, 2006

『ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー』 スコット・コフィ
結城秀勇

ひとりの女優がハリウッドの街中を駆け回る。『ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー』は、現代における女優という職業についての幾分戯画化された、だがそれゆえ核心に触れるドキュメントである。実際には彼女がその職業であり続けるための「仕事」を得るために駆けずり回り、そして結局はその「仕事」が、カフカの「城」めいた現代の迷宮の中で決してたどり着けない場所にあるのだとしても。 彼女はその実体もよくわから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:31 PM

November 29, 2006

『天国へ行くにはまず死ぬべし』ジャムシェド・ウスマノフ
渡辺進也

TOKYO FILMeXのコンペティション部門出品作。監督はロシアの国立映画学校の出身で、過去にFILMeX では2000年に短編の『井戸』が、2002年には審査員特別賞を受賞した『右肩の天使』が上映されている。とはいえこの監督の作品を見るのは初めてで、さらにはタジキスタンの映画を見るのも初めて。 この映画ではカメラはその男の視線とその男の行動を追いかけていくのだが、主人公の男の視線と男の行動とが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:46 PM

November 21, 2006

「コワイ女」『鋼ーはがねー』鈴木卓爾
結城秀勇

雨宮慶太、鈴木卓爾、豊島圭介という3人がそれぞれ監督したホラー・オムニバス映画「コワイ女」。そもそも「怖い女性」というクリシェのもとに企画されたものであるものの、その怖さのありかを母親の情念といった部分に結びつけてしまう雨宮慶太『カタカタ』、豊島圭介『うけつぐもの』が、造形的にも非常に陳腐なかたちしか見せてくれないのに対して、鈴木卓爾の『鋼ーはがねー』はそれら2作品とは一線を画している様相がある。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:32 PM

November 17, 2006

『僕は妹に恋をする』安藤尋
田中竜輔

 安藤尋の『blue』以来となる劇場公開長編。前作『blue』では魚喃キリコ原作の漫画による女子高生同士の同性愛が主題に置かれていたが、今作でも同名の漫画作品を原作に、兄と妹との近親相姦としての恋愛関係が描かれている。単純に主題のレベルで見ると、安藤尋はいわゆる「タブー」としての恋愛関係を映画の物語における主題に扱うことを連続して選んでいる。『blue』では市川実加子と小西真奈美という女優ふたりの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:33 PM

November 15, 2006

『百年恋歌』侯孝賢
梅本洋一

 このフィルムがスー・チーとチャン・チェンのふたりによる1911年、1966年、2005年の三つの恋物語を描いたものだというフレームについてはもう記す必要もないだろう。『非情城市』、『恋恋風塵』、『憂鬱な楽園』の3本のフィルムを思い出せば、それぞれの時代に寄せる侯孝賢の眼差しが分かり、その意味で、『百年恋歌』は侯孝賢のそれまでのフィルムの集大成だと言えると思う。  『珈琲時候』は、いかにも侯孝賢と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:06 AM

November 3, 2006

『父親たちの星条旗』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 泥沼化するイラク戦争、自民党の首脳による核装備論議容認論、北朝鮮による核実験──かつて西谷修が言った戦争の棚上げに当たる冷戦時代が終結し、グローバリズムというむき出しの資本主義の時代になると、見えなかった戦争がはっきりとその姿を見せるようになる。日本の教育基本法改正についての議論でも「愛国心」の問題がその中心になっているが、なるべくその輪郭を薄くしようと自らに課してきた国民国家が、戦争が可視化さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 AM

October 31, 2006

『ジャズ・ソングズ』ディック・ミネ
梅本洋一

 なぜか分からぬ──否、本当は、いろいろ理由はあるのだが、それについて書き始めると、どうしようもない長さになる──が、ディック・ミネの「ジャズ」が聴きたくなった。『鴛鴦歌合戦』に出演していたディック・ミネなら知っている人もいるだろう。ほとんどが1930年代に録音された音源で構成されたこのCDを、ようやく通販で手に入れ、さっそく聴いてみる。偶然77歳になる母が家にいたので、一緒に聴いた。リアルタイム...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 PM

October 27, 2006

「パラレル・ニッポン 現代日本建築展1996-2006」東京都写真美術館
梅本洋一

 写真と建築との関係はとても興味深い。いわゆる建築写真は、周囲の人々をなるべく写さず、建物そのものを写し出す。建築雑誌の掲載されている多くの写真は建築写真だ。この展覧会──ちょっと小振りで残念だったが、ひとつのテーマに2枚ずつの写真が展示されていて、「パラレル・ニッポン」と呼んでいる頑張った展示──に展示されているのも、ほとんどがそうした建築写真だ。確かに建物そのものを理解するためには建築写真は合...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:34 PM

October 21, 2006

チェルシー対バルセロナ 1-0
梅本洋一

 ワールドカップ・イヤーのビッグクラブは辛い。シーズンオフが短く、一緒に練習する時間も限られているから、いくら優秀な選手といえどもトップコンディションに戻るまでに相当時間がかかるだろう。だが、チャンピオンズリーグのグループリーグはもう始まっている。移籍、コンディショニング等々、だましながら、ゲームをこなしながら、今シーズンのあるべき姿を探っていくビッグクラブは本当に大変だ。コーチの仕事量は普通の年...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:12 AM

October 5, 2006

田中登追悼
梅本洋一

 朝刊の死亡記事に田中登の名を見つけた。あれは、おそらく1976年のことだったと思う。「ぴあ」を片手に当時まだ存在していた綱島文化に出かけた。『四畳半襖の裏張り』『実録阿部定』『秘色情メス市場』の3本立てを上映していたからだ。どの作品も見ていたが、まだビデオもDVDもない時代のこと、再見するためには映画館に出かけなければならない。神代辰巳の秀作と田中登の傑作2本という組み合わせ。  田中登はロマン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:57 PM

October 2, 2006

『吸血鬼ボボラカ』 マーク・ロブソン
結城秀勇

『キャット・ピープル』をはじめとする優れた怪奇フィルムを製作し、若くしてこの世を去ったRKOのプロデューサー、ヴァル・リュートンの作品がDVD化されている。 マーク・ロブソン監督による『吸血鬼ボボラカ』は、バルカン戦争を背景としながらギリシャの孤島に閉じこめられた一団に忍び寄る恐怖を描く。ボリス・カーロフ演じる軍人をはじめとする、とある孤島に滞在中の人間たちは、突然勃発した伝染病のためにその島に一...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM

September 30, 2006

ジャン=ピエール・エリサルド解任
梅本洋一

 エリサルドがバイヨンヌのマネージャー(日本式ではGM)に就任した後のラグビー協会の迷走は本当に醜悪だった。オノマトペで示せば、オタオタがぴったり。対外交渉事に慣れていない、体育会系の青春を過ごした親父たちとティーポットストームにしか過ぎない小さな権力闘争に明け暮れる協会役員たち。さらにこんな結果を招いても誰も責任をとろうとしない、いかにも日本的な無責任体勢。植木等の方がよっぽど責任をとっていた。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 AM

September 20, 2006

『雪夫人絵図』溝口健二
梅本洋一

 およそ25年ぶりに『雪夫人絵図』を見る。もちろん木暮実千代主演の女性映画ではある──溝口だから当然!──のだが、今回、見直してみると、このフィルムは、リゾートの映画だということがよく分かる。旧宮家の信濃家の熱海の別荘に、雪夫人(木暮)にあこがれて長野からやってきた濱子(久我美子)が女中奉公する件から始まる。借金が嵩んで旅館になるこの別荘は、熱海の起雲閣である。明治時代の実業家の別荘として建築され...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:09 AM

September 19, 2006

マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 0-1
梅本洋一

 開幕から連勝のマンU対未だ勝ち星のない(チャンピオンズリーグの緒戦ではハンブルガーSVによれよれで勝ったけど)アーセナル。キックオフ以前から勝負がついていたようなゲームだ。それにアンリもファン・ペルシも怪我のアーセナル。頼りないアデバイヨールの1トップ。グッドニュースの皆無のアーセナル。けれども、何度も書いているように、今シーズンのアーセナルは決して悪くない。負けたゲームだって、内容で勝って結果...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 PM

September 18, 2006

『LOFT ロフト』黒沢清
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

「LOFT」というタイトルは、映画の最初のシノプシスで主人公が屋根裏部屋に引っ越すという設定だったことに由来していて、最終的にはそのような建物は見つからなかったから舞台として使われず、あまり映画とタイトルは関連性がないというようなことを、黒沢氏自身が質問に答える形で述べている(『黒沢清の映画術』)が、それはつまり、「1LDK/南面バルコニー/トイレ別/ロフトあり」のいわゆる「ロフト」という建築形...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:23 AM

September 17, 2006

『スーパーマン・リターンズ』 ブライアン・シンガー
結城秀勇

この携帯電話の普及した現代でスーパーマンはどうやって変身するのか。というのは誰でも思いつく疑問だろうと思うのだが、しかしながら『スーパーマン リターンズ』における最初の変身シーンでは、クラーク・ケントは月日の流れの前に呆然としながらも、公衆電話ボックスを探して右往左往したりはしない。むしろ人目をはばからずに歩道を走りながらシャツを脱ぎ捨ててしまうのだ。 「鳥か、飛行機か、……いやスーパーマンだ!...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:23 AM

September 16, 2006

THEATRE MUSICAの「映画館」
結城秀勇

 THEATREPRODUCTSの音楽部門であるTHEATRE MUSICAが行う、無声映画に生演奏をつけるというイヴェント。先日の溝口健二のイヴェントで上映された『東京行進曲』を見逃していたので行ってみる。プログラムは、ニューヨークの地下鉄が開通した7日後に撮影されたという『Interior New York Subway, 14th Street to Times Square』(G.W."B...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:52 PM

September 8, 2006

『パビリオン山椒魚』冨永昌敬
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

 映画冒頭でご丁寧にも「本物とか、偽物とか、どっちでもいいの」という前振りがあり、エンドロールの途中で、実はついていたひとつの嘘の告白をさせているくらいに誠実な映画監督冨永昌敬氏の本格展開処女航海。  試写での周辺座席の評判は「不可解」の異口同音に溢れていたが、それは多分違っていて、ひとつひとつは解りやすいくらいに解りやすく、とてもロマンチックだったし、オダジョーだって素敵に滑っていたし、香椎由宇...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:55 PM

September 5, 2006

『サラバンド』イングマール・ベルイマン
梅本洋一

 登場人物わずか4人。彼らのカンヴァセーション・ピースですべてを成立させている聡明で賢明で、そして単純なフィルム。別離して30年になるかつての夫婦の対話と、老人と孫、父と娘の対話だけで成立しているこのフィルムは、ほとんどシェイクスピアの後期ロマンス劇が立ち至った和解と寛大さの境地を共有している。『冬物語』、『ペリクリーズ』、『テンペスト』……。否、シェイクスピアだけではない。『三人姉妹』、『かもめ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:44 AM

August 30, 2006

『ブラック・ダリア』ブライアン・デ・パルマ
梅本洋一

 ジェイムズ・エルロイの傑作ノワールをデ・パルマが映画化。それだけでワクワクするのはぼくだけではないだろう。多くの人物に等価に光を当てて、複雑な物語を語るエルロイとバロック的映像を多用するデ・パルマの齟齬を不安視する向きもあるだろう。いったい今のハリウッドに『ブラック・ダリア』に出演することのできる俳優たちはいるのだろうかという危惧もある。でも、そんないっさいの不安や危惧よりも、デ・パルマとエルロ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 PM

August 25, 2006

『水の花』木下雄介
梅本洋一

 PFF出身の俊英の新作。俳優の演出の面でぎこちなさは残るが、このフィルムを弱冠24歳の監督が撮影したとはやはり俄には信じがたい。父母の離婚後、父の許に残った女子中学生が、ひょんなことから父との離婚の原因になった母の子に出会い、ふたりの奇妙な時間が過ぎていく。それだけの話だ。だが、フィックスのショットに収まった中学生の揺れが正確に伝えられている。その主題、その方法の面で、この作り手は明らかに映画作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:06 AM

August 17, 2006

『叫』黒沢清
梅本洋一

 ここには『回路』がある。ここには『CURE』がある。ここには『降霊』がある。そしてここには孤独な刑事がいる。だからここには『カリスマ』もある。だから、『叫』で黒沢清はそれまでの自らの集大成を行っているのかもしれない。映像や演出の面でも話法の面でもそれは確かだ。だが、それ以上にこのフィルムには地霊が棲みついている。かつて鈴木博之が書いた書物に『東京の地霊』(文藝春秋)があった。東京から選ばれた13...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:32 AM

アジアカップ予選 日本対イエメン 2-0
梅本洋一

 引いた相手をどう崩し、どうやって点を取るのか? 力が上のチームの永遠の課題だ。ワントップを残し、常に9人で自陣に立て篭もるイエメン。ほぼポゼッションは8割。だが、なかなかゴールを割れない。もちろんチャンスは多い。バーやポストに嫌われたシュートが2本。キーパーの好セーヴに阻まれたシュートが2本。ペナルティエリア近くで得たFKも3本がゴールをかすめた。どれも入っていれば単に圧勝のゲームだった。だが、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

August 10, 2006

キリンチャレンジカップ 日本対トリニダード・トバゴ 2-0
梅本洋一

トリニダード・トバゴのメンバーがベストではないことを差し引いても、新生日本代表の動きは溌剌としている。W杯で決勝トーナメントに残らなければならないとか、自らの進退とか、そういった抑圧から一切自由になり、純粋にフットボールがうまくなりたいという若者たちの欲求が伝わってくるからだ。負けてもいいんだ、良いフットボールをやろうよ。良いフットボールは、ピッチの中をボールと人が縦横無尽に動き回るフットボール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:02 AM

ダニエル・シュミット追悼
梅本洋一

 朝刊の死亡記事でダニエル・シュミットの死を知る。  ぼくがダニエル・シュミットに初めてあったのは今から24年前のことだった。当時は東京のシネフィリーが突然発酵し、アテネフランセに長蛇の列ができた時代だった。そのきっかけのひとつがダニエル・シュミット映画祭だった。シュミットの映画──特に『ラパロマ』──が極め付きのシネフィル映画ではなかったが、彼が導きの糸のような存在──そうPasseurだ──に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:00 AM

August 3, 2006

『ゆれる』西川美和
梅本洋一

 多くの観客を集めている、この兄弟の愛憎劇をようやく見た。水曜日ということもあってか、映画館は1時間前に満員札止め。観客のほとんどは20代から40代の女性だった。  残念ながら処女作の『蛇イチゴ』は未見だが、西川美和に才能が備わっていることは事実だ。  写真家として仕事をする弟が母の死をきっかけに久しぶりに山梨の実家に帰り、そこで実家のガソリンスタンドを経営する兄と会う。ガソリンスタンドではかつて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:08 AM

July 28, 2006

『東京物語』小津安二郎
田中竜輔

 ようやく夏がやってくるらしい。梅雨空が続いた7月の下旬、シネマヴェーラ渋谷では「いつもと変わらぬ103回目の夏」という素晴らしい副題のつけられた監督小津安二郎特集が始まっている。そのなかで久し振りに『東京物語』を観た。夏の映画だ。 『東京物語』を初めて見たのは冬だった気がする。スクリーンではなく自宅の小さなモニターで「見た」はずの『東京物語』と、スクリーンで、複数の観客と共にシートに体をうずめて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:16 AM

July 25, 2006

『2番目のキス』ファレリー兄弟
須藤健太郎

 ロブ・ライナーの新作がつい1ヶ月ほど前に封切られていたことを何人ぐらいの人が覚えているだろう。かく言う私も気付いたときはすでに公開は終わっており、あっさりそれを見逃したのだから、偉そうなことは言えない。主演のケイト・ハドソンがめちゃめちゃ可愛かったとはいえ、前作『あなたにも書ける恋愛小説』にはやはりいまいち乗れなかったので、秘かに新作を期待していたのだったが……。いまはどこかの二番館に回ってくる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:39 PM

July 24, 2006

『カポーティ』ベネット・ミラー
須藤健太郎

 フィリップ・シーモア・ホフマン好きの人には、とにかく見ることを勧めたい、そんな映画である。『カポーティ』は、フィリップ・シーモア・ホフマンの映画以上でも、またそれ以下でもないからだ。ポール・トーマス・アンダーソンやトッド・ヘインズなどの若手監督たちにほのかな愛情をもって起用され、名バイプレーヤーの地位を築きつつあった彼が製作総指揮を務め、主演を果たしたのが、この『カポーティ』なのである。伝記を読...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:56 PM

July 21, 2006

『こおろぎ』青山真治
梅本洋一

 映画について考えられるいくつかの言辞。たとえば音声と映像でつくられている映画は、嗅覚と触覚を直接示すことはできない。映画から匂いも香りも生まれない。映画で人と人の接触を見せることはできるが、その感覚を共有するためには想像力が必要だ。たとえば極めて具体的に事物を映し出す映画が、抽象性に向かおうとするとき、そこからは人名、地名などの固有名が脱落し、人は、「男」だったり、「女」だったり、「若い人」とか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:06 PM

July 9, 2006

『チーズとうじ虫』加藤治代
黒岩幹子

 病気になった母親との暮らし、その死後の暮らしを映したドキュメンタリー映画。  この映画を見ながら、数年前に見た大橋仁の『目のまえのつづき』という写真集のことを思い出した。そのなかには、自殺未遂を起こした父親が救急隊員に運ばれる様、大量の血に染まった布団、病院の待合室、意識を取り戻した父親の眼……そんな写真がおさめられていた。  この『チーズとうじ虫』という作品も、「目のまえ」に立ち現れた肉親の生...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:21 AM

June 22, 2006

『嫌われ松子の一生』中島哲也
結城秀勇

“兄弟たちよ、愛は教師だ”(『カラマーゾフの兄弟』) 『嫌われ松子の一生』を見るにあたって、『下妻物語』のDVDを借りてきて見たのだが、私はこの作品が好きだ。田んぼの反復と「ジャスコ」の服に視覚的に支配されている場所である「下妻」と、オルタナティヴな「伝説」の宿る場所である「代官山」。主人公ふたりはその両極を往復するのだけれども、「代官山」という場所が特権的であるのは実は彼女たち自身が自らのアイ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:03 AM

June 19, 2006

『幸せのポートレート』トーマス・ベズーチャ
黒岩幹子

 公開は真夏だけれど、これはクリスマスを舞台にした家族の物語だ。お堅いキャリア・ウーマンのメレディスが婚約者の実家・ストーン家(原題は「The Family Stone」!)でクリスマス休暇を過ごすことになるが、自由奔放でオープンなストーン家の人々は彼女のことが気に入らず波乱のクリスマスに……というお話。もちろんメレディスの恋愛・結婚の行方も物語の要素のひとつだが、家族愛、家族はどのようにしてつく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:46 AM

June 16, 2006

『ママン』クリストフ・オノレ
結城秀勇

今年のカンヌ映画祭で最新作『Dans Paris』が高い評価を得たというクリストフ・オノレの長編二作目『ママン』。 冒頭からカメラは登場人物に肉薄し、ほとんど背景が見えないほどに人物を大きく映し出す。舞台となるのはスペインの避暑地で、海と広大な砂漠が広がっている抽象的な空間だ。そうなれば当然、そこに映し出される人物の身体が非常に重要な役割を持つはずなのだが、しかしこのフィルムがその点で特筆すべき成...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:38 AM

June 6, 2006

ラグビー パシフィック・ファイヴネイションズ ジャパン対トンガ 16-57
梅本洋一

 対マルタ戦に辛勝したフットボールの中田が怒っているようだが、大黒のシュートが決まっていれば3-0のゲームだった。マルタの体を張ったディフェンスとカウンター狙いにうまく引っかかった。でも勝てた。そんなゲームもある。重要な瞬間はまだ先だ。  それに対して同日開幕したラグビーの公式戦パシフィック・ファイヴネイションズ(トンガ、フィジー、サモア、オールブラックス・ジュニア、ジャパン)のジャパンは重傷だ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:03 AM

June 2, 2006

ドイツ対日本 2-2
梅本洋一

 すでに多くの記事が示しているとおり、基本的に日本代表は悪くないゲームをした。ショートからミドルレンジのパスを交換し、バイタルエリアでスルーパス。高原の久々の2点も良かったが、このゲームでは、日本代表の長所はやはり中盤にあることが証明された。ヒデ、俊輔、福西の3人はバラックを中心とするドイツの中盤よりもずっと良かった。  だが、勝ちきれない。簡単なセットプレーから2点を献上し、結局ドロー。善戦した...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41 AM

May 19, 2006

『ヨコハマメリー』中村高寛
梅本洋一

 ぼくもヨコハマ・ネイティヴだから、白塗りの街娼メリーさんのことは知っていた。そして、それがドキュメンタリーとして撮影されたと聞いて見に行った。横浜で見たのではない。池袋だ。  もちろん監督の中村高寛が語るとおり、メリーさんの消息を求めていくドキュメンタリーの通常のスタイルを期待していない。白塗りだから彼女は伝説になったのだろうが、白塗りでなければこんな女性はたくさんいたろう。問題は「ヨコハマ」だ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:14 PM

May 16, 2006

『訪れた女』ジャン=クロード・ギゲ
田中竜輔

 つい先日まで名前も知らなかった映画作家の、さらにはわずか10分ばかりの短編、しかも字幕もなく台詞の内容もほとんど理解できないような「会話劇」の作品に、なぜここまで揺さぶられたのだろう。  上映前に目を通した会話シナリオでおおよその筋はわかっていた。不倫相手に捨てられた女と、その女を家に迎え慰める女の会話劇。映画が始まると、まずひとりの女がベッドに横たわっているのが目に入る。その傍らには猫がいる。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:59 AM

May 15, 2006

『女たち 女たち』ポール・ヴェキアリ
梅本洋一

 モンパルナス墓地に面したアパルトマンに中年に達したふたりの女性が住んでいる。壁には30年代の映画スターたちのポートレートや当時の映画雑誌「Cinemanie」「Cinevie」の表紙が無数にところ狭しと飾られ、年上の女性はまるで少女のような衣装を身にまとい、年少の方はどうも女優らしい。ふたりの関係は分からないし、冒頭の長いワンシーン・ワンショットでの対話の内容も、実に内容がなく、彼女たちの正体が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:08 PM

May 8, 2006

『ニュー・ワールド』テレンス・マリック
田中竜輔

『シン・レッド・ライン』の舞台で『天国の日々』を撮ったようなフィルム。この映画のことを聞いてからというものそんなイメージを漠然と思い浮かべていたし、実際にそのような感想も聞いていた。確かにそれは間違ってはいないだろう。だが、『ニュー・ワールド』は決してテレンス・マリック自身のリファレンスによってのみ作り上げられただけのフィルムではない。  たとえば、原住民の一人が地面に荷物を置くという些細なアク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:35 AM

May 7, 2006

『フォーブール・サン=マルタン』ジャン=クロード・ギゲ
梅本洋一

おそらく昨年の秋にギゲが亡くならなければ『フォーブール・サン=マルタン』を見ることなどなかったろう。今から28年前、私はジャン=クロード・ギゲの処女長編『美しい物腰』(良家のマナー)を見た。自室に戻ってラジオをつけると、ギゲのインタヴューを放送していた。おぼろげな記憶を辿ると、彼はこんなことを言っていた。「ぼくが育った場所では、原語での外国映画の上映などあり得なかった。だから今でもアメリカ映画をフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

April 5, 2006

『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』マーク・モーマン
須藤健太郎

 本作は伝説的なレコーディング・エンジニアにして音楽プロデューサーのトム・ダウドを追ったドキュメンタリーである。2002年、長年の業績が称えられ、彼にはグラミー賞功労賞が贈られる。本作もまたそのような流れの中で製作されたドキュメンタリーであろう。  アトランティック・レコードで数々のレコーディングに立ち会った彼は、本当に驚くべき数のミュージシャンと仕事をしていた人だ。セロニアス・モンクやジョン・コ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:27 PM

April 1, 2006

終焉への時間——『ラストデイズ』ガス・ヴァン・サント
舩橋 淳

 最初から死んでいる人間がいかに物理的な死を迎えるか、その決定的な結末までの時間を描くのがGus Van Santである。ジャームッシュの『Dead Man』もすでに死んでいる人間が身体的な死を迎える時間を描いた。ジョニー・デップのウィリアム・ブレイクは文字通り彼岸へと旅立っていった——ポエティックな世界へと。しかし、Van Santの場合、半死半生のミュージシャンがイマジナリーな領閾に浸りきった...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:31 PM

March 31, 2006

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』トミー・リー・ジョーンズ
田中竜輔

 合衆国とメキシコとの国境において生まれたこのフィルムは、同時にもうひとつの境界を起点にしてその運動を始める。それは「生」と「死」における境界においてである、と言ってしまえば単純なことに聞こえるのかもしれないが、そうではない。  まずはじめに、私はこのフィルムの序盤を見ていて人間関係がまったく理解できないことに戸惑った。このフィルムはそれほど多くの人物が出演しているわけではないし、ここで語られてい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:22 AM

March 29, 2006

『ニュー・ワールド』テレンス・マリック
須藤健太郎

 「映像と音響の洪水」という表現がいつだったか何かの映画にされていたと思うが、まるでその表現がぴったりと当てはまるように、この映画は見る者を圧倒するだろう。絶え間なく聞こえるモノローグの数々がこの映画の語り手を決して一点には収斂させず、拡散させていくうちに、語りの時制も語り手の人称も判別することができないまま観客はそのラストを迎えてしまうはずだ。大まかに言えば、ポカホンタス(クオリアンカ・キルヒャ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 PM

March 27, 2006

『マンダレイ』ラース・フォン・トリアー
結城秀勇

 「ドッグヴィル」を後にしたグレースは「マンダレイ」に立ち寄る。そこはローレン・バコール演ずる「ママ」の法律が支配する場所だった。グレースは村人を時代錯誤的な「ママの法律」から解放しようと試みるのだが、結局のところその試みは失敗し、自分が新たな「ママ」になることでしか「マンダレイ」と関係を持つことができなくなる。  マンダレイという街を存在させる原理が、ママの権力で繋ぎとめられた被支配者たちである...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:54 AM

『グッドナイト&グッドラック』ジョージ・クルーニー
須藤健太郎

 前作『コンフェッション』でもアメリカ政府という巨大な組織との葛藤がテレビという新興のメディアを舞台に描かれていた。そこにはキャスターの父を持ち、一時は自身もそれを志したというクルーニーの個人的な憧憬が投影されているのだろうが、前作におけるチャーリー・カウフマンによる脚本のその複雑さとはまったく逆に、クルーニーは『グッドナイト&グッドラック』では単純なストーリーと単純な構造を獲得している。ほとんど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:22 AM

『哀れなボルヴィーザー』ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
須藤健太郎

 いま公開されいる封切り作にも見たいのはいっぱいあるのだけど、アテネにファンスビンダーを見に行く。すると、すごい行列。暇なときにブログなど見ていて思うが、毎日のように封切り作にもこうした特集上映にも駆けつけるための時間とお金と気力はいったいどこから湧いてくるのだろう。まだまだ先は長い。なんとか工面しつつ、テンションを保たないとやっていけない。  それにしてもこの『哀れなボルヴィーザー』の主人公は、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

March 20, 2006

『白い足』ジャン・グレミヨン
藤井陽子

 ポール・ベルナール演ずる伯爵の白いゲートルが闇夜に浮かび上がると、子供たちが目ざとく「白い足、白い足!」とからかいながら群がっていく不気味なシークェンスを経て、ブルターニュの港町で起こった5人の男女の復讐劇の幕があがる。  美しく豊満な肉体を持ち「最高の女」ともてはやされ、常に貴婦人であろうとする元お針子のオデット(シュジー・ドレール)は、酒場の主人で魚卸業を営むジョック(フェルナン・ルドー)の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:45 AM

シックスネイションズ06 フランス対イングランド 31-6
梅本洋一

 フランスの完勝のゲーム。その戦略はあとで書くことにして、このゲームの印象として誰の目にも見えることは、イングランドの退潮だ。ワールドカップ優勝から2年半が経過し、監督は交代しても、このチームはかつての遺産を使い切ってしまっているのに、遺産を粉飾決算して金庫に預金があるような戦いをしていることだ。徹底したFW戦。少しずつ前進し、しぶとく敵陣に入り、そこでPG。ジョニー・ウィルキンソンがいたからこそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

スキーW杯 スラローム最終戦
梅本洋一

 トリノ後の志賀高原で2位、5位というリヴェンジを果たし、アキラもいよいよ最終戦。スウェーデンのオーレだ。「腑抜けた野郎だと思われたくなかった」「曇りでも初めて下が見えた」いずれも志賀高原でのアキラの発言だ。確かに「金以外考えていない」はずだったが、2本目の片反。「腑抜けた野郎」だと誰でもが思ったろうし、誰でもには、アキラ本人も含まれている。自分自身が「腑抜け」に思われるとき、人は発憤せざるを得な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:36 AM

March 10, 2006

『恋の掟』ミロス・フォアマン
結城秀勇

 3月いっぱいまで東京日仏学院で行われている、アルノー・デプレシャンによるプログラム「人生は小説=物語(ロマン)である」は極めて示唆に富んだ特集である。なかでも、余り注目していなかったミロス・フォアマンのこのフィルムのおもしろさには驚いた。  何度も映画化されているコデルロス・ド・ラクロの『危険な関係』であるが、手紙のやりとりだけで構成されるこの原作を、「秘密」と「共犯関係」のふたつを主軸として映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:32 PM

March 4, 2006

『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』青山真治
結城秀勇

 波。嵐が過ぎ去った直後の海は泥や砂を巻き上げて、攪拌して、高く沸き起こり、強く打ちつける。あの轟音は静かに澄み渡った海からは生まれない。風と水面との関係や、もっと遙か遠くの地殻の震動といった、目に見えない関係性を可視化して、土色の荒れて濁った波は重く鳴り響く。砂や泥といったミクロな細部の混濁が色彩として目の前に現れ、いまここを揺らす音の徴となる。  ミズイとアスハラというふたりの収集者=発明家が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:12 PM

March 3, 2006

『第九交響楽』デトレフ・ジールク(ダグラス・サーク)
月永理絵

 99年に出版された、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの著作集『映画は頭を解放する』は、ダグラス・サークについての記述から始まる。サークからの影響を強く受ける彼は、『天はすべて許し給う』や『悲しみは空の彼方に』など、自分が見ることができたアメリカ時代の作品を並べ、ときに「胸くそが悪くなる」というような明け透けな言い方をしながら、物語の中で生きる人々の性質について語っている。たとえば、『風と共...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:59 AM

March 1, 2006

『歌へ今宵を』カルミネ・ガッローネ
須藤健太郎

 幸福な空間とはおそらくこういうことを言うのであろう。上映後には拍手が起こり、あちこちからヨカッタヨカッタという声が聞こえる。まるでこの映画のラストで幸福感に満たされた誰もが突如として踊り出してしまうように、軽い足取りで、幸せな気持ちになって、みなが会場を後にしているように見えた。映画を見ることの楽しさとは、そう、このような幸福な体験を繰り返すことなのかもしれない。そんなことを思った。  主演のヤ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 AM

『ボーイ・ミーツ・ガール』レオス・カラックス
須藤健太郎

 巷ではJ・T・リロイが実在しなかったというニュースが賑わっているが、確かにこれには驚いた。ウィノナ・ライダーやアーシア・アルジェントはその事実は知っていながら、その隠蔽に協力したとして非難の的となっているようだ。  アーシア・アルジェントがリロイの小説を基に作った『サラ、いつわりの祈り』を見たとき、カラックスのことを思い出した。それがカラックスを想起させたのではなく、それが単にジャン=イヴ・エス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:59 AM

February 27, 2006

『人生なんて怖くない』ノエミ・ルヴォヴスキ
須藤健太郎

 ノエミ・ルヴォヴスキはデプレシャン『キングス&クィーン』にマチュー・アマルリックの姉役で出演していた。99年に製作されたそんな彼女の3作目の長編である。『キングス&クィーン』繋がりで言えば、舞台女優を目指していたエマニュエル・ドゥヴォスがそもそも映画の世界に入ることになったのは、ノエミのFEMIS卒業制作に出たことがきっかけだったようだ。ドゥヴォスはこの作品でも謎の哲学の先生として登場し、見る者...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

February 23, 2006

『激情の嵐』ロバート・ジオドマーク
須藤健太郎

 刑期を終えて出所したグスタフを待ち受けているのは、非情で残酷な世界なのだ。2年ぶりに会う恋人はすでにほかに男をつくり、嫉妬に駆られた彼はそれから破滅へと一直線に向かっていく。主演はエミール・ヤニングス。スタンバーグの『嘆きの天使』でも、ディートリッヒに惑わされ、破滅していく男を彼は演じていたが、『激情の嵐』で彼が虜になるのは、アンナ・ステンである。アンナ・ステン演じるアニーアは、男たちの注目を浴...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:41 PM

『レッツ・ロック・アゲイン!』ディック・ルード
黒岩幹子

 ラモーンズのドキュメンタリー映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』のなかで、一番印象に残ったのは、インタヴュアーの質問に対して、ジョニー・ラモーンが沈黙するさまだった。そんなに長い時間ではないけれど、めちゃくちゃ重い沈黙。この人はこの沈黙でもって長い間ラモーンズを続けてきたのだと思わされた。 『レッツ・ロック・アゲイン!』でのジョー・ストラマーは常に声を出し続けている。ただ歌い、ただ喋るのではな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:24 PM

February 21, 2006

『ミュンヘン』スティーヴン・スピルバーグ
月永理絵

 1972年、ミュンヘンオリンピックに起こったテロ事件と、それによって引き起こされた暗殺事件がこの映画の題材となっている。ミュンヘン事件とは、オリンピックに出場していたイスラエル人選手たちが、パレスチナ過激グループ「黒い九月」のメンバーによって監禁され、11人全員が殺害された事件である。その後、イスラエル機密情報機関「モサド」は、暗殺チームを編成し、この事件の犯人であるパレスチナ人11名の暗殺を企...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

February 20, 2006

『サーク・オン・サーク』ダグラス・サーク+ジョン・ハリデイ
須藤健太郎

 激しく嫉妬するということがたびたびあれば、人生は過酷でつらいものとなるだろうから、そうたびたび起こるものではない。しかし、シネマテーク・フランセーズでのダグラス・サーク回顧特集には激しい嫉妬を覚えたものだった。うらやましかった。たまたまファスビンダーの『自由の代償』などをDVDで見たりしていて、ダグラス・サークが見たいと思っていたからだ。ファスビンダーも前に見たときよりもその世界にすっかり没入で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:27 AM

February 19, 2006

『次郎長三国志』マキノ雅弘
須藤健太郎

 新しくできた名画座シネマヴェーラ渋谷でマキノ雅弘の『次郎長三国志』を見た。『第三部 次郎長と石松』『第四部 勢揃い清水港』の二本立であった。『第三部』は、森の石松と追分三五郎との旅が中心に描かれ、『第四部』では、ふたたび清水に戻った次郎長一家と彼らが合流する。『第三部』からは、お仲さん役で久慈あさみがシリーズに加わるのだが、次郎長が清水に戻ることになって、若山セツ子演じるお蝶さんが出てくると、や...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 PM

『ウォーク・ザ・ライン』ジェームズ・マンゴールド
須藤健太郎

 ジョニー・キャッシュの伝記映画である。しかし本作が語るのは、ジョニー・キャッシュの半生というより、彼とジューン・カーターのふたりの物語である。ステージ上でふたりが掛け合い歌う姿がスポットライトで照らし出されるように、マンゴールドはこのふたりに焦点を当てるのだ。しかし本作は、ふたりが出会い、一緒になるまでの過程を描いた作品ではない。  彼とジューンがようやく結ばれ幸せな生活を始めることを示唆するラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:13 PM

January 9, 2006

ラグビー大学選手権決勝 早稲田対関東学院 41-5
梅本洋一

 ほぼ予想が当たったことで満足しているわけではない(関東のトライを2と予想したが1トライのみに終わった)が、発見が少ないゲームだった。FW戦、接点、ライン攻撃、その局面でも早稲田が関東を圧倒した。早稲田が5トライに留まったのは、関東のディフェンスが頑張ったからであり、もしも「切れた」状態に陥ったとしたら、早稲田は10トライは奪ったろう。その程度の差があったということだ。  それにしても早稲田は堅い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:03 PM

January 3, 2006

ラグビー大学選手権05準決勝 関東学院対同志社 31-15 早稲田対法政 61-5
梅本洋一

 もう少し戦術を練りさえすれば関東学院を敗ったかもしれぬ同志社。ポゼッションでも地域でも関東を上回りながらトライを取ることができない同志社。もちろん関東のねばり強いディフェンスは称賛に値するが、今年こそは、という意気込みで臨んだ同志社の空回りが惜しい。競ったゲームができない関西にある同志社の悲哀は分かるが、スクラム、ラインアウト等要所を押さえる関東の老練な戦いぶり。学生チームはゲームの中で修正する...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 AM

December 21, 2005

アーセナル対チェルシー 0-2
梅本洋一

 アーセナルのプレミアシップは終わった。それも完全に、しかもチェルシーに完膚無きまでに叩きのめされた。ファンクラブに入っているぼくのところにもヴェンゲルから手紙が来た。重要な1戦だ。頑張ると書いてあった。だが、ゲームを見てみると、プレミアシップの無敗記録を作ったアーセナルの流麗かつ完全なフットボールはもう存在していなかった。残念だが、この現実を受け入れることからしか新たな出発はない。  もちろん言...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 PM

December 5, 2005

ボルトン対アーセナル 2-0
梅本洋一

 アンフィールドでのリヴァプール対ウィガン戦の直後ボルトン対アーセナルを見る。アンフィールドでのリヴァプールは本当に素晴らしかった。シャビ=アロンソ、ジェラード、キューウェル、そしてルイス=ガルシアが自在にポジションを変えつつ、長短のスピード溢れるパスが交換され──そう、まるで去年までのアーセナルを見るようだった。美しいアンフィールドで極上のフットボールを見るのは快楽以外の何ものでもない。  そし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 AM

November 30, 2005

フランス対スプリングボクス 26-20
梅本洋一

 この秋のテストマッチシリーズの中にもっとも注目されるべき一戦。ワラビーズを撃破し、カナダ、トンガを一蹴したフランス。アルゼンチンにアウェイで競り勝ち、やはりアウェイでウェールズに勝ったスプリングボクス。共にこの秋の最終戦になるゲーム。  平均体重で10キロ下回るフランスは、当然、ディフェンシヴなゲームを強いられる。セットプレイは、スクラム、ラインアウトともにほぼ完敗。だがスプリングボクスは、ゆっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

November 25, 2005

『ダーク・ウォーター』ウォルター・サレス
月永理絵

 鈴木光司原作で日本でも映画化された『仄暗い水の底から』の、ハリウッドリメイク作品である。映画の日本版は見ていないが、とにかく画面の暗い映画だ。離婚調停の最中で娘と暮らすジェニファー・コネリ−の姿には、慢性的な疲労と苦痛とが刻み込まれ、その陰鬱さが映画全体を侵食している。舞台となるルーズベルト島もまた、何とも奇妙な場所だ。  この島は、「ニューヨークでありながらニューヨークではない」。ニューヨーク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:07 PM

2005年11月17日

2005年11月17日

彼は6回目だと断言していたが、実際に私が彼とここで会ったのは4回目だと私は思う。彼は最初はすごく警戒心が強くて、初対面の私に自分にとって風俗とは何か、理想的な風俗嬢とはどういう存在か、とにかくそんな固い言葉で沈黙を埋め尽くし続けていたのを覚えている。細かい内容は忘れてしまったが、私も彼の言葉に共感で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 15:21

October 17, 2005

『自由、夜』フィリップ・ガレル
藤井陽子

“montage”、確かに今までも、多くの映画のクレジットの中で目にしてきたはずなのに、監督や出演者やカメラあるいはプロデューサーが誰か知りたいと思うような熱心さでその名前を追うことはこれまであまりなかったように思う。しかし、まさに「編集」という仕事を通して映画と共にいたドミニク・オーブレイが共同作業をしてきた映画人の面々をみてみると、クレール・ドゥニ、マルグリット・デュラス、フィリップ・ガレル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:16 PM

『バクステル、ヴェラ・バクステル』マルグリット・デュラス
田中竜輔

 完全な沈黙は時間を永遠に停止させるのかもしれない。郊外で開かれているというパーティーには軽快な音楽が鳴り響いているも、女の横たわるソファーに振動はまるで伝わっていないようだ。波はそこにはない。小さな電話が結びつける別の空間にその音楽は伝わろうとも、その波はどこにも存在しない。存在しないはずの音に満ちた空間。そこに完全な沈黙は存在しないのだから、時間が停止してしまうことはもちろんない。だが、そこに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:43 AM

『マルグリット、あるがままの彼女』ドミニク・オーブレイ
須藤健太郎

 ドミニク・オーブレイは、マルグリット・デュラスの友人であり、『バクステル、ヴェラ・バクステル』『トラック』『船舶ナイト号』などデュラスの映画の編集者として彼女を支えていた。このフィルムは、そんな彼女によるデュラスのドキュメンタリーである。彼女の幼年時代の写真から撮影された当時のインタヴュー映像まで、作家、映画監督としてだけではないデュラスという人の様々な表情が捉えられている。親しくしていた哲学者...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:16 AM

2005年10月14日

2005年10月14日

毎週お店に足を運んでいた男が、数ヶ月前から突然来なくなっていた。それまで当然のように顔を合わせていた彼の不在に、私は戸惑いを隠せないでいた。彼の予約するいつもの曜日、いつもの時間に同じように予約が入ると、彼ではないかと推し量り、ルームの扉を開け相手がその男でないことを確認すると、彼のために用意してい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 08:52

『前川国男──賊軍の将』宮内嘉久、『吉阪隆正とル・コルビュジエ』倉方俊輔
梅本洋一

 小学生の頃、ぼくは神奈川県立音楽堂へ鰐淵晴子のヴァイオリンを聞きに行った。ぼくが行きたかったわけではなく、母親が息子の「情操教育」によいと勝手に判断して、小学校のクラスで団体販売していたチケットを買ったのだと思う。そこで、後に女優になる天才ヴァイオリニストが何を演奏したかはまったく覚えていない。ぼくが覚えているのは、桜木町から少し歩いた場所にある坂道を上り、その中腹にある駐車場から音楽堂に入ると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:49 AM

2005年10月13日

都会の喧騒を離れ東北の小都市で静かに映画に浸る、そんなイメージを山形国際ドキュメ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 21:01

October 7, 2005

Passion and Action「生の芸術 アール・ブリュット」展
影山裕樹

 アドルフ・ヴェルフリ、1864年に生まれ、幼くして家族を失い、幼女暴行未遂により精神病院に収監、彼は同病院内において、ある日突如として絵を描き始める。しかしその壮大な空想上の自叙伝の企ても、病には敵わなかった。休むよう説得する医師の言葉も聞かず、彼は死に瀕し、涙を浮かべながらも、最後までこれを描き上げたいと訴え続ける。そして1930年の冬、自らの『葬送行進曲』を描きながら、ヴェルフリはついにこの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:43 PM

例年、この季節に山形に来ると秋口の寒さはこんなにもだったかと思い知らされる。その...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 13:11

October 3, 2005

プレミアリーグ リヴァプール対チェルシー 1-4
小峰健二

 CL予選に引き続き、今週2度目の対戦であるリヴァプール対チェルシー。この対戦には最近遺恨めいたものが生まれつつある。去年のCL準決勝におけるゴール判定や数日前の審判のミスジャッジなどが原因らしく、試合前から舌戦が繰り広げられていた。アンフィールドのファンも興奮している。むろん、ミッドウィークの「静かな闘争」(梅本洋一)の興奮を、極東にいる私たちもまた引きずっている。  試合は前半20分まで、素晴...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

プレミアリーグ リヴァプール対チェルシー 1-4
梅本洋一

 ホーム・アンフィールドでの決定的な敗北はリヴァプールにどんな影響を与えるだろうか。前半、ジェラードの素晴らしいシュートで同点に追いついたときの歓喜と、それ以降の一方的な展開。両チームの差は本当に明瞭になった。マケレレ、ランパード、エシアンで構成するチェルシーの中盤、そして、ジェラード、ハマン、シャビ=アロンソで構成されるリヴァプールの中盤に、それほど大きな差はない。両チームとも中盤の潰しあいでほ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:34 PM

September 28, 2005

チャンピオンズリーグ アヤックス対アーセナル 1-2
梅本洋一

 この火曜日でもっとも興味深いゲームだと思われたが、予想が外れた。まず両チームのコンディションが悪いこと。怪我人が多い上に、リーグ戦でも不調だ。どちらも最良のものを出し切るどころか、何となくゲームが始まり何となく終わってしまった。  アーセナルはアンリ、ベルカンプ、ジウベルトが怪我、レーマン、ファン・ペルシが出場停止。アヤックスはスナイデルとトラヴェルシが故障。いったい誰が出るのか? 誰が出ても1...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:39 PM

September 26, 2005

『シンデレラマン』ロン・ハワード
梅本洋一

 金のために久しぶりにリングに復帰するブラドック。マジソン・スクウェア・ガーデンのロッカールーム。トレーナーに空腹だと告げ、彼の前にはボールに入ったハッシュット・ビーフが運ばれている。フォークを取りに、ロッカールームを出るトレーナー。そこにひとりの男が訪れる。ソフト帽を斜めに被り、顔に深い皺が刻まれた「NYトリビューン紙」のヴェテラン・ボクシング記者だ。「俺のことを覚えているか?」「ああ、ひどく書...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:26 PM

『Dogtown & Z boys』ステイシー・ペラルタ
結城秀勇

 回収や再利用は戦争につきものだし、あるものを二度、それもまったく異なった目的のために利用するのは、要するに戦争のポエジーなのだ(『黄金の声の少女』ジャン=ジャック・シュル)。  ルート66のつきる場所、ドッグタウン。その南にある「ヴェニス、カリフォルニア」は、「パリ、テキサス」と同じようなアメリカの内部の様々な場所にある世界の断片のひとつだ。運河を巡らせ、もうひとつのヴェニスをつくりあげようとい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:23 AM

September 25, 2005

ウェストハム対アーセナル 0-0
梅本洋一

 中田英寿はまだまだボルトンに馴染んでいないようだ。バックラインから前線に長いパスが出る展開が多いボルトン、トップに当たっても両サイドに散らされ、ヒデはなかなか仕事ができない。でもCKもFKも任されていたし、技術的には何の問題もない。センターにどっしりと構えるよりも、オコチャが右ならヒデは左というようにタッチライン際にひらけばもっとボールが来るだろう(ボルトン対ポーツマスは1-0)。  でも今期好...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 PM

September 18, 2005

『初代総料理長サリー・ワイル』神山典士
梅本洋一

 大学時代、祖父から日本のフランス料理にはふたつの系統があり、それは帝国ホテル系とホテル・ニューグランド系だと聞かされたことがある。祖父は、生粋の浜ッ子だったから、ホテル・ニューグランドへの愛着を込めてそう語っていたのだと思っていた。だが、それ以後、実際にフランス料理を食し、フランス料理についての書物を書いたり読んだりするにつけ、ホテル・ニューグランドとその初代総料理長サリー・ワイルの力の大きさを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:47 AM

September 13, 2005

『チャーリーとチョコレート工場』ティム・バートン
田中竜輔

『夢のチョコレート工場』でメル・スチュアートは当然のように目もくれていなかったし、ロアルド・ダールの原作にも存在しなかったというウィリー・ウォンカの過去をティム・バートンは掘り起こしている。『夢のチョコレート工場』にあった遊園地のアトラクションのような工場の内部を現代の技術と莫大な予算でリメイクし、遥かにエキサイティングで楽しいフィルムを作り上げることはバートンでなくとも不可能ではないだろう。だ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:20 AM

September 8, 2005

日本対ホンジュラス 5-4
梅本洋一

 相変わらずアレックスのサイドが突破される。コンフェデのブラジル戦と同じように加地が遅れてしまう。そしてヒデまでも凡ミスで失点。高原の久しぶりのゴールが決まっても前半で1-3。この夜、日本海を通過しつつあった台風のように大荒れのゲーム。覚えているだけでアレックスのサイドは3回も突破されている。伸二は怪我だが、前の6人を欧州組で固めた日本代表は、このチームが結成された当時の黄金の中盤。伸二の代わりに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:37 PM

September 6, 2005

ドイツW杯 欧州予選 フランス対フェロー諸島 3-0
梅本洋一

 ジダンの復帰はフランスの日刊紙の一面を飾った。絶体絶命のフランスが復帰させたのはジダンばかりではない。テュラム、マケレレも戻ってきた。GKのクーペからディフェンダーが右からサニョル、テュラム、ブームソン、ギャラス、ボランチにマケレレとヴィーラ、そしてマルーダとジダン。2トップにシセとアンリ。これが先発メンバー。若返りもへったくれもない。ドメネクは、恥も外聞もなく予選突破にすべてを賭けてきた。  ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:10 PM

September 5, 2005

『赤信号』セドリック・カーン
藤井陽子

 プラスとマイナスの磁石の、どちらかを球に、どちらかを半チューブ状のレールにして、そのレール上に球を滑らせると、球は何の摩擦も受けずに猛スピードで滑走する。それを新幹線に応用すると、もっと速く、もっとなめらかな走行を実現できる。問題は、それを止まらせる方法がないということだ。  うそかほんとか知らないが、そんな話を聞いたことがある。  セドリック・カーンの『赤信号』はこの滑走運動を思わせる映画だ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:13 AM

『シャーリー・テンプル・ジャポン・パートⅡ』冨永昌敬
結城秀勇

 はじめに流れる「パート1」では、コマ落とし、引きでの長まわし、サイレントという要素によって、これまでの冨永作品とは異なった世界が展開される。中でもこの「サイレント」という要素については、監督自身が公式サイトにて熱く語っていることでもあるのでそちらを是非見ていただきたいのだが、とにかくもこの『シャーリー・テンプル・ジャポン』の「原型」がサイレントであったというのは(そう、「パート1」はサイレントで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:11 AM

『ランド・オブ・ザ・デッド』ジョージ・A・ロメロ
月永理絵

ジョージ・A・ロメロの20年ぶりの監督作である。本当はゾンビシリーズとしてひとつの年代に一本の映画を撮ろうと思っていたと語るロメロは、68年の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』でデビューし、78年に『ドーン・オブ・ザ・デッド/ゾンビ』を、85年の『デイ・オブ・ザ・デッド/死霊のえじき』を完成させた。当然のようにゾンビ達の能力や姿は、その時代を象徴するものであり、05年に現われた彼らの新しい能力...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 AM

September 2, 2005

トータス Live (@Metamorphose 2005 8/28 修善寺サイクルスポーツセンター) 
田中竜輔

 ヴィヴラフォンとマリンバ、ロックバンドのステージでは滅多にお目にかからない二つの楽器が、静かに、そして力強くメロディを紡ぎ始める。そう、『Crest』だ。何度もCDで聴いていたはずのこの曲が午前零時を少し回った修善寺の山奥に共鳴を始めた瞬間、今までに経験したことがない空気の震えを感じた。この場所にいられることを心から幸せに感じた。この音楽が無限のヴォリュームになって全世界に響き渡ればいい、そんな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:14 AM

ナビスコカップ準決勝第1戦 浦和レッズvsジェフ千葉
渡辺進也

 ホーム&アウェイで行われるナビスコカップ準決勝の第1戦。2戦終わった段階で得点の多いほうが決勝進出となる。まずは浦和のホームで。駒場スタジアムは浦和のサポーターで真っ赤に染まる。実際に観客の9割以上が浦和のサポーターだったのではないだろうか。試合開始前から浦和の応援の声しか聞こえない。浦和の応援が続いているなか、始まった試合はいとも簡単に先制点が決まる。千葉の最初のチャンス、左サイドで得たFKを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 AM

『宇宙戦争』スティーヴン・スピルバーグ
梅本洋一

 テレビのニュースでハリケーンのカテリーナが通過した後のアメリカ南部の映像や、バグダッドで、人々が将棋倒しになった映像を見ていたら、新潟で地震にあったときのことを思い出した。1964年のことだ。父の転勤で新潟にしばらく住んでいた小学生のぼくは地震にあった。昼休みでかなり長い初期微動の後、いきなり大きな揺れが襲い、校舎の窓ガラスが粉々に落下してきた。ぼくらはまず机の下に隠れ、それから校庭に出た。校舎...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:07 AM

August 31, 2005

『奥様は魔女』ノーラ・エフロン
梅本洋一

 テレビ・シリーズの『奥様は魔女』は僕らの世代にとって忘れがたい。『ルーシー・ショー』や『陽気なスマート』などと並んで、笑い声が組み込まれたコメディとして本当に懐かしい。ぼくらは皆、魔女のサマンサがやる唇を左右にふるわせて魔法を使う身振りを真似していた。  このフィルムは、『めぐり逢えたら』でマッケリーの『めぐり逢い』を、『ユーブガッタメール』でルビッチの『桃色の店』のリメイクしたエフロンの「リメ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 AM

2005年8月28日

2005年8月28日

まさかこのお店で受けるサービスをまったく知らないで飛び込んできたわけでもないだろうに、彼は出会うなり大声でなんやかんやとまくしたてて、なかなか衣服を脱ごうとしなかった。私が業を煮やして彼のシャツに手をかけると、彼は大げさに飛び上がり確かにこういった。「もう何するんだよ、いきなり」。 それでもタオルを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 00:32

August 23, 2005

トライネイションズ第4戦 ワラビーズ対スプリングボクス 19-22
梅本洋一

 ラック、リサイクルを繰り返すワラビーズはボール・ポゼッションでは大きく上回るが、ゲイン・ラインをなかなか切ることができない。どうやってトライをとるかという方法論において、ワラビーズにあるのは、フェイズを繰り返し、人数的な優位を作り、トライに結びつけるという以外にないのだろうか。もちろんこの日のゲームでもスティーヴン・ラーカムは、肘の怪我で出場せず、マット・ギタウがSOをつとめていたが、スプリング...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 AM

August 21, 2005

『ヒトラー〜最後の12日間〜』オリヴァー・ヒルシュビーゲル
影山裕樹

 この映画の中ではアウシュビッツはまったく出てこない。そして、それがむしろこの映画の慎重さをより的確に表現している。確かに、ドイツ国内でヒトラーを好意的に描きすぎているという批判があるのは当然かもしれない。ブルーノ・ガンツ扮するヒトラーが主人公の秘書や愛人に接するあまりの優しさは、はっきりいって私たちからすれば、尊敬するに値する、あまりに人間的な振る舞いに見える。そしてその手の神経質な震え、ヒトラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 PM

2005年8月20日

2005年8月20日

実家に帰郷した隙に、父親の本棚の隅にそろりと置かれていた『スカートの下の劇場』を盗み読む。そこには、「パンティ」の多角的な歴史的変遷を通してかいまみえる1989年のセクシュアリティが描き込まれている。出版当初から16年の歳月が経過した現在、それを単純に鵜呑みにすることはできないが、それでも「動物的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 15:01

August 15, 2005

アーセナル対ニューカッスル 2-0
梅本洋一

 いよいよプレミアの開幕。もちろん贔屓のアーセナルの開幕戦を見る。ヴィーラのユヴェントスへの移籍。コミュニティ・シールズでの対チェルシー戦敗北。ほとんど昨年と同じ面子でしかもヴィーラがかけた状況で戦わねばならないアーセナル。「スカパー!」の開幕特集の番組で、粕谷秀樹は、「何年も同じタイプのフットボールは飽きた」と酷評したヴェンゲル=アーセナルのフットボール。アーセナル・ファンもぼくも粕谷の発言には...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:31 PM

August 14, 2005

『空中庭園』豊田利晃
結城秀勇

 直木賞の候補にもなった角田光代の小説を原作としたこの映画は、郊外の巨大なマンションの一室を舞台とする。テーマパーク兼ショッピングセンター兼レストラン街であるような場所、「ディスカバリーセンター」を中心とするこの街で、主人公である絵里子(小泉今日子)は、「理想の家族」を作り上げている。  マンションの遠景から、何百という同じかたちの部屋の中の任意のひとつへ向かって一気にクロースアップするショットが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:13 PM

August 11, 2005

『世界』ジャ・ジャンクー
梅本洋一

 北京郊外の世界公園。いながらにして世界のモニュメントを体験できる場。エッフェル塔やビッグ・ベンなどが、縮尺した模型で建ち並んでいる。いながらにして世界を体験できる、という表現は単に矛盾である。「世界」とは徹底して外部にあるものであるがゆえに、その一部──そう、私たちは常にその一部しか体験できない──を体験するためには、必ず外部への踏み出し、つまり旅行が必要になる。つまり「いながらにして世界を体験...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 PM

August 10, 2005

『リンダ リンダ リンダ』山下敦弘
梅本洋一

 物語としての「青春映画」の構造を明瞭に備えたシンプルなフィルムはおおかたの好評を集めているようだ。文化祭、バンド、ブルーハーツのコピー、韓国からの留学生……。もちろんタイトルを見ただけで、いろいろな出来事を乗り越えて、女の子たちは最後に「リンダ、リンダ、リンダ」と熱唱し、体育館は興奮の渦に包まれることは予想されるし、事実、予想通りなのだ。ギターの女の子の手の骨折や、ヴォーカルの子が喧嘩して韓国人...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:52 AM

『ルート1/USA』ロバート・クレイマー
田中竜輔

「語る」対象としての「死」とは決定的に「他者」のものでしかない。「自己における死」について、それはどのような場合においても語ることは不可能であるからだ。誰かにその「死」を見せるという「行為」においてそれは不可能であるとは言い切れないとしても、「語る」ことは絶対にできない。だから、語るものとしての「死」とは、すなわち「誰かの死」でしかない。「起こりうるかもしれぬ死」ではなく、「起こってしまったこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:50 AM

August 6, 2005

『せかいのおわり』風間志織
月永理絵

 映画が始まる前にプレスシートのあらすじを読んだ限りでは、ありがちで、陳腐な恋愛映画にしか思えなかった。  幼馴染みの男と女がいる。彼氏に振られる度に自分のもとに泣きついてくる女「はるこ」を、「慎之介」は何も言えないまま一途に思いつづけている。「はるこ」は「慎之介」の気持ちをわかっていながら、曖昧にごまかしている。そしてふたりを見つめるバイセクシャルの「店長」は、「慎之介」に思いを寄せている……。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:10 PM

August 4, 2005

サッカー 東アジア選手権 北朝鮮対日本 0-1 中国対日本 2-2
梅本洋一

 東アジア選手権の中間的なレポートを書いておこう。  初戦の対北朝鮮戦は、なによりも代表メンバーのモティヴェーションの低さが際立った。なぜこうしたトーナメントがあるのか。W杯予選の中間に、Jリーグの合間に、高温多湿の地でトーナメントを戦う必要があるのか? それを理解できないのは選手ばかりではない。中澤のミスパスから生まれた1点は選手たちのモティヴェーションの低さが原因だ。このトーナメントは、選手た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 PM

August 3, 2005

『世界』ジャ・ジャンクー
藤井陽子

『世界』を見ていた最中も、『世界』を見たことから何かを言い表したり考え始めようとしたときも、自然と思い浮かんだのは「プンクトゥム(ふいに私を突き刺すもの)」という言葉だった。ロラン・バルトがかつて用いて、彼自らの手であっという間に覆してしまった言葉だが、「プンクトゥム」という言葉の響きも意味も、『世界』について何かを言うときにいちばんしっくりくる、ぴったりの言葉だという風に思えたので、私はこの言...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 PM

『亡国のイージス』阪本順治
梅本洋一

 この種のフィルム──こうしたジャンルをどう呼べばいいのだろう?──に極めて忠実な作りで最後まで観客を引っ張っていく。イージス艦が北朝鮮ゲリラに乗っ取られ、政府への要求が叶わないときは、1000万人以上が死亡する可能性のある武器を東京に打ち込むという物語。自衛隊の全面的な協力によって、イージス艦もジェット戦闘機も本物が稼働している。つまり、最後の最後に主人公(真田広之)の個人的な力によって、武器が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:46 PM

July 30, 2005

『アイランド』マイケル・ベイ
月永理絵

 ここ最近カート・ヴォネガットの小説を何冊か読んでいて、そのせいかSFというジャンルが気になって仕方がない。だが「SFとは何か」という問題を考えても仕方がない。そもそもカート・ヴォネガットの小説の何がおもしろいかと言えば、その特異な言い回しや簡潔な文体の連続がつくり出すテンポのよさである。ただ、異様なシチュエーションでこちらをあっと言わせ、恐怖心や憧れを感じさせてくれるような未来の世界に出会うと、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:50 PM

July 18, 2005

『流れる』成瀬巳喜男
田中竜輔

 夫と子供を失い、ひとりで細々と生きている45歳になる梨花(田中絹代)は、とある古びた芸者置屋「つたの屋」に女中として勤めることになる。すでに抵当に入れられた家屋の内部に生活する女たちは、いつも何かに悩み、時にはその悩みを互いにぶつけ合いながら、日々を過ごしている。この家の家主である女は生活の中の些細な悲しみに全身を浸しながら、静かに時代との乖離を始めた芸者という職業に向き合っている。若く美しく奔...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:33 AM

July 10, 2005

『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』リティー・パニュ
中村修吾

 出来事と評価との間には隔たりがあるはずだ。ある出来事が起こる。そして幾らかの時間を経てその評価がなされる。出来事と評価との間には、時間的な隔たりがある。また、出来事が起こった場所と評価がなされる場所が別の場所であるという意味において、空間的な隔たりがある。『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』は、出来事と評価との間、言い換えれば、時間的空間的な隔たりの中に存在するものを記録しているように思う...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:40 AM

July 6, 2005

boid presents Sonic Ooze Vol.5「爆音レイト 4 weeks」
月永理絵

 4週間に渡る「爆音レイトショー」がついに、今週で最終週となる。爆音上映はこれまで何度か体験したが、4週間も続いたせいか、イヴェントというよりも、まるで「爆音」という名の映画館に通っているような感覚だった。今までの爆音イヴェントでは、いつも「こんな音が聞こえる」という衝撃に出会った。今回もそんな衝撃は何度もあった。『デモンラヴァー』でのソニックユースの音楽。空港で人々が立てるあまりに暴力的な音。そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:54 AM

July 5, 2005

「横尾忠則 Y字路から湯の町へ」
藤井陽子

 なんておもしろい絵を描く人なんだろう、横尾忠則って人は!  ところは湯の町・伊東、池田20世紀美術館の開館30周年を記念して企画された展示会だ。横尾の「Y字路」シリーズの最新作である伊東市のY字路を描いたものに、「銭湯」シリーズを加えた60点の展示だ。「Y字路」シリーズは以前、東京都近代美術館で開かれた「森羅万象展」でも見ることができたが、その時よりも集中しておもしろく見れた。「森羅万象展」の時...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:35 AM

『シンデレラマン』ロン・ハワード
藤井陽子

「人生をこの手で変えられると信じたいんだ」。  この映画を見て、奇跡を信じたいと思った。それから希望を捨てないで生きなくちゃいけないと思った。  強力な右ストレートを武器に持つ前途有望な若きボクサーのジム・ブラドック(ラッセル・クロウ)が、右手の負傷をきっかけにみるみるうちに敗戦と怪我と貧困の悪循環に陥るところからこの映画は始まる。時は1929年、世界大恐慌の年だ。まるでアメリカの姿を投影するか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 AM

『シャーリー・テンプル・ジャポン・パート2』冨永昌敬
小峰健二

 冨永昌敬の作品を見ていると途方もない拡がりを感じてしまう。たとえばそれが、江古田という場所で撮られていたとしても、マンションの一室で撮られていたにしても同じである。閉じられた空間であるはずの場所を果てなく拡散させ、映画自身の外壁を取り払う。そのような拡散作用が映画全編に漲り、観客は幻惑し、冨永にやられてしまうのだ。  たとえば『VICUNAS』では、日本語、英語、はては奇怪なタコ島語でダイアロー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:25 AM

『乱れ雲』成瀬巳喜男
梅本洋一

 生誕100周年を記念してディジタルリマスター化が進められている成瀬のフィルムがスカパーの日本映画専門チャンネルで連続上映されている。この日は、別プログラムの加山雄三特集とのからみで、『乱れ雲』が放映された。  他の加山プログラムには『エレキの若大将』、『椿三十郎』などが含まれていて、冒頭には今年68歳になる加山雄三のインタヴューが添えられていた。ひたすら黒澤明のすばらしさを語る加山の言葉の直後に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:23 AM

ラグビー オールブラックス対ライオンズ第2テスト 48-18 ワラビーズ対フランス 37-31
梅本洋一

 南半球の優勢が確実になった、などと暢気なことを言っている暇はなくなった。ライオンズがこうした大差でオールブラックスに敗れたことは初めてだし、フランスはスプリングボクス戦に次いで連敗。  ウッドワードは、失望していると語り、ラポルトはまだ望みがあると語っているが、ゲームを見る限り、「紙一重」などというものではない。ワラビーズ対フランスは確かに大差ではないが、フランスに勝ち味はなかった。ライオンズは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:21 AM

2005年7月 4日

2005年7月4日

筋肉で盛り上がった太い腕を所在なくふり回し、荒々しい鼻息をたてるこの強そうな男は、どうやらかなりイライラしているようだ。挨拶をして顔を上げると、同時に男の舌打ちが耳をつく。アルコールのにおいがする。私は耐えかねて声をかける。「すいません……あの、怒ってます?」ずいぶん不躾な質問になってしまう。とにか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 17:37

June 30, 2005

『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』ニルス・ミュラー
月永理絵

『ミリオンダラー・ベイビー』のラストシーン、イーストウッドらしき人物が小さな店のカウンターに座る様子が、窓の外からぼんやりと映される。その光景を目にしたとき、私は何の言葉も感情もそこに投影できなくなってしまった。それは、そのドアの向こう側には絶対に踏み込めないという確信めいた何かがあったからだ。ただぼんやりと見つめるしかないし、永遠にその光景を見ていることはできないのだと思った。  ショーン・ペ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:32 PM

June 29, 2005

『My Architect』ナサニエル・カーン
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

 ナサニエル・カーンは、Louis Kahnとふたり目の愛人との間に生まれた子供であり、『My Architect』は父をほとんど知らずに育った息子が、父の建築を訪ね・父を知る人々にインタビューをして回る、いわゆる父親探しのドキュメンタリーフィルムだ。  父親探しとはつまり「息子が父親の空白を埋めていく物語」であるのだが、ナイーブすぎて聞くに堪えないナレーションと必要性をまったく感じないバックミュ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:09 AM

June 23, 2005

『ジェリー』ガス・ヴァン・サント
藤井陽子

『ジェリー』の「爆音」と聞いてバウスシアターに足を運ぶ人はきっと、ジェリーのたてる足音や吹き荒れる風の音やアルヴォ・ペルトの曲の微細な息遣いを爆音で体験するという期待に少なくとも胸膨らませて来るのだと思う。実際に私もそうだったのだが、それを体験してみると、足音や風音以上に、にぶい圧迫を受けて宙に留められたような無音状態の時間がより衝撃的に立ち現れてくることを発見した。「爆音」とは爆音によって静寂...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:37 AM

June 20, 2005

『帰郷』荻生田宏治
渡辺進也

 ちょっと早めに映画館に着いたので、ロビーに貼られた紹介記事を読んでいたらびっくりしてしまった。地方自治体が撮影に協力するフィルムコミッションによって作られた1本なのだが、その撮影されている場所が僕の実家の近くなのだった。しかも、何人かの俳優を除けば現地の人間が出演している映画であるということで、映画の中に知り合いが出てくるのではないかとひやひやしてしまった。  春夫(西島秀俊)のところに母親から...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

『描くべきか愛を交わすべきか』アルノー&ジャン=マリー・ラリユー
田中竜輔

「映画は批評のためにあるのではありません、観客のためにあるのです」、上映前のラリユー兄弟による挨拶に続き、このフィルムに出演しているアミラ・カサールは上機嫌に観客に向けてこうスピーチした。退場の際も大声で「ニホンダイスキー!」と明るく振舞う彼女のこの言葉を受けたあとで文章を書くのは少し気が引けてしまう。彼女の出演しているフィルムを実は他に見たことがなかったのだが、彼女は批評に何か恨みでもあるのだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:56 AM

『描くべきか愛を交わすべきか』アルノー&ジャン=マリー・ラリユー
月永理絵

 一軒の家がある。そこに住むひと組の夫婦がいて、そこを訪れるまた別の夫婦がいる。映画は、この一軒の家をめぐって進んでいく。  日仏学院での上映後、ラリユー兄弟による講演の中で、映画での眼差しのあり方について次のように語ってくれた。アミラ・カサールがサビーヌ・アゼマの前で服を脱ぎ始めるシーンについて、アミラ・カサールは誰かの眼差しを受けることを求め、その相手がサビーヌ・アゼマであったのは、彼女が求め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:53 AM

June 17, 2005

コンフェデレーション・カップ 日本対メキシコ 1-2
梅本洋一

 ジーコが今まで作り上げ、アジアカップで優勝し、W杯アジア予選を勝ち抜いたチームの長所と短所が極めて明瞭な形で露見したゲームになった。  ジーコのフットボールというのは無手勝流というか、うまく行ったことをそのまま継続するという原則が常に貫かれている。だからバーレーン戦以来うまく行っていた3-4-2-1をこのゲームでも採用。柳沢のワントップの下に小笠原、俊輔の2シャドウ。それまで採用した3-4-1-...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:06 PM

『髭を剃る男』エマニュエル・カレール
須藤健太郎

 長年口髭をたくわえていたマルク(ヴァンサン・ランドン)はある日口髭を剃ることを思いつく。しかし、妻のアニエス(エマニュエル・ドゥヴォス)をはじめ昔から親しくしている友人たち、職場の同僚など誰ひとりとしてそのことに気が付いてくれない。すねるマルク。次第に彼は、自分の記憶と他人の記憶とにずれがあることに気づきはじめ、実存的な不安に駆られるようになる。「ほかの人々を通じてこそ、ぼくは自分のことが話せる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:54 AM

June 16, 2005

『世界』ジャ・ジャンクー
須藤健太郎

 ジャ・ジャンクーの新作は『世界』と題されている。なんて大きなタイトルだろうと思ったが、しかしいかにもジャ・ジャンクーらしいという気もした。ジャ・ジャンクーはいつも「世界」を描いてきたからだ。『プラットホーム』にしろ『一瞬の夢』にしろ、彼はいつも中国の田舎を舞台に若者たちの行動を丹念に記録していた。「地域的なものに留まれば留まるほど、世界的なものになる」というジャン・ルノワールの言葉をまるで裏付け...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:23 AM

『アルフィー』チャールズ・シャイア
月永理絵

 67年にマイケル・ケイン主演でつくられた『アルフィー』が、舞台をロンドンからNYに移し、ジュード・ロウ主演にてリメイクされた。 『アルフィー』は少女マンガ的世界を徹底的に肯定する。恋愛は情熱よりも安らぎが大切なのであり、一度失ったものは二度と戻ることはない。プレイボーイは幸せをつかめない。幸せは常に家庭の中にある。一番大切なものはなんでも話せる親友。そんなメッセージのみで成り立っている映画であ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:10 AM

June 15, 2005

『ある夏の記録』ジャン・ルーシュ
須藤健太郎

 いま、ジャン・ルーシュの回顧上映が開催されている。以前、彼の映画を見たときにはあまりピンと来なかったのだが、『ある夏の記録』『人間ピラミッド』と立て続けに見て、すっかりはまってしまう。めちゃくちゃ面白いのだ。つい足繁く通ってしまっている。前に見たのは『メートル・フ』と『我は黒人』だったが、そのときはたぶん無字幕で、訛りに訛ったフランス語を少しも聞き取ることができず、それで楽しく見れなかったのかも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:49 AM

『クローサー』マイク・ニコルズ
須藤健太郎

 はじめてエリック・ロメールの『友達の恋人』を見たとき、そこに4人しか登場人物がいないことにとても驚き、そしてそのことが当時はとても重要なことのような気がしていた。ふたりの閉じられた関係ではなく、いわゆる三角関係でもない。多様なドラマを生み出すためには、最低4人は必要だ。しかし、4人いればそれで十分なのだ。そんなふうに強く思い込んでいた。実際『友達の恋人』には、その4人以外はエキストラを使うことも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:41 AM

June 14, 2005

ブランドン・ロス LIVE
藤井陽子

「人びとが無理やり世界にそぐわせなければならなくなったとき、彼らは今までになかった新しいものが見えなくなっている。そのような場所からわれわれが出て来るとき、それは創造的で、独創的で、奇怪なんだ。でも僕たちはそのとき何かを見つけるチャンスを得ているんだ。何かエキサイティングなもの、何か新しいものをね」──ブランドン・ロス  6月9日、LIQUIDROOMにてブランドン・ロス“コスチューム”バンドの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 PM

『カーニヴァル化する社会』鈴木謙介
衣笠真二郎

 東浩紀責任編集のメールマガジン「波状言論」にて鈴木謙介が連載していた文章を1冊の新書にまとめたものが本書である。著者は東京都立大学で理論社会学を修めてからすでに1冊の著書と共著を出版しているが、歳はまだとても若いといえる1976年生まれの人だ。彼の分析対象となるインターネットや若者たちと彼自身との距離は相対的に近いものであり、かつてインターネットヴェンチャー企業で経験したことや学生時代に模索した...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:02 AM

June 13, 2005

ラグビー テストマッチ 日本対アイルランド 12-44
梅本洋一

 長居の30度の蒸し暑さ。かつてのジャパンなら、気候条件まで味方につけて、それなりのゲーム運びをしたろう──91年の同時期に秩父宮でジャパンがスコットランドを敗ったゲームを思い出しているのは私だけだろうか──が、誠実なプレーに徹したアイルランドに完敗した。特別なことをしてくるわけではない。しっかりとタックルし、しっかりとボールを繋ぐ基本的なラグビーの前にジャパンはなす術なく敗戦した。トライ数0-4...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:36 PM

June 9, 2005

W杯アジア予選 北朝鮮対日本 0-2
梅本洋一

 日本代表は淡々とドイツ行きの切符を手に入れた。そう、淡々と。歓喜も悲劇もなく、淡々と。  その事実は、さらに別のふたつの事柄を浮き彫りにする。ひとつは──このひとつは「淡々と」の大きな理由だが──アジア出場枠4.5というのは、楽に予選を進められるということ。ヨーロッパの各地の予選を見る限り、落とすのが惜しいチームが多い。それに最低2ヵ国は強豪チームが入っているグループリーグで1位にならなければプ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:23 AM

2005年6月 8日

ある視点部門 『Down in the valley』デヴィッド・ジェイコブソン

「公式コンペ」で2本(ヴェンダース『Don't come knocking』、ト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 21:50

June 6, 2005

『ミリオンダラー・ベイビー』クリント・イーストウッド
渡辺進也

 アカデミー作品賞受賞作品。ヒラリー・スワンクは主演女優賞を受賞し、モーガン・フリーマンは助演男優賞を受賞。イーストウッドは監督賞を受賞した。前作の『ミスティック・リバー』に続き、アカデミー賞がイーストウッドを無視することができなくなっている。  Tough ain't enough.  すでに30歳を過ぎ、ウェイトレスをしているマギー(ヒラリー・スワンク)は、優れたボクサーを何人も育てているフラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:29 PM

June 4, 2005

『ションベン・ライダー』相米慎二
藤井陽子

「この夏、落魄れてしまった諸君!」デブナガの掛け声が響く。プールで悪ガキに囲まれたジョジョ(永瀬正敏)と辞書(坂上忍)のもとへ、ブルース(河合美智子)がヤーッと飛び込む。水しぶきが飛び散る。  登場人物はプールへ、海へ、川へ、銭湯へ、身を投げ出していく。  高さ20メートルはありそうに見える吊り橋からブルースは何気なく川へ飛び込む。ほとんど意味など分からない。「あ!」と、彼女の後につづきアラレ(...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:32 PM

June 3, 2005

『フォーガットン』ジョゼフ・ルーベン
結城秀勇

 息子を事故で失った母親。しかし、周りの人間はその記憶を忘れていき、彼女の記憶が単なる思いこみにすぎないのだと説得する。はじめから子供などいなかった。君は流産のショックで妄想を抱いている。彼女はそんな言葉に耳を貸すことなく、自分がなんらかの陰謀に巻き込まれているのだと確信するに至る。  そこでジュリアン・ムーアの記憶が本当の記憶なのかということは、一切問われない。冒頭の一見ゆらゆらとして不安定そう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:18 AM

June 2, 2005

『さよなら、さよならハリウッド』ウディ・アレン
黒岩幹子

 原題は「Hollywood Ending」。ゆえにオープニングはジョニー・マーサ/リチャード・ホワイティングの「Hooray for Hollywood(ハリウッド万歳)」で幕開け。そういえば、大阪はUSJにある、あのユニヴァーサルの地球儀モニュメントの周りでもこの曲がかかっているらしい。でも、この映画の頭に出てくるのはユニヴァーサルの地球儀ではなく、「ドリームワークス」の文字。あのドリームワー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 AM

May 30, 2005

ふたつの日本代表
梅本洋一

 一昨日はフットボール、そして今日はラグビーの日本代表がともに惜敗した。勝てるのに勝てない、あるいは、勝てるのに勝とうとしない。どのようなゲームをして、どのような結果を得るのかというゲーム・プラニングがともに、どこかでうまく行っていない。だから結果が出ない。  まずは一昨日終わったキリン・カップを戦ったフットボール。「かったるい」ペルー戦の反省から、積極的になった日本代表。その姿勢は小野伸二のそれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:05 AM

2005年5月30日

むき出しの彼の背中にまたがり、私はそこにオイルを垂らす。筋肉の筋にそって腰から肩にむけ親指を滑らせる。肩甲骨の周りに、グリグリと指を押し付ける。ふと、膿のようなにおいが鼻を突く。彼の肩には、一面にニキビがつぶれたような赤いかさぶたやシミが点在している。そこに指を押し付けるたび、毛穴に閉じ込められて酸...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 05:40

2005年5月29日

監督週間部門 『Be with me』エリック・クー

監督週間オープニング作品。シンガポールの監督エリック・クーは8年前すでにカンヌ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 23:34

コンペディション部門 『Lemming』ドミニク・モル

今年のカンヌ映画祭コンペ部門のオープニング作品。〈レミング〉とは北欧に生息するネ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 00:05

May 27, 2005

Champions League 04/05 Final リヴァプール対ACミラン 3-3 (PK3-2)
梅本洋一

 前半のミランは完璧だった。開始1分でマルディーニのヴォレーシュートが決まり、入れ込み気味のリヴァプールに冷水を浴びせ、前半終了前には、クレスポが連続ゴール。これでゲームが決まったと思わない人はいなかったろう。ピルロがやや不調ではあったが、他の選手たちはコンディションもよく、スクデットを捨ててこのゲームに照準を合わせてきたのがよくわかった。特にクレスポ、シュフチェンコ、カカの前3人の出来は本当に素...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:13 AM

2005年5月24日

2005年5月24日

みんなはどんな気持ちで「風俗」という仕事に取り組んでいるのだろう。という純粋な興味から、たまたま新宿のある書店で『風俗嬢意識調査』と題された本を手にとった。 目次には、1999年から2000年にかけて、都内と横浜の限定された23件の非本番系の風俗店で働く女の子を対象にした職業意識の調査アンケートの結...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 00:25

『愛の神、エロス』「若き仕立屋の恋」ウォン・カーウァイ
田中竜輔

その暗い部屋は、すべてのものが何かによって閉ざされている、あるいは何かによって媒介されざるを得なくなっている、といった方が正しいのかもしれない。ホア(コン・リー)がひとりの老婦と共に息を潜めているその部屋は、確かにどこからか続いているようだが、淡い青の光が差し込む階段の先にその部屋があるのかどうかは保障されてなどいない。シャオ(チャン・チェン)が迷い込んでいるのは、そんなあらゆる可能性に背を向けた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:10 AM

May 23, 2005

『七月のランデヴー』ジャック・ベッケル
藤井陽子

エルヴェ・ル・ルーの『大いなる幸福』で、ナヌ(クリスティーヌ・ヴイヨ)が歌を、シャルリィ(ナタリー・リシャール)がクラリネットを、リュック(リュカス・ベルヴォー)がトランペットを吹くシーンがあったが、『七月のランデヴー』にもロジェ(モーリス・ロネ)がトランペットを吹くジャズのシーンが登場した。数人の男女が集まってくっついたり離れたりする共同体(友人どうし)は、まるでジャズバンドのようだ。基本となる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

May 19, 2005

丸の内は変わる
梅本洋一

東京改造の先端的な場所は、何と言っても丸の内だろう。かつて31メートルのスカイラインが並び、それぞれのビルがその意匠を競った日本の産業界の中心が丸の内だった。そのスカイラインが崩れたのは、東京海上ビルが建った1986年だったろう。今となっては決して高くはないが、この赤茶色のビルは、当時はまだスカイラインのあった丸の内では異彩を放っていた。東京中心部の容積率の変化が、この高層ビルを生んだわけだが、当...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 AM

May 18, 2005

『遠い国』アンソニー・マン
衣笠真二郎

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映画が始まって真っ先に目に飛び込んでくるのは活気ある港町の風景だ。忙しく動きまわる商人たち、山のような積み荷、運搬用のたくさんの馬たちが、狭い波止場から溢れんばかりの勢いでごった返している。人混みと雑踏によって占拠された空間の遠くの方から、鈴の音が聞こえてくる。何十頭もの牛が押し寄せてきてその間を縫うようにして姿をあらわした一頭の馬にはジェームズ・スチュワートが跨っており、その鞍には小さな鈴が付けられているのがわかる。「よし、いよいよ西部劇が始まるぞ」と誰もが身がまえてしまう最初の一瞬だ。すると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:13 PM

『さよなら、さよならハリウッド』ウディ・アレン
月永理絵

目が見えなければ、映画を撮ることはできない。カメラのアングルを決めたり、ラッシュを確認したりできないから、というよりも、ひとつひとつの決定に説得力がないからだ。映画を撮ることは、そこに何がありどんな風に動くべきなのかを決定することでもある。決定事項は膨大な数ほどある。ロケ地がたくさんあり、ショットの数も増えればさらにたくさんのことを決定しなければいけなくなる。もっとも簡単なのは切り返しを繰り返すこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:42 AM

May 17, 2005

『パリところどころ』
須藤健太郎

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この前、特に目的もなく六本木のABCに立ち寄ると、『パリところどころ』のDVDが売っていてびっくりした。『アデュー・フィリピーヌ』とセットで昨年の11月頃に発売されていたらしかった。かなり迷ったあげく、勢いで買ってしまう。すごい見たかった。ヌーヴェルヴァーグに興味を持っていくつも文献を読んでいると、『パリところどころ』というタイトルにいつも出会った。でも、未見だったのだ。 『パリところどころ』は、パリを舞台に6人の監督が撮った10分から20分程度の短編で構成される...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:49 AM

May 16, 2005

『楳図かずお 恐怖劇場』「蟲たちの家」黒沢清
結城秀勇

楳図かずおのデビュー50周年を記念した、6本の楳図作品の映像化という企画の中の1本。  不動産関係の仕事で働く蓮司(西島秀俊)は、妻(緒川たまき)が家に閉じこもりがちなことを気にかけている。妻は妻で、夫が酒を飲むと嫉妬深く暴力的になることを気に病んでいる。ふとしたことをきっかけに、妻は2階の一室に閉じこもり、そこから出てこなくなる。蓮司は浮気相手でもある大学の後輩に、自分の見ているものがただの妄想...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:11 PM

2005年5月15日

コンペディション部門 『Last Days』ガス・ヴァン・サント

カート・コバーンをモデルとした主人公、マイケル・ピットが演じる彼はブレイクと名...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:48

コンペディション部門 『バッシング』小林政広

戦時下のイラクにボランティア活動のため滞在し、人質となり開放された日本人女性のそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41

May 12, 2005

『ライフ・アクアティック』ウェス・アンダーソン
梅本洋一

ビル・マーレイ扮するスティーヴ・ズィスーはなぜズィスーという姓なのか。Zissouというスペリングだが、こんな姓の人は(それほど多くはないが)ぼくの知人にはいない。 ベラフォンテ号には、この時代に適合できない人たちが乗船している。ドキュメンタリー・フィルムなどもう時代遅れだし、ここに出てくる海の生物──どれも想像の産物だ──に本気で興味を持つ人などいないのではないか。でも、皆、本気なのだ。ズィスー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:48 AM

May 8, 2005

『獣人』ジャン・ルノワール
藤井陽子

『獣人』を見た後、なぜか青山真治の『Helpless』のことを思い浮かべていた。ドミニック・パイーニが、ふたつのフィルムを並べることでできた「間」の中に新たな思考と視点を見出そうとしていたように、『獣人』と『Helpless』の間にも新たな思考と視点を見出せるかもしれない。 そもそもなぜ『Helpless』なのか。『獣人』の初めのシーンと、ルボーがグランモランを殺害するシーン、そしてフィルムの終わ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:10 PM

『愛慾』ジャン・グレミヨン
梅本洋一

ドミニック・パイーニの「記憶、引用、回想の中の映画」と題されたプログラマシオンの中にある「ジャン・ギャバン、プロレタリアートの憂鬱」の回にルノワールの『獣人』と共にグレミヨンの『愛慾』が上映された(東京日仏学院エスパスイマージュ)。 このフィルムを見たのは25年ぶりだ。『獣人』と共に見ると、2本ともジャン・ギャバンが主演し、ほぼ同じ物語が語られているのが分かる。もちろんこうしたプログラマシオンの妙...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:22 AM

May 1, 2005

『コンスタンティン』フランシス・ローレンス
結城秀勇

『マトリックス』のパロディをキアヌ・リーヴスが演じる映画なのかと思っていたのだが、どうも間違っていたようだ。『マトリックス』のパロディという選択が志の高いものか低いものかはともかく、『コンスタンティン』には志と呼べるようなものはなにもない。ただ意志もない一連の企てが収束していく果てが、なんとなしに『マトリックス』に似通ってしまう。無論、否定的な意味でだ。 何がどう似ているのか。目に付く細部を挙げて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 PM

April 30, 2005

Champions League semi-final 1st Leg ミラン対PSV 2-0 チェルシー対リヴァプール 0-0
梅本洋一

まずサンシーロのミラン対PSV。去年のポルトやモナコを見る限り、この言葉は使いたくないのだが、「格」という言葉を考えてしまう内容。確かにフース・ヒディングと彼のチームは一生懸命やっている。3トップに近い布陣から皆がよく走りボールを追いかける。だが、前半終了間際とタイムアップ寸前というもっとも失点してはいけない時間に失点し、堅守のミランからホームで3点取らねばならないほとんど不可能な戦いを強いられて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:17 PM

April 25, 2005

『コーヒー&シガレッツ』ジム・ジャームッシュ
藤井陽子

86年にジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』で、翌87年にはヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』で助監督を務めたクレール・ドゥニは、88年に彼女の長編処女作『ショコラ』を完成させ、90年には『死んでもへっちゃらさ』を発表した。この『死んでもへっちゃらさ』に出演しているイザック・ド・バンコレとアレックス・デスカスが、『コーヒー&シガレッツ』の6番目の物語「NO PROBLEM」で再び共演している。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:34 PM

April 22, 2005

チェルシー対アーセナル 0-0
梅本洋一

いくらぼくが「諦めるな!」と叱咤激励しても、勝ち点差11、残りゲーム6という現状は心得ている。アーセナルは、もうFAカップとリーグ2位を死守し来年のチャンピオンズリーグにダイレクトインという目標に切り替えているはずだ。だが、スタンフォードブリッジでの対チェルシー戦。これは見なければならない。チェルシーは負けなければいい。2位死守のためにアーセナルは勝ちたいゲーム。だが結果はスコアレスドロー。 結果...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:47 AM

April 16, 2005

『現金に手を出すな』ジャック・ベッケル
藤井陽子

初老のギャングであるマックス(ジャン・ギャバン)は、行きつけの店のジュークボックスや彼の第2の家(隠れ家)で「グリスビーのブルース」をかけていた。そして金魂があらわになる時にも、いつも「グリスビーのブルース」が流れていた。金塊とこのブルースは密接に結びつき、マックスもまたこのブルースから離れられない。 「金魂」で思い出すのは、同じくジャック・ベッケルの『赤い手のグッピー』だ。最後までなかなか見つけ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:46 PM

April 15, 2005

Champions League quarter-final 2nd leg バイエルン・ミュンヘン対チェルシー 3-2
梅本洋一

ミラノのサンシーロが発煙筒の炎に包まれた頃、ミュンヘンのオリンピック・スタジアムではゲームの趨勢が決しつつあった。もしぼくがミラノにいてインテルのサポーターだったら、発煙筒を放り込んだかもしれない。カンビアッソのクリーンなヘッディング・シュートがネットを揺らしても、ファールの判定に腹を立てるのは当然だろう。ミスジャッジだ、だが、暴力的な行為は許せない、ましてや主審はドイツナンバーワンだ、そんな声が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:45 AM

April 14, 2005

『紙の花』グル・ダット
田中竜輔

『アビエイター』はハワード・ヒューズの幼年期の母親との回想のショットに始まり、ヒューズの映画制作を含む人生の激動の20年程を語ることに映画の大部分を費やし、そして冒頭の場面に回帰することで終わる。つまりそれはハワード・ヒューズというひとりの神経症を病んだ男の原体験を、「QUARANTINE」という単語の響きとともに映画の全体に共鳴させることで、ハワード・ヒューズという強烈な人物像に対して常に暗い影...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:55 PM

『F.O.B HOMES BOOK』F.O.B HOMES 監修
須藤健太郎

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4月に入り、街を歩いているとやたらとテンションの高い人たちを見かける。スーツを着ていれば新社会人で、私服だったら新入生だろう。始まりの予感に満ちていて、とても楽しそうだ。 この前、今年から新社会人になった友人と話していて思ったのは、「わからないことだらけでストレスが溜まる」とか言いながら、けっこう新生活を楽しんでいるということだった。とにかく前向きで、たとえば初めて名刺を持つという些細なことを彼は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:52 AM

April 11, 2005

『バッド・エデュケーション』ペドロ・アルモドバル
梅本洋一

『私の秘密の花』以来「巨匠」への道を歩み続けていたアルモドバル。確かにそのメロドラマは、たとえ『オール・アバウト・マイ・マザー』のように表面的には「倒錯的な性」が存在していても、口当たりのよいものになり、かつてからの「毒」は彼から消えつつあったのも事実だ。もちろんアルモドバル自身は、誰よりもそのことに気づいていたにちがいない。『神経症すれすれの女たち』や『アタメ』を撮ったアルモドバルは、決して誰も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:43 PM

April 8, 2005

『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟
月永理絵

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「日付けを追いかけては引き返し、手ぐり寄せては押し戻す」、主人公のあるいは作者のそんな試みは偏執狂的なまでに徹底している。主人公あるいは作者の、と言ったのは、この小説に登場する「わたし」が小説を書こうとする行動が、同時に『四十日と四十夜のメルヘン』という作品を形づくっているからである。「わたし」をめぐる物語や、私小説にすらなり切れていない日記としか呼べないような小説が、今は溢れ返っているような気が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:18 AM

April 7, 2005

『オペレッタ狸御殿』鈴木清順
小峰健二

清順はこの『オペレッタ狸御殿』のインタヴューに答えて、内向的な映画ばかりが目に付くいま、ぜひ馬鹿馬鹿しくて楽しい映画を撮りたかった云々と語っている。つまり、このフィルムは清順流の娯楽映画になるべく製作された。1940年代から50年代にかけて人気を博したかつての「狸御殿モノ」がそうであったように、多くの観客を魅了し、ときに笑いや涙を誘う映画。そのような映画こそ清順がいまこの時代にやりたかった企画なの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:21 PM

April 4, 2005

『アビエイター』マーティン・スコセッシ
結城秀勇

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ハワード・ヒューズ。世界最大、世界最速という文句のつく、いくつもの偉業を成し遂げた男。その称号を戴くにふさわしい剛胆さを持ちながら、その反面、潔癖性でそこから派生した神経症を患う。タイトル通りひとりの飛行機乗りとしてのリスクを積極的に負いながらも、一方で微細な細菌や汚れを異様に恐れる、その振幅に焦点を合わせたのが、『アビエイター』におけるヒューズ像である。彼の恐怖の根は、冒頭において植え付けられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:08 AM

『アビエイター』マーティン・スコセッシ
渡辺進也

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“the way to the future”
映画も後半、自らの夢をある程度成し遂げたハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)はこの言葉を何度も何度も繰り返す。それは、まるで故障した機械のようだ。この言葉を呟いているとき、ヒューズはこれまで歩んできた道のりを遠くのほうで意識しつつも、同時にその道のりが自分から本当に遠くにあるように感じながら呟いているように見える。ヒューズは自分の成し遂げて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:44 AM

March 29, 2005

『サラ、いつわりの祈り』アーシア・アルジェント
須藤健太郎

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本作を見て何よりも驚いたのは、エンドクレジットもひと通り流れ終えた後、「for Jean-Yves Escoffier」と出たことだった。ジャン=イヴ・エスコフィエのことは、まったく考えていなかった。驚いたのは、だからというのもあるが、実は、私がカメラマンの仕事に意識的になったのは、彼の存在が大きかった。だから彼の名前に極度に反応してしまったのだと思う。ジャン=イヴ・エスコフィエのことは、やはり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:44 AM

March 28, 2005

『エターナル・サンシャイン』ミシェル・ゴンドリー
月永理絵

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『エターナル・サンシャイン』を見る数日前、リチャード・リンクレイターの『ビフォア・サンセット』を見たせいか、このふたつの映画をつい比べてしまう。どちらの映画もカップルが多く目についたが、監督ミシェル・ゴンドリー、脚本チャーリ−・カウフマンという名前を見ればわかるように、『エターナル・サンシャイン』は、簡単に恋人たちを盛り上げてくれるような映画ではない。限られた時間の中で、恋人との思い出を会話の中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:39 AM

March 27, 2005

『サイドウェイ』アレクサンダー・ペイン
衣笠真二郎

親友同士のふたりの中年男性が1週間だけの小旅行に出発する。彼らが車で向かうのは自宅からそれほど遠くはないカルフォルニアの農園である。広大なブドウ畑の中にあるシャトーをいくつも訪れ、旨いワインを求めてテイスティングをくりかえす。その香りやら厚みやらを中年男性のひとりが言葉に翻訳してウンチクをたれる。作家志望の彼にとっては、ワインめぐりこそがこの旅行の目的なのだ。そしてもうひとりの中年男性は1週間後に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:40 AM

『カナリア』塩田明彦
小峰健二

ナレーションに続いて耳をつんざくヘリコプターの轟音がわれわれ観客の鼓膜を刺激する。そして、草むらに身を隠すようにして上空を見上げているまだ年端もいかぬ少年が映し出されるのだが、ここで観客は奇妙なモノを目にすることになる。少年の頭に冠せられているそれは、あのオウム真理教の一連の報道で話題になった「ヘッドギア」である。しかし、観客がそのヘッドギアを目にした途端、それは少年の手によって投げ捨てられる。そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 AM

サッカー:アジア地区最終予選 イラン対日本 2-1
梅本洋一

結果は敗戦であり、ワールドカップでは予選が一番面白いという定理を証明した形になった。アジア・カップではこうした展開でも奇跡的に勝ちを拾った日本だが、それは単に奇跡的だったからで、何度も続くものではないだろう。だが、勝負には負けた──確かにクオリフィケーションとしては痛い敗戦だが──が、日本はとても強いという印象を受けた。審判のジャッジも完全にアウェイで、もちろん10万の観客も完全にアウェイなのだが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:53 AM

March 26, 2005

『となり町戦争』三崎亜記
渡辺進也

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第17回小説すばる新人賞を受賞したこの作品の帯には、オレンジ色と黒の混じった文字で大きく次のように書かれている。「発売たちまち大反響 !!」。1月に発売されたこの小説だが、僕の持っている本ではすでに第4刷目である。このことだけでもこの本が売れていることを示していると思う。ちょっと前から知り合いからこの本の噂は聞いていたし、書店に行けば新刊コーナーで大きく扱われている。さて、なぜこの本がこれほどまでに話...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:21 AM

March 24, 2005

丹下健三の死
梅本洋一

汐留の松下電工ミュージアムで「DOCOMOMO100選」を見た。汐サイトに行ったのは初めてだったので、周囲を探索しながら会場に赴いた。新橋駅の復元は最低の出来。古めかしく装った建物の中にレストランが入っているだけ。首都高から見ると、ジャン・ヌーヴェルの電通もかなり奇麗なのだが、下から見上げると単なる高層ビルにすぎない。何よりも良くないのは、歩行者レヴェルの地上にいると風景の抜けがなく、どこにいるの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:29 AM

『ナラタージュ』島本理生
月永理絵

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小説を読むときにまず気になるのは、そこに登場する音楽や映画などの固有名だ。こうした固有名には時代性が大きく関わるので、自分と同年代の作家により共感を覚えるのは当然だ。かと言って、共感できるというだけでその小説を支持できるわけではない。83年生まれの(私よりひとつ歳下である)この著者の小説には、私が共感できるはずの固有名が何度も登場する。だが、これらの固有名に対し私はなんとも言えない「恥ずかしさ」を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:20 AM

March 23, 2005

「森山・新宿・荒木」展
鈴木淳哉

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約40年にわたって新宿を縄張りに写真を撮り続けているふたりの初の顔合わせだという。森山/荒木、新宿という場所、40年という時間の流れ、見る人によっては無限の物語をつむぐであろう前情報はどのように処理すべきか……などと考えていたわけではない。ただ、どうしてもキュレーションに興味がいってしまいがちなところを抑えて写真を、見に行った。今回の撮り下ろしをカラー/モノクロで分けたのは、企画側なのか撮影者本...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:39 AM

F1第2戦マレーシアGP
黒岩幹子

開幕戦のフィジケラに続き、チームメイトのアロンソがポール・トゥー・ウィン、ルノーが2連勝。そして、2位には再び2番手グリッドからスタートしたトゥルーリが入り、参戦4年目のトヨタに初の表彰台をもたらした。つまり、フロント・ローからスタートしたふたりが順当に逃げ切ったことになる。 いくらレース中のタイヤ交換が禁止されたとはいえ、現在のF1においてスターティング・グリッドがレースの半分を決めてしまうこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:24 AM

March 18, 2005

『カナリア』塩田明彦
田中竜輔

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ひとりの少年が児童相談所を脱走した。その経緯は文字と朗読によって説明される。その少年の第一の名は「光一」であり、映画のファーストショットは彼が上空を掻き乱すヘリコプターを見上げている様子に与えられる。それまでの一切の説明は彼に与えられたものであることも判明するだろう。彼はそこから当然のように出発する。その場所から程遠くない場所にある廃校に潜り込むと、そこには彼の武器となる1本のドライバーと、歩みを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:52 AM

『LEFT ALONE』井土紀州
中村修吾

『LEFT ALONE』を見ながら、わたしはヴィム・ヴェンダースの『まわり道』を思い出していた。『まわり道』は前作『都会のアリス』に続いてリュディガー・フォグラーを起用して撮られた、ヴェンダースの長編第4作だ。ゲーテの教養小説『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』を翻案して脚本を書いたペーター・ハントケは次のように述べている。「主人公は、彼(ヴィルヘルム)ではなく、他の人たちです」。ハントケの発言...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 AM

March 16, 2005

『マリー・ボナパルト』ブノワ・ジャコ
須藤健太郎

マリー・ボナパルトは、その名から明らかなように、ボナパルト家の実子孫(かのナポレオン・ボナパルトの実弟ルシアン・ボナパルトの曾孫女)であり、また帝政ロシア最後の皇帝だったニコライ2世の従兄弟のジョージ公と結婚した公妃だった。幼少の頃より知識欲が旺盛だった彼女は、精神分析学に興味を持ち、フロイトへと接近する。マリー・ボナパルトと言えば、フロイトの仏訳者としても有名だ。映画は、彼女が性不感症の悩みをも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:31 AM

『マリー・ボナパルト』ブノワ・ジャコ
渡辺進也

カトリーヌ・ドヌーヴは僕の母親よりも年長者なことに気付いて驚いた。日仏にて上映される作品を見てみると、40年以上に渡って主演映画を持っていることにも驚く。そうだと言われればそうだけど、やはり驚いてしまう。他にそんな俳優がいるのかどうか、すぐには思いつかない。『マリー・ボナパルト』は2004年製作のテレビ作品で、彼女が主演している作品のうちでも最新のものである。 マリー・ボナパルト(カトリーヌ・ドヌ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 AM

『Saraband』イングマール・ベルイマン
衣笠真二郎

教授職から引退しいまは人生の余暇を楽しんでいるひとりの老人のもとに、30年も前に別れた妻が突然姿をあらわす。ふたりは大袈裟に驚くこともなく自然に互いを受けいれあい、連絡を取ることもなかった30年間がまるで一瞬の夢であったかのように、愛にあふれる情熱的な言葉をかわしはじめる。とめどなく流れていくその対話を妨げるものは何もなく、ただ時計の針の音がゆったりと時を刻むだけである。 全部で10のパートをつく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 AM

2005年3月16日

茶髪に小麦色の肌をした彼が、ぐったりと布団の上に横たえている。とても疲れているのか、口数は極端に少なく、ごくたまに発せられる言葉も、小さくて何度も聞き返さなければいけないほどだ。私も彼にあわせて押し黙り、マッサージに力を入れる。力が抜けきった、均整のとれた彼の長身は、指で押すと、驚くほど柔らかくほぐ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 08:29

March 15, 2005

『ビヨンドtheシー〜夢見るように歌えば〜』ケヴィン・スペイシー
月永理絵

作曲家コール・ポーターの生涯を描いた『五線譜のラブレター』を見た後はコール・ポーターの歌を聞きたくなったが、同じく伝記的な映画である『ビヨンドtheシー』を見ると、ボビー・ダーリンの歌ではなく人生について知りたくなった。ではそれほどこの映画が魅力的だったかと聞かれると答えに困る。私がボビー・ダーリンの人生に興味を持ったのは、この映画が興味を惹くものを提示してくれたというよりも、ここで示されていたも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:22 AM

ラグビー:6 Nations 2005 アイルランド対フランス 19対26
梅本洋一

ランズダウンロードの雰囲気は独特だ。ダブリンには行ったことがないが、この昔ながらのラグビー・スタジアムは素敵だ。風の強い快晴の空がいっぱいに広がっている。アイルランドは、ことラグビーに関しては、北アイルランドとアイルランドの合同チームが出る。だからゲーム前の「国歌斉唱」もアイルランド国歌とアイルランド・ラグビー協会の歌の2本立て。いつもちょっと長いけれど、ここで客も選手も泣く。泣きながらゲームが始...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:21 AM

March 14, 2005

『永遠のハバナ』フェルナンド・ペレス
藤井陽子

1本のフィルムが観るものにとって特別なものになるかいなかは、そのフィルムのなかに何が見えて何が見えないのか、何が聞こえて何が聞こえないのかということによるだろう。つまりそのフィルムを成り立たせる事象を映画作家がどう取捨選択したかということだ。現在のハバナで暮らす市井の人々を『永遠のハバナ』のなかに捉えようと試みたフェルナンド・ペレスのとった取捨選択は、彼らの生活の身ぶりを見せること、だが彼らにイン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:05 PM

F1開幕戦オーストラリアGP
黒岩幹子

土曜日の時点でほぼ結果は見えていた。それほど土曜の予選1回目における天候の変化は決定的だった。2005年のF1開幕戦は、上位チームのなかで唯一、ほぼ路面が乾いた状態で予選1回目を走った、ルノーのフィジケラが順当にポールポジションをゲット、そのまま決勝も逃げ切った。 予選を土日の2日に分けて実施、さらには2回の予選タイムの合算によってスターティング・グリッドを決定するという新ルールが、開幕戦から大き...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:51 PM

March 12, 2005

チャンピオンズリーグBEST16 2ndLEG
梅本洋一

ここまで来ると、どのチームも通常のリーグ戦とはまったく異なる表情を見せる。どの選手も大金持ちで、適当に流しても生活に何の支障もないのだろうが、どのゲームも後半に入りベスト8進出がかかった時間帯になると、目の色を変えてゲームに没頭する。だからスポーツ観戦は辞められない。 チェルシー対バルサ( 4 - 2, total 5 - 4 )。ゲーム開始後20分間のチェルシーの猛攻はすさまじいものがあった。ア...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:49 AM

追悼・シモーヌ・シモン
須藤健太郎

シモーヌ・シモンが死んで何日か経つ。彼女の主な活動期間は、30年代から50年代にかけてだった。ナチスが台頭し、第二次世界大戦が起こって混乱を極める世界とは逆に、映画は古典的な爛熟期を迎えていた。ヨーロッパの映画人たちがアメリカへ亡命し、ハリウッドを活気づかせていたその時代の流れに沿うように、シモーヌ・シモンもまたフランスからハリウッドへ、そして終戦後フランスに戻り、そのキャリアを築き上げていた。し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:47 AM

March 11, 2005

ジャン=マルク・ラランヌ講演(3/6)
須藤健太郎

3月6日、東京日仏学院にて『マリー・ボナパルト』の上映後に、ジャン=マルク・ラランヌによる講演が開かれた。東京日仏学院では、今月から来月にかけて、カトリーヌ・ドヌーヴの特集が組まれており、ラランヌはそのプログラム選考を務めた。講演は、数々の映画作品の抜粋を上映しながら、彼がそこにコメントを加え、補助線を引いていくものだった。 ラランヌはまず1冊の書物を紹介する。リュック・ムレの『俳優作家主義』Po...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 AM

『きみに読む物語』ニック・カサヴェテス
結城秀勇

この映画のストーリーにはふたつの大きな筋がある。ひとつは、愛し合ってはいるものの、身分の差や社会的状況が一緒になることを許さないふたりの若い男女の物語。そして、もうひとつが、実際に過去にあったその物語を現実の出来事として共有することが出来るか、という老いた男女の物語である。前者では身分や階級の差が男と女の間に断絶として横たわるし、後者では記憶の差が男と女の間に横たわる。しかしこの映画自体が、このふ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 AM

『きみに読む物語』ニック・カサヴェテス
小峰健二

1989年、「親父」は死んだ。その「親父」をある人は「王の資格を持つ者」と呼んだし、実際「親父」は一時代を築いた唯一無二の存在として人々に記憶されている。「インディーズ映画の父」とも言われるこの「親父」とは、むろんのことニックにとっての実父ジョン・カサヴェテスのことだ。ニックはその偉大なる映画作家ジョンの、あるいは実母であり女優でもあるジーナ・ローランズの軌跡をなぞるように俳優の道を選択する。しか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:30 AM

『フェスティバル・エクスプレス』ボブ・スミ−トン
藤井陽子

3月9日水曜日、渋谷シネセゾンのレイトショーは盛況だった。スクリーンの中でジャニス・ジョプリンが、ザ・バンドが、バディ・ガイが、グレイトフル・デッドが曲をやるたびに、映画館のあちこちから拍手がこぼれてきた。感動的な夜だった。 1970年、当時最高のロック・ミュージシャンたちを乗せた列車がカナダのトロントを出発し、西へ西へと旅をしながら各地でフェスティバルを繰りひろげた。『フェスティバル・エクスプレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

March 7, 2005

第77回アカデミー賞授賞式(2/27)

遅ればせながら、アカデミー賞授賞式のテレビ中継を録画したビデオで鑑賞。すでに受賞結果を知りながら、わざわざビデオを借り受けてまで見るのは、ミーハー根性ゆえだろうか。昔からアカデミー賞授賞式を見るのが好きだった。単純に受賞者が名前を呼ばれる瞬間の顔を見るのが好きだ。例えば、去年だと、ブレイク・エドワーズの登場からスピーチまでの一連のシーンを見るためだけに、数時間ブラウン管を見続けていたようなものだ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:20 PM

追悼・岡本喜八

岡本喜八の訃報を聞いて岡本喜八のことをしばらく考えていた。岡本喜八の代表作とは何なのだろうか。僕が一番好きな岡本喜八の映画は何なのだろうか。軍隊の落ちこぼれたちが活躍する一連の戦争映画、『独立愚連隊』(59)、『どぶ鼠作戦』(62)、若い楽器隊が前線の通信基地を守ろうとする『血と砂』(65)だろうか。それとも三船敏郎が組織を壊そうと暗躍する『暗黒街の顔役』(59)だろうか。または、『大菩薩峠』(6...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:13 PM

March 3, 2005

『LOFT』黒沢清

『ドッペルゲンガー』以降、黒沢清は、彼自身のアメリカ映画のコンセプトに落とし前をつけようとしている。アメリカ映画とはなによりもジャンルである──1983年春に東京を訪れたヴィム・ヴェンダースは、すべてのフィルムはジャンル映画であると何度も繰り返していた──という深い信念。「ホラー」、「ジャパニーズ・・ホラー」──『リング』、『呪怨』などが「アメリカ映画」としてリメイクされている──の「最初」の「日...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 PM

『ライフ・アクアティック』ウエス・アンダーソン

ビル・マーレイ演じる海洋学者兼冒険者、そして海洋ドキュメンタリー映画の監督でもある男は、すでに中年に差し掛かり仕事の上でもスランプに陥っている。そんな彼の前に息子だと名乗る若い男があらわれる。息子をチームの新しい顔として迎えることを決意し、彼は再び冒険へと乗り出していく。若い息子と名乗る男は、ビル・マーレイが率いるチームに歪みをもたらし、映画をもかき回す。しかしもうひとり、重要な役割を果たす人物が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:24 PM

『ビフォア・サンセット』リチャード・リンクレイター

平日の午後、ガラガラの恵比寿ガーデンシネマ。前から3列目に腰を下ろすと、ぼくの前には誰もいない。 いきなり映るシェイクスピア&カンパニー。この書店のすぐ裏にぼくは3年間住んでいた。イーサン・ホーク扮する小説家がインタヴューを受けている。彼が座っている椅子の前の棚からぼくはダシール・ハメットのポケットブックを2冊買った。そして、この書店が舞台になっている一章があるヘミングウェイの『移動祝祭日』(ペン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 PM

2005年2月27日

2005年2月27日

部屋に入るなり、彼は私を凝視してこう言う。「あぁ、久しぶりの女の人だ」。私は笑いながら答える。「え……どちらからいらしたんですか?」「職場、男しかいないんだよね。あ……ほら、思い出してきたよ、女の人のこと」。彼は自分の下半身のほうへと、私の視線を促す。スーツのズボンのジッパーのあたりが、少し膨らんで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 17:08

February 25, 2005

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント
マンチェスター・ユナイティド対ACミラン 0-1
バルセロナ対チェルシー 2-1

昨日に続いてファイナルのカードであってもおかしくない2ゲーム。 まずマンU対ミラン。シュフチェンコを怪我で欠き引き分けでもよしとするミランと、何が何でも勝ちに行ったマンU。両チームともワントップ。クレスポもルーニーも前半はほとんど消えている。つまり両チームのディフェンスがよい証拠。そして、後半になると、アレックス・ファーガソンは満を持してファン・ニステルローイを投入。オールド・トラッフォードで勝ち...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:47 AM

February 19, 2005

『トニー滝谷』市川準

小説を映画にする。これは実にオーソドックスなものだ。だが、少なくともこの日本において村上春樹の小説を映画にするといった際、そこにはどうしても厄介なものが存在するだろう。彼の小説独特のフラットで無機質で色素の薄いクリーンな世界。登場人物たちも一様にクリーンだ。この世界を映像として表現するにはどうすべきか? 市川準の選択は実に明快だ。写真家の広川泰士を撮影監督とする。よってキャメラはほとんど動かない。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:17 AM

February 16, 2005

『ビフォア・サンセット』リチャード・リンクレイター

人は誰でも思い出を持っている。良い思い出もあれば、悪い思い出もあるだろう。そうした思い出はいつのまにか時間と共に少しずつ忘れられていく。しかし、忘れたと思っていた思い出はふとしたきっかけで思い出されることがある。そのきっかけは、風景であるかもしれないし、音楽であるかもしれないし、ある言葉であるかもしれない。そうしたものに何気なく触れた時に、それが前にどこかで経験したことがあると思われ、それがある具...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:01 AM

ラグビー シックス・ネイションズ
イングランド対フランス

ドゥミトリ・ヤシュヴィリの6PGで1点差でフランスが逃げ切ったゲーム。これでフランス2連勝、イングランド2連敗という予想外の結果になった。イングランドはホジソンがPG、DGを外しまくり、勝てるゲームを落とした。一昨年のW杯優勝はやはりウィルキンソンの力だったという証明か? 17-18という競った点差ほどゲームは面白くなかった。前半はブレイクダウンをめぐる攻防に終始し、まったく見るべきところがなかっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:58 AM

February 13, 2005

ラグビー日本選手権2回戦
早稲田対トヨタ

4年間の清宮集大成がトヨタに通用するのか。それがこのゲームの興味だ。僕も完全に早稲田のサポーター。だが、結果は、やや無惨なものだった。後半30分まで9-7とリードしていたので、接戦だったと考えられるかもしれないが、結果が9-28である限り、これは冷静に受け止めるべきだろう。トライ数0-4では完敗だ。ラグビーはスコアのゲームだから、ノートライでも勝てればよいのだが、ノートライで敗れるのは、やはり完敗...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:51 PM

『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』青山真治

あれは1980年晩秋のパリのオデオン座のことだった。イングマール・ベルイマン演出のシェイクスピアの『十二夜』を見た。もちろん日本の新劇でも小劇場でも、そしてロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでも僕もこの戯曲の多様な舞台を見た。でも、今でもベルイマンの『十二夜』が最高だったと思う。ベケット以降、演劇は「以後」を生き延びなければならない。つまり、物語と存在を徹底して縮減した極北の演劇──ドゥルーズは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:46 PM

三信ビル

2月11日付けの朝日新聞朝刊によると日比谷の三信ビルが老朽化によって取り壊されることになったということだ。日比谷、丸の内地区に残されたモダンなビルのうちのひとつがまた取り壊されることに反対はもちろん多く、この記事にも建築関係者の意見を聴取しながら、このビルをどうするか決めるとある。 まず結論から書こう。交洵社ビルのようにファッサードの一部だけを「記念碑」のように残したり、横浜・関内のビル群のように...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:44 PM

February 12, 2005

1st Cut 2004 A・Bプログラム
田村博昭・三橋 輝・衣笠真二郎

澁田美由貴『あわぶくたった』(Aプログラム/フィクション) たぶん、誰でも感じたことがあるはずだ。それは、視力矯正のために眼鏡をかけていて、ある時コンタクトレンズに変えてみようかと思い立って眼科へ行き、それを試着するまさにその寸前の瞬間に感じるものだ。また、その本人でなくとも指先に薄いゼリーのようなガラスのようなそれを載せて、見開いた眼球に近づけ、装着するところを目撃した人なら必ず感じるはずだ。あ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:39 AM

February 10, 2005

サッカー アジア地区最終予選
日本対北朝鮮

2006年ドイツW杯をめざしたアジア地区最終予選A組の第1戦。 大方の予想はメディアの狂想曲を差し引いて3-0というもの。僕も同感だった。だが結果はかろうじて薄氷の勝ち点3を拾う2-1。大黒のシュートが枠を外していたら、このチームは緒戦から崖っぷちの戦いを強いられた。ジーコはどこまでもついている。ラッキーとしか言いようがない。アジア・カップ以来、このチームのツキは残っている。それについては後述。 ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:37 PM

February 3, 2005

『レイクサイド マーダーケース』青山真治

受験勉強の合宿のために用意された、湖畔の近くの別荘が映画の舞台である。撮影のためにだけ建てられたという二階立ての別荘は、その外観がはっきりと画面におさめられ、その度に、この建物の外側と内側が本当に繋がっているのかという疑いが生まれる。室内のシーンをわざわざセットにするわけはないし、外へと繋がるテラスも確かにそこにある。繋がりが見えないのは、外と中というよりも室内の一階と二階の方かもしれない。 建物...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 AM

『ライフ・イズ・コメディ!ピーター・セラーズの愛し方』スティーヴン・ホプキンス

「主人公は明確な自己を持っていない。素朴な人間で空っぽの器だ。」 ブレイク・エドワーズやスタンリー・キューブリックのフィルムで活躍し、『博士の異常な愛情』では一人三役を、『マダム・グルニエのパリ解放大作戦』では一人七役というキャラクターを演じわけたコメディ・スター、ピーター・セラーズ。その彼の人生をジェフリー・ラッシュが演じているのがこの映画だ。ピーター・セラーズはその仕事の中で生みだされ演じられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:51 AM

2005年2月 2日

2005年2月2日

「あの、今日あんまり時間ないんで、早めに終わらせて頂けますか?」妙に丁寧な言葉遣いで、彼が私にいう。私は少し言葉に詰まる。彼は今日初めて私についた新規のお客さんだ。その彼がマッサージの途中でこんなことを言い出すのは、つまり私のことが気に入らなくて、さっさと抜いてさっさとかえりたいと思っているというこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 14:33

February 1, 2005

『侵入者』クレール・ドゥニ

この映画のなかに溢れかえっている異物は、それが紛れ込んだ場所とのあいだに摩擦を起こし、ふたつのものの存在の肌触りや温度の異質さを不気味なほどに浮き立たせている。例えば、ルイ・トレボール(ミシェル・シュボール)が湖で心臓発作を起こしたとき這い上がった陸で握り締めた砂利の中から、煙草の吸殻が出てくること‥あるいは、静寂の風景の中にとつぜん銃声が鳴り響くこと‥あるいは、二匹の犬を置き去りにする場面で突如...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:06 AM

January 30, 2005

『行ったり来たり』ジョアン・セザール・モンテイロ

当たり前のことと言えば当たり前なのだが、どこかを見ることを決めたときに、同時にその背後を見ることは誰にとっても不可能になる。それは映画においても同様であり、一つのショットを選択するとき、それは可能性のあるはずの他のショットを選ばない、ということになる。「見る」こととはつまり倫理の問題であることを、私は『不屈の精神』(セルジュ・ダネー)から学んだ。 ロベール・ブレッソンの『スリ』のポスターを玄関口に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 PM

January 29, 2005

クサルな! 佐々木明

一昨日オーストリアのシュラドミングで開催されたスキーW杯スラローム第7戦をライヴで見る。セストリエール、フッラハウ、シャモニ、ヴェンゲン、キッツビューエル、そしてシュラドミング……。開幕戦のビーヴァー・クリークを除くとさながらヨーロッパの冬季リゾート地めぐりだ。もちろんW杯の目的にはリゾート地振興も含まれているから当然なのだが、どこも本当に景色がよい。ヨーロッパ・アルプスでもう何年スキーをしていな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:35 AM

January 26, 2005

『巴里の恋愛協奏曲』アラン・レネ

アホな邦題は呆れるだけだ──原題がPas sur la boucheだから『唇はダメよ』ぐらいにしておけばいいだろう──が、やはり、この手のフィルムは、日本で興行的なヒットは望めないのか? 戦前のオペレッタで大ヒットしたが、今では忘れられた作品を、映画によって再現する試み──『メロ』以来アラン・レネは、そうした実験を繰り返している。『ゲルニカ』、『ゴッホ』といった初期の短編の実験、そしてその集大成...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:16 PM

January 25, 2005

「The Archigram Cities」TNプローブ・サロン

1月24日、先週末から水戸芸術館現代美術センターで開催されている「アーキグラムの実験建築1961-1974」という展示の連動企画として、「The Archigram Cities」と題されたアーキグラムのメンバーによる講演会が品川インターシティの大林組のホールで行われた。 当初参加予定だったピーター・クックは、次の仕事のためにすでに日本を発ったとのことで、デニス・クロンプトン、デヴィッド・グリーン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 AM

January 12, 2005

西部謙司『Game of people アジアカップ ユーロ2004 超観戦記』

フットボールに関して面白い本を読んだ。W杯から2年後の昨年のフットボールは、この書物のタイトルにある2つのカップ戦が東京に住むぼくらの関心の中心だった。 湿気を伴った猛暑の重慶からマヌエル・デ・オリヴェイラの生地まで、私たちの眼差しはフットボールを追い続けた。東京にいる私たちはその眼差しを徹底して小さなモニターに置き、西部謙司は、重慶の蒸し暑さをポルトガルの乾燥を体験した。その差異はある。だが、こ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:03 AM

January 6, 2005

ラグビー大学選手権準決勝
関東学院対法政
早稲田対同志社

リーグ戦で一敗血にまみれた関東学院が法政にリヴェンジ。1PG差で逃げ切った(24-21)。田井中をFBに、有賀をCBに据えた春口のオプションが功を奏した。それに対して法政はリーグ戦の同じ戦い方をした。学生のゲームは、「伸びしろ」がものを言う。戦術の洗練よりも、可能性の賭ける方が結果を出しやすい。法政の敗因もそこにある。確かに森田は学生レヴェルを越えるが、森田の調子に左右されるゲームメイクはまずい。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:05 PM

『ふたりにクギづけ』ボビー&ピーター・ファレリー

回想シーンの中に出てくる、鏡像のように左右対称な背中合わせのピッチングフォームのイメージほどには、ボブ(マット・デイモン)とウォルト(グレッグ・キニア)は対等な存在ではない。ふたりが同時に投球にはいるように見えるとはいえ、実際投げられるボールはただひとつしかなく、どちらか一方の手にしか握られていないように。ウォルトの体には肝臓がなく、その機能をボブの肉体に依存している。双子であるというには老けすぎ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:01 PM

December 30, 2004

『恋に落ちる確率』クリストファー・ボー

『メメント』、『NOVO』、『CODE46』、来春公開の『エターナルサンシャイン』など、例を挙げていけばきりがない、いま話題の記憶喪失系映画の一本ではある。しかしそれらの多くがあくまで脚本上のネタとしてこの問題を扱うのに対して、『恋に落ちる確率』はそれを演出にまで影響を与えるテーマとして用いる。 主人公の男は、ある日周りのあらゆる知人から忘れ去られてしまう。それまで親しかった隣人や友人、恋人すらも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:44 PM

December 28, 2004

『犬猫』井口奈己

『犬猫』は今年の日本映画における最大の収穫である。『子猫をお願い』や『珈琲時光』に勝るとも劣らぬ傑作だ、などと言うと大袈裟にきこえるだろうか。井口奈己の8ミリ版『犬猫』で既にその才能と出会っている方は反対に「なにをいまさら」と思うかもしれない。 『犬猫』が傑作であることを証明するためには、まず音について述べなければならないだろう。この映画では、ロングショットの後景にいる役者の台詞がワイヤレスマイク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:27 AM

December 26, 2004

『シルヴェストレ』ジョアン=セザール・モンテイロ

美しい娘シルヴィアは、父の「自分の外出中は、誰も家に入れるな」という言いつけを守らず、悪魔の手を持つ旅人を家に招いてしまう。旅人はシルヴィアの妹を犯し、シルヴィアは彼の右手を切り落とす。旅人は姿を変え、シルヴィアを娶るために、彼女たちの前に姿を現す。彼は二度、彼女の夫となるが、どちらも彼女の妹に正体を見破られ、最後には命を落とす。 タイトルである「シルヴェストレ」は、シルヴィアが何者かにさらわれた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 AM

December 23, 2004

『グリーンデイル』ニール・ヤング

予告編が終わり、本編がはじめると低音の波が映画館に響き渡る。私たちの身体を含め、映画館全体がその音に振動する。この低音は私たちに単に映画を鑑賞することを許さないだろう。映画を見るのではなく、映画とともにあることを要求する。この低音は「グリーンデイル」への入り口である。 『グリーンデイル』には視線と視点がある。ニール・ヤング自身によって撮影された8ミリによる映像が持つ視線であり、もうひとつはテレビニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 PM

2004年12月20日

2004年12月20日

本指名(1回以上接客したお客さんによる指名)で、M性感が入る。ルームに入ると、しかしいすに腰掛ける太った男に見覚えはない。緊張しながら彼に近づき、目を合わせないようにして問診表を受け取る。「女の子にどう呼ばれたいですか?……えー……ユウ君ですね?」笑顔で彼を見ると、彼が恥ずかしそうにうなづく。「いら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 13:06

December 17, 2004

『DEMON LOVER』オリヴィエ・アサイヤス

4人の女と、1人の男がいる。ディアーヌ(コニー・ニールセン)、カレン(ドミニク・レイン)、エリース(クロエ・セヴィニー)、エルヴェ(シャルル・ベリング)の4人は、「ヴォルフ・グループ」という会社で「東京アニメ社」の買収契約を進めている。「東京アニメ社」との契約には、更にデモンラヴァー社と、マンガトロニクス社という二つの会社の勢力争いが関わっていて、デモンラヴァー社の代表としてアメリカからやって来た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:25 AM

December 14, 2004

アーセナル対チェルシー

アーセナルの今シーズンを占う一戦。周知の通り結果は2-2のドロー。トップを行くチェルシーとの勝ち点5の差はそのままになった。 だが、ローゼンボリ戦からだろうか、アーセナルのヴァイオリズムは、上昇していると思う。この日も、セスクから左サイドのレジェスへと大きなパス、レジェスはアンリにクロス、ワンタッチでコントロールしたアンリのシュートがゴールネットを揺らし、先制したが、テリーのドンピシャのヘッドで同...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:41 AM

December 10, 2004

チャンピオンズ・リーグ
グループ・リーグ最終節
アーセナル対ローゼンボリ

最近のアーセナルの戦いぶりを見るなり、このチームに浮上した問題の大きさがうかがえた。勝てない、自信を失う、勝ちゲームを勝ちきれない。それに対PSV戦のレッドカードでヴィーラとローレンが、この日は出場停止。この試合を勝たなければ、チャンピオンズ・リーグ敗退が決まる。さらに、今週の土曜日は対チェルシー。今シーズン最大の数日間。 結果は5-1の大勝。新聞紙上ではセスクの活躍が大きく取り上げられている。だ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:41 AM

2004年12月 9日

2004年12月9日

M性感のお客さんが、3本連続ではいる。ルームに入ると、3人とも申し合わせたように、「初めてなんで、……お任せで……」と気弱そうにつぶやく。上目遣いで、おずおずと私を見つめる。「怖がらなくても大丈夫。じゃあ、様子をみながら、ゆっくり攻めていきましょうね」。私は笑顔で彼らを迎える。お客さんの緊張を解きほ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 13:19

December 7, 2004

『三人三色』ポン・ジュノ、ユー・リクウァイ、石井聡互

チョンジュ映画祭企画のオムニバス。 『夜迷宮』(ユー・リクウァイ)。ユー・リクウァイの映画を見るたびに、このひとはなんで自分にできないことばかりやるのだろうと思う。ジャ・ジャンクーの映画においては、事物の輪郭と光線を写し取りそこにいくつかの名前を多層的に重ね合わせていく彼のカメラだが、しかしながら彼自身の監督作においては、自然光を排除し事物の輪郭を曖昧にしそれらに付された名前を剥ぎ取っていく映像に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 AM

December 3, 2004

『ポーラー・エクスプレス』ロバート・ゼメキス

クリスマスイブ、家の前に現れたポーラー・エクスプレス(急行「北極号」)に乗って、子供達はサンタクロースに会うため北極点へと向かう。目的を果たし家に帰りついた少年の「その後」がほとんど描かれていない今作では、サンタクロースが画面に現れることが、旅の終わりと同時に映画の終わりをも示している。しかし、物語の最後に派手に登場してみせたサンタだが、映画を見ている限り、それ以前のどのシーンで登場してもおかしく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:15 AM

『ライフ・イズ・コメディ』スティーヴン・ホプキンス

天才的なコメディ・アクターには、常人には考えられないような傲慢さや強欲さがあり、一方で、自ら築き上げたキャリアに対する自省や、世間からのイメージと自分の理想とのギャップに悩み、俳優に対しての真摯な態度をもつ。ピーター・セラーズの、そんな、矛盾にみちた私生活と輝かしい功績が表裏一体に存在する役者の半生をみつめかえすと、人々は彼を愛してやまない。 グーン・ショウという、ジョン・レノンにも影響を与えたと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:11 AM

November 30, 2004

ヴォルフガング・ティルマンス:Freischwimmer展

入り口でチケットを手渡すと、「剥き出しの作品が多いですので、決して手を触れないでください」と係の女性に注意を受ける。言葉の通り、壁一面に貼られた写真のほとんどが、額にも入れられず無造作にピンやクリップで止められている。剥き出しの写真の光沢が、会場のライトに反射し、思わず目を細めてしまう。入り口からすぐのギャラリー1スペースではまだ整然と並べられていた写真が、次のギャラリー2スペースでは、無作為に散...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

November 26, 2004

『モデル』フレデリック・ワイズマン

モデルはどのようなことばを発するのだろうか。当然のことながら、雑誌やポスターなどの写真から、彼ら/彼女らの声が聞こえてくることはない。このフィルムを見ると、撮影現場においても、モデルたちの声はあまり聞こえてこない。聞こえてくるのは、専らカメラマンや監督たちの声ばかりである。彼らは、モデルの取るポーズに対し、Thatユs it! Beautiful! などと褒めたり、ポーズや表情について指示を送った...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:14 PM

「涙が止まらない放課後」モーニング娘。

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モーニング娘。はいつだってその騒がしさが魅力だった。彼女たちはこれまでずっと、過剰なまでに大げさな身振りで、白々しいほど賑やかな声音で、道徳の教科書に書かれてあるようなありきたりな言葉のみで構成された紋切り型の真実を歌ってきた。それは全然静謐なんかではなくて、嘘っぽくて安っぽくてだからこそリアルな騒音まみれの真実だ。九十年代の終わりごろに流行した「LOVEマシーン」には、カラオケのぺらぺらの伴奏で魂を叫ぶしかない多くの大衆の声にならない声が貼りついていた。だからこそ「LOVEマシーン」は広い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 PM

菊地成孔クインテット・ライブダブfeut.カヒミ・カリィ@代官山UNIT

ジャズという音楽が生まれたとき、それがジャズ以外の何ものでもないとその存在自体が証明するために必要な、だが決して必要であると召喚されて始めて姿を現すものではなく自然とその体に纏っているものがある。それはおそらく対極するものとして二種類あり、そのどちらもが正しいのだろうがジャズという音楽に神が存在するとしたら彼が力を貸すのは間違いなくいかがわしさをたっぷりと湛えた黒い極の上に立つものに対してであろう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 PM

November 25, 2004

『DV1』『DV2』 フレデリック・ワイズマン

『DV1』は、DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)という一つの崩壊を迎えた人々が再生に向うための治療を映したフィルムであり、『DV2』はその崩壊からその先の破滅へと向うか、幸運な再生へと向うかの分岐であるはずの裁判をめぐるフィルムだ。 『DV1』の登場人物は殆どその被害者であり、人々はその体験に対していろいろな角度から多数で討論する。勿論、カメラは彼ら一人一人の言葉に耳を傾けるために、頻繁に切り...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:48 PM

November 23, 2004

『血と骨』崔洋一

革命の炎は交番へと向けられ、見事にそれを焼き尽くす。しかし、燃える交番から走り出た一人の警察官は、一向に怯まず、恐れず、数人の革命者達を跳ね飛ばしてしまう。交番が焼けたからってそれがどうした。彼はそう言うに違いない。 同じような光景を見た事がある。監督は崔洋一。「月はどっちに出ている」(1993年)における岸谷五朗は、勤めていたタクシー会社が燃え盛っている横、空を仰いで笑っていた。岸谷演じる姜忠雄...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

November 22, 2004

『取るに足らぬ慰め』ジャン=クロード・ルソー

あふれる音は指向性を持たずに、あらゆる方向から一斉に降りかかる。意味を持った言葉も、コップや食器のぶつかり合う音に埋もれていく。そのなかでかすかに聞こえる、「良かったら行かないか……湖に……」。 『嵐の直前』では、露天の座敷での食事での歓談とその後の沈黙が、季節はずれの嵐の直前にあることを示し、またその嵐がいまそうである春よりも来るべき夏をより強く喚起させることに思いを巡らせている。その時間の流れ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:27 PM

November 19, 2004

『キャットウーマン』ピトフ

自ら勤める会社の陰謀に巻き込まれ、キャットウーマンとして生まれ変わったペイティエンス・フィリプッスス(ハル・ベリー)は、生まれ変わった翌日、自分の力を知らないままに彼女が恋する刑事(ベンジャミン・ブラット)のところに会いに行き、彼とバスケットボールをする。そこで、彼女は超人的な動きを見せることになるのだが、そのことに彼女はまだ気づいていない。画面ではバスケットボールをする姿が様々なアングルで写し出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:51 AM

2004年11月15日

2004年11月15日

M性感で最初に渡す問診表に、「名前」の欄がある。お客さんはそこに本名ではなく、「わんちゃん」なり「課長」なり、自分の好きな呼び名を記入する。女の子はその問診表をお客さんと確認しながら、そのときのプレイスタイルを決めていく。予約の際あらかじめ指定されたコスチュームとこの「名前」は、お客さんがその時のM...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:20

『ソウ』ジェームズ・ワン

老朽化した地下のバスルームの対角線上に鎖で拘束された二人の男、アダム(リー・ワネル)とローレンス(ケアリー・エルウェズ)、二人の間に横たわる男の死体。その死体の手に握られたテープレコーダーで、二人は殺人ゲームの仕掛け人である「ジグソー・キラー」からのメッセージを再生する。アダムは彼に死を宣告され、ローレンスはタイムリミットまでにアダムを殺さなければ、監禁されている妻と娘を殺すと告げられる。この映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:12 AM

2004年11月10日

2004年11月10日

性感エステで新規のお客さんが入る。扉を開けると、奥に耳に6個くらいピアスしたカジュアルな雰囲気の男の人が座っていた。まず入口で挨拶する。彼もかしこまってそれに答える。「では、シャワーにご案内しますので、お洋服を脱いでいただけますか」。上着を脱ぐのを手伝おうと肩に手をかける私に、彼は後ずさりながら遠慮...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 07:32

November 8, 2004

『我々のあいだに、書類のない、顔のない、言葉を持たない人々がいる』キャロル・シオネ

ここには文字通り、顔のない人がいる。声のない人がいる。それは誇張ではなく、むしろ控えめな表現であるとすらいっていい。“ソン・パピエ”、すなわち紙を持たぬ人々は自らの存在を確信することすらできないのだ。パリにやって来たある家族の妻は画面に顔を映し出されることはなく、代わりにせわしなく動く手だけが映し出される中で、私たちは動く死体、リビング・デッドのようなものだと口にする。その夫は、その顔もその声も晒...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:30 PM

November 4, 2004

『コラテラル』マイケル・マン

トム・クルーズとジェイミー・フォックスの乗ったタクシーの前を、2匹のコヨーテが横切る。暗闇の中でコヨーテの目が赤く光り、ふたりのいる方向を見たまましばし立ち止まる。タクシーの中のふたりもまた、放心したようにその光を見つめている。 このフィルムに映されているのは、タクシーの夜勤が始まる時点から朝が明けるまでの限られた時間だ。太陽の光は映画の終結を意味する。暗闇と、人工的な光だけがふたりの男を結び付け...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:53 AM

November 3, 2004

「パンク・ピカソ展」ラリー・クラーク

ロジャー・マリス(1934〜1985)……ベーブ・ルースが持つ1シーズンのホームラン記録を、1961年に更新したアメリカメジャーリーグのベースボールプレイヤー。彼の年間61ホーマーという記録は、1998年のマーク・マグワイヤ、サミー・ソーサ両選手まで破られることがなかった。1961年、マリスはチームメイトであるミッキー・マントルとともにルースの記録に挑戦することとなるが、のちのマグワイヤとソーサの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:15 AM

November 2, 2004

『2046』ウォン・カーウァイ

金曜日の最終回の上映にしては異様なまでに空いている渋東シネタワー。ウォン・カーワァイ、木村拓哉という固有名もすでにパブリシティの機能を失っているのか? あるいは、ウォン・カーワァイのフィルムは、やはり単館ロードショー留まりのフィルムであって、全国ロードショーには当てはまらないのか? 興業面には多くの疑問があるし、そもそも観客で一杯の映画館などもうないのだろうから、TSUTAYAでレンタルに並ぶ人...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:17 PM

2004年11月 1日

2004年11月1日

出勤前、予約が凄い事になってるから、出来たら早めに来て欲しいと店長から電話があった。電話越しでも伝わってくるあわただしさに、妙に高揚していつもより早めに家を出た。店につくと、控室でおしゃべりしている女の子たちは一人もいなくて、各ルームの前にスリッパがきれいに並んでいた。従業員のSさんが、洗濯機を回し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 21:07

October 28, 2004

『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』ラス・メイヤー

p_cat.jpg モノラルのサウンドトラックが声に合わせて振動し、まったく同型の平行に並んだ2本の跡をつける。その偶数本のギザギザの線は次第に増殖していき、画面を埋める。性能のほとんど同じマシンのデッドヒートの結果、地面に残されたタイヤのトラックのように。
車は金や権力や社会的背景を示す小道具などではなく、もっと単純な力とスピードの象徴だ。その馬力と速度が最大限に発揮されるのに両輪のバランスが必要であるように、登場人物たちは極めてシンメトリックな形で登場し、もつれ合い、退場していく。まず3人の女と車。次にひと組の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:31 PM

October 27, 2004

『ツイステッド』フィリップ・カウフマン

アシュレイ・ジャッド演じる女性捜査官の周りで連続殺人事件が起こる。被害者の男性はすべて彼女がかつて肉体関係を持ったものたちで、更に、犯行時刻の間彼女は必ず気を失い自分の行動を証明することができない。彼女が犯人だという疑いを掛けられそれをどう晴らしていくか、真犯人は誰かを探すことがこの映画の簡単なストーリーだ。男性ばかりの登場人物たちの中で、彼女は、ストーリーの上でも画面上でもまさに「たった一人の女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:45 PM

October 25, 2004

マンチェスター・ユナイティド対アーセナル

待望の10月24日。プレミアシップの前半戦の大一番を迎える。だが、この種のゲームによくあるように、軽快にゲームが展開することはなかった。結果は2-0でマンU。アーセナルのプレミアム無敗記録は49で止まった。 特にマンUの選手たちのこ